http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/431.html
Tweet |
定年後に「趣味」が果たす役割は想像以上に大きい
https://diamond.jp/articles/-/179301
2018.9.10 野田 稔:明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授 ダイヤモンド・オンライン
たかが趣味と侮るなかれ。定年後、あなたの人生を彩る、とても重要な要素となるのです(写真はイメージです) Photo:PIXTA
仕事人間のままでは、
この先、幸せには生きていけない
私は無趣味です。「趣味は仕事」などとうそぶいていた時もあったのですが、この頃、少し後悔しています。
私の友人にはそれこそ「趣味の達人」と呼びたくなるような人が少なからずいます。そうした人を見ていて、以前は「仕事に打ち込めないから、趣味に走るのだろう」程度にしか思っていなかったのですが、大きな間違いであると気づきました。
若い時は家庭も忙しいし、仕事も充実していますから趣味のあるなしはさほど大きな差とはなりません。しかし、これから先の長い人生を考えると、豊かな人生を送るためには実は趣味の存在は小さくないと気づいたのです。
第二の人生は、「仕事人間」には辛いものになります。重荷から解放された時間を有意義に過ごす。新たな友人、同好の士を見つけて充実した人生を送る。人から感謝される、尊敬される、一目置かれることで認知欲求を今後も満たしていく。
そのためには、趣味の果たす役割が実に大きい。「楽しんで熱中できる何か」を持つことの重要性に、いまさらながら気づいたわけです。
例えば私と同期で野村総合研究所に入社し、同じ日に独身寮に入寮したAさんがいます。若い頃は、同じ部の隣の課で働いていました。私と同じく温泉好きで、温泉同好会を作り、よく一緒に旅行もしました。
彼は定年前に、本業の一環として決算書の分析に関する本を上梓しました。それがなかなかの人気で、その後立て続けに何冊か出版を重ねました。そして彼は60歳となり、定年を迎えます。野村総合研究所は65歳までの雇用延長が認められます。
彼も雇用延長を申請したものの、週3日の短時間勤務を選びました。「なぜだろう?」と思いましたが、その理由はすぐにわかりました。彼は二足の草鞋を履くことを決めたからです。彼にはいろいろな趣味があるのですが、とりわけ2つの領域に心血を注いでいました。
1つはビール缶コレクションです。日本各地はもとより、世界各国のビール缶を収集しています。年代別、ブランド別、記念缶や果てはエラーラベルものなどなど……海外はもちろん、ご当地ビール缶や様々な記念缶を求めて日本中を旅しています。
私もずいぶんと協力しました。当時海外出張が多く、しかもニューヨークやロンドンという大都市だけでなく、中米コスタリカであるとか、当時はまだ壁の向こうであった共産圏の東ヨーロッパの国々まで、様々な目的で足を運びました。その度に、目についたビール缶を購入してきました。
彼はその趣味が高じて、ビール缶のコレクションルームのためにマンションを一部屋借りて、いろいろと工夫して陳列をしています。ビール缶コレクターは彼のほかにももちろんいますが、彼のところにしかない缶もあるようです。ビールメーカーなどから写真を撮らせてほしいという依頼もよく舞い込んでくるようです。
彼は近いうちに、この趣味でまた1冊の本を書きたいと準備を進めています。本業関連で作った出版社との関係が、ここでものをいうわけです。
どんな趣味も、真剣に努力して
時間を費やすから面白い
彼はまた、選挙マニアでもあります。どういうマニアかというと、主に国政選挙で、全候補者の経歴などを調べ上げ、データを集め、分析をして、当落予想をするのです。支持政党があるわけではなく、純粋に“選挙”というイベントを楽しんでいるのです。少なくとも私にはそう見えます。
選挙がある度に、調べ上げたデータを壁一面に張り出し、友人を招いて予想を披露して、酒を飲みながら選挙速報に興じ、当たった、外れたと大騒ぎです。
本論からは外れますが、昔は私も選挙速報を見るのが好きでした。徐々に大勢が決まってきて、時々感動のドラマを挟みながら、選挙区ごとの結果が出るからです。しかし、今は、なんと開票率0%でも当選確実が出てしまう。出口調査などで大体その予想は当たるのですが、テレビ局は選挙速報という番組を自らつまらなくしているように思います。
それはともかく私も昔、何回か彼のパーティに招かれました。A選挙研究所と名付けられたそのイベントには固定ファンもいて、「選挙ってこんなに楽しかったのか」と口々に言いあったものです。
実に面白い趣味だと思いました。シーズン、シーズンで必ずあるイベントを楽しむわけです。ただ、テレビの前で飲んで意見を言い合っているわけではありません。そのためにかなり苦労をして事前に情報を集め、分析する。なんと彼は、当選のバラの花まで自作していたのです。
レアな趣味なら、太平洋での
マンボウの遭遇を味わえる
ビール缶にしても選挙にしても、何事にも同好の士はいます。ただし、切手やコインといったメジャーな領域ではないので、その遭遇はかなりレアだと思います。私はその状況を、「太平洋で、2匹のマンボウが出合う確率」と言っています。今はSNSの時代ですから、そうした仲間の情報を知ることは意外とたやすいかもしれませんが、実際に出合う機会はそうそうないはずです。
しかし、一度出合うと、お互いが打ち解けるのは早いでしょう。会話も弾みます。間違いなく仲良くなります。
私は彼とずっと仕事が一緒で、温泉にも行っていましたから、一番の親友だろうと思っていました。いや、その信頼が裏切られたわけではありませんが、自分の知らない彼の世界の存在を知り、その一つひとつの世界で大親友がいる事実に驚きました。彼には深いつながりのコミュニティが複数あるのです。
もとより老後の過ごし方に勝ち負けなどありません。しかし、老後の幸福度で言うと、彼の幸福度は私よりも間違いなく高いだろうなと思ってしまいます。しかも、どの趣味も、根気や行動力は必要ですが、それほどお金はかからないのです。
彼は選挙パーティーの当日、「忙しい、忙しい」を連発しながら、せっせと手製のバラを壁に貼っていきます。実に楽しそうです。たぶん他の趣味でも、「忙しい、忙しい」と言いながら楽しんでいることでしょう。
奥が深いがメジャーではない、
そんな趣味を見つけよう
何かを集めるというコレクターは多いものです。実際に集めるというだけでなく、例えばマンホールの蓋など、旅先で目にした珍しい図柄のものを写真に収めるといったコレクターもいます。
そうしたコレクションの対象は、限りなく、奥が深いほどいいようです。例えばどこの工場で作ったものか、年代はいつか、プリントミスなどはないか……。そのため、分類の仕方も重要です。自分なりの分類法を編み出すために、分類学に挑戦するのもいいでしょう。
これまで本連載ではキャリアや仕事の話を中心にしてきましたが、本当に人生を充実させるものは、そうした趣味かもしれないとも思います。
中でもポイントは空間的な広がり、加えて時間的な奥行きではないでしょうか。
ビール缶のような収集は、空間的な広がりがあります。旅行に行く目的ができます。そこが一つのミソです。人生が楽しくなるし、夫婦で楽しむこともできそうです。製造された年代も大事ですから、時間的な奥行きもあります。そこには歴史が介在するのです。
だから酒蔵を巡って、お酒のラベルを集めるといった趣味もきっと楽しいことだと思います。ただ取り寄せて飲むというだけでなく、実際に出かけていって、自分の味覚で確かめてから買う。2本買ってきて、1本はコレクションする。あるいはラベルを集める、などです。
もう一つ、選挙ですが、こちらにはシーズン性がある。だから繰り返し楽しめるイベントに仕立てられる。
実はキャリア論にも老後の趣味についていわれている格言のようなものがあります。それは「全部で4つの趣味を持て、そのうちの2つは室内でできる趣味で、残りの2つは屋外でする趣味にするのがいい」というものです。
しかし、これではいかにも漠然としています。4つという数も疑問です。例えば絵を描いて、俳句を詠む、そんな例示があるのですが、これは似すぎているのではないかと思います。
どうせ趣味を作るのであれば、マンボウの遭遇が欲しい。あまりにメジャーな趣味は商業化されていて、とっつきやすいのですが、何となく手のひらの上で転がされている感が否めません。
さらに、メジャーな趣味にはどこにでもものすごい人がいて、その人を頂点とするヒエラルキーが形成されている場合が少なくありません。組織が好きな人はいいですが、そうでなければ避けたほうがいいと思います。しかも、最後は財力がものをいいますから、妙な挫折感を味わう場合もあるでしょう。我々ではどうしても限界があるのです。
だから、空間的な広がりがあり、時間的な奥行きもあるマイナーな趣味。「へえ〜」と斜めに見られがちなコレクションのほうがいい。そんなふうに思います。
定年前になって自然発生的に芽生える新たな強い興味などというものは、そうはないでしょう。今は無趣味、多趣味だけど浅い、加えて、はたと膝を打つ昔の夢もないとすれば、そろそろ意図的に、戦略的に趣味選びを始めるのはどうでしょうか。
屋外も屋内も絡めて楽しめる趣味。旅行などの行動が伴うもの。興味深いストーリーや歴史が垣間見えるもの。
そしていずれは出版にも挑戦する。いきなりは無理にしても、ブログを書き、SNSに投稿する。そうやって自分のコレクションや考えを整理するとともに、広く発信する。発表の場があるということは素晴らしいことです。生きがいになります。
前述したように、同好の士も集まってくるかもしれません。出版社の編集者もそうしたものを必死にリサーチしているご時世ですから、面白い内容であれば、突然メールがやってくるかもしれません。
たかが趣味と侮るなかれ。あなたの人生を彩る、とても重要な要素であると考えてください。
(明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授 野田 稔)
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民128掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民128掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。