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安倍政権の法改正で太陽光発電バブル崩壊…関連企業で撤退&経営危機続出
http://biz-journal.jp/2018/08/post_24323.html
2018.08.08 文=編集部 Business Journal
「Getty Images」より
“太陽光発電バブル”の終わりと再生可能エネルギー普及の難しさを改めて浮き彫りにする事件が起きた。
太陽光発電の縮小で業績が悪化、事業再生ADR手続き中の電子部品メーカー、田淵電機は7月4日、取引金融機関を対象とした第1回債権者会議を開いた。
債権者会議では、金融債務の返済について金融機関から一時停止の同意を得た。返済停止の期間は、事業再生計画案の決議のための債権者会議の終了まで。計画案決定までの運転資金を融資するDIPファイナンスに優先弁済権を付与することも了承された。
田淵電機の2018年3月期末の借入金は、連結ベースで106億円。対象は11行。メインバンクのみずほ銀行がDIPファイナンスを実行する。
同社は6月25日、経営不振を受けて私的整理の一種である事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)制度の利用を申請した。すべての取引金融機関に対して借入金元本の返済の一時停止を求めた。
国の認証を受けた第三者機関である事業再生実務家協会のもとで、事業再生計画を策定する。8月6日の第2回の債権者会議で計画案について協議。第3回は9月27日に開催し、事業再生計画案の決議を予定している。
田淵電機は1925年創業。電源装置に強みを持つ電子部品メーカーである。太陽光発電市場の拡大を背景に、太陽光発電用パワーコンディショナー(変圧器)の製造に乗り出し、2015年3月期は過去最高の532億円の売り上げを計上した。
ところが、再生可能エネルギーの固定買い取り価格の切り下げで、国内の太陽光発電市場が縮小し、変圧器の売り上げが激減した。18年 3月期の連結売り上げは264億円とピーク時から半減した。最終損益は88億円の赤字(前期は57億円の赤字)で、2期連続の最終赤字となった。不振の変圧器の生産設備などの減損損失で46億円の特別損失を計上。18年3月末の自己資本比率は5.6%。17年3月期の31.1%から大幅に低下した。
単体では8億円の債務超過に転落し、金融機関と締結している借入契約の財務条項に抵触。「継続企業の前提に関する疑義注記」(ゴーイングコンサーン注記)が付記された。そのため、金融機関との協議のうえでADRの成立を目指すことにした。
田淵電機のADR申請は、太陽光発電バブルの後遺症といえるかもしれない。
■太陽光発電バブルの発生と消滅
2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故で日本のエネルギー政策が見直されるなか、当時の民主党政権は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が買い取る固定買取価格制度(FIT)を導入した。
12年に始まったFITは40円(キロワット時)という高い買い取り価格を設定した。株式や債券と比べても高い利回りが期待できることから、申請件数が膨れ上がった。
まず権利だけ取得して建設は後回し、という事例が続出。ドイツの2倍超と、世界的にも高水準の価格での売電の権利を、最初から転売する目的で申請するケースも多発した。
再生エネルギーの買い取り費用は、一般家庭や事業者が払う電気代に上乗せされる「再エネ発電促進賦課金」を原資としており、太陽光発電バブルで消費者の負担が急増した。賦課金は、使用電力が月300キロワットの標準的な家庭で12年度は年間約790円だったものが、17年度には年間約9500円に達し、批判が高まった。
そこで政府は17年4月、FIT法を改正。権利を保有するだけで、実際にはビジネスを手掛けない事業者を排除するため、買い取り価格をキロワット時21円に引き下げた。これにより合計2800万キロワットの発電計画が失効したとされている。これは一般家庭の約1割、560万世帯の消費電力分に相当する。法改正で太陽光発電バブルが弾け、多くの企業が同ビジネスからの撤退を余儀なくされた。
太陽光パネルメーカーの京セラは、三重県の組み立て工場を17年春に休止。昭和シェル石油の子会社、ソーラーフロンティアは国内の生産を30%減らした。パナソニックも16年2月以降、大阪府内の主力工場の稼働を停止した。
政権交代で誕生した安倍晋三政権は、民主党政権が立ち上げた再生エネの振興に熱心ではなく、むしろ原子力発電重視との声もある。
経済産業省は17年11月、新設する大規模太陽光発電所(メガソーラー)から買い取る電気の価格を決める入札を実施した。発電出力2000キロワット以上のメガソーラーを新設する事業者が応札した。
9案件のうち最安値は1キロワット時当たり17円20銭。落札者は8社で、このうち4社は外資系が占めた。安い部材を調達できる海外勢が国内でも攻勢を強めている。国内事業者の多くは、「17円20銭では採算が合わない」として応札を見送ったとされる。太陽光発電に対する熱気は消し飛んでしまった。
7月23日、観測史上最高気温となる41.1度を埼玉県熊谷市で記録した。日本列島が災害級の熱波に襲われたにもかかわらず、電力不足に陥ることはなかった。太陽光発電がフル稼働したためといわれている。
真夏の電力需要のピークは、晴天で気温が上がる午後に集中する。太陽光発電は、夏の電力需要のピーク時に威力を発揮する電源なのだ。電力不足を回避できたのは、太陽光発電バブルがもたらしたケガの功名といえそうだ。
(文=編集部)
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