リーマン級危機がなくても次に迫る景気後退リスク 経済成長を支える安い資金や資源が尽きた時、景気後退は起きる 原油市場において景気を冷え込ませる要因を探すべき(写真は原油タンカーの甲板に立つ乗組員) PHOTO: ALI MOHAMMADI/BLOOMBERG NEWS By James Mackintosh 2018 年 9 月 14 日 15:19 JST ――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト *** エコノミストや金融関係者、規制当局者はここ数週間、リーマン破綻から10年の節目を迎えた今、どうすればその再来を防げるのかを論じることに多くの時間を費やしてきた。投資家にとって悲しい真実は、たとえ再び金融危機が生じなくても、次の弱気相場が訪れれば、パニックが起き、巨額の損失を生むだろうことだ。そしてそれはさほど遠い時期ではないかもしれない。 正確にいつなのかという答えを見つけるのは、控えめに言っても困難である。だが歴史を通して景気後退と常に連動しているのは市況の低迷だ。だから1つのアプローチは景気後退をできる限り予想し、事前に売り払うこと。もう1つは、相場の下落を契機に景気後退が始まるのかもしれないという前提のもと、脆弱(ぜいじゃく)な市場を見つけ出すことだ。景気後退の予測モデル利回りだけを基準に予測すると、 米国が向こう12カ月間に景気後退入りする確率は上昇傾向だが、それでも 15%にとどまる 出典:ニューヨーク連邦準備銀行 あいにく、景気後退の予測は難しい。エコノミストは過去に惨めなほど失敗を繰り返してきた。だが、かなり簡単に言ってしまえば、経済成長を支える低金利資金や安い資源がなくなったとき、景気後退は起きるのだ。 現在の資金調達コストは歴史的にみれば低水準だが、投資家が長期的に持続可能と考える水準よりは高くなっている。われわれが判断の尺度にできるのは長短金利差、すなわち利回り曲線(イールドカーブ)と呼ばれるものだ。短期資金の調達コスト(米2年債の利回りで代用されることが多い)が10年債の利回りを上回ると、必ずと言っていいほど米国はそれに続いて景気後退入りしてきた。 イールドカーブはまだ逆転していない。だが利回りを基準にしたニューヨーク連銀のモデルは、この先12カ月間に景気後退入りする確率を15%としている。これは前回の景気後退期以降で最も高く、景気後退局面に入る約18カ月前である2006年夏と同じ水準だ。 イールドカーブが景気後退を決定づけるわけではなく、その予測能力を疑う理由もいくつかある。米国以外の国々では信頼性がはるかに低く、日本では過去5回の景気後退のうち1回のみ、英国では過去4回のうち2回を予測したにすぎない。一部のエコノミストは米国でも、量的緩和策や世界的な低金利の影響で10年債利回りが抑えられているため今は有用性が低いとみている。 原油と景気後退原油価格は大抵、景気サイクルの 最後に急上昇する 原油価格* 12カ月変動率 出典:セントルイス連邦準備銀行注*:WTI原油スポット価格 そこでわれわれは予測ではなく、最も脆弱な市場を注視することで、資金需給ひっ迫の兆候を見つけることができるだろう。トルコの通貨リラやアルゼンチンの通貨ペソの最近の相場混乱は、両国の経常赤字が世界有数の高水準にあり、ドル建ての借り入れコストが上昇したことと恐らく無関係ではなかろう。一方、米社債市場ではジャンク(投資不適格)級でも、スプレッド(国債との利回り格差)が極めて低いままだ。米国内にはほとんど懸念がないことを示唆する。 資源に関して言えば、経済を収縮させ、ブームを終わらせる可能性がある要因を探すべきなのは原油市場だろう。2008年、2001年、1980年、1974年の景気後退局面に先立ち、原油価格の急騰がみられた(いずれも1年以内に2倍を超える上昇)。これに対し、過去1年間の原油価格の上昇率は40%と比較的安心できる水準だ。そのうえ米経済は、過去に比べて原油価格の影響を受けにくい状況だとみられる。 世界経済の情勢にも米国にとって期待のもてる理由がある。他の国々の経済成長が低調にとどまる限り、米経済が必要とする資源を巡る競争は一段と低下するはずだ。 ただ、標準的なアプローチでは物事を取り違えることも多い。なぜなら経済は明らかに金融市場で起きていることに影響されるからだ。ベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)元議長が今週指摘したように、2008年に投資家が短期資本市場から逃避した際、米金融街をのみ込んだパニックはそれ以外の経済へと波及した。債務危機は確かに株式危機より悪い。だが2000年にドットコム・バブルがはじけ、それがより穏やかだったとはいえ、2001年の景気後退に影響したのは明らかだ。 弱気相場と景気後退 S&P500はその直前2年間の高値から下落 Source: Thomson Reuters 市場は転換点を迎える前、極端な方向に走るのが普通だ。シティグループのストラテジスト、マット・キング氏は、企業の高い債務比率と緩和された融資基準が、景気サイクルが終わりに近づく兆候だと指摘する。投資家はこれに対し、利益率の高さや債務返済コストの低さに注目している。だが金利が上昇すれば、積み上がった債務から悪循環が生まれる可能性がある。社債に買い手がつかなくなり、企業の資金調達能力について懸念が高まるからだ。 株式市場は幅広い業界で行き過ぎの兆候が出ているわけではない。ただ、米国株は平均してバリュエーションが高いが、それは売上高の伸びではなく、通常より大きな利益率が根拠となっている。そのため株価は利益率を脅かす要因、とりわけ賃金上昇や関税コストの影響を受けやすくなっている。 仮に今のサイクルがすぐ終了すると知っていれば、投資は簡単だろう。株を売って債券を買えばよい。だが時として最終段階は何年も続くことがある。その間、利回り上昇で債券価格は落ち込み、逆に株価は好調に推移しやすいのだ。 投資家が終わりは近いと判断し、それでも最後の数カ月に株で得られる利益を逃したくないと考えたならば、たとえ金融機関は健全だとしても、景気後退がいかに悪い事態を招くかを肝に銘じてほしい。1970年、1974年、2001年の景気後退期には、S&P 500種株価指数がピークから底値まで30%以上も下落した。 金融危機はそれよりもっとひどいものであり、リーマン危機を忘れてはいけない。だが今の景気サイクルが終わるとき、たとえ金融機関が揺らぐことはなくても、投資家は多大な損失をこうむるものと覚悟すべきだ。 関連記事 リーマン・ショックの教訓 破綻から10年 次の金融危機、予想される引き金は リーマン危機10年、なぜブッシュ氏に注目すべきか
「動かぬ円」という異変 対米欧通貨で変動過去最小か 編集委員 清水功哉 2018/9/17 5:30 日本経済新聞 電子版 この調子なら過去最小記録になるのではないか――。9月も後半となり、マーケット参加者の視野に今年最後の四半期(10〜12月期)が入ってきているが、日銀や為替市場関係者の間で「動かない円相場」という異変への関心が高まっている。 年初来のドル・円相場の変動幅(円の高値と安値の差)は9円を下回る低水準。年間の変動幅が、1973年(為替が変動相場制に移った年)以降で最小となる可能性が徐々に意識され始めた。実は年初来の変動幅はユーロ・円相場もかなり小幅。同じ年に対ドル、対ユーロともに円の変動が過去最少になるなら、初めての出来事になる。 ■年初来の変動幅は9円を下回る まずはドル・円相場から見ていこう。これまでの年間変動幅の最小記録は2011年の9円97銭、次が15年の10円2銭だ(グラフA参照)。データの出所はQUICK。為替相場は厳密な把握が難しい面もあり、データの出所によって多少異なることがある。このため15年を過去最小とする見方もあるが、いずれにしても18年の年初来の変動幅(8円74銭)はそれらより1円以上小さい。 画像の拡大 18年のドル・円相場はどんな動きをしてきたのか。グラフBの通り、年初に付けた1ドル=113円37銭が円の安値で、3月に付けた104円63銭が高値である。18年の変動幅がこれまでの最小記録(11年の9円97銭)を上回るには、今後114円60銭を超えて円が下落するか、103円40銭を上回って円が上昇するかのどちらかが必要になる。あと3カ月半の間にいずれかが起きることはあるのか。もちろん無いと断言はできないが、簡単でない印象もある。 画像の拡大 円安方向への動きを促す材料になりうるのは米景気の強さや利上げ観測だろう。だが、114円台後半までの円下落を実現する力を発揮できるかには疑問もある。 象徴的な光景が7月19日にあった。市場予想を上回る米景気指標を受けて円が売られ、いったん113円15銭まで円安が進んだ。年初につけた安値(113円37銭)に迫る勢いだった。だが、その後一気に112円台前半に買い戻されてしまった。トランプ米大統領が米利上げは好ましくないなどと発言したためだ。 足元の米景気は強いものの、米政権が利上げやその結果としてのドル高を望ましいとは考えていないという空気を市場は感じている。米連邦準備理事会(FRB)もあと1年もしないうちに利上げを打ち止めにする可能性を示唆している。米長短金利差も縮小傾向で推移してきた。ドルを思い切って買い上げにくい。 ■円高には要注意 むしろ注意が必要なのは円高方向かもしれない。3月に104円台まで上昇した背景には米中貿易摩擦があったが、両国の貿易戦争はその後も激化している。世界経済への悪影響を政府・日銀や企業は心配している。市場がリスク回避的になれば、「安全通貨」と目されている円に上昇圧力がかかりやすい。トランプ米大統領は日本に対する通商政策についても厳しい発言をしており、9月下旬に開かれそうな日米の閣僚級の貿易協議(FFR)に関心が集まる。協議を有利に進めるため、米側が円高誘導発言で圧力をかけるなどすれば、円買いに拍車がかかりそうだ。 とはいえ、年内に103円台前半まで円高が進むと予想する市場関係者は少ない。「リスク回避的な局面での円買い戻しの勢いが以前と比べると弱い」(JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏)との指摘もある。日本企業は海外でM&A(合併・買収)や設備投資を活発化させており、円売り需要が根強いことも背景にありそうだ。 となると、やはりドル・円の年間変動幅が過去最小になる可能性は意識されやすい。 画像の拡大 ユーロ・円相場に話を移そう。年初来の円の高値は5月に付けた1ユーロ=124円60銭、安値は2月の137円48銭で、その差は12円88銭。これまでの年間変動幅の最小記録は05年の12円99銭で、それをわずかに下回っている(データはQUICK)。 ■「どっちつかず」のユーロ・円相場 「欧州中央銀行(ECB)による利上げがすぐにはない上に、イタリアなどの政治面の不安もあってユーロを思い切って買いにくい一方、日銀の金融緩和も長期化しそうで円も買い進めにくい」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作氏)。こうした状況が続き、明確な方向性が出にくい。 ちなみに足元の円の対ユーロ相場は、年初来の高値と安値のほぼ中間といえるレベル。「どっちつかず」の展開を象徴するかのような水準だ。今後も方向性が出なければ、年間の変動幅の最小記録更新もあり得る。 為替相場の安定は企業経営には望ましいが、投資家にとっては利益を稼ぐための機会が減る面もある。果たして、対ドル、対ユーロともに円相場が「最も動かぬ年」になるのか。経営者も投資家も注視しそうだ。 フォームの終わり ドル、16年ぶり高値 強い米国にマネー集中 (2018/9/16 0:00) 一段の円安は米国次第? 残る新興国への懸念 (2018/9/14 12:15) [有料会員限定] リスク回避の円高和らぐ 金利差縮小で円キャリー下火 (2018/9/10 21:23) [有料会員限定] 日米物価差20年で5割超拡大、たまる円高マグマ (2018/7/30 5:30) [有料会員限定] 112円台で巨額のドル売り FX投資家の次の一手 (2018/7/16 5:30) [有料会員限定]
官僚哀史 はびこる慣習、衰えゆく組織 政と官 細る人財(1) 経済 政治 2018/9/17 2:00日本経済新聞 電子版 保存 共有 印刷 その他 残業100時間超えは42人――。厚生労働省の労働基準局では6月、過労死につながりかねない長時間労働が続出した。安倍政権が重視する働き方改革関連法の国会審議が山場を迎えていたためだ。働く人の健康を守る役割を負う同省は「強制労働省」と呼ばれる。
国会が閉会している時期でも、厚生労働省の庁舎は夜遅くまで明かりが消えない(11日午後10時すぎ) 画像の拡大 国会が閉会している時期でも、厚生労働省の庁舎は夜遅くまで明かりが消えない(11日午後10時すぎ) 労働政策をまさに担当する現場で「官僚哀史」ともいえる過酷な働き方がはびこる理由の一つは、「決裁は紙で」という古い意識が残るためだ。 厚労相らの国会答弁の準備ではまず係長がパソコンで作った原案を印刷して上司に回す。上司の手書きの直しを反映し、再度印刷して了承を得る。局長ら5人の上司と同じ作業を繰り返す。国会の委員会審議があると、大臣官房だけで1日1万枚以上の紙を印刷する。 前時代的な作業に若い官僚の頭脳と体力を浪費し、厚労省は国会に示した裁量労働制に関するデータの千件近い異常値を見過ごした。官の力量と政策の裏付けへの信頼は失墜し、自民党内では厚労省分割論も浮上した。 むろん、厚労省のミスは政策当局としてあまりにずさんで、言い訳できない。だが官僚をたたく政治の側の責任も大きい。国会議員の質問が役所に届くのが深夜にずれ込むことは珍しくなく、こうした政と官の旧態依然の関係が無用な疲弊を生む温床となっている。 今夏、人事院は国家公務員に残業時間の上限規制の導入などを進める方針を公表した。安倍政権が掲げる働き方改革が官でもようやく動き出す。だが改革なき働き方を続けるうち、官に対して世間が漠然と抱いていた「優秀な頭脳集団に任せておけば大きな間違いはない」との感覚は、底が抜けるように崩れた。 不信は霞が関全体を覆う。明治政府内に設けられた金穀出納所を源流とする財務省も、文書改ざんや前次官のセクハラ問題など政策以前の不祥事にまみれた。組織内の秩序を保つことを最優先する官に、自己改革は可能なのか。 2000人を超える150年間の歴代キャリア官僚の経歴が並ぶ 画像の拡大 2000人を超える150年間の歴代キャリア官僚の経歴が並ぶ 財務省内には「裏表紙」と呼ばれる文書が出回る。明治以降の同省の歴代キャリア官僚について入省年次別に担当部署や役職をすべて網羅し、予算を担う主計局を本流とする堅固な組織秩序が一目でわかる。ある幹部は「若手が歴代幹部の経歴をたどり、自分が将来どこまで出世できるか分析している」と明かす。 上意下達の一糸乱れぬ組織は財務省の力の源だった。ところがいまでは硬直的な組織が優秀な人材を遠ざけ、自由に物言えぬ風潮を広げる。矢野康治官房長は「部下が上司を評価する仕組みを導入すべきだ」と「360度評価」の導入を進めたが、来春の財務省への入省志願者は前年より約2割減った。 人材を失えば組織も保てない。危機は現実になり始めている。 ◇ ◇ ◇ 政と官の関係がきしむなか、官僚の不祥事や汚職が相次ぎ、政策そのものへの信頼も崩れた。時代に合わせた制度をつくるはずの「人財」が細り、働き方改革やデジタル化といった世界の潮流から取り残されるリスクが膨らむ。政と官の現場で何が起きているのか。
通貨暴落に苦しむイラン 海外脱出は「夢」に 消費の落ち込みがさらに景気を冷やす悪循環に イランの中間層は通貨急落で、旅行や留学などの海外渡航ができなくなっている AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES By Asa Fitch and Aresu Eqbali 2018 年 9 月 16 日 02:32 JST 更新
【テヘラン】経済混乱に見舞われているイランでは、通貨リアル急落により、多くの市民が休暇や出張、留学などを目的とする海外渡航を断念せざるを得ない状況に追い込まれており、消費の落ち込みがさらに景気を冷やす悪循環に陥っている。 リアルは1月以降、対ドルでおよそ75%下落し、今月には1ドル=約14万リアルの安値に沈んだ。そのため、航空燃料などを含むドル建ての財・サービス価格は大幅に値上がりしており、多くの中間層にとって、旅行費用は手の届かない水準に跳ね上がっている。 2人の娘を持つフルーザンさん(46)は、通貨暴落により、10代の娘をカナダの大学に留学させる計画をあきらめた。そのため、娘は急きょ、質の悪い国内大学への入学を目指さざるを得なくなった。「予算が決まっているので、ドル建ての値上がりペースにはついていけない」。フルーザンさんは、不満を漏らしていることを知られたくないとして、苗字は明かさない約束で取材に応じた。 トルコの人気観光スポットのスルタンアフメット。トルコは6月にイラン人観光客数が前年比30%減少 イラン指導部にとって、こうした問題はさらなる頭痛の種だ。通貨急落に加え、2桁の失業率やインフレ高進で、イランの経済危機は深まっている。フィッチ・ソリューションズ・マクロ・リサーチは、イランの国内総生産(GDP)は来年、4%以上のマイナスに陥ると予想する。 イラン経済は、トランプ米政権がイラン核合意からの離脱を宣言した5月以降、悪化の一途をたどっている。米国は先月、対イラン制裁を復活させており、11月にはイラン産石油や同国の金融機関との取引を制限する追加制裁も発動する構えだ。 イランでは昨年12月、政府の経済運営に不満を抱える市民による大規模なデモが発生しており、経済問題の深刻化は、ハッサン・ロウハニ大統領にとって大きな政治的リスクだ。 世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)によると、旅行・観光は今年、イランで150万人以上の雇用を支え、間接的な要因も含めればGDPの7.3%を稼ぎ出す見通しだった。だが、旅行代理店は予約の取り消しに見舞われ、多数のスタッフ削減を余儀なくされているようだ。 テヘラン―タブリーズ(写真)間を結ぶ国内便チケット高騰を嘆くSNS投稿も テヘラン―タブリーズ(写真)間を結ぶ国内便チケット高騰を嘆くSNS投稿も PHOTO: ATTA KENARE/AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES 制裁による痛みが広がる中、エールフランス、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)、エーゲ航空、KLMなど欧米の大手航空会社はここ数週間に、テヘラン便の停止を発表。イランの航空会社も運行便を削減しており、国営のイラン航空は9日、ドバイ、独ハンブルク、スウェーデンのヨーテボリに向かう便を減らすと発表した。 こうした動向により、とりわけ影響を受けているのが、欧米諸国に対する敵対感が薄いコスモポリタン市民だ。 テヘランの旅行代理店でマネジャーを務めるバヒッド・アリネジャド氏は、海外で医療サービスを受ける「医療ツーリズム」はほぼ全滅状況だと語る。イランの中・高所得者の間では珍しくなく、アリネジャド氏の代理店では毎週10人のペースで予約があったが、過去3カ月は全くなくなったという。 イランは海外旅行に関するデータを公表していないが、旅行先として人気の高いトルコでは、6月にイラン人観光客が前年同月比30%落ち込んだ。隣国ジョージアを訪れるイラン人観光客も7月、前年比およそ10%減った。 イラン人の多くは、ソーシャル・メディア上で不満を爆発させている。シャヒン・サマドプアさんは、閑散とした機内の様子を録画した動画を投稿し、広く共有された。サマドプアさんは「300席の機体に乗客はたった20人だ」と語りながら、テヘラン―タブリーズ間を結ぶ1時間の国内便チケットの高さを嘆いた。「飛行機での移動にも手が出なくなっている。状況は日に日に悪くなる一方だ」 関連記事 トランプ氏、26日に安保理会合を主宰 イラン問題協議へ 【社説】イラン通貨安とトランプ氏の貢献 イランと米国の応酬激化、トランプ氏の警告に対抗
新興国危機、FRBによる救済は期待薄 アルゼンチンなど新興国の株式相場は先週、弱気相場入りした アルゼンチンなど新興国の株式相場は先週、弱気相場入りした PHOTO: ROBERTO ALMEIDA AVELEDO/ZUMA PRESS By Justin Lahart 2018 年 9 月 14 日 07:16 JST
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」 *** 新興国市場が苦境に陥いる時、米連邦準備制度理事会(FRB)が救済に駆けつけるまで問題は深刻化の一途をたどりかねない。もしFRBがいつまでも姿を現さなかったら、どうなるだろう。 トルコ中央銀行による13日の大幅利上げは、新興国市場がいかに不安定化しているかを改めて浮き彫りにした。トルコリラの暴落とインフレ率の急上昇に直面したトルコ中銀は、投資家の信頼回復のために利上げせざるを得ないと感じたのだ。利上げはリラ相場を押し上げたものの、経済にさらなる打撃を及ぼしかねず、レジェプ・タイップ・エルドアン大統領の怒りも誘う危険な一手だ。 トルコだけではない。アルゼンチンや南アフリカも深刻な状況にある。インフレを巡る問題は、間もなく就任するメキシコのポピュリスト大統領を待ち構える課題の一つでもある。インドネシアはインフレ問題や多額の対外債務を抱えている。各国の問題はそれぞれ特有のものと捉えることも可能ではあるが、投資家はそうみていない。新興国株は先週、弱気相場の領域へと滑り落ちた。 新興国市場を見舞う逆風の一部はFRBの措置に起因するもので、その意味では見慣れた状況が横たわっている。 FRBは政策金利を引き上げてきた。景気が力強く拡大し、失業率も低水準にとどまる中、利上げを継続する公算が大きい。そのこと自体は新興国に問題とはならないが、それは新興国経済も力強く成長していればの話だ。実際には多くの国で成長が減速している。借り入れコスト上昇と合わせれば、危険な要因の組み合わせが出来上がる。 ニュースレター購読 2016年初めに新興国市場が混乱に見舞われた際も、同じような力学が働いていた。FRBは15年12月、金融危機以降で初の利上げを実施。利上げを継続する姿勢を示した。だが、新興国市場の動揺を目の当たりにしたFRBは、米経済への影響を懸念して追加利上げを遅らせた。これは90年代終わり頃の状況に似ている。当時はFRBの利上げも一因に新興国市場で相次ぎ危機が発生し、ついには98年にロシア国債がデフォルト(債務不履行)に陥った。結局、FRBは利下げに動くこととなった。 だが今回は、FRBは思いとどまらないかもしれない。FRBは16年初めのように米経済を不安視してはいない。足元の米金融市場も、90年代に比べれば新興国危機に影響されにくくなっている。 FRBの利上げが新興国市場に及ぼす衝撃を抑える要素も複数ある。米国を初めとする先進国の経済は順調で、貿易拡大が一部新興国に追い風となるかもしれない。中国が財政刺激策を拡大していることも支援材料となるはずだ。それでも、こうした好材料はFRBの影響を相殺するには不十分だろう。多くの新興国の厳しい現状が悪化する一方になるリスクがある。 関連記事 新興国危機ドミノ、次に倒れるのはインドネシアか 新興国が資金調達難に直面、市場急落で 【バロンズ】新興国の混乱、どこまで波及するか
ECB、初回利上げ以降の政策ガイダンスを明確にする必要−クーレ氏 Piotr Skolimowski、Birgit Jennen 2018年9月17日 21:58 JST 1−2カ月前に利上げを示唆する戦略、もはや適切でない可能性 複雑な政策環境では明確さが必要−クーレECB理事 欧州中央銀行(ECB)は最終的に政策の引き締めを開始すれば、利上げペースについて明確なガイダンスを示す必要があるかもしれないと、同行のクーレ理事が17日述べた。
ECBは現在、政策金利を「少なくとも2019年夏の終わりまで」過去最低の水準に据え置くとしており、投資家らは同年終盤に利上げがあるとの意味だと解釈している。ECB当局者は初回利上げの後、どの程度のペースで行動するか今のところ何ら示唆していない。 クーレ理事は資産買い入れ策で膨張したECBのバランスシート、インフレの背後にある動きの不透明性など複雑な政策環境では、利上げの1ー2カ月前に実施を示唆するといった以前の戦略はもはや適切ではないかもしれないと指摘。それに代わって、どの経済指標に注目する必要があるか伝えることを検討すべきだと語った。 同理事はベルリンで「利上げ見通しに関する市場との対話は、当然ながら政策正常化への移行をしっかり行うほんの第一歩に過ぎない」と述べ、「利上げ開始以降の緩和解除について、条件付きのフォワードガイダンスで政策当局者が見込むペースを明確にできるのではないか」と述べた。 原題:Coeure Says ECB May Need Clearer Policy Guidance When Rates Rise(抜粋) 最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE カタール政府系ファンド、中国フィンテック企業に出資交渉−関係者 Dinesh Nair、Manuel Baigorri 2018年9月18日 0:40 JST 平安保険傘下の陸金所の少数株式、カタール投資庁が取得も カタール投資庁は中国の経済成長取り込みを図っている カタール政府系ファンドのカタール投資庁(QIA)は、中国オンライン貸出業者最大手、陸金所への出資に関して交渉を進めている。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。投資は中国の経済成長取り込みを図る一環。 陸金所は中国平安保険(集団)傘下のフィンテック企業。関係者によれば、QIAは陸金所の少数株式取得を巡って交渉しており、協議は進んだ段階にある。約5億−10億ドル(約560億−1120億円)規模の取引になるとみられ、向こう数週間で合意が発表される可能性があるという。関係者は情報が非公開であることを理由に匿名で語った。 陸金所は昨年初めて業績が黒字転換。2016年には企業価値を185億ドルと評価する資金調達を完了した。 QIAが目指す陸金所への出資には、遅れや交渉破綻の可能性がなおあるという。QIAと平安保険、陸金所それぞれの担当者はコメントを控えた。 原題:Qatar Fund Said to Near Investment in China’s Top Online Lender(抜粋) 最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE 新興国市場、底打ちに近づいている−テンプルトン Ruth Carson、Andreea Papuc 2018年9月18日 6:08 JST フィリピン・ペソなどはショート−テンプルトンのシニアコフ氏 ドルはいずれの方向にも動く可能性、大規模な投資は回避 フランクリン・テンプルトン・インベストメンツは、新興国市場が底打ちしつつあるかもしれないとの認識を示した。ただ、フィリピンなど今後も市場の混乱が続く国もあるだろうと付け加えた。 フランクリン・テンプルトンの豪州債券担当マネジングディレクター、クリス・シニアコフ氏はシドニーでのインタビューで、不透明性からドルに対してポジションを中立にしていると発言。一方、フィリピン・ペソをショートにし、豪ドルがNZドルに対して下落すると見込むポジションも構築していると明らかにした。 シニアコフ氏は「現時点でドルに対しては大きな投資をしないようにしている。どちらの方向にも跳ねる可能性があると感じているからだ」と説明。「相対的な価値がある投資対象や、新興市場の中で勝者と敗者が見込まれる部分を選好している」と述べた。
新興国市場の混乱は終わったかの問いには、「底に近づいているが、新興市場で本格的な投げ売りがあったのかはわからない。市場に圧力はあったが、ある意味秩序立っていた。例えば、米国債利回りの急落や全面的な質への逃避などの衝撃は目にしていない」と語った。米金融当局の利上げ見通しについては、金融資産価格が最も重要な指標だと指摘。これが安定を続ける限り、当局は利上げを継続するだろうとの見方を示した。 原題:Templeton Says Emerging Markets Approaching Turning Point (2)(抜粋) 最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE インド、国営銀行3行の統合を検討−不良債権処理の加速視野に Shruti Srivastava 2018年9月18日 3:25 JST インドは、巨額の負債を抱えた銀行システムの強化を図るため、国営銀行3行を統合する可能性を検討している。 ジャイトリー財務相が率いる閣僚委員会はビジャヤ銀行、デナ銀行、バロダ銀行の統合を提言したと、財務省のクマー氏がニューデリーで記者団に語った。統合が実現すればインド第3位の銀行が誕生することとなり、雇用の減少につながらないことを政府は確実にしていくと述べた。 インドの不良債権比率はイタリアに次ぎ世界で2番目に高く、今回の動きは不良債権処理の加速を目指す政府の新たなアプローチとなる。インドの銀行がバランスシートに抱える負債は総額2100億ドル(約23兆5200億円)を超える。 原題:India to Consider Merging Three State-Run Banks to Cut Bad Loans(抜粋) 最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE トルコ・リラ続落、大統領が最大手銀行の野党保有株移管を主張 Constantine Courcoulas 2018年9月17日 22:05 JST 17日の外国為替市場では、トルコ・リラを中心に新興国通貨が2日続落。リラは先週、トルコ中銀が予想を上回る大幅な利上げを実施した後に上昇したが、エルドアン大統領の経済支配に対する懸念でその効果が薄れている。 リラは一時、3%を超える下げ幅を記録。メディアに話す権限がないとして匿名で語ったイスタンブールを拠点とする為替トレーダーによると、出来高が少ないことで動きが増幅されている。 エルドアン大統領は総資産で同国上場最大手銀行のトルコ勧業銀行について、最大野党の保有株式を政府に移管するべきだと主張。大統領がまたしても経済に介入する動きを見せたことで、投資家の不安が強まった。 イスタンブール時間午後0時55分時点で、リラは前週末比1.5%安の1ドル=6.2607リラ。20日発表予定の政府の中期計画も注目されている。 原題:Turkish Lira Slides as Isbank Fallout Dilutes Rate-Hike Support(抜粋)
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