貿易戦争 米は持久戦へ トランプ氏、好調景気に自信 トランプ政権 貿易摩擦 経済 中国・台湾 北米 2018/7/7 17:28 保存 共有 印刷 その他 【ワシントン=河浪武史】米中両国が6日に互いの製品の輸入関税を引き上げ、二大経済大国は貿易戦争の局面に入った。輸出停滞や物価上昇がダメージとなるが、トランプ米政権は好調な景気に自信を深め、持久戦を覚悟する。米中は貿易不均衡だけでなくハイテク摩擦も抱えており、両国の衝突は泥沼化するリスクもある。 「雇用、雇用、雇用だ!」。米国が中国の知的財産権侵害を制裁するため340億ドルの中国製品に高関税を課した6日、トランプ大統領はツイッターにそう書き込んだ。同日は米雇用統計の発表日。就業者数の伸びは20万人を超え、労働市場の好調さにトランプ氏は自信を深めている。 米中貿易戦争は中国製品の値上がりや米経済への報復措置を招き、全米で13万人強の雇用が失われるとの試算がある。ただ、就業者は2016年秋の大統領選後だけで370万人も増えている。17年末に決めた大型減税によって、米連邦準備理事会(FRB)は「数年は潜在成長率を上回る経済成長が続く」と予測。トランプ政権は貿易戦争になっても当面は雇用や景気の悪化リスクは小さいと算段する。 そのため、米政権は中国との通商問題で持久戦を覚悟する。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は「中国との交渉は1年はかかる」と公言。6日には米企業のサプライチェーン(供給網)への影響を避けるため、追加関税の適用除外を10月まで受け付けると発表した。米農務省も中国に報復関税を掛けられた米農家を保護するため、補助金など損失補填策の検討に入った。 米政権の中国政策も目先の貿易赤字問題から、長期的なハイテク分野の覇権争いへと軸足が移っている。中国は5月の高官協議で、米国産液化天然ガス(LNG)や大豆などを大量購入して貿易黒字を減らす案を提示したが、トランプ氏は拒否。逆にハイテク産業に巨額補助金を投じる「中国製造2025」の撤回を要求した。中国側は「絶対に容認できない」と反発し、妥協点のないまま貿易戦争に入った。 米国は過去にも強硬的な通商政策を発動したが、景気の自滅で方向転換を迫られてきた。ブッシュ(子)政権は02年、鉄鋼に最大30%の関税を課す輸入制限を発動した。ただ、IT(情報技術)バブルの崩壊で景気自体が停滞し、鉄鋼価格も3〜4割上昇。輸入制限で逆に20万人の雇用が失われたとされ、03年に撤回を余儀なくされた。 1971年8月にはニクソン政権が突如として10%の輸入課徴金の導入を表明した。ベトナム戦争で財政赤字と貿易赤字が膨らみ、信用不安に陥ったドルを防衛する必要があったためだ。ただ、「ニクソン・ショック」で世界相場はさらに混乱し、ドルの切り下げと同時に同年12月に輸入課徴金も撤回した。 トランプ政権の持久戦にも限界がある。米経済は減税効果が一巡する19年後半から、景気に下方圧力がかかる。FRBの利上げも景気を冷やす方向に働き、国際通貨基金(IMF)は20年以降に米経済は減速すると予測する。貿易戦争の解決が遅れれば、景気の下振れが鮮明になる中で20年秋の大統領選を迎えることとなり、再選を目指すトランプ氏にとって強い逆風となる。 【第34回】 2018年7月7日 三井住友アセットマネジメント 調査部 貿易摩擦の影響は?日本経済の行方を街角景気から読み解く 日本経済の行方 日本経済の今後の行方とは? 皆さんこんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。 米中貿易摩擦がマスコミを賑わせているなかで日本経済への影響が気になりますが、そもそも日本経済の現在の状況はどうなっているのでしょうか。今週は足元の日本経済にフォーカスしてみます。 貿易摩擦の影響は? 迫る関税引き上げを前にした日本経済の現況 来週の経済指標では、月曜日に発表される予定の「景気ウォッチャー調査」と水曜日の「機械受注」に注目です。 景気ウォッチャー調査は、「街角景気」調査とも言われ、家計、企業、雇用等の動向を敏感に反映する現象を観察できる人々を対象に行われます。それらの人々は、タクシー運転手やコンビニエンスストアの店長などの他、住宅販売会社、メーカー、輸送業、広告代理店等のサービス業の従業員や経営者など幅広い業種にわたっていて、日本の各地域の景気の動きを早めに推測するのに有用な指標と考えられています。 6月8日に発表された5月分のデータを確認しますと、現状判断DIは前月から1.9ポイント低下して47.1となりました。内訳を見ると、雇用関連が小幅に上昇しましたが、小売関連やサービス関連などの家計動向関連がやや大きく低下しました。企業動向関連も低下しました。 先行き判断DIは前月から0.9ポイント低下して49.2となり、景気判断の分岐点とされる50ポイントを再び下回りました。雇用関連は小幅に上昇したものの、家計動向関連、企業動向関連でDIが悪化しました。 これらのデータの低下の要因の主なものは、天候、値上げ、貿易摩擦の3つだと見られます。 5月分の調査では、「寒暖」の差など気温の変化が大きかったことを示す単語が「鈍い」といった単語と結び付けて使われており、天候要因が景況感の重石となったと見られます。このところの景気ウォッチャー調査は、天候の影響を比較的強く受けています。同じような天候からの影響は、1月、2月にも見られ、消費の下押し要因となりました。 また、5月分のデータでは、運送料や原材料、ガソリン価格の高騰など「値上げ」に関する単語の使用頻度は高止まりしており、引き続き景況感を下押ししています。 米国発の貿易摩擦については、先行きの見通しについて通商問題に対する単語の使用頻度が増加しており、トランプ米大統領の通商問題に対する強硬的な姿勢が既に先行きの景況感の重石となっている可能性があります。 7月8日に発表される6月分データについては、市場コンセンサスは現状判断について47.1から48.1に改善するとの予想になっています。これは、天候要因が改善したためと推察されますが、原油高の状況はあまり改善しておらず、また、米国の保護貿易主義的な動きについては6月の方が5月よりもエスカレートしている感があります。果たして、市場予想の通りに改善するかは注意が必要だと思われます。 日本企業の設備投資意欲は高まっているが、 米国発の貿易摩擦の影響は日本にも忍び寄る さて、次に機械受注です。 6月11日に発表された4月分の機械受注は、前月比+10.1%と極めて強く、3月の同▲3.9%や、市場予想の同+2.4%をはるかに上回る数字となっています。この背景は日本企業の設備投資意欲の強さと見られます。 日本企業の設備投資意欲を7月2日発表の6月調査日銀短観で確認します。設備投資計画は、大企業全産業で前年比+13.6%と3月調査の同+2.3%増から大きく上方修正されています。全規模全産業でも同+7.9%と3月調査の同▲0.7%から上方修正されています。 これは、設備不足感が2016年の年末ごろから継続して強まってきていることと、人手不足感も2013年から強まり続けているように、企業にとっては設備の更新や省力化投資のニーズが高まっていることの表れかと見られます。 中でも製造業は前月比+22.7%で、3月の同▲17.5%と比較して大きく改善しました。業種別には、鉄鋼業、一般機械、情報通信機器、自動車からの受注が増加しました。非製造業は、同+0.4%と緩やかな増加傾向が続いています。 11日に発表される5月分のデータは、市場では反動減が現れると見込まれており、前月比で▲5.5%が予想されています。ただし、前年比では先月の+9.6%に続き同+8.4%が見込まれており、近年では高い水準の伸びが期待されています。 なお、機械受注も米国の強硬的な保護貿易政策が続けば、その影響を受けると見られます。前述の通り、5月の景気ウォッチャー調査でもその影響が表れ始めています。さらに、5月に比べて6月には米国の強硬さが強まっている事もあり、先々、企業の設備投資マインドを冷やさないか、注意が必要と見られます。 ちなみに、日本と並んで製品の輸出競争力が高いユーロ圏の企業センチメントサーベイを見ると、今年に入って指数は低下傾向です。景況感の上振れ/下振れの境目は50で、データは依然として50を上回っているため、現時点では欧州経済の失速を懸念するほどではありませんが、データの取りまとめを行っている会社によると保護主義による関税引き上げや貿易面の障壁への懸念が影響したとされています。今のところ日本企業を対象にしたサーベイ調査では、米国発の貿易摩擦の影響はあまり表れていませんが、そろそろ数字となって現れることを警戒するタイミングに差し掛かっているかもしれません。 なお、保護貿易を強硬に打ち出している米国では、自らが他国/地域に対する関税を引き上げる側との考え方があるのか、米国企業の景況感はそれほど悪化していません。基本的に米国の関税引き上げに対しては相手側の報復関税が伴いますし、米国企業も製造工程で中国を経由しているケースは少なくなく、報復関税が無くても部品等の輸入に対して関税が高まるなどの悪影響を受ける可能性があります。早晩、米国企業も一連の関税引き上げの悪影響を受けると見ておいた方がよいでしょう。 (三井住友アセットマネジメント 調査部長 渡辺英茂) https://www.mag2.com/p/money/485931/3 貿易戦争は終幕へ。この秋、トランプの巨大インフラ投資が世界同時株高を引き起こす=藤井まり子 2018年7月5日 ニュース 米中貿易戦争の幕がまもなく閉じます。そしてトランプは「巨大インフラ投資計画」に着手し、米国株式市場は2018年秋頃からイケイケ相場が始まるでしょう。(『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ ? 貞子ちゃんの連れ連れ日記』藤井まり子) ※本記事は有料メルマガ『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ ? 貞子ちゃんの連れ連れ日記』2018年7月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。 全ては中間選挙のため。貿易戦争が終われば、次は大型公共投資へ トランプの目標は意外に低い トランプの保護貿易主義的な過激発言は、中間選挙向けのお芝居である可能性が高いです。 トランプは「志はない人」です。そして、この「志が低い」ということは、決して悪いことではないのです。 トランプにとっての北朝鮮問題の「落としどころ」は、米国人拉致被害者3人を取り戻したことでした。彼の志は低かったのです。 トランプにとっての中国貿易戦争の「落としどころ」は、上海株式市場の弱気相場入りなのではないでしょうか? 彼は有権者に向かってツイッターでこう叫ぶのではないでしょうか。「中国はチョロかった! 俺が懲らしめてやった! 中国株式市場は暴落したぞ!」と。 そして、彼の支持者は大喜びするのではないでしょうか。 まもなく貿易戦争は幕を閉じる 当メルマガの先週号でもお伝えしたように、7月6日には「米中貿易戦争」劇場は幕を閉じるかもしれません。 7月6日は、アメリカが中国輸入製品500億ドルのうちの340億ドルに対して、追加関税を発動する予定の日です。 「本気ではない」トランプと、「徹底抗戦はしない」習近平の間で、意外や意外、7月6日に、穏やかに幕が閉じるかもしれません。 その結果、7月6日を境に、内外の株式市場は上昇に転じ始めるのではないでしょうか。少なくとも、アメリカ株式市場は上昇に転じるのではないでしょうか。 上海株式市場が弱気相場入りしたので、これで「トランプ劇場第三幕」は終了するのではにないでしょうか。トランプ支持者たちは、これで十二分に留飲を下げたことと思います。 7月6日を経過したら、「米中貿易戦争」なんてテロップはほとんど流れなくなるでしょう。 「信念がない」トランプが世界を平和にする トランプは保護貿易主義者ではないんです。信念はないんです。彼は「ただのハト派的な大衆迎合主義者」です。 そして、世界が第三次世界大戦へと向かわないためには、トランプのような「ハト派的なバラマキ主義者の登場」は必要なのです。 北朝鮮強硬派のポンペイ国務長官(←信念の人)が北朝鮮との交渉で「赤っ恥」をかかされたように、生真面目な対中強硬派の経済学者であるピーターナバロ氏(←信念の人)も、対中国との貿易交渉で、「赤っ恥」をかかされるかもしれません。 Next: すべては中間選挙のために動くトランプ。日本円にも矛先が向く すべては中間選挙のため トランプとトランプ政権は、中間選挙をとても意識しているので、支持率と同じくらいに、アメリカの株価をとても意識しています。 だからこそ、トランプは「アメリカの長期金利の上昇」にもとても神経質になっているのです。 アメリカの長期金利の上昇を抑え続けるために、今後は、EUに対しては、「ユーロは安すぎる!」と脅して、「ヨーロッパのNATOの軍事費負担増し」を求めてくることでしょう。 日本に対しては、「円は安すぎる!」と脅して、「追加の財政出動」か「日銀のアメリカドル国債買い支え」を求めてくるのではないでしょうか。 中間選挙後に「巨大なインフラ投資計画」をぶち上げる 私たちは、そろそろ「中間選挙後」のアメリカ経済を眺めて予測しておく必要があります。 皆さん、トランプの「大型インフラ投資」計画を忘れていませんか? 中間選挙が終わったら、アメリカ株式市場は、トランプの「巨大インフラ投資計画(その規模、向こう10年間でおよそ1.5超ドル)」に再び沸騰する可能性があります。 トランプは大衆迎合主義者(ポピュリスト)ですから、これからもバラマキを続けることでしょう。すなわち、「巨大インフラ投資計画」をぶち上げることでしょう。 しかも、「大型インフラ投資」は、アメリカ民主党がかねてより熱心に推進していたものです(もともと、トランプは民主党支持者だったのですが、ひょんなことから共和党から大統領選挙に出てしまったんです)。 中間選挙の結果がどうであれ、この「巨大インフラ投資計画」は実現されるでしょう。 再び、アメリカが世界経済をひっぱり上げる こうなれば、2018年秋以降の内外の株式市場は、「大型減税で沸いた2016年秋から2018年初頭」の再現になります。 しかも、この「巨大インフラ投資計画(その規模及ぼ1.5超ドルと噂されている)」は、FRBの「インフレ放置政策への大転換」とは整合的です。 FRBの「インフレ放置政策への大転換」は、以下のいずれかになるのか、まだわからない状況です。 ・とりあえず「利上げを打ち止めてインフレを放置する」形になるのか ・「物価目標」を「3%インフレ目標」に引き上げる形になるのか ・あるいは、「物価水準目標」という形になるのか 遅かれ早かれ、パウエルFRB議長は、上記のどれかを使って、「インフレ放置政策への大転換」していくことでしょう。 2018年秋から、トランプの「巨大インフラ投資計画」を基盤にして、再びアメリカ一国が世界経済を強力にけん引する可能性があります。 Next: 米国の公共投資は、世界の公共投資。第二次トランプノミクスが訪れる 第二次トランプノミクスがやってくる アメリカの巨大な公共投資は、世界経済にとっても「巨大な公共投資」なのです。 かつて、中国の巨大インフラ投資が世界経済を不況の泥沼から救ったように、2018年の秋からは、アメリカの巨大インフラ投資が世界経済を「ソフトパッチ(景気の足踏み)」から救うことでしょう。 内外のマーケットでは、パウエルFRBの「インフレ放置政策」と相まって、「第一次トランプノミックス:2016年秋から1月までの内外のイケイケの株式市場」のようなものが再現されるかもしれないです。 すなわち、「第二次トランプノミックス:2018年秋から2020年1月まで(?)のイケイケの株式市場」が始まるかもしれないのだ―― (続きはご購読ください。初月無料です<残約3,000文字>) トランプ劇場第三幕「米中貿易戦争」のことは忘れてみよう 「アメリカ一強」で、世界中のマネーがアメリカに集まっている 新興国株式市場 上海株式市場 日本株式市場
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