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それでも日本人が「1ドル=100円割れ」の円高を警戒すべき理由 「円安世論」が見逃していること…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56156
2018.06.19 唐鎌 大輔 みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 現代ビジネス
いまマーケットでは円安機運が高まっている。6月13日からの週にFOMC(米連邦公開市場委員会)が利上げを決めた一方、日本銀行がマイナス金利を維持したことで、日米金利差の拡大から「円売り・ドル買い」を加速するとの思惑が広がっているからだ。
市場では1ドル=120円に向けて動き出すと威勢のいい声も聞こえてくるが、鵜呑みにするのは危ない。じつはこの「円安世論」が、ある重大な問題点を見逃していることをご存じだろうか。
みずほ銀行国際為替部チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏が緊急寄稿で警鐘を鳴らす。
「良い金利上昇」か、「悪い金利上昇」か
4月以降、金融市場では米10年金利の上昇が大きなテーマとなった。
5月には安定的に3%の大台で推移するようになり、ドル/円相場もこれに追随する地合いが見られた。本稿執筆時点でも1ドル=110円台を何とか維持している。もちろん、米金利上昇が好調な米国経済に裏付けられているのは事実なのであろうし、その点で言えば円安にも違和感はないかもしれない。
だが一方、見逃せない2つの現象も気にしたい。1つが米国のイールドカーブ(利回り曲線)のフラット化、もう1つが米国のインフレ期待の低迷である。
現下の金利上昇はそれが「良い金利上昇」なのか「悪い金利上昇」なのかということが争点になりがちだが、これら2つの現象を見る限り、筆者は「悪い金利上昇」の疑いが捨てきれないと考えている。
今後のドル/円相場見通しを検討する上では、こうした米国の金利・物価情勢やこれと大きく関連するFRBの金融政策の現状や展望が要諦になるので、今回の本欄ではこの論点を掘り下げてみたい。
イールドカーブに異変
まず、イールドカーブのフラット化。
6月12〜13日に開催されたFOMCはFF金利の誘導目標を25bps引き上げて、1.75〜2.00%とすることを全会一致で決定した。
いよいよ2%台となった政策金利であり、そろそろ「低金利」と言うのも難しい水準に入りつつある。2015年12月から数えて計7回の利上げを敢行しているFRB(米連邦準備理事会)の政策運営は好調そのものにも見えるが、利上げに応じてイールドカーブが浮揚する結果にはなっていないのだ。
むしろ景気減速のサインが…
周知の通り、通常、長期金利は短期金利を上回るのでイールドカーブは右上がりの曲線となる。
しかし、今次利上げ局面で米国のイールドカーブは着実に長期金利と短期金利の差が縮小しており、曲線が平ら(フラット)になってきている(以下、図)。
要するに、利上げを経ても「短期金利は上がったけれども長期金利はさほど上がっていない」という現実がある。教科書的にはカーブのフラット化は将来の景気減速ないし後退を示唆するとされ、特に長短金利差が逆転する逆イールド化は不況のサインとして極めて有力と考えられている。
未曾有の金融緩和を解除している過程だけに必ずしもそうした経験則が当てはまらないとの議論もある。そうかもしれない。イエレン前議長もそのような趣旨の主張をしていた。
だが、少なくとも米国経済がこれから過熱していくと思っている市場参加者が多ければ、フラット化や逆イールド化を心配するようなカーブの形状にはなるまい。フラット化それだけをもって不安を煽るのは不適切だが、米景気がこれから加速していくという想定もかなり無理がある。
6月のFOMC声明文やその後のパウエル議長会見でも、政策金利であるFF金利が「利上げの終点」と目される中立金利に接近している疑いが示唆された。これは、非常に分かりやすく言えば、これまで「正常化」と言われていた利上げが、はっきりと「引き締め」の意味合いを持ってくるようになるポイントが近づいているということだ。
イールドカーブのフラット化は、こうした状況を受けて企業・家計の消費・投資意欲が弱ってくる未来に構えたものと考えられる。
インフレ期待は頭打ち
次に、名目金利が上昇するかたわらでインフレ期待が頭打ちとなっている事実も見逃せない(以下、図)。
これは来るべき物価上昇やこれと平仄の合う「利上げの終点」に対して期待が盛り上がっていないことを意味している。少なくともこうした穏当なインフレ期待の下でイールドカーブが右上がりの形状を取り戻してくるとは考えにくく、上で説明したフラット化傾向に大きな変化が起こることはなさそうである。年初から原油価格が上昇してもインフレ期待が横這いであったことも印象的だ。
実際、米国の平均時給は堅調であれども加速する兆候はない。
確かに米雇用統計も非農業部門雇用者数という「量」は前月比で増勢を維持しているが、それでも限界的に積み上げられる「量」はいつか失速する。すでに年間で見れば、2014年の前年比+301万人をピークとして2015年は同+271万人、2016年は同+234万人、2017年は同+219万人と水準は確実に切り下がっている。
「量」が尽きる前に「質」である賃金に点火するかが注目されるわけだが、現状ではその兆候はまだない。こうした状況だからこそ、インフレ期待が高まるには至っていないのだろう。
以上に見るようなイールドカーブやインフレ期待の現状から察するに、金融市場は足許の米金利上昇の要因を労働市場のひっ迫に応じた賃金インフレやこれに応じた一般物価の上昇といった「安定的かつ良性の動き」に求めていないように思われる。
考えられるとすれば、前年比で見た原油価格上昇や米債増発懸念など「一時的かつ悪性の動き」にその原因を求めているのではないか。それはやはり「良い金利上昇」ではなく「悪い金利上昇」である。
かかる認識の下、どのような円相場見通しを持つべきか。
「円安期待論」の最大の問題点
巷で円安・ドル高を見通している向きの多くは「@FRBが利上げする→A米金利が上がる→B日米金利差が拡大する→C円売り・ドル買いが活発化」するというロジック一点張りに見受けられ、それ自体はシンプルで分かりやすい。
確かに、日米金利差が拡大し続けるにもかかわらず円売り・ドル買いが盛り上がらないなどということは考えにくい。いつかは堰を切ったように対外投資が加速する臨界点が訪れよう。
しかし、このシンプルなロジックの最大の問題点はAの弊害をまったく考慮しないことにある。
本来、金利上昇は株価のバリュエーション上も、実体経済の成長上もマイナスである。ここ数年、ゴルディロックス(適温)経済などというフレーズが持て囃される中でその基本的な事実が見過ごされてきたが、利上げの本懐は景気減速である。
実際、今年2月以降、株式市場は断続的に米金利上昇を理由に値を下げる営業日が見られ始めている。昨年、このような動きはほとんどなかった。米国の実体経済への影響は今のところ軽微だが、それはこれまでは実質ベースで見た政策金利(FF金利-インフレ率)がマイナス圏にある「正常化」の過程だったからであり、これからプラス圏に入る「引き締め」となって来れば話も変わってこよう。
ドル全面安で1ドル=100円割れへ
現状、米経済は+2%弱と目される潜在成長率を大幅に超える+3%弱(2017年通年では+2.6%、2018年1〜3月期の前期比年率は+2.8%)で走り続けているため、こうした高い成長率が持続可能かという目線も合わせて持ちたいところである。
また、仮に米経済が金利上昇に耐えられたとしても、国境を越えた資本移動がこれほど当たり前になっている現代の金融市場において、淡々と自分(FRB)だけが利上げし続けるのはやはり難しい。基軸通貨ゆえに、その資本コスト上昇の影響はどうしても自国外、特に新興国からの資本流出を促してしまう。5月、アルゼンチンやトルコなどの混乱を見たばかりだ。
ちなみに、国際金融協会(IIF)の集計に基づけば、新興国におけるドル建て債務の償還額は 2018 年より 2019 年のほうが大きい。米金利高・ドル高の悪影響は今後ますます懸念されるものになる。
かかる認識の下、筆者は「今後1年以内に金利上昇が米国内外の経済のオーバーキルに繋がり、FRBの利上げは挫折。米金利およびドルが低下基調となる中で円高も不可避」という想定を抱いている。
実質実効レートで見た円相場が20%以上割安で長年放置されているという事実を踏まえると、ドル全面安が訪れた場合、少なくとも対ドル相場が100円割れを臨む展開となってもまったく驚きではないと考えている。
※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。
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