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ビットコイン価格の「暴騰」がもはや起きない理由
https://diamond.jp/articles/-/173463
2018.6.28 野口悠紀雄:早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 ダイヤモンド・オンライン
写真はイメージです
ビットコインの価格は、昨年12月のピークの3分の1程度にまで下がった。先物市場が発する情報を分析すると、ビットコインが昨年のように暴騰することはもうないだろうと考えられる。
値下がりによって送金手数料が下がり、銀行の預金振替と競合し得るレベルに戻った。これは歓迎すべきことだ。
先物市場の導入が、
下落を引き起こした
ビットコイン価格の推移を見てみよう。
2017年を通じて上昇を続けた。とくに11月以降は急激な上昇を示し、12月16日に1ビットコインあたり1万9499ドルの最高値をつけた。
しかしその後、下落し、現在は6000ドル程度であり、ピーク時の約3分の1にまで下落した。
11月頃の急激な価格上昇の背後には、「分岐すると、新しい通貨をタダでもらえる」という期待があったと考えられる。
◆図表1:ビットコインスポット価格の推移
しかし、本コラム17年11月2日付け「ビットコインに『欠陥商品』の恐れ、異常な値上がりは不健全だ」や、17年11月9日付け「分裂直前のビットコインは18世紀英国の『南海バブル』そっくりだ」で書いたように、これは誤解である。
したがって、価格上昇はバブルとしか言いようがないものだった。
それまで上昇していた価格が12月末以降、下落に転じたのは、CBOE(シカゴオプション取引所)とCME(シカゴ商品取引所)で先物取引が始まり、弱気の見通しが市場に反映できるようになったためだと考えられる。
これについては、18年1月11日付け「ビットコイン価格が急落した原因は先物取引の開始だ」で書いた。
したがっていまの状況は、昨年12月までのバブル的な価格が、正常な状況に戻っていると解釈することができる。
なお、「先物市場の導入が下落をもたらした」という見方は、サンフランシスコ連銀のレポートでも示されている。
5月のEconomic Letterの中で、「楽観的な見方で価格が高騰した後、空売りができるように市場が整備され、それによってバブルが崩壊して価格が下落するというメカニズムだ。こうしたケースは、別に珍しいことではない」としている。
今年の2月の段階で、先物の売り残高は買い残高を超えていた。この情報をもとに、本コラム2018年2月8日付け「先物市場は、ビットコイン投資に警告を発している」で、「今後は、価格下落の可能性が高いと」書いた。
実際に、そのとおりになった。
先物がスポット価格より低いので、
確実な資産価値はない
先物市場は、現在もビットコイン価格の今後について重要な情報を発している。
それらの情報から判断すると、今後、ビットコイン価格が昨年のような高騰を示すことは、おそらくないだろう。
そのように考えられる理由を、以下に述べよう。
先物市場から得られる情報の第一は、スポット価格と先物価格の関係である。
これらの関係は、図表2に示すとおりだ(ここに示すのは、CBOEとCME1ヵ月先物)。
◆図表2:ビットコイン価格の推移(スポットと先物)
やや分かりにくいが、価格はほぼ同じように下落している。
詳しく見ると、概してCBOEは高めでCMEは低めだが、先物価格がスポット価格よりも低い場合が多いことが分かる。
少なくとも、先物が傾向的に高いわけでない。
とくに6月上旬以降は、スポットのほうが高い場合が多い。
また、先物がスポット価格より高い場合も、金利を考えると、先物価格は必ずしも十分に高い訳ではない。
この点について、より詳しく言うと、つぎのとおりだ。
ビットコインを現物で保有して先物で売れば、利回りが確実な資産を持つことになる。これが他の安産資産より有利な資産であるためには、先物価格が、スポットより金利分だけ高くなっていることが必要だ。
現在のアメリカ財務省証券の利回り(年率)は3ヵ月で1.90%、6ヵ月で2.09%である。現在のビットコイン先物がこの基準をクリアしているかどうか疑問である。
仮に先物価格が高ければ、現物を所有し、それを先物で売っておくことによって、利益が確定できる。これは確実な利益である。したがって安全資産としての価値があることになる。
本コラム2017年12月21日付け「ビットコイン先物取引が始まったことの重要な意味」や、2018年2月8日付け「先物市場は、ビットコイン投資に警告を発している」で書いたように、発足直後にはそのような状況だった。
その後も、1月頃までは、先物価格(とくにCBOE)がかなり高い値をつけていた。
スポット価格と先物価格の関係は、そのときに比べて、かなり変化したということができる。
先物価格のほうがスポット価格より低いということは、安全資産としての価値はないことを意味する。
ビットコインは、「デジタルゴールド」ではあり得ないのだ。
将来価格の下落を予想する
投資家のほうが多い
ビットコインの価格が下がると予測する人は、先物売り注文を出すだろう。
現在、空売りしておいて、将来、それより安いスポット価格で買い戻せば、利益を得ることができるからだ。
一方、ビットコインの価格が上がると予測する人は、先物買い注文を出すだろう。将来のスポット価格がそれより高くなれば、安く買ったものを高く売ることで利益を得ることができるからである。
どちらの予測が多いかは、先物売りと買いの残高を見ることによって分かる。
実際のデータを見ると図表3のとおりであり、明らかに売りの残高が多くなっている。つまり、ビットコイン価格の下落を予測している人のほうが多いということになる。
◆図表3:先物取引の売り買い残(2018年1〜6月)
「先物市場は、ビットコイン投資に警告を発している」で書いたように、今年の2月の段階で、すでに先物の売り残高は買い残高を超えていた。
この状態が今でも続いているわけだ。差が拡大しているわけではないが、全体としてのボリュームが増えている。
価格下落は望ましいことだ
送金手数料が下がる
以上で述べたことは、ビットコインの人気が落ちたことを意味するであろうか?
そうではない。
むしろ逆であって、送金の手段という見地からすると、ビットコインが使いやすくなっていることを意味する。
銀行の振込手数料との関係で、これを確かめておこう。
三菱UFJ銀行の場合、他行宛ては、3万円以上の送金で432円だ。
他方、仮想通貨取引所のビットフライヤーの場合、ビットコインを送る手数料は0.0004BTCである(BTCはビットコインの単位)。
0.0004BTCが432円になるビットコイン価格は、108万円だ。今は70万円程度だから、銀行より送金手数料は安くなった。これは歓迎すべきことだ。
送金手段として正当化されるためには、もっと価格が下がる必要がある。
三菱UFJ銀行の場合、3万円未満の送金では270円である。ビットコインの手数料がこれと等しくなるには、ビットコイン価格が67万5000円になる必要がある。現在よりもう少し下がれば、この水準になる。
こうした基準から見れば、ビットコインの価格は正常な水準に戻ってきていると考えることができる。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
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