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日本式老後生活、「定年後も働く」は悲しい人生?
人民網日本語版 2018年07月26日10:05
中国では、ゆとりある老後生活を送ることが伝統的に理想とされている。健康に注意を払いながら家でゆったりと過ごし、たくさんの自由な時間があり、公園に行ってダンスをしたり、海外旅行に出かけたり、孫の世話をしたり、一家団らんを楽しんだりするというのが理想の生活だ。
しかし、中国でも今、高齢化の波が押し寄せ、多くの人が現実的にはそのような理想の生活を送るのは難しいと感じるようになっている。世界保健機関(WHO)は、2050年までに、中国の人口全体の35%が60歳以上の高齢者になると予想している。そうなれば、中国は世界で最も高齢化が深刻な国となる。中国の高齢化は、急速に高齢者が増え、経済的な余裕ができていない間に定年を迎える人が多いという特徴がある。そのため、多くの高齢者が定年後も仕事を探し、大都市では、肉体労働をしている高齢者が至るところで見られる。
中国より先に高齢化社会に突入した日本でも、白髪の高齢者がサービス業などについて、一生懸命働いている姿をよく見かける。求職市場では、高齢者の数が20代の若者より多いというケースさえある。
ぎりぎりの生活をしている中産階級の人々にとって、都市で肉体労働をしている高齢者は、将来の自分の姿となる可能性もある。この高齢化の波を避けて通ることができる人はほとんどいないだろう。
では、定年は一体何を意味しているのだろう?
社会文化:定年後も死ぬまで働く
経済協力開発機構(OECD)が発表している統計によると、16年、日本の65歳以上の高齢者の労働率は約23%で、主要7ヶ国(G7)のうち最高で、米国(19%)をも上回っている。多くの日本人は「死ぬまで働きたい」と思っており、「働いていないと老け込む」と思っている人さえいる。長時間の時間外労働が「過労死」という問題につながっているものの、負担の大きな仕事に文句を言う日本人は依然として少ない。日本の文化は、みんな一生懸命働かなければならないと強調している。
しかし、日本の高齢者が「死ぬまで働く」のは、人材が不足しているからとか、経済的に苦しいからという理由だけではなく、高齢者の生活態度、誰かとつながっていたいという気持ち、孤独死に対する怖さなどとも切っても切れない関係にある。
「一生懸命」という言葉に、日本人の人生に対する価値観全てが詰まっている。東アジアの儒家文化圏において、「勤勉さ」と「自己犠牲の精神」が、人々が追求する人生哲学となっている。日本では、自分は「大変だ」という言葉にはいろんな思いが込められており、大変であればあるほど誇りに感じ、他の人に「勤勉」と言われるのは最高の誉め言葉となる。
そのような生活態度であるため、日本人は働かないという状態を嫌がり、高齢者は「まだ働けるし、働きたい」と思っている。仕事は家族との関係をつなぐかすがいで、生活を続ける灯りとなる。一生懸命働くことが、給料をもらって仕事する高齢者の日常生活であり、それによりプライドと社会における安心感を保っている。
ペースの速い現代社会において、人間関係が希薄になり、多くの高齢者が「孤独死」の危険に瀕している。10年1月31日に放送されたNHKスペシャル「無縁社会 〜無縁死3万2千人の衝撃〜」は、「孤独死」をテーマに、「新たな死」の軌跡を丹念にたどっている。「無縁死」とは、家族や社会とのつながりを失い、誰にも知られずに死に、遺体の引き取り手もない人を指す。統計によると、日本では年間3万2千人が「無縁死」している。
京都大学の研究者によると、日本の多くの世帯は三世代同居中心から核家族中心へとすでに変化し、今では「一人暮らし」の方向へと変化している。このような局面では、文字通り長期間孤立無援の高齢者にとって、「定年後も働く」というのが孤独死を避けるための仕方ない選択となる。
「老後に総崩れ」を避けるためのしっかりとした計画が必要
現在の中国と同様、日本の多くの高齢者も、高まる資産価値や経済の急速な発展による恩恵を受けている。しかし、日本にも経済的に苦しい高齢者がたくさんいる。それは、過去に経済危機に面した際、株価や不動産が大暴落し、破産して一夜のうちに一文無しになる投資家がいたことや、企業が倒産、海外移転したため、技術者が失業し、そのような人が定年になっても生活の保障が得られないというのが主な理由だ。
聖学院大学の藤田孝典客員准教授は著書「下流老人」で、日本に現在推定600-700万人いるとされる下流老人(生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者)の現状、「下流化」が起きる社会的背景、その動向を示している。藤田准教授によると、高齢者が貧困に陥る原因には、▽本人の病気や事故により高額な医療費がかかる▽子どもがワーキングプアや引きこもりで親に寄りかかる▽熟年離婚などのパターンがある。そして、平均的で安定した所得のあるサラリーマン、さらにはホワイトカラーでさえも定年後に下流の生活を強いられ、困窮する恐れがあるという。
そのため、「下流老人」の問題は高齢者だけの問題ではなく、国民全体が関係する切実な問題なのだ。もし、その問題を重視しなければ、親と子の二世代が共倒れになる危険があるほか、高齢者に敬意を示す伝統的な観念、ひいては命を尊重する価値観さえもが崩れ去ってしまう可能性がある。そうなると、主流消費グループの消費意欲が低下することにつながり、社会・経済の発展にも悪影響が及び、少子化が加速する主な原因となってしまう。
日本では今、「自立できないのは恥ずかしいこと」という固定観念を捨て、社会保障の本当の意味や援助を申請するための基本知識を正しく理解し、さらに、自分の財産計画をしっかり立て、開放的な気持ちで積極的に社会活動に参加し、社会活動を通して多くの人とのつながりを作るというのが、定年後の貧しさに対処する効果的な方法であるということを理解できるよう高齢者をサポートする民間・社会組織が増えている。
人生はいつか終わるものであるものの、若くて力がある間に一生懸命働き、退職してから最後まで人並みの生活ができるよう蓄えを作っておく必要がある。(編集KN)
「人民網日本語版」2018年7月26日
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