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JDI、経営危機に…経産省主導の経営失敗、またホンハイが再建に意欲
http://biz-journal.jp/2018/06/post_23638.html
2018.06.11 文=編集部 Business Journal
JDI・東入来信博会長兼CEO(写真:つのだよしお/アフロ)
5月29日、液晶パネル最大手のジャパンディスプレイ(JDI)の株価が109円と上場来安値を更新した。この日は一時、2割超下落し、2016年の安値138円(調整済み)を大きく割り込んだ。14年3月に新規公開したJDIの公開価格は900円。上場来高値は同じく14年4月の836円である。公開価格を1度も上回ったことのない、極度に業績不振の官製企業だ。
経済産業省が監督する産業革新機構が35.5%を出資する筆頭株主だが、産革機構にJDIの再生は荷が重いだろう。会社更生法を申請して、一から出直すべきとの声も多い。その上で、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買い取ってもらったり、ホンハイの傘下に入ったシャープに経営を任せるといった方法もある。
液晶パネルの最大手といっても、経営基盤は極めて脆弱だ。18年3月期連結決算は、主力のスマートフォン向け液晶パネルの販売不振とリストラ費用がかさみ、最終損益が4期連続の2472億円の赤字(前期は316億円の赤字)となった。苦境を脱するのは至難の業だ。
韓国メディアが「来年発売されるiPhoneの新モデルのディスプレイには、有機ELが採用される」と報じた。有機ELは歩留まりの悪さなど生産面でも課題が指摘されており、液晶からの全面切り替えには懐疑的な見方が多かった。この報道が事実なら、有機ELで完全に出遅れているJDIは壊滅的な打撃を受けることになる。
経営に失敗した原因は3つ挙げられる。
ひとつ目は、主力のスマホ向け液晶の需要の見誤りと、競争激化の大波に沈んだこと。ふたつ目は、海外メーカーとの資本提携構想が難航していること。筆頭株主の産革機構は早期に提携先を見つけようとしているが、JDIに興味を示す外資は皆無だ。3つ目は、昨年8月の中期経営計画に掲げた有機ELシフトの遅れだ。JDIは同社で有機ELを開発してきたが、16年末に有機ELパネル開発会社のJOLED(ジェイオーレッド)を連結子会社にすると発表した。両社の技術を結集して有機ELの「リーディングカンパニーを目指す」計画だった。しかし、JDIはJOLEDを連結子会社にすることを今年3月末に断念した。
■中国、韓国に圧倒的な差をつけられたJDI
JDIは、6月19日の株主総会後、月崎義幸執行役員が新社長に就任する。有賀修二社長は退任するが、技術顧問として残る。18年3月期連結決算で最終損益が4年連続で赤字となったため、「経営責任」を明確にするというのが理由だが、有賀氏は社長を辞めても技術顧問として残るという中途半端な“責任”だ。
18年3月期の営業損益は617億円の赤字(前期は185億円の黒字)だった。初の営業赤字である。売上高から製造原価を引いた売上高総利益(粗利)の段階ですでに赤字の状態なのだ。売上高は前年同期比18.9%減の7175億円。米アップル向けの液晶パネルの受注が低迷したのが響いた。事業構造改革費用1423億円を計上したため最終赤字が拡大した。
東入来信博会長兼CEO(最高経営責任者)は留任する。月崎氏は4月1日に副社長になったばかりだが、6月19日に社長になる段取り。東入来会長は「いかなることがあっても19年3月期は営業黒字化する」と必死に前を向くが、前途は多難だ。19年3月期も最終赤字は避けられそうにない。
JDIは3月30日、第三者割当増資などで550億円を調達すると発表した。アップル向けの液晶パネルの発光ダイオードを手掛ける日亜化学工業から50億円を調達する。日亜化学の出資比率は議決権ベースで3.5%になる。また、海外の機関投資家15社が300億円の増資を引き受け、そのうちの最高額は60億円拠出する香港の投資運用会社。さらに、生産停止中の石川県・能美工場を筆頭株主の産革機構に200億円で売却する。産革機構はこの工場をJOLEDに現物出資する。能美工場は中大型の有機ELパネルを量産するJOLEDの主な拠点となる。
JDIは3月30日、有機EL開発のJOLEDを子会社化する計画を撤回すると発表した。16年12月にJOLEDへの出資比率を15%から51%に引き上げる計画を明らかにし、17年9月末までに子会社にすることになっていたが、この方針を取り下げた。JDIは有機ELパネルの量産化計画を先送りすることになった。すべてが後手に回っている。
何より、18年1〜3月期の地域別売上高を見ると、先行きの深刻さがはっきりとわかる。「中国向け」が前年同期比76%減と、4分の1以下に激減した。「欧米向け」は同29%減。中国では安値競争に巻き込まれ、現地勢に後れをとっている。
政府資金を活用する天馬微電子や京東方科技集団(BOE)は減価償却が極端に少なく、安値競争を仕掛けても利益が出る構造だ。金額ベースでは世界首位のJDIだが、利益が出ない競争に直面し、泥沼状態に陥った。
■シャープから支援の呼びかけ
シャープの戴正呉社長はJDIへの支援に関して「日本企業による日の丸連合でないと(国際競争に)負ける。シャープが主導すれば立て直す自信はある」と述べた。
ホンハイの郭台銘オーナーは「日本の技術者を結集して、(液晶の)日の丸連合をつくりたい」との意欲を示している。「シャープとJDI、JOLEDの3社の事業統合も視野に入れている」(ホンハイ関係者)との情報もある。
JDI は14年3月に株式を上場したが、配当したことはなく、前述したように株価は公開価格を一度も上回ったことがない。
16年に資金難に陥り、産革機構から有機ELへの投資を名目に750億円の支援を受けた。しかし、液晶パネル市況の悪化や需要の減退で、この資金も底をついた。そのため、産革機構の債務保証を受け、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行の主要3行が1100億円のコミットメントライン(融資枠)を新たに設定した。JDIの実態は、資金がショートしそうになるたびに産革機構に駆け込む“自転車操業”だ。
法的整理になると困るのは産革機構、ひいては経済産業省だろう。損失は税金で補塡しなければならなくなり、責任問題に発展するからだ。一方で、「産革機構が筆頭株主である限り、JDIの再生はない」といった厳しい指摘がエレクトロニクス業界から出ている。
(文=編集部)
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