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株価最高を記録したマイクロソフトの驚くべき「未来戦略」 なぜこんなに好調なのか
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56935
2018.08.17 上阪 徹 現代ビジネス
創業40年目にして、史上最高の株価を記録したマイクロソフト社。一体、なにがそんなにすごいのか。『マイクロソフト 再始動する最強企業』の著者・上阪徹氏がその「秘密」を明かす。
スマホのない世界
まさかこんなものが10年後も世の中に当たり前に存在しているとは、私にはとても思えない。スマートフォンである。たしかに世の中を一変させ、デジタル環境を圧倒的に便利なものにしたのは間違いないが、あの小さな画面を覗き込んでいると、どうにも寂しい気分になる。肩も凝る。姿勢も悪くなる。この数年で私の老眼を悪化させたのは、これではないか、とも思っている。
少なくとも、もっと大きな画面が欲しい。しかし、重たくては困る。薄いほうがいい。理想は個人的には、やはり新聞だ。あの一覧性は、さすが100年以上の歴史に耐えてきた利便性がある。
新聞と同じサイズのモニターがあったら、いかに便利か。そこに、テキストや画像、映像が自在に出てくるのだ。もちろんタッチひとつで、画面は入れ替わる。そしてこのモニター、自由自在に折りたためる。別のデバイスから映像も取り込める……。
実はこれは夢物語ではない。こんなモニターを10年も前に構想していた会社がある。プロダクティビティフューチャービジョンと名付けられた2009年の映像に、それは残っている。作ったのは、マイクロソフトだ。
Productivity Future Vision (2009)
PC時代からスマートフォン時代への切り替わりに乗り遅れ、マイクロソフトの全盛期はとうに過ぎたと思っている人も少なくないかもしれない。実際、周囲の人たちにマイクロソフトの印象を訊ねてみると、一世代前のオールドカンパニーの印象が強い。
Windowsしかり、Wordしかり、Excelしかり、PowerPointしかり、もはやあって当たり前の存在で、そこに目新しさはない。ところが、ITの世界を知る人たちの間では、そうではない。マイクロソフトは今、大いなる注目企業なのだ。この事実が、日本では一般の人には驚くほど知られていない。
2015年秋、マイクロソフトは創業40年目にして、株価が最高値をつけた。以後、どんどん上昇している。2018年7月末時点の株価は106ドル。これは、最高値をつけた2015年秋の約2倍。この3年で、なんと2倍になったのだ。時代の変化に乗り遅れた会社が、こんな株価をつけるかどうか。昨年2017年には、世界の時価総額ベスト5にも入っていた。
実はGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)と堂々と伍しているのである。変化のきっかけは2014年、アメリカ本社のCEOが3代目のサティア・ナデラ氏に変わったことだった。
とんでもない宣言
就任時、ナデラCEOは47歳。インドに生まれ、21歳でアメリカにやってきた。マイクロソフト入社は1992年。20年以上、この会社にいた人物である。私はこの翌年、日本マイクロソフトの平野拓也社長にインタビューする機会を得ていたのだが、2時間のインタビューの終わり際、平野社長がこんなことを言ったのを聞き逃さなかった。
「これまでのマイクロソフトが見ていたのはITという世界でしたが、サティアはITを超えたまったく別の世界を思い描いています。人の生き方にまでさかのぼってマイクロソフトに期待されるサービスとは何かを考え、最適に作り替えようとしているんです」
平たくいえば、新しいCEOはマイクロソフトをゼロから作り替えようとしている、というのだ。従業員12万人、売り上げ10兆円という世界最大のソフトウェア会社を、だ。だが、これが本当だった。この変革に強い関心を抱き、後に私はシアトル本社にも取材に行って日米の幹部に多数取材し、『マイクロソフト 再始動する世界最強企業』(ダイヤモンド社)を書き上げることになるのだが、アメリカ人幹部からも驚くべき話を聞くことになった。
語ってくれたのは、本社のウェブサイトに顔写真が出ている15人の経営執行チームの一人、全世界のセールスとマーケティングの責任者という最高幹部、エグゼクティブバイスプレジデントのジャン=フィリップ・クルトワ氏だ。
「今まで40年間、マイクロソフトはビジネスを展開してきましたが、環境の変化のスピードはますます速くなってきています。求められていたのは、どんな未来になっていくのかということを、勇気を持って定義していくことでした」
今、自分たちの足元にあるものから未来を視るのではなく、来るべき未来から変わるべき現実を直視していった。「自分たちは何のために存在しているのか」から、問うたのだ。
「私たちは何者なのか。どういう存在なのか。何のためにこの仕事をしているのか。そして、お客さまに対してどんな価値を提供することができるのか」
創業40年の世界最大のソフトウェア会社が、改めて自分たちの存在意義から見直していったというのである。ここに、この変革の凄みを感じた。そして生まれたのが、新しいマイクロソフトのミッションだった。
「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」
これだけではなかった。会社を変えるにはカルチャーを変えていく必要がある、と気づいていたナデラCEOは、就任の朝、本社の経営幹部約120人を前にひとつのキーワードを提示している。本社のコミュニケーションのトップ、コーポレートバイスプレジデントのフランク・ショー氏は、そのシーンをよく覚えていた。
「彼が言ったのが、『グロース(成長)マインドセット』という言葉でした。もっと会社としてリスクを取らないといけない。成長のためにマインドを変えないといけない」
後にこのキーワードを含めた5つが「Ourculture」としてステートメントシートに描かれることになるが、これを真っ先に実践したのが、実はナデラCEO自らだった。それが、ソフトウェアからクラウドへのビジネスの大転換であり、Windowsの無償化という驚くべき決断だった。事業の屋台骨をひっくり返すという、とんでもない宣言をしたのだ。平たくいえば、新しいCEOはマイクロソフトをゼロから作り替えようとしている、というのだ。従業員12万人、売り上げ10兆円という世界最大のソフトウェア会社を、だ。だが、これが本当だった。この変革に強い関心を抱き、後に私はシアトル本社にも取材に行って日米の幹部に多数取材し、『マイクロソフト 再始動する世界最強企業』(ダイヤモンド社)を書き上げることになるのだが、アメリカ人幹部からも驚くべき話を聞くことになった。
語ってくれたのは、本社のウェブサイトに顔写真が出ている15人の経営執行チームの一人、全世界のセールスとマーケティングの責任者という最高幹部、エグゼクティブバイスプレジデントのジャン=フィリップ・クルトワ氏だ。
「今まで40年間、マイクロソフトはビジネスを展開してきましたが、環境の変化のスピードはますます速くなってきています。求められていたのは、どんな未来になっていくのかということを、勇気を持って定義していくことでした」
今、自分たちの足元にあるものから未来を視るのではなく、来るべき未来から変わるべき現実を直視していった。「自分たちは何のために存在しているのか」から、問うたのだ。
「私たちは何者なのか。どういう存在なのか。何のためにこの仕事をしているのか。そして、お客さまに対してどんな価値を提供することができるのか」
創業40年の世界最大のソフトウェア会社が、改めて自分たちの存在意義から見直していったというのである。ここに、この変革の凄みを感じた。そして生まれたのが、新しいマイクロソフトのミッションだった。
「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」
これだけではなかった。会社を変えるにはカルチャーを変えていく必要がある、と気づいていたナデラCEOは、就任の朝、本社の経営幹部約120人を前にひとつのキーワードを提示している。本社のコミュニケーションのトップ、コーポレートバイスプレジデントのフランク・ショー氏は、そのシーンをよく覚えていた。
「彼が言ったのが、『グロース(成長)マインドセット』という言葉でした。もっと会社としてリスクを取らないといけない。成長のためにマインドを変えないといけない」
後にこのキーワードを含めた5つが「Ourculture」としてステートメントシートに描かれることになるが、これを真っ先に実践したのが、実はナデラCEO自らだった。それが、ソフトウェアからクラウドへのビジネスの大転換であり、Windowsの無償化という驚くべき決断だった。事業の屋台骨をひっくり返すという、とんでもない宣言をしたのだ。
クローズからオープンへ
マイクロソフトは創業以来、基本的にソフトウェアのライセンスビジネスによって売り上げを立ててきた。1台のパソコンにOSであるWindowsが入り、Officeをはじめとしたアプリケーションが入り、それらはライセンスの形で販売された。
アップデートが行われれば、有償でライセンスが与えられた。アップデートの度に、課金ができるというビジネスモデル。これが巨額の売り上げ、利益を生み出した。
その成長がいかに凄まじいものだったか。売上高を比較してみれば、わかる。
1980年 800万ドル
1990年 1億8350万ドル
2000年 230億ドル
2010年 625億ドル
このビジネスモデルを変えていく、と宣言するのである。日本マイクロソフト業務執行役員の岡部一志氏はこう語っていた。
「例えば営業が売り上げを立てるのは、これまで何本のライセンスを販売できるかというものでした。ところがこれが、どのくらいマイクロソフトのクラウドを使ってもらいコンサンプション(消費量)を獲得できるか、に変わったんです。ソフトウェアを購入してもらうのではなく、クラウドサービスをいかに使ってもらえるかということ。こうなると、仕事のスタイルはがらりと変わらざるを得ません」
1回だけ売り込んで買ってもらえばいい、という商売ではなくなる。信頼関係を築き、さまざまな提案をすることで、長くたくさん使ってもらうという商売をしなければいけなくなる。発想も、カルチャーも、大転換が必要だった。そして、そのためにまたナデラCEOが業界を仰天させる。なんとかつてのライバルと手を組み始めるのである。
ナデラCEOは自らシリコンバレーを訪れ、競合他社はもちろん、オープンソフトウェアの世界のエンジニアたちとも次々に提携を結んでいく。ソフトウェアの世界で圧倒的な力を誇ってきたマイクロソフトは、自社製品ですべてをまかなう道を選んでいた。それだけの強さを持っていたからだ。しかし、オープンでない姿勢は、結果としてマイクロソフトの取り組みを後手後手に回させる。ところが、これが変わるのだ。
象徴的な例は、長年のライバル・アップルと手を組んだこと。iPhoneよりも良いものを、と鎬を削ってきたが、今は違う。iPhoneは、マイクロソフトのアプリやサービスをたくさん使ってくれる素晴らしいデバイスだ、という位置づけなのだ。iPhone向けアプリを作り、iPhoneでもっとマイクロソフト製品を使ってもらおう、という戦略に切り替わった。オラクルも、セールスフォース・ドットコムも、同様。オープンソフトウェアのLinuxまでクラウドビジネスの重要なパートナーになった。
だが競合から見れば、マイクロソフトのソフトウェアを使っているユーザーは世界で十数億人。アップルにしても、魅力は大きい。さらにパソコン用だったWindowsはゲーム機のOSにもなり、IoT機器のOSに。多くが無料の完全なプラットフォームになった。そしてマイクロソフトは、ビジネスパートナーが広がれば広がるほど、クラウドで稼げることになる。この大胆なシフトは、マイクロソフトがクラウド領域で世界で戦える数社の一角を担う存在に転換できたことを意味していた。
何しろ、パソコンのOSで9割以上のシェアを持つ世界最大のソフトウェア会社なのである。他の企業と積極的にコラボレーションを始めたときのインパクトは計り知れない。さらに、マイクロソフトには、先端技術でも大きなポテンシャルを持っていた。
世界はこんなに変わる
世界最高峰の研究所、マイクロソフト・リサーチがある。AI、ソフトウェアエンジニアリング、プログラミング、アルゴリズムなどで特許と論文がたくさんあり、優秀な人材が揃っている。「AIの民主化」を掲げるAI研究では、そのフィールドの広さが大きな特徴だ。2016年に日本IBMのディスティングイット・エンジニアと呼ばれる技術力のグローバル最高位から日本マイクロソフトCTOに転じた榊原彰氏は取材でこう語っていた。
「画像認識、言語理解、音声認識など認識系のサービスはいろいろありますが、オーバーオールにすべてのカテゴリーでトップ争いができているのは、マイクロソフトだけです。画像認識だとグーグルと競っていますし、顔認証だとフェイスブックと競っている。音声認識だとIBMとトップ争いをしていますし、言語翻訳だとグーグルとマイクロソフトです。実はAIエリアのソフトウェアの学術論文は、マイクロソフトがダントツに多いんです」
マイクロソフトのAIは、すでに多方面で使われている。さりげなく組み込まれているから、気づかれない。囲碁に勝ったり、クイズに勝ったりはしないが、それ以上のことをさりげなくやっている。この不器用さもまた、マイクロソフトらしさなのかもしれない。
そして未来をつくる技術でも今、大きな注目が集まっている。コンピューティングの世界を一変させてしまうのではないか、とささやかれているマイクロソフト発の技術、MR(MixedReality/複合現実)だ。VR(仮想現実)だけでもなく、AR(拡張現実)だけでもない。物理的現実と仮想現実の2つの現実が融合したまったく新しい世界。このMRを実現しているのが、マイクロソフトが開発したデバイス「ホロレンズ」。これを頭に装着し、ホロレンズを通して現実世界を見ることで、MRは可能になる。
マウスもキーボードもいらない。ジャスチャーで操作する。ホロレンズを介して見えるのは、バーチャルとリアルが一体化した世界だ。空間に3D画像が浮かび、Excelデータが浮かぶ。店舗づくりは、現地でバーチャルを組み合わせたイメージづくりが施工前に可能だ。すでに、さまざまな用途での活用が始まっているが、開発やプレゼンテーションの世界を一変させる可能性を秘めている。自動車開発、建設、パイロットや整備士のトレーニング……。
書籍では、このMRを生み出した天才科学者、アレックス・キップマン氏にもインタビューしている。
折しも書籍の執筆中、「今22歳ならマイクロソフトに行く」とウェブメディアのインタビューに答えていた落合陽一氏に取材の機会を得た。まさにテクノロジーの最先端を走っている科学者だが、例えば彼が研究している網膜投影とマイクロソフトのMRが合体したどうなるか。ヘッドセットなしに、リアルとバーチャルが、いつでもどこでもミックスさせられるようになるかもしれない。
バーチャル上で、議題となる新製品の3D映像を見ながら、収支計画などのデータも宙に浮かせて、さまざまなプレゼンテーションを行っていく、などということが当たり前になっていく。商談風景も変わるだろう。
モノを買うとき、家で大きさをバーチャル上で確かめてから買う、などということが当たり前にできるようになる。バーチャルショッピングやバーチャルトラベルなんてものが現実化するかもしれない。
たしかにマイクロソフトは、スマートフォン時代に乗り遅れた。しかし、スマートフォンが行きわたった今、次の「ポスト・スマホ」時代の覇権争いに再び名乗りを挙げたのではないか。パソコンからスマートフォンへの移行が一気に進んだような、大きな再編がこれから起きないとは限らない。スマートフォンの歴史はせいぜいまだ10年。この先、誰が次の覇者になるのか。もしかしたら株式市場は、それを見越しているのかもしれない。
オールドカンパニーから蘇った、という観点でも、この先のポスト・スマホ時代のキープレーヤーとしても。マイクロソフトという会社の動きに、もっともっと注視しておいたほうがいい。
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