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着るだけで疲労回復できるウェアがバカ売れ、世界が認めた日本発の特殊素材とは
https://diamond.jp/articles/-/173589#
2018.6.29 吉村克己:ルポライター ダイヤモンド・オンライン
寝るときに着るだけで疲れが解消
海外でも人気のリカバリーウェア
着て寝るだけで疲労回復効果が抜群という「リカバリーウェア」
身に着けるだけで疲労回復を促進してくれるという不思議なウェアがいま売れている。2009年に発売して以来、累計60万着を販売し、開発したベネクスの2017年度の売上げは対前年比で30%増の9億円に達した。
このウェアを開発し、ベネクスを創業した社長の中村太一(37歳)は、疲労を回復するという意味で「リカバリーウェア」と名付けた。
発売当初は、ハードなトレーニングで身体休養に神経を使うスポーツ選手など、アスリートの間で評判になり、口コミで広がったが、その後「寝るときに着るだけで寝付きがよくなった」「安眠できるようになった」「寝覚めが気持ちいい」など、その効果が認められて一般の消費者も買うようになった。
ユーザは男女半々で、40〜50代がメインだ。疲れがなかなか取れないと感じる世代が多い。
2015年からはドイツを中心に販売を開始、現地生産も始まっている。2017年11月末にはドイツのマンハイム中心部の新しい商業施設内に欧州1号店となる直営店を開業、20種以上の商品を生産、販売する。
店内ではフィジオセラピスト(理学療法士)による施術サービスも提供し、リカバリーウェアだけでなく、疲労回復サービスの定着を図る狙いだ。店舗を含むドイツでの年間売上げは約5000万円を目指す。
ドイツ水泳協会とのオフィシャルパートナー契約も結んでおり、国際大会に出場するドイツ代表選手に提供している。同協会のオフィシャルパートナーで日本メーカーはベネクスのみというのだから、その信頼の厚さがわかるだろう。契約期間は2020年末までなので、東京オリンピックでも水泳のドイツ代表選手団がリカバリーウェアを身に着けている姿を見ることができるはずだ。
またアジアにも進出しており、2016年4月には韓国で直営店を開店(現在は閉店)、同年12月には台湾のそごう百貨店内に直営店を出した。実は、『疲れとり首ウォーマー』という商品を付録にした書籍を発行し、シリーズ累計で150万部を突破するベストセラーになっているが、この台湾語版を2016年1月に発行し、初版1万部で順調に売れている。大手書店では年間で売れ行き9位にランクインしたほどだ。
その影響で、台湾ではスムーズにリカバリーウェアが受け入れられた。付録にしたのは「ネックウォーマー」という頭からスッポリ被って首や肩のケアに使用するものだ。
2017年10月には、中国上海の日系デパート内に出店。日本より2倍弱の値段にもかかわらず、お客が集まっているという。ちなみに、日本でよく売れているウェア(スタンダードドライ)は税込みで1万6000〜8000円ほどである。
まだ海外売上高比率は全体の3%程度と入り口に立ったばかりだが、中村は「日本発のリカバリー産業を世界に広げたい」と抱負を語る。
Tシャツ、パンツ、アクセまで
秘密は副交感神経を刺激する特殊素材
ベネクスの中村太一社長
リカバリーウェアのラインナップは、Tシャッツ、ルームウェア、パンツ、タイツなどのウェア類に加えて、腕や足、腹、首回り専用のものや、アイマスクなどアクセサリー商品も充実している。
以前はデパートのスポーツ売り場やスポーツ店などを中心に販売していたが、最近ではドラッグストアでもアクセサリー商品の販売を始め、取扱店は1000店舗に増えた。
本当に疲労回復効果があるのかと疑問に思う読者もいるだろうが、すでに大学との実証実験で効果が確認されている。中村自身もエビデンス(科学的根拠)を重視し、現在、国内外の16大学・研究機関と共同研究を行い、科学的な証明を行ってきた。ドイツのボーフム大学との研究成果は、2016年7月に世界最大のスポーツサイエンス学会で発表され、運動後のリカバリーウェア着用による睡眠効果が向上することが明らかにされた。
2016年には筑波大学と共同で実証実験を実施、日頃から激しいトレーニングを行っている同大の運動部員に2週間、リカバリーウェアを就寝時に着用してもらったところ、唾液中のストレス物質が減少、気分障害の数値が抑制されてコンディションが向上する結果が示された。
これによって、関西地域の産学官医がつくる健康科学ビジネス推進機構に科学的根拠があると認められ、同機構の発行する「エビデンス評価マーク」を使用できることになった。
ベネクスによるユーザ調査でも、80%以上が就寝時に着用し、95%が「ぐっすり眠れた」「寝付きが早い」「疲れが取れる」「むくみやこりがなくなった」「寝起きがいい」と評価している。
アイマスクとネックウォーマーも。商品ラインナップは豊富
それでは、リカバリーウェアはどのような原理で疲労回復を促進させるのだろうか。
このウェアは、中村が中心となって専門家達の協力を得ながら世界で始めて開発した「PHT(プラチナ・ハーモナイズド・テクノロジー)」と命名された特殊素材の繊維が使用されている。PHTは、ナノレベルサイズまで粉体化したプラチナなどの鉱物をポリエステル樹脂に配合し、繊維化したものだ。
このPHTから発する微弱な電磁波が副交感神経を刺激することで、血流を改善、疲労物質や老廃物の排出を促し、疲労回復や睡眠の改善をもたらす。鉱物が繊維自体に練り込まれているため、洗濯などで抜け落ちることはなく、効果は半永久的だ。
人間の自律神経は、交感神経と副交感神経から成る。前者は緊張や興奮時に優位となり、後者はリラックス時に働く。PHTはこの副交感神経を刺激する効果を持つことが実験で実証された。リカバリーウェア着用後、わずか数分で副交感神経の働きが平均で2倍向上した。白血球中の免疫細胞も増加し、肉体疲労、筋肉疲労、精神疲労の回復効果が確認されている。
腕試しで応募したドイツの展示会
商品コンテストでまさかの最高賞受賞
中村の父は繊維製品の卸売業を営んでいたが、直接それがPHTの開発に関係したわけではない。また、中村自身も慶應義塾大学商学部の出身で、技術に強いわけでもなかった。
ただ、いつかは起業をしたいと考え、その勉強も兼ねて卒業後、経営コンサルティング会社に就職した。そこで介護ビジネスに出合い、有料老人ホームの運営や介護の現場を経験した。
「夜勤をしていて、重度の寝たきり高齢者の床ずれが問題だと知りました。ただ、それをケアする人手が足りない。そこで、床ずれを防止する製品の開発に取り組むことにしたのです」と、中村は語る。
2005年にコンサル会社から独立、ベネクスを設立した。父の会社の一室を借りてオフィスとしたが、父の会社の社員2人が興味を持って参加し、いまも幹部として活躍している。しかし、父の体調悪化などもあって、その会社が倒産寸前になり、中村は人員整理などに追われて、しばらくはベネクスどころではなかった。
その間、参加してくれた2人の社員による介護や美容機器関連の販売で糊口をしのぎ、中村は床ずれ防止製品の開発に没頭した。
ゼロから猛勉強する中でわかったのは、副交感神経を刺激して血流を改善すれば、床ずれの防止に役立つということだった。さらに調べると、ある種の鉱物が発する電磁波が副交感神経を刺激することを知った。それならば、その微粒子を繊維に混ぜ込んでベッドマットをつくればいいのではないかと考えた。
介護用品としては鳴かず飛ばず
発想を変えてみたところ……
ドイツ店舗の様子。海外展開も進む
だが、全くの門外漢なので、関連会社を訪ねても30社ほどに連続して断られた。その中で、ナノ素材を開発する小さな会社に出会い、中村のアイデアに社長も研究者も興味を持ってくれた。そこからが苦労の連続で、金属粒子を繊維に練り込むまでに試行錯誤を繰り返した。
繊維はようやくできたが、今度はそれを織るときに普通の織機では針が折れてしまう。色々な繊維工場に頼み込み、古い織機を使っていた工場に巡り会って、ようやく2007年にPHTの生地が完成した。
「第1号のベッドマットが届いたときにはバラ色の未来を予想したのですが、1年間どんなに必死でも売っても受注はゼロでした」
10万円という値の高さがネックとなって売れずに、会社の借金はついに1億円に膨れ上がった。倒産寸前となり、中村は窮余の一策で、いつも疲れているヘルパーや介護スタッフ向けのウェアをつくった。
これが展示会で、意図していなかった大手スポーツジムのバイヤーの目に留まり、会員向けに販売したところ大ヒットとなった。2010年に「リカバリーウェア」として発売すると、新宿伊勢丹のバイヤーが採用してくれたことをきっかけに、全国展開できるようになった。
当初から日本発のリカバリー産業を創りたいと思っていた中村は、2013年にドイツで開催された世界最大のスポーツ用品の展示会「ISPO」の商品コンテストに、腕試しのつもりで応募してみた。実は、翌年には出展したいと考え、その視察のつもりで行くことにしたのだ。
すると驚いたことに、開催1週間前、大会本部から連絡があり、日本企業としての初の最高賞である金賞(アジアプロダクツ部門)を獲得したことがわかった。リカバリーウェアは「革命的なスポーツギア(衣服)」と評価されたのだ。
「当たり前の服」になるまで
根気よく普及させる
これを機にドイツのパートナーと出会い、現地法人を設立して、2015年から試験的に販売を開始し、手応えを得た。
「当初は日本と同じ規格で売りたかったのですが、やはり現地に合わせる必要があり、デザインも生地も変えました。日本と違ってしなやかでつるりとした肌触りが好まれ、デザインも大人っぽいシックなものにしました」と中村は語る。
また、日本との仕事に対する考え方の違いにも当初は苦労した。ドイツ流のやり方や商習慣に合わせなければならないし、生産もマイスターがこだわって取り組んでくれたものの、労働者達はバケーションになると平気で休んでしまうので、予定通りに生産できなかった。
「あと、ドイツ人は疑り深いというか、権威を大切にするので、フィジオセラピストなど専門家からまず、認知してもらう頂上作戦に切り替えました。リカバリーウェアがスーツやパジャマと同じように当たり前の衣服になるまで普及させたいと思っています」
中村の挑戦は始まったばかりだ。
(本文中敬称略)
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