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「東京五輪後、日本の不動産は暴落する」はフェイクだった 各国の「五輪後」を調べれば一目瞭然
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57243
2018.09.16 長嶋 修 不動産コンサルタント 現代ビジネス
世界の「五輪後」を調べてみると…
前回(「『日本の不動産市場はバブルだ』には、まったく根拠がなかった」)は日本および東京の不動産市場がバブルとは程遠い状況にあることを説明しましたが、このバブル説と同じくらいよく言われる話に、「オリンピックで不動産市場は暴落する」というものがあります。
断言しますが、これにも全く根拠がありません。
たしかに五輪を開催した国では、五輪開催の前後で景気が上下することも不動産価格が上下することもあります。しかし過去に開かれたすべての五輪でそうなっているわけではありません。
私はこれを検証するため、前回(1964年)の東京五輪以降のすべての五輪に関して、それぞれの開催国の不動産価格との関連を調べたことがあります。
その結果、たしかに経済規模の比較的小さい国や新興国で開催された五輪に関しては、その前後で景気の上下動が起こっており、それは不動産価格とも、かなりの連動性が見られました。64年の東京五輪を開催したときの日本もまさに新興国でしたから、この構図はそのまま当てはまっています。
しかし経済規模の大きい国、あるいは先進国で開催される五輪は、その前後で景気変動も不動産価格もほとんど変わっていなかったことも、同じ調査で確認できたのです。
実際、先進国で開かれた五輪の典型である2012年ロンドン五輪後には、英国政府が「ロンドン五輪が不動産市場に与えた影響はなかった」とのレポートをまとめています。
2020年の東京五輪では、選手村がつくられ、閉幕後はそれが民間住宅として売り出される予定の晴海、勝どきなどのエリアには影響が出ることは予想されます。ただ他のエリアに関しては良くも悪くも影響は出ないでしょう。
「五輪後の地価暴落」説の根拠の一つに、「2020年以降に建築物資の価格が落ち込み、コストが下がるから」というものもあります。
ただこれに関しても、現状はまったくそういう状況になっていません。いまどこのゼネコンにヒアリングしても、だいたい2022〜23年までは仕事の見通しが立っています。
また今現在、オフィスビルもマンションも一戸建ても、どの現場でも工事の進捗がものすごく遅れており、通常は3ヶ月で済む一戸建ての建設に4〜6ヶ月もの時間を要する状況になっています。これはひとえに建築現場が人手不足だからです。
建築職人はピークの頃には約600万人いたのですが、2008年9月のリーマンショックの後に大量の職人が引退してしまい、震災復興に伴う建設需要の増加、アベノミクスの需要増のときも戻ってこなかったことで、現在は400万人しかいなくなっています。しかも平均年齢が60代とかなり高齢化していますから、いま現役の職人が引退するとさらにごっそり人手がいなくなるのは確実です。
そういった状況ですので、2023年くらいになっても建築需要はおそらく収まらないですし、建築費用は下がらないでしょう。
もちろんこの状況は、建設作業のAI化やロボット化がさらに進み、現場の仕事はほぼ無人、人間がやる仕事はモニタリングくらいにでもなれば一変します。しかし10年後や20年後ならばともかく、2022年や23年までにそこまでの技術革新がなされることはさすがにありえないでしょう。
ただし、中長期的には低落傾向
ここまで見てきたように、日本の不動産が90年のバブル崩壊の頃のようにある日突然に暴落する事態は今のところ考えられませんし、オリンピックの影響を云々することにもあまり意味がありません。
しかし確実に人口減に向かっている現在の日本の人口動態を見れば、中長期的、かつ全国的に緩やかに低落していくことも間違いありませんし、その傾向に拍車をかけるであろうトピックがこれから数年の間に2つ控えています。
ひとつは今から4年後の2022年に、「生産緑地法」の規定が30年の満期を迎えることです。
生産緑地法はもともと、1970年代当時の深刻な住宅不足を解消するため、都市部の農家に農地を宅地転用してもらう狙いで制定された法律です。
ふつう、農地に建築物を建てることは農地法によって厳しく制限されているのですが、市街化区域内にあって、なおかつ面積が500平方メートル以上ある土地では、所有者がその土地を農業(農林漁業)を営むために必要とする場合に限っては「生産緑地」に指定され、建築物の新築、改築、増築等が認められるようにしました。
そして同法は都市部の農家からの強い要望を受け1992年に改正され、生産緑地の所有者がその土地を農地として管理(実際にその土地で農林漁業を行い、住宅などは建てない)する限り、固定資産税の課税を「30年間」は農地並みに軽減されることになりました。
その満期が2022年についにやってくることで、今度は農地から住宅地に転用される土地、つまり不動産市場に投入される土地が相当数出ることが予想されるのです。
国土交通省の「平成27年都市計画現況調査」によれば、13年3月時点の生産緑地は全国に1万3442ヘクタール(約4066万坪)、東京都だけで3296ヘクタール(997万坪)存在します。私は少なくともこの20%程度、多ければ30%ほどの生産緑地が不動産市場に出てくる可能性があると予測しています。
ただでさえ「空き家問題」が深刻化しているなかで、東京ドーム900個分に相当する面積の土地が新規に住宅市場に流れ込むのですから、住宅市場全体の相場が押し下げられるのは避けられません。これは、下落要因になるでしょう。
「消費税10%」問題
とはいえ来年2019年10月に予定されている消費増税は、この生産緑地法の満期の問題以上に不動産の中長期的な下落傾向に拍車をかけることになるでしょう。
消費税率は今まで3%、5%、8%と段階的に引き上げられてきましたが、19年10月には10%への引き上げが予定されています。しかし京都大学大学院の増田聡教授が行った消費者心理実験によると、8%から10%への増税は「税率を計算しやすい」という理由ゆえに、他の時の1.4倍、女性に限れば2.9倍もの買い控え効果があることが判明したというのです。
たしかに1万円の買い物をしようとしたらプラス1000円を余分に払わないといけないわけですから、心理的な負担感が大きいというのは馬鹿にできない話です。
政府は住宅や自動車などの高額商品に関しては、駆け込み需要やその反動による落ち込みが生じないよう、購入時期ができるだけ均されるような政策を取ると表明しています。
ただ、この結果を見る限り、駆け込み需要どうこう以前にそもそも景気が冷え込んでしまう可能性が高いのです。当然、不動産市場への影響だって避けられないでしょう。
ここまでの話を整理しますと、日本の不動産市場が、中長期的にみれば東京も含めて徐々に下がっていくことは避けられません。
ただし1990年のバブル崩壊時のように一瞬にして値崩れする事態は想定できませんし、2年後に控える東京五輪の閉幕後に極端な需要低迷が起きることもありえない、ということです。
もちろん世界的な経済ショックや大規模災害があった場合にはその限りではない、ということになりますが、少なくとも、「東京五輪後、日本の不動産が暴落する」というのは誤りだと認識してよいでしょう。
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