この手の白書に期待しても、あまり意味はないという好例重要なのは、現実の金融財政政策が、どういうタイミング、スピード、量で行われ コントロールされるかだ アベノミクスは失敗したのか 磯山友幸の「政策ウラ読み」 「経済好循環」は今が正念場 2018年8月3日(金) 磯山 友幸 日銀が目標としてきた「2%」の物価上昇の達成メドが立たなくなったことで、「アベノミクスは失敗した」という声が強まっている。日本銀行は7月31日に金融政策決定会合で金融緩和策の修正を決めた。本当に、アベノミクスは「終わった」のか? 金融緩和策の修正を決めた黒田日銀総裁(写真:AFP/アフロ) 日本銀行は7月31日に金融政策決定会合を開き、金融緩和策の修正を決めた。長期金利を「0%程度」としている政策の大枠は維持しつつ、長期金利の上昇を「0.2%程度」まで容認するのが柱で、黒田東彦総裁は「金融緩和の持続性を強化するため」だと狙いを説明している。
背景には日銀が目標としてきた「2%」の物価上昇がなかなか達成できないことがある。2013年に黒田総裁が就任するや否や「異次元緩和」と呼ばれた大胆な金融緩和に踏み出し、マネタリーベースを2倍にして、2年で2%の物価上昇を達成するとした。 ところがデフレ圧力は強く、物価はなかなか上昇しなかった。2%の目標は掲げたまま、達成年限を何度も先送りしてきた。 今回、日銀は、消費者物価上昇率(生鮮食品を除く)の見通しを、2019年度は4月時点の1.8%から1.5%に、20年度は1.8%から1.6%に引き下げた。この結果、目標の2%には20年度も届かないことがはっきりしたことになる。日銀は今後も長期にわたって金融緩和を継続せざるを得ず、その副作用を緩和するために長期金利の上昇容認に動いたとみられる。 2%の物価安定目標への到達メドが立たなくなったことで、「アベノミクスは失敗した」という声が再び高まりそうだ。デフレからの脱却を掲げた大胆な金融緩和は、日銀による大量の国債購入やETF(上場投資信託)を通じた株式の買い上げにつながり大きく市場を歪めた。マイナス金利によって金融機関の経営も一段と厳しさを増しているだけで、物価は一向に上がらない、というわけだ。 今回、日銀がETFの購入方法などを見直す方針を示したのも、そうした副作用への配慮がある。 では本当にアベノミクスは失敗に終わったのだろうか。 安倍晋三首相は2012年末の第2次安倍内閣発足以降、繰り返し「経済好循環」を掲げている。大規模な金融緩和によって円高が修正され、輸出企業を中心に企業業績が大きく回復、企業がその利益を取引先や従業員に「還元」していくことで、消費が盛り上がり、再び企業収益を押し上げていく。消費が盛り上がれば物価も徐々に上がり始める。そんな「好循環」の構図を描いてきた。 その「好循環」を実現するために、安倍首相は異例の「口先介入」を行ってきた。経済界に対して「賃上げ」を求め続けてきたのだ。自民党の首相がまるで労働組合の肩を持つようなことをしてきたわけだ。結果、5年連続でベースアップが実現した。もちろん、企業業績の好調や深刻な人手不足が背景にあるが、安倍首相の「口先介入」も経団連企業を動かす大きな要因になってきた。 特に2018年の春闘では、安倍首相は「3%の賃上げ」を経済界に求めた。ベースアップや定期昇給だけで「3%」に達した企業は少数だが、ボーナスまで含めた年収ベースでは多くの企業で「3%の賃上げ」が実現した。 好調な企業収益を従業員に分配するところまでは来たが、問題はそれが「消費」に結び付くかどうかだ。日本のGDPの6割は個人消費なので、消費に火がつかなければ景気は本当の意味で回復しない。 2018年1〜3月期のGDP(国内総生産)は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.2%減と、9四半期(2年3カ月)ぶりにマイナス成長となった。天候不順による野菜価格高騰の影響などで個人消費が落ち込んだことが響いた。また、企業の設備投資も振るわなかったことがマイナス成長の要因だった。 アベノミクスの成果が一気に雲散霧消する危険性 いつになったら消費は回復してくるのだろうか。 明るさが見える統計数字が発表された。日本百貨店協会が7月24日に発表した6月の全国百貨店売上高概況である。店舗調整後の総売上高は前年同月比3.1%増と大幅に増加、2017年9月の4.4%増以来の高い伸びとなった。 中でも百貨店がこのところ苦戦していた「衣料品」が4.3%増と高い伸びになったのが目を引いた。これは消費税導入による「反動減の反動」があった2015年4月の9.9%増以来の高い伸びだ。 もしかすると、この衣料品の伸びは「経済好循環」が消費にたどり着いた結果かもしれない。4月以降の賃上げや6月支給のボーナスの増加が、消費に結びついたのではないか、そんな期待を抱かせる。というのも「紳士服・用品」の伸びが5.5%増と高かったのである。婦人服の4.7%増や子供服の5.1%を上回ったのは久しぶりのこと。女性の小物や子供服から始まる消費が、男性の背広にたどり着いたのは「賃上げ」の効果と言えるかもしれない。こうした消費の伸びによって4?6月のGDPはプラス成長になるとの見方が多い。 問題は7?9月期も成長を維持できるかどうかだ。 7月は大雨や猛暑など全国的な天候不順の影響で百貨店の売上高は再び前年同月比マイナスに陥った模様だ。消費に力強さが出てこないと、本格的な「経済好循環」は望めない。 もう1つ、消費にプラスの効果をもたらす可能性があるポイントがある。厚生年金の保険料率の上昇が昨年9月で頭打ちになったことだ。2004年の法律改正で、厚生年金の保険料率は2005年から毎年9月に引き上げられてきた。2004年9月に13.58%(半分は会社負担)だった保険料率は、それ以降、毎年0.354%ずつ引き上げられ、2017年9月には18.3%になった。 2004年と比べると、13年で4.72%も上昇。仮に基準となる給与が年400万円だとすると、会社負担分と合わせて19万円近く上昇したのである。当然、その分、可処分所得が目減りしてきたわけだし、会社は何もしなくても社会保険料負担が増えるので、賃上げや人員採用をためらってきた。それが昨年秋で「頭打ち」になったのである。可処分所得の減少が止まれば、消費も底入れしてくる可能性がある。 財務省が公表している「国民負担率」を使って国民所得から逆算すると、社会保険料の負担は2004年度の52兆1800億円から2015年度の66兆9800億円へと、14兆8000億円も増えた。消費税率1%の引き上げで2兆数千億円の税収増に当たるとされるので、消費税6〜7%分の負担が知らず知らずの間に増えていたわけだ。消費が盛り上がらなかったのは当然だったとも言える。 2019年10月には消費増税が控えている。あと1年あまりだ。増税が迫れば駆け込み需要も期待できるが、一方で、その後の「反動減」も予想される。現状の消費が盛り上がらないまま消費増税に突入すれば、またしても消費が腰折れし、再びデフレの泥沼に迷い込むことになりかねない。 消費増税後には2020年の東京オリンピック・パラリンピックが控えており、訪日外国人による「超過消費」が期待できる。旅行で日本を訪れる外国人は免税手続きで買い物をするので、消費増税の影響は軽微だ。2018年6月時点でも百貨店売上高の5.8%を免税売上高、つまり訪日外国人によるインバウンド消費が占めている。この割合はさらに高まるだろう。 だが、インバウンド消費があるから増税しても影響は軽微とは言い切れない。日本国内の消費が落ち込めば、「経済好循環」は振り出しに戻ってしまう。 政府は「消費税還元セール」の解禁や、増税後の経済対策などで、増税の影響を小さくしようと知恵を絞っている。だが、問題は増税しても消費が腰折れしないだけの消費の「勢い」を、増税前にどれだけ作っておけるかにかかっている。むしろ、増税前の経済対策こそ必要だろう。 あるいは、増税前に思ったほど消費が盛り上がらなかった場合、消費増税を撤回することも必要になるかもしれない。増税ありきで景気を失速させれば5年にわたるアベノミクスの成果が一気に雲散霧消する危険性をはらんでいる。 このコラムについて 磯山友幸の「政策ウラ読み」 重要な政策を担う政治家や政策人に登場いただき、政策の焦点やポイントに切り込みます。政局にばかり目が行きがちな政治ニュース、日々の動きに振り回されがちな経済ニュースの真ん中で抜け落ちている「政治経済」の本質に迫ります。(隔週掲載)
外為フォーラムコラム2018年8月3日 / 19:02 / 2時間前更新 コラム:日銀「政策ダイエット」後の円相場シナリオ=佐々木融氏 佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長 4 分で読む
[東京 3日] - 日銀は7月31日、金融政策の微調整をいくつか実施した。主なメッセージは以下の3つだと筆者は考える。 1)物価の上昇圧力が予想以上に弱いことは認めざるを得ない。 2)従って、従来予想していた以上の長い期間にわたって異例の超金融緩和政策を続けなければならない。 3)しかし、現状のやや強引な超金融緩和政策をあまりに長期間続けていると、市場機能の低下など、さまざまな副作用も出てくる。ゆえに、副作用が必要以上に大きくならない形での、長期戦の超金融緩和政策を続ける。 この例えが適切かどうかは分からないが、ダイエットをしようと思う人が水だけ飲んで生活すれば、体重は手っ取り早く減るかもしれない。しかし、短期間ならいざ知らず、なかなか体重が減らないからと、そのように過激なダイエットを長期間続けたら、生命の危機にさらされる。 時間をかけてダイエットを行う覚悟がある人には、それなりのやり方がある。日銀が7月会合で示したのは、まさにそうしたことだと思う。これで、日本の金融資本市場はある程度健全さを取り戻すことができそうだ。 <なぜ円安方向に動いたか> 実際、日銀が実施した政策微調整は、市場が期待ないし予想していたものをほぼ全て網羅していたという点に鑑みれば、平均的な市場の期待以上の微調整だったと言えるのではないだろうか。 さらに、こうした網羅的な微調整にもかかわらず、マーケットに悪影響を与えなかったという点において、市場の期待のコントロールから微調整の方法に至るまで上手なやり方だったと言えそうだ。 特に為替・株式市場に悪影響を与えなかったという点で、日銀と日本の市場参加者とのコミュニケーションが改善していると感じる。これは今後の日本経済にとって好ましいことだと言える。 むろん、表面的な方向性だけみれば、7月会合での政策微調整は緩和と逆方向に映るが、日銀は今回、金融政策を緩和方向か引き締め方向かのどちらかに動かそうとしたわけではない。そこを議論する必要はあまりないだろう。 筆者は7月9日付のコラム「市場は日銀に何を求めているのか」で、日銀は長期金利の上昇をもう少し許容すべきだと書いたが、その際、日銀がそうしても「さほど」円高にはならないと指摘した。「さほど」と書いた裏には、多少は円高になるだろうとの読みがあったわけだが、実際には円安に動いた。日銀が金融政策の微調整を発表してから約27時間でドル円相場は1%程度上昇した。 こうした動きとなった背景としては、日銀決定会合の1週間余り前から、イールドカーブ・コントロール政策の柔軟化の可能性について各メディアが報道していたため、すでに円高が進んでいたことも考えられる。日銀の政策発表後に円安になったのは、ポジションの手じまいという面が強かったのだろう。典型的な「うわさで買って、事実で売る」展開が円相場で起きたと言えるだろう。 もう1つ重要な点は、日本の長期金利が上昇すると、欧米の長期金利が上昇してしまうことだ。日本の長期金利が上昇したら円が買われるとのロジックの裏には、日米・日欧長期金利差が縮小するという考えがあるが、実際には欧米の長期金利も一緒に上昇してしまうので、金利差は縮小しなかった。 欧米の長期金利がこうした動きをするのは、日本の投資家が欧米債券を売却して、金利が高くなった日本の国債を購入するのではないかとの思惑が高まるからだ。こうした思惑は今後も続くと考えられるため、今後日本の10年国債金利が仮に0.2%、もしくは0.3%に上昇したとしても円相場には大きな影響を与えないだろう。 <日米新通商協議に要警戒> さて、市場参加者は変わり身が早く、円相場は日銀の次の材料に目を向け始めている可能性がある。次に円相場にとって重要なのは、8月9日から始まる日米間の新通商協議(FFR)だろう。 これも今はあまり警戒している人はいないかもしれないが、トランプ米大統領がツイッタ―でつぶやけば一晩であっと言う間に最重要材料になってしまうので要注意だ。 日本の対米貿易はそもそも偏っている。通関ベースでみると、日本の昨年の貿易収支は全体で2.9兆円の黒字だが、対米黒字は7.0兆円と倍以上になっている。そして、その対米黒字の半分以上の4.5兆円が自動車の貿易黒字だ。 補足すれば、日本は米国に4.6兆円の自動車を輸出しているが、日本は米国から0.1兆円しか自動車を輸入していない。欧州との自動車貿易はバランスしているので、米国とのアンバランスは日本に原因があるわけではない。しかし、そう言って分かってもらえそうな相手でもなさそうだ。 また、米財務省は半期為替報告の中で円は実質実効レートベースでみて過去20年間の平均から25%も割安になっていると指摘している。こうした点をトランプ大統領が口にし始めると、円高・ドル安方向に比較的大きな圧力をかけてしまうことになる。 佐々木融氏(写真は筆者提供) *佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。 *本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。 (編集:麻生祐司)
外為フォーラムコラム2018年8月3日 / 11:21 / 2時間前更新 コラム:日銀版「ムーンウォーク」=熊野英生氏 熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト 3 分で読む [東京 3日] - 日銀は7月会合で発表した方針に、「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」という名前を付けているが、いま1つメッセージ性が伝わらない。引き締めなのか、緩和強化なのか、よく読んでも分からないからだ。 黒田東彦総裁は会見で、展望レポートで物価見通しを引き下げて、物価安定目標の2%達成がまだ先になると、今度は副作用が強まって緩和継続ができなくなると困るので、副作用対策をしっかりやって我慢強く緩和を続ける、と言っている。 対策の1つは、長期金利変動を容認して、金利上昇に対して過敏に買い入れオペを打つのは手控えることである。すでに、最近の長期金利は、日銀の姿勢を受けて少し上昇していた。 黒田総裁は変動幅を2倍、つまりマイナス0.2%からプラス0.2%の範囲で動くことを容認すると言った。これは、国債市場機能をごく一部回復させて、金利上昇は金融機関が債券を買ってくるのを待つ姿勢をとるということだろう。 高い金利で債券を買えることは金融機関の収益にプラスである(そのくらいでは金融機関の収益は本質的にはよくならないことは気になるが)。 また、日銀がめどとして定めている年間80兆円の国債買い入れをより減額することも、民間金融機関に買い入れのチャンスを与えることになる。そのことは、先にある出口のところで、市場が自律的に金利上昇を抑える能力を高めることにもなるだろう。 さらに、日銀当座預金残高のうち、マイナス金利が適用される部分も、現在の平均10兆円程度から、5兆円程度へと変更する方針である。これは、大手行など預金が集ってマイナス金利の適用が避けられない金融機関の痛みを和らげることになる。 理由はともあれ、筆者は副作用対策を行ったことを評価する。黒田総裁は会見で、国債市場の機能低下だけが副作用のように話していたが、それは違う。本当の副作用は、巨大緩和が金融機関の収益に打撃を与えて、そのことが今後、金融システムに取り返しのつかないダメージを及ぼすことである。 <「脱リフレ」の第2弾> 今回の大きなポイントは、「政策金利のフォワードガイダンスの導入」だ。2019年10月の消費税率の引き上げまでは「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している」と記した。この一文があるために多くの人は、今回の措置は緩和強化とみている。 このフォワードガイダンスは「当分の間」というところに力点がある。日銀は今回の措置を出口と関係ないというが、この文学的表現をこれからは微修正して、出口へと向かっていくことが感じられる。 この手法は、まさしく総合判断である。つまり、機械的なインフレターゲットの色は大きく薄まった。4月末会合での物価目標2%達成期限の廃止に続く「脱リフレ」の第2弾である。まさに、足を交互に滑らせ、前に歩いているようにみせながら後ろ向きに進む「ムーンウォーク」のようだ。 原田泰審議委員は反対票を投じて、「物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当である」とその理由を述べている。インフレターゲットから総合判断に変わったことがはっきりと分かる。原田委員は、皮肉なことに反対票を投じたことで機械的なインフレターゲットをやめたことを明確に伝えてしまっている。 もう1つ重要なのは、2019年10月まではフォワードガイダンスを働かせるというコミットメントが、消費増税を人質にしている点である。仮に消費増税をやめれば、このフォワードガイダンスが反故(ほご)になって金利変動が起きる可能性がある。 このタイミングは、欧州中銀(ECB)が利上げに動くと予定される2019年夏よりも後の時期と重なっている。ECBが利上げに動くと、それに対してそれほど遅れることなく、日銀も出口へと動けるような構えをとっている。ここは、黒田総裁が2期目の任期内で、出口戦略をしっかりやるぞという気構えが表われたところと言える。 熊野英生氏(写真は筆者提供) *熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。 *本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。
外為フォーラムコラム2018年8月3日 / 14:47 / 2時間前更新 コラム:日銀の「パッチワーク」はいつまで続くのか=村嶋帰一氏 村嶋帰一 シティグループ証券 チーフエコノミスト 4 分で読む
[東京 3日] - 日銀は7月30―31日開催の金融政策決定会合で、金融政策(短期政策金利、10年国債利回りターゲット、リスク資産買い入れ規模)を据え置く一方で、資産買い入れ、特に国債買い入れをより弾力的に運営する方針を決定した。 今回の決定は、2%のインフレ目標の達成が(すでに十分に持久戦だが)一段の持久戦となることが避けられない中、これまで金融緩和の問題点(いわゆる副作用)を部分的に是正すること(パッチワーク)を意図したものだったと考えられる。 この点はもちろん評価できるが、本来的には、この5年強の政策運営について、日銀流の「総括的検証」やパッチワークではなく、本当の意味での「総括」を行うべき時期に来ているように思われる。この点を指摘した上で、今回の決定のポイントをみていきたい。 <長期金利変動レンジのさらなる拡大はあるか> 会合後の声明文は、長期金利について「金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるもの」 と指摘。さらに、黒田東彦日銀総裁は会合後の記者会見で、長期金利誘導目標の「ゼロ%程度」からの変動幅をこれまでの倍程度(つまり上下0.1%から今後は同0.2%)まで容認する考えを示した。 この上下0.2%をどうみるかがポイントとなるが、当社は、2016年9月に日銀がイールドカーブ・コントロールを導入し、10年国債利回りターゲットを「ゼロ%程度」とした際、上下0.2%の変動幅が容認可能なレンジとして念頭にあったとみている。 その後、結果的に、日銀はそれよりも狭いレンジで長期金利をコントロールしてきたが、今後は、国債市場の機能・流動性への悪影響を軽減するため、イールドカーブ・コントロール導入時の当初計画に近い形で10年国債利回りターゲットを運用していく可能性が高いように思われる。 当然に、日銀が変動レンジをさらに拡大するのではないか(例えば上下0.3%まで)との懸念が見受けられるが、その可能性はかなり低いと判断される。上で述べた通り、日銀にとって、現行の10年国債利回りターゲット(「ゼロ%程度」)の下で容認できるレンジは上下0.2%とみられ、このレンジを例えば上下0.3%に拡大する場合、それは事実上の政策変更を意味することになる。 実際、雨宮正佳日銀副総裁は8月2日、執行部だけの判断で上下0.2%のレンジを変えることはできないと発言している。また、以下で述べる通り、新たなフォワードガイダンスの導入を踏まえると、10年国債利回りが0.2%を持続的に超えて上昇する可能性は低いだろう。 <今回の声明文に「副作用」の文字がない理由> 今回の金融政策決定会合を前にした金融市場の議論は、おおむね金融緩和の副作用を巡って行われてきた。ところが、今回の声明文には、その「副作用」という言葉が一度も出てこない。これは、日銀が、副作用を起点に政策を考えているとの印象を避けたかったためと推測される。 日銀は金融機関収益への悪影響そのものを理由に政策変更を行うことにかなり慎重な印象を受ける。将来、日銀が副作用対応の政策変更を検討するためには、金融機関収益の低下だけでなく、それが金融仲介機能全般を損なっているという具体的な兆候、あるいはより現実的リスクが必要になるのではないか。 例えば、金融仲介機能への影響を推し量る上で注目すべき指標の1つとして、日銀短観の「金融機関の貸出態度判断DI(緩い−厳しい)」があげられる。この指標は、2016年9月のイールドカーブ・コントロール導入後も、今年6月の調査まで、大企業、中堅企業、中小企業向けのいずれも高い水準を維持している(企業が金融機関の貸出態度が「緩い」と判断していることを意味)。この点は、少なくとも現時点では、銀行収益の低下が信用仲介機能全般の低下には結び付いていないことを示唆しよう。 日銀は今回、声明文に「金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行う」という新たな文言をわざわざ付け加えた。金融緩和が、金融機関収益の低下を通じて、金融仲介機能に悪影響を与えるリスクが念頭にあることは明らかだろう。ただ、少なくとも現時点では、日銀にとって、これはリスクにすぎず、現実ではないことになる。 <フォワードガイダンス導入の真意と重み> 今会合のもう1つのポイントは、政策金利に関するフォワードガイダンスが導入されたことである。具体的には、「2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している」とされた。特定の経済イベント(消費税率引き上げ)と金利政策を緩やかにせよ関連付けたことが特筆される。 すでに日銀幹部は、消費増税後まで金融政策の変更はできないという観測を打ち消そうとしている。雨宮副総裁は8月2日、「フォワードガイダンスはカレンダーベースではなく、データディペンデント(経済情勢や指標次第)である」と発言した。しかし、実際に消費増税が実施され、しばらく時間が経過するまでは、その影響を巡る不確実性が消えないのは明らかだろう。 また、日銀は2014年4月の消費増税の影響を過小評価してしまったという経緯もある。これらの点を踏まえると、現実には、来年にかけてよほどインフレ率が明確に上昇するといった事態にならない限り、消費増税前に政策金利を引き上げることは難しいだろう。 フォワードガイダンスにうかがえる日銀の慎重姿勢は、日銀の経済成長率見通しとも整合的に見受けられる。日銀の実質国内総生産(GDP)成長率の見通し(9人の政策委員の中央値)は2018年度が1.5%、2019年度が0.8%、2020年度も0.8%だった。2019年度と2020年度の0.8%は日本経済の潜在成長率(当社推計は0.9%程度)とほぼ同水準である。すなわち、需給ギャップの改善が2019年度と2020年度にはおおむね止まることを意味する。 需給ギャップの改善とそのインフレへの押し上げ効果(フィリップス曲線)は、今後インフレ率が明確に上向いていくという日銀見通しの最も重要な根幹をなしている。このため、今後、需給ギャップの改善が止まる、あるいは反転するという現実的なリスクが、日銀の慎重姿勢と新たなフォワードガイダンス導入の背景になっている可能性がある。 例えば、消費増税の悪影響が日銀の想定を上回れば、2019年度以降、需給ギャップが悪化し、インフレを押し上げる力もさらに弱まる可能性が出てこよう。今回のフォワードガイダンスには実質的な意味がないとの見方もあるが、以上の諸点を踏まえると、一定の重みをもっているように思われる。 以上の点から判断すると、日銀は2019年10月の消費増税後まで、政策金利(短期及び長期)を現行水準に据え置く可能性が高い。一方、金融仲介機能への悪影響など、現行政策の副作用をより徹底的に検証するため、2020年のいずれかの時点で、金融政策の総括的検証を実施する公算が大きいとみている。 ただ、冒頭でも指摘した通り、それは日銀流の「総括的検証」にとどまり、2013年4月以降の政策運営が本当の意味で「総括」される可能性は低いだろう。 村嶋帰一氏(写真は筆者提供) *村嶋帰一氏は、シティグループ証券調査本部投資戦略部マネジングディレクターで、同社チーフエコノミスト。1988年東京大学教養学部卒。同年野村総合研究所入社。2002年日興ソロモン・スミス・バーニー証券会社(現シティグループ証券)入社。2004年より現職。 *本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。
円高の動き強まる ユーロ円の下げが波及との指摘も=NY為替概況
配信日時 2018年8月4日(土)06:00:00 掲載日時 2018年8月4日(土)06:10:00 きょうのNY為替市場は円高の動きが強まっており、ドル円は111円台前半に下落した。他のユーロ円やポンド円といったクロス円も下落しており、円高圧力がドル円を圧迫しているようだ。中国が米国からの輸入600億ドル相当に最大25%の報復関税を計画していると伝わるなど米中貿易問題の激化が続いていることはもちろんだが、一部からはイタリア財政への懸念からユーロ円が下落し、他の円相場に波及しているとの指摘も出ている。 イタリアのサルビーニ副首相はマスコミとのインタビューで「イタリア国民が我々に投票したのは、暮らしをよくし、適切な年齢で引退でき、低い税金を支払うためだ」と述べている。副首相はEUの財政規律を軽視する構えを示しているが、それに対して、トリア財務相は慎重な姿勢を求めている。 この状況を受け欧州債市場でイタリア国債の売りが膨らんでおり、10年債利回りは一時3%台に上昇していたが、市場ではイタリア国債を多く保有する日本の投資家が同国債を売却するのではとの懸念が高まっている模様。 ドル円は一時111.10円付近まで下落し、21日線を下放れる動きが見られている。このまま110円台に再び下落するようであれば、200日線が控える110円ちょうど付近までの下落も想定される。ドル高の流れはあるものの、ドル円は要警戒の値動きではある。 一方、ユーロドルは1.15ドル台半ばから1.16ドルの間での上下動に終始。この日発表の米雇用統計で非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回ったことからドル売りが優勢となり、ユーロドルは1.16ドル台を回復する場面が見られた。しかし、イタリア財政への懸念もある中、ユーロの上値は依然として重く、ユーロドルは1.16ドル台に入ると上値を抑えられている。 原油高もあってインフレはECBの目標に接近しているものの、第1四半期からの景気回復のペース鈍化が依然として続いている中、「来年夏の間中までの金利据え置く」というECBのコミットに変化を与えるものはない。 米中貿易問題の激化による中国経済の減速が、米国よりもユーロ圏の経済に与える影響のほうが大きいとの見方もある中、ユーロドルは更に下値を探るとの指摘も少なくないようだ。心理的節目の1.15ドルをブレイクするようであれば、1.10ドルに向かって行く可能性も警戒されているようだ。 ポンドドルは1.30ドル台は維持しているものの上値が重い展開。対円でも下落しており、ポンド円は一時144.50円近辺まで下落している。今年、強いサポートとなっている144円の水準をブレイクするか警戒される展開となっている。 前日は英中銀が利上げを実施し、政策委員の投票行動も全会一致となった。利上げに反対する委員が複数いると思われていただけに全会一致はサプライズであったであろう。ただ、英中銀はEU離脱交渉にかなり敏感になっている様子も示唆したことからポンドは売りの反応を見せていた。きょうもカーニー総裁がBBCのインタビューで「合意のないEU離脱の可能性は不快なほど高い」と述べており、ポンド売りを誘っていた。 市場でも早期利上げ期待は一切高まっておらず、年内の利上げ確率は10%台に留まっておりポンドを圧迫している。英経済はユーロ圏と違い回復基調を鮮明にしているが、EU離脱交渉やメイ政権の動向など政治リスクが不透明感を高めている。 minkabu PRESS編集部 野沢卓美
トップニュース2018年8月4日 / 00:32 / 12時間前更新 米雇用統計:識者はこうみる 1 分で読む
[3日 ロイター] - 米労働省が3日発表した7月の雇用統計は、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数が前月比15万7000人増と、市場予想の19万人増を下回った。一方、失業率は低下し、労働市場の引き締まりを示唆した。 識者のコメントは以下の通り。 ●引き続き賃金が上昇力に欠ける <ソシエテ・ジェネラル(ニューヨーク)の米国シニアエコノミスト、オマイア・シャリフ氏> 内容的にはこれまでとほとんど同じ。雇用の伸びは依然、非常に強い。賃金のデータは、失業率の低さを考えるとがっかりだ。賃金の前年比上昇率はなお2.5─2.8%のレンジ内で推移している。とにかくわれわれは賃金(の上昇)が加速するのを待っている。このレンジを抜けることができないようだ。米連邦準備理事会(FRB)の政策方針は変わらず、9月に利上げするだろう。12月の利上げが確実視されているが、個人的にはそれほど確信が持てない。FRBは追加利上げの可否を判断する上で労働市場の状況を注視していると考えられるからだ。 ●貿易摩擦懸念で一部企業が採用見送りか <スパルタン・キャピタル証券(ニューヨーク)の首席市場エコノミスト、ピーター・カーディロ氏> 労働市場の底堅さに変わりはない。今回予想を下回った背景として、季節要因による影響に加え、貿易摩擦を巡る懸念から一部の企業が採用を見送った可能性が考えられる。失業率の低下はもっぱら労働参加率の低迷を物語っている。貿易摩擦を巡る懸念は今後おそらく、雇用統計に影を落としていくだろう。 ●内容は堅調、9月利上げほぼ確実 <サビルス・スタッドリー(ニューヨーク)の首席シニアエコノミスト、ヘイディ・ラーナー氏> 今回の雇用統計は米連邦準備理事会(FRB)の9月に向けた動きを変えるものではない。賃金の伸びは(前年比)2.7%と、今週発表された6月の雇用コスト指数と矛盾しない水準だった。今年3回目となる利上げが9月に実施されるのはほぼ確実だ。 7月の非農業部門雇用者数の増加数は15万7000人にとどまったが、5月と6月分が上方修正されたことで相殺された。失業率は3.9%にやや低下し、労働参加率は横ばいだった。今回の雇用統計は堅調なものだったと考えている。
ビジネス2018年8月3日 / 23:58 / 8時間前更新 米7月雇用15.7万人増、ペース鈍化 労働力不足が影響との声も 3 分で読む [ワシントン 3日 ロイター] - 米労働省が3日発表した7月の雇用統計は、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数が前月比15万7000人増と、市場予想の19万人増を下回った。輸送や公益部門の雇用が減少した。 一方、失業率は低下し、労働市場の引き締まりを示唆した。製造業の雇用は7カ月ぶりの大幅な伸びとなるなど、底堅さも見受けられる。市場では、雇用の伸び鈍化は米中など世界的な貿易摩擦を巡る懸念を反映したものではないとの声も聞かれる。 S&Pグローバル・レーティングス(ニューヨーク)の主任米国エコノミスト、ベス・アン・ボビンゴ氏は「貿易紛争の継続は企業の投資や採用を阻害する恐れもあるが、今回の雇用統計では労働市場への悪影響は見られていない」と述べた。 5月と6月の就業者数は合わせて5万9000人分上方改定された。労働人口の伸びに対応するためには月に12万人増える必要があるとされている。 失業率は0.1%ポイント低下の3.9%となり、市場予想と一致した。失業率は5月に18年ぶりの低水準となる3.8%をつけた後、6月に4.0%へ上昇していた。労働参加率(生産年齢人口に占める働く意志を表明している人の割合)は62.9%と、前月から横ばい。現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は0.3%ポイント低下し7.5%と、2001年3月以来で最低を記録した。 こうした中、賃金は小幅な伸びにとどまった。1時間当たり賃金は平均で前月比0.3%(7セント)上昇。6月は0.1%上昇していた。前年同月比の伸びは2.7%と、前月と同じだった。 7月に雇用の伸びが鈍化した背景には労働力不足が影響している可能性もある。米国の求人件数は約660万件。2日に公表された7月の中小企業楽観度指数(NFIB)では、適切な人材を見つけられなかったと報告した回答が過去最高に上った。採用募集は建設業と製造業、卸売業に集中していた。熟練技術を必要としない職種でも人手が見つかりにくいとの報告があった。 米連邦準備理事会(FRB)が7月に公表した地区連銀景況報告では、高技術を必要とするエンジニアや建設・製造業の専門職、情報技術(IT)専門家、トラック運転手など幅広い職種で労働力が足りていないことが明らかになった。 コンファレンス・ボード(CB)の主任北米エコノミスト、ガド・レバノン氏は「労働市場では、ブルーカラー(現業系)職種の人材が大幅に不足する一方で、ホワイトカラー(事務系)職種の人材不足は小幅にとどまるなど、二極化の動きが見られる」と指摘した。 トランプ米政権は鉄鋼やアルミニウムに輸入関税をかけ、中国やカナダ、メキシコ、欧州連合(EU)など主要な貿易相手国は報復措置をとっている。また、340億ドル分の中国製品に25%の輸入関税をかし、中国は同様の対抗措置をとった。追って1日に米国は、2000億ドル相当の中国製品に対する輸入制限措置について、輸入関税を当初案の10%から25%へ引き上げることを提案した。中国商務省は3日、600億ドル相当の米製品に報復関税を課す方針を表明し、さらなる手段を講じる権利があると米国をけん制した。 エコノミストらは報復関税の応酬によってサプライチェーンに障害が生じ製造業が打撃を受け、米国の力強い経済成長の抑制要因になると警告している。貿易摩擦の高まりで金融市場はすでに乱高下しているが、貿易摩擦への懸念で企業の信頼感が低下し、企業が投資や雇用計画を見送る可能性もある。 SSエコノミクス(ロサンゼルス)の主任エコノミスト、スン・ワン・ソン氏は「金融市場は貿易摩擦の影響を受けている。中国などとの貿易紛争は投資や雇用、賃金の伸びを阻害する恐れがある」と話した。 一方、1兆5000億ドル規模の財政出動の影響で米経済はこうした逆境を乗り越えている。第2・四半期国内総生産(GDP)は年率で4.1%増と、前期から加速した。 FRBは1日、労働市場と経済双方について前向きな見方を示した上で、政策金利を据え置いた。声明で「労働市場は引き続き力を増し、経済活動は好調なペースで伸びている」とした。FRBは6月に今年2度目となる利上げを決めたが、就業者数の伸びが鈍化したことや、賃金の上昇ペースが安定的であることは景気過熱への懸念を抑える可能性があり、FRBは従来の計画通り金融政策を徐々に引き締めるとみられる。 FRBが物価の目安としている個人消費支出(PCE)のコア物価指数は6月に前年同月比で1.9%上昇した。3月にはFRBが目標とする2%を2011年12月以来初めて達した。 雇用統計の内訳は、製造業が3万7000人増。6月は3万3000人増だった。建設業は1万9000人増。6月は1万3000人増加していた。小売業は7100人増。6月の2万0200人減からプラスへ転じた。 教育・医療は2万2000人増と、17年10月以来の小幅な伸びにとどまった。6月は6万9000人増加していた。7月は教育サービスの雇用が1万0800人減少し、全体の抑制要因となった。 輸送業は1300人減。運輸・陸上輸送が1万4800人減少したことが全体を押し下げた。公益事業は3カ月連続で減少。金融・保険は9400人減だった。政府部門は1万3000人減少した。 *内容を追加して再送します。 私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」 ビジネス2018年8月4日 / 06:33 / 6時間前更新 ドル横ばい、雇用統計予想割れでも利上げ見通し変わらず=NY市場 1 分で読む [ニューヨーク 3日 ロイター] - 終盤のニューヨーク外為市場で、ドルは主要通貨に対し横ばい。この日発表された7月の米雇用統計では、伸びが市場予想を下回ったものの労働市場は引き締まった状態で、年内あと2回の米利上げ観測を支援した。 主要6通貨に対するドル指数.DXYはほぼ横ばいの95.148。一時は94.98まで下げた。週間ベースでは0.5%の上昇。 7月雇用統計は、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数が前月比15万7000人増と、市場予想の19万人増を下回った。失業率は0.1%ポイント低下して3.9%となり、労働市場の引き締まりを示唆した。 OANDAのシニア通貨アナリスト、アルフォンソ・エスパルザ氏は雇用統計について「全体的には堅調で、FRBの年内あと2回の利上げを依然サポートしている」と述べた。 貿易摩擦の高まりを受け、ドルは対円JPY=で0.39%下落。 中国は同日、600億ドル相当の米国製品に追加関税を課す報復措置を発表した。液化天然ガス(LNG)や小・中型の航空機など5207品目に対し、5%から25%の税率をかける。 人民元は、この日序盤に付けた対ドルでの15カ月ぶり安値から反発。ドルはオフショア市場の人民元CNH=に対し0.49%安。中国人民銀行(中央銀行)が人民元相場の安定化に向け、市中銀行に義務付ける為替フォワード取引の準備金要件を週明け6日から20%に引き上げると発表した。これにより、人民元ショートはよりコストがかかる。 英ポンドGBP=は0.09%の小幅安。カーニー英中銀総裁は同日、英国が合意のないまま欧州連合(EU)から離脱するリスクは「不快なほどに高い」との認識を示した。 表はロイターデータに基づいています ビジネス2018年8月4日 / 01:52 / 11時間前更新 米6月貿易赤字は7.3%増、1年7カ月ぶりの大幅増加 1 分で読む [ワシントン 3日 ロイター] - 米商務省が3日発表した6月の貿易収支の赤字額は前月比7.3%増の463億4800万ドルと、増加率が2016年11月以来、1年7カ月ぶりの大きさとなった。米農家は4月と5月に大豆を前倒しして輸出したが、6月はこうした輸出押し上げ要因がなくなった。また原油高で輸入額が増えた。市場予想は465億ドルの赤字だった。 5月の赤字額は当初発表の430億5300万ドルから431億8600万ドルに改定された。 米政権は340億ドル相当の中国製品に輸入関税を課し、中国も同様の報復措置を取った。米農家は4月と5月に、中国が7月上旬に米国に対する報復関税を導入する前に大豆を前倒しして輸出した。この結果、貿易赤字が縮小していた。 実質の貿易赤字を示すインフレ調整後の貿易赤字は793億800万ドルだった。5月は754億7100万ドルだった。7月27日に発表された第2・四半期国内総生産(GDP)によると、貿易はGDPを1.06%ポイント押し上げる方向に働いた。第2・四半期GDPは年率で4.1%増だった。 政治的に問題になることが多い対中貿易赤字は、6月は0.9%増の334億8400万ドルだった。 6月はモノとサービスの輸出が0.7%減の2138億900万ドルだった。消費財の輸出は14億3300万ドル減少。医薬品が6億1900万ドル減少したことが押し下げ要因となった。資本財や自動車・同部品の輸出も減少した。 一方、石油輸出は過去最高水準となった。 モノとサービスの輸入は0.6%増の260億1580万ドルだった。消費財と原油の輸入が増えた。石油輸入は、原油高を反映して14年12月以来の高水準となった。輸入原油の平均は1バレル=62.42ドルと、14年12月以来の高水準となった。コンピューターや通信機器の輸入は減った。 私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」 ビジネス2018年8月4日 / 01:52 / 11時間前更新 中国、為替フォワード準備金要件20%に引き上げ 人民元下落阻止へ 1 分で読む [北京 3日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)は3日、人民元相場の安定化に向け、市中銀行に義務付ける為替フォワード取引の準備金要件を週明け6日から20%に引き上げる方針を発表した。 米中貿易摩擦がエスカレートする中、オンショア人民元が対ドルで14カ月ぶり安値を更新していたことが背景にある。 人民銀は昨年9月、元の為替フォワードのポジションを決済する金融機関に適用する所要準備をゼロとし、事実上撤廃していた。 人民銀はウェブサイトに掲載した声明で、今回の決定について、為替相場の安定化に向けたカウンターシクリカル(景気循環)な措置と説明。また資本規制ではなく、価格に基づく差別のない穏健な政策手段と指摘し、マクロ上の金融リスクを回避して金融機関の安定的運営を促進することが目的とした。 発表を受け、オフショア人民元は対ドルで0.8%上昇し、6.8270元を付けた。 オンショア人民元も6.82620元で取引を終了。一時は昨年5月15日以来の安値となる6.8965元を付けていた。 ナティクシスのエコノミスト、ゲリー・ング氏は「人民銀は元が対ドルで心理的な節目とされる7.0元を超えて下落することは望んでいない」と述べた。
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