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民泊が大混乱!自民党と観光庁が招いたお粗末な「人災」の内情
https://diamond.jp/articles/-/173017
2018.6.22 岸 博幸:慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 ダイヤモンド・オンライン
民泊新法に伴い、日本での民泊ビジネスは大混乱に陥った。浮かび上がってくるのは、民泊仲介サイトではなく政治家と役人の責任だ(写真はイメージです) Photo:DOL
民泊を巡る2つの大混乱
本当に仲介サイトの責任か
前回の連載記事で、政府は成長戦略で第4次産業革命を強調するわりにはシェアリングエコノミーの普及に及び腰であることを、カーシェアリングを例に指摘しました。図らずもこの数週間の民泊を巡る騒ぎから、及び腰どころか政治と行政がともにその足を引っ張り合っていることまでが、明らかになってしまいました。
多くのメディアで報道されているように、6月に入ってから日本での民泊ビジネスは大混乱となりました。混乱の原因としては2つの事象があります。それぞれについて経緯を簡単に振り返ってみましょう。
1つ目は、民泊仲介サイトの物件リストからの違法な民泊施設の削除です。民泊のルールを定めるべく新たに制定された民泊新法(住宅宿泊事業法)の施行日が6月15日だったので、観光庁は民泊仲介サイトに対して、法に基づく届出を行なっていない物件(=違法物件)を物件リストから削除して紹介しないよう求めてきました。
これを受け、たとえば民泊仲介サイト最大手のエアビーアンドビー(Airbnb)は6月に入り、今春6万2000件あった掲載物件のうち4万件以上の表示を止めました。
2つ目は、新法の施行日より前にすでに成立していた予約の扱いです。観光庁は6月1日付の課長名の通知で民泊仲介サイトに対し、6月15日以前の段階で違法物件を対象に成立した宿泊予約について、以下のことを求めて来ました。
・6月15日以降に宿泊する予約については、予約の取り消しか合法物件への予約変更を行うこと。
・6月15日以前に宿泊する予約についても、対象の違法物件が法に基づく届出を行う予定がない場合は、違法物件の所有者に対して予約の取り消しか合法物件への予約の変更を推奨すること。
この通達を受け、たとえばエアビーアンドビーは6月7日に違法物件への6月15日〜19日分の予約をキャンセルし、6月19日分以降の予約も10日前に自動でキャンセルとなるようにしました。ちなみに、エアビーアンドビーが6月7日以前の段階ですでに受け付けていた予約は6月15〜30日分だけで4万件あり、そのうち3万件超の予約がキャンセルとなる恐れがあるそうです。
以上のように経緯をかいつまんで書くと、民泊新法の施行が近づいたにもかかわらず、違法物件の数が物件リストでも予約数でも多かったので、混乱が起きたのだろうと考えられがちです。しかしその背景には、政府と政治の重大な瑕疵が存在することを見逃してはいけません。
多くのメディアが見逃していますが、今回の民泊を巡る混乱の本質を理解するには、2つの大事なポイントを忘れてはいけないと思います。
1つは、民泊新法は昨年6月に成立しており、その段階で法律の施行日も決まっていたことです。つまり、法律の施行まで1年もの時間の猶予があったのだから、明らかに混乱するであろう施行日直前よりもっと早い段階で対応できなかったのか、ということです。
もう1つは、法律の世界の常識として、法律の効力が施行日より前に遡及するようなことは、本来あり得ないということです。つまり、6月15日より前の段階で成立した違法施設への宿泊予約は、宿泊する日が施行日以降であろうとも、本来は問題ないはずなのです。
混乱の責任は観光庁と自民党に
法律的に見ても明らかにおかしい
これらの点を踏まえて裏事情を探ってみると、何が問題であったかがよくわかります。
まず第一の事象である、民泊仲介サイトの物件リストから違法施設を削除することについては、観光庁も民泊仲介サイトに対して、新法の施行が迫った直前ではなく、早い段階から求めていたようです。とすれば、民泊仲介サイトの側の対応が遅かったのが問題と言えなくもありません。
ただ、法律に基づく届け出を行なうのかどうか、またいつ行なうのかは宿泊施設側の判断なので、施行前の段階でどの施設が違法施設の予備軍かを民泊仲介サイトが見抜けるはずありません。そう考えると、第一の事象にまつわる混乱は、ある程度は止むを得ないものだったと言うことができます。
これに対して、第二の事象は明らかに問題と言わざるを得ません。この点は大事なので、詳しく書いておきましょう。
まず永田町の関係者によると、どうやら観光庁の側はもともと、新法の施行日の前に成立した違法施設への宿泊予約は止むを得ないものと考え、その取り消しまでは民泊仲介サイトに求めていなかったようです。これは「法律の効力は施行日前に遡求しない」という常識からは、当然と言える正しい判断です。それもあり、エアビーアンドビーなどの民泊仲介サイトの側も、成立した予約まで取り消す考えはなかったようです。
ところが、その観光庁が5月下旬になって態度を豹変させ、民泊仲介サイトに対して違法施設への予約の取り消しや、合法物件への予約の変更を求め出しました。それが6月1日付けの課長通知として公になったと言えます。
それでは、なぜ観光庁は突如として、法律の効力を施行日前に遡って適用するような無理筋の要求を、民泊仲介サイトに求めるようになったのでしょうか。
その背景を探ると、5月16日に自民党で開催された観光立国調査会で、自民党議員から違法民泊を取り締まるよう強く要求されたことが、大きく影響しているようです。与党議員に叱責されてビビってしまい、国会で追及されるのを避けたいと考えた観光庁の役人たちが、無茶なことを民泊新法の施行日の直前という最悪のタイミングでやったのです。
日本はこのままでは
シェアリングエコノミー後進国に
以上の話からわかる通り、今回の民泊を巡る大混乱は、民泊仲介サイト側の対応の遅れが原因ではありません。むしろ、自民党の政治家と観光庁の役人が引き起こした、法律の常識(法律の効力は施行日前に遡求しない)と政策の常識(法律の施行日前は混乱するのが当たり前なので、必要な手は早めに打つ)を無視した、稚拙な人災と言っても過言ではないのです。
ついでに言えば、民泊新法自体も、民泊施設の宿泊日数の上限は止むを得ないとしても、煩雑でわかりにくい手続きを求め、かつ地方自治体による上乗せ規制を認めているなど、シェアリングエコノミーの主要分野である民泊を普及させる観点からは、出来の悪い法律となっています。
だからこそ、民泊新法に基づく届出件数は6月8日の段階で3000件と、今春の段階で6万2000件あったエアビーアンドビーの掲載数とは比較にならない少なさに留まっています。
こうした事実を踏まえると、日本ではライドシェアはもちろん民泊の本格的な普及も期待薄であり、シェアリングエコノミーの後進国となるのは確実と結論づけざるを得ません。日本における政治と行政のレベルの低下は、いよいよヤバい状況になってきたのではないでしょうか。
(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 岸 博幸)
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