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将来的には2割減もありうる!「年金カット」に今から備えよ 生涯現役は「前提」になる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56382
2018.07.04 加谷 珪一 現代ビジネス
公的年金は、ほとんどの人にとって老後の生活を支える基本的な収入源である。人生のマネープランの中で、重要な位置を占めているはずだが、人々の関心は意外と薄い。
「公的年金はいずれ破綻する」「日本の年金は大丈夫!」など、制度全体に対する情緒的な議論は活発だが、本当のところ、公的年金の財政状況について正確に理解している人は少ないのではないだろうか。マネーシフト12回目は、公的年金制度について取り上げてみたい。
(この記事は、連載「寿命100年時代のマネーシフト」の第12回です。前回までの連載はこちらから)
年金制度が破綻しないとしても…
日本の公的年金は、自分が現役時代に積み立てたお金を老後に受け取れる制度だと思っている人がいるが、それは違う。
日本の年金制度は賦課方式といって、現役世代が支払った保険料で高齢者世代を扶養するという考え方がベースになっている(年金制度の構築当初は違ったが、場当たり的な制度改正を繰り返した結果として賦課方式になってしまったとの指摘もある)。
子供が親の面倒を見るという家族制度を社会全体に拡大したものであり、給付される年金の原資は、基本的に現役世代が支払った保険料である。このため、社会の高齢化が進み、現役世代の割合が減ってくると制度の維持が難しくなるという特徴がある。
年金をいくらもらえるかは、自分たちが払ってきた金額ではなく、現役世代がどのくらい保険料を納付できるのかにかかっている。もちろん、給付額の算定に際しては、現役時代にいくら保険料を納めたのかについて考慮されるが、制度の仕組みそのものとしては、現役世代の支払い能力に依存しているという点を忘れてはならない。
この仕組みが分かれば、公的年金の破綻に関する議論がナンセンスであることが理解できるはずだ。
一部の識者は「日本の公的年金制度は絶対に破綻しない」と言い切っている。一方で別の識者は「日本の年金は危ない!」と危機感を煽っている。
未来のことについて「絶対」と言い切るのは、知的議論としてかなり乱暴だと思うが、それはともかくとして「制度が破綻しない」という指摘は大筋合っている。なぜなら、現役世代から徴収する分だけしか高齢者に支払わないというのが日本の年金制度である以上、仕組み上、破綻しようがないからである(究極的には給付をやめてしまえばよい)。
だが「日本の年金は危ない」という指摘もあながち間違っていない。制度が破綻しないことと、現役世代から徴収した金額だけで、高齢者がまともな生活ができることはまったくの別問題である。つまり日本の公的年金制度は、制度上、破綻することはないが、高齢化が過度に進めば、実質的に制度が機能しなくなるリスクを抱えているというのが正しい認識である。
公的年金の財政は慢性的な赤字
では、日本の公的年金の財政状況は実際のところどうなっているのだろうか。日本の公的年金は階層構造になっており、全員が加入する国民年金をベースに、企業に務めるサラリーマンが加入する厚生年金が加わる。
企業によっては厚生年金基金など、さらに金額を上乗せする制度を設けているところもあるが、公的年金制度の中核となっているのは国民年金と厚生年金である。
2016年時点において、現役世代から徴収した保険料の総額(国民年金と厚生年金の合算)は約36兆円となっている。これに対して、高齢者に支払った年金総額は51兆だった。
保険料と年金額の差額は15兆円もあり、現役世代から徴収する保険料だけでは到底、年金の支払いをカバーすることはできない。この部分については税金からの補填が行われており、年間、約12兆円が支出されている。
これでも高齢者に支払う年金の全額をカバーすることはできないので、何らかの手当てが必要となる。この役割を期待されているのが積立金の運用である。
これまで公的年金の積立金運用は、安全第一ということで国債が中心だった。だが安倍政権はこれを抜本的にあらため、積立金の多くを株式などのリスク資産にシフトした。この結果、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は大量の日本株を購入し、GPIFは日銀と並んで、多くの日本企業において大株主となった。
今のところ株価は上がっているので、赤字の補填が出来ているが、株式の運用は本質的に市況に左右される。常に運用益が確保できるとは限らないので、財政当局は運用益に頼らずに収支を均衡させたいと考えている。今後、年金の給付額が減るのではないかとの懸念はここから来ている。
そろそろ年金給付の抑制が現実味を帯びてきた
年金の給付を抑制しようという動きは、実は政府内で着々と進められている。年金を抑制する仕組みの中核となっているのが2004年に導入されたマクロ経済スライド制である。マクロ経済スライド制と聞くと、経済状況に応じて年金額を調整するためのものというイメージを持ってしまうが、実際は異なる。
ごく簡単に説明すると、人口動態の変化に合わせて、年金の給付を抑制するための制度である。つまり現役世代の比率が下がった分だけ、高齢者の年金を減らすということである。
ただ、この制度を導入して以後、日本経済はずっと低空飛行を続けてきた。年金給付を引き下げてしまうと高齢者の生活を直撃するので、マクロ経済スライド制はこれまで1度しか発動されていない。だが、年金財政が逼迫していることから、そろそろ制度の再発動が行われるとの見方が強まっている。
もっともマクロ経済スライド制の発動は段階的に行われるので、急に年金額が大きく減るということはないだろう。しかしながら、筆者が大雑把に試算したところでは、今と同じ経済状態が続くと仮定した場合、2040年の段階でも年金財政には2割ほどの赤字が生じてしまう(積立金の運用益を除く)。
今後、日本の人口は急激に減ってくるので、高齢者への年金給付総額も減少するが、現役世代はさらに人口が減ってくるので(つまり高齢化はさらに進展するので)、年金財政は好転しないのだ。
したがって今後は、この差額を埋めるため、2割程度を目安に年金の減額が段階的に進んでいくと考えた方がよい。仮に日本経済が驚異的に成長し、保険料収入が大幅に増えれば、ここまでの減額は必要ないかもしれないが、そうなったらラッキーというくらいにとどめておくべきだろう。
これからは生涯労働が当たり前に
政府は同時に、年金の支給開始年齢引き上げについても検討している。4月に行われた財政制度等審議会では、年金の支給開始年齢を現在の65歳から68歳に引き上げるプランが議論された。政府は表立っては口にしていないが、定年後はリタイヤするという従来の考え方をあらため、生涯労働を前提とした社会保障制度へのシフトを目論んでいる。
支給開始年齢の引き上げが実施された場合には、一生涯に受け取る年金額が減らないよう増額措置を行うとしているが、先ほど説明したマクロ経済スライド制による年金減額が発動された場合には、結果として増額分は相殺されてしまうだろう。
現状の年金財政について総合的に判断すると、支給開始年齢の引き上げや、年金給付の減額は避けて通れないと考えるべきである。足りない分については、定年後も仕事を続けるか、現役時代に蓄積した資産を運用することで副収入を得る必要が出てくる。
現役世代の負担については、現行制度では上限一杯となっているので、当面、保険料の引き上げは実施されない。だが現役世代の負担増についても検討が行われる可能性は十分にあり、その場合には、保険料が再度、引き上げられることになる。
確率は低いが、景気低迷がさらに深刻になったり、金利が上昇して緊縮財政を余儀なくされた場合には、話は根本的に変わってくる。国庫負担が維持できないとなれば、さらなる給付の引き下げもあり得るだろう。
日本の公的年金は制度的に破綻することはないが、状況が厳しくなっていることだけは間違いない。よほど資金に余裕のある人を除いては、これからは生涯労働を前提に人生設計を行うのが標準的になると筆者は考えている。
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