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不機嫌な妻のへそくり額は平均900万円だ 家庭が険悪なほど、妻は貯め込む
http://president.jp/articles/-/25299
2018.6.2 ハルメクホールディングス 生きかた上手研究所 所長 梅津 順江 PRESIDENT Online
60〜70代夫婦に「へそくり」について聞いたところ、平均金額は436万円だった。さらに「男女差」「夫婦関係のよしあし」によって調べてみると、男性より女性、円満夫婦より不仲夫婦のほうが、へそくりを貯める傾向があることがわかった。なかでも不仲夫婦の女性の平均額は898万円だった。なぜそれほど貯め込んでいるのか――。
へそくり夫472万、妻898万「シニア夫婦のギャップ」の意味
シニア女性向け雑誌『ハルメク』の「夫婦関係」特集に向けて、私が所属している「ハルメク 生きかた上手研究所」では、2018年1月に婚姻関係のある60〜79歳の男女437人に「自分だけの『へそくり』はありますか」として、webアンケートを行いました。その結果、へそくりをしているシニアは53.5%、その平均金額は436万円であることがわかりました。
男女別にみると、男性は49.5%がへそくりをもっており、金額は平均330万円。女性は57.0%で金額は平均514万円でした。調査前、私自身は数十万円程度をこっそり隠す「たんす貯金」をイメージしていたため、へそくり額が数百万円単位であることに驚きました。
しかも、“隠し場所”は「たんす」ではなく、自分名義の銀行口座に堂々と預けているケースが多かったのです。当人たちからは後ろめたさのようなものはあまり感じられませんでした。
今回の調査結果には2つのポイントがあります。ひとつは「金額は男性より女性のほうが多い」、もうひとつは「夫婦関係のよしあしによって金額が変わる」ということです。
▼ポイント1 「男女比」男性よりも女性のほうが貯めている
へそくりの平均金額は、男性が330万円だったのに対して、女性は514万円でした。女性は男性より184万円多く、約1.6倍のへそくりを貯めていることになります
なぜ、女性のほうが男性よりもへそくりを貯める傾向にあるのでしょうか。webアンケートでは「いざというときのために」「老後に備えて」という漠然とした回答しか得られなかったので、追加でインタビュー調査を実施しました。インタビュー対象は男性8人、女性8人の計16人。夫婦関係についての回答(「非常に満足」「やや満足」「どちらともいえない」「あまり満足でない」「まったく満足でない」の5段階で質問。「非常に」「やや」グループと「あまり」「まったく」グループとに分類)に応じて、男女4人ずつ4つのグループに分けて行いました。
インタビュー調査では、男性の場合、そもそも自分がへそくりをすることに興味関心がない、また、妻がへそくりをしていても問題視しない、という考えを持つ人が目立ちました。
「相手のへそくりに興味はありません。妻は(夫が)見る(詮索する)ことは嫌がると思うし」(63歳)
「家計は全部かみさんに任せています。男は、あると使っちゃうからね」(72歳)
「不仲夫婦」の妻が平均の2倍以上の898万貯める理由
対照的に女性は、老後や年金に対する不安を踏まえ、リスクに備えているという意見が目立ちました。
「実家から相続したお金が主人よりも断然多いです。今はそれを使わず、自分の老後のお金に心配がないように貯金をしています。残されるのは、私だから」(66歳)
「年金の支給開始年齢が上がったり、金額が減ったりして、生活が苦しくなる可能性があります。それに以前、夫が投資で失敗して全財産を失った経験もある。だから、自分の親から譲り受けた(遺産の)大部分は子供の教育費に使いましたが、残りは夫に内緒で300万円を確保してあります。いざというときのへそくりは心強いです」(61歳)
▼ポイント2 「夫婦関係のよしあし」による格差は240万円
もうひとつのポイントは「夫婦関係のよしあしによって金額が変わる」ということです。
webアンケートの結果によると、夫婦関係に満足していると回答した人(以下、円満夫婦)の平均金額は410万円でしたが、夫婦関係に満足していないと回答した人(以下、不仲夫婦)は648万円でした。
このうち「円満夫婦」の場合、平均金額は男性が308万円、女性が479万円でした。インタビュー調査では「男のへそくりはバレるもの。見つかっちゃうと使われるから貯金は任せています」(70歳)と話す男性もいました。
女性の場合、「私の場合は、へそくりがあることは夫に伝えてありますが、金額までは言っていません」(62歳)、「夫が(計画的に)貯金できないので、自分たちの老後のために自分が管理している」(74歳)との回答が目立ちました。今回の調査でのへそくりとは「自分だけのお金」のことですが、円満夫婦ではその存在を隠す必要もないようです。
一方、不仲夫婦は状況が違います。母数が少ないためあくまで参考値ですが、男性が平均をやや上回る472万円だったのに対し、女性は平均の2倍以上となる898万円でした。
いつ離婚してもいいように「準備」する不機嫌な女性
不仲夫婦の男性では、「家内のお金は全部知っている。わたしが管理しているから」(69歳)と家計管理を自ら行っているケースや「自分も妻もお金には苦労していない」(63歳)と経済的に余裕があるという声があがりました。
不仲夫婦の女性では、「夫の借金を私が返済したことがありました。金銭問題で相手を信頼できないところがあります」(66歳)と夫に対して不信感を抱いている人や、「最後に守ってくれるのは自分で管理した自分のお金だと思っています。主人は(へそくりの存在を)知りません」(62歳)といった冷ややかな発言がありました。
また不仲夫婦の女性では、「一度は離婚をリアルに考えたことがある」と口にする人もいました。どれだけのへそくりを貯めているかはわかりませんが、webアンケートの結果を考えると、財産分与とは別に約1000万円のへそくりがあれば、離婚しても生活に不安はない、という算段だったのかもしれません。
▼それでも離婚しないのは「相手のため」
不仲夫婦は、配偶者に不満がありながらも、結婚生活を続けています。その主な理由は「離婚すると相手が生活できない」。「相手のために離婚しないであげている」という恩を着せた発言は、男女共通です。
ただし不仲夫婦の男性には、さらなる共通点がありました。夫婦の共有財産であるへそくり以外の貯金についても、「自分のお金」と思っているのです。結婚期間に築いた財産は、夫婦共有のはずですが、「自分が稼いだ」という感覚が強い世代だからでしょうか。
そうした男性は離婚しない理由を、「上から目線」でこう話していました。
「相手(妻)も小言をいいながらも、離婚(すると)は言ってこない。相続とかにメリットがないからではないでしょうか」(63歳)
「女房はひとりじゃ生活できない。我慢してでも一緒にいたほうがお互いにいいんですよ。私は別にいいけど、向こうは今より生活の質が落ちるのは嫌だろうからね」(69歳)
一方、女性はこう話していました。
「(子育てを終え)親の責任は終わったし、へそくりも2000万あるから離婚したい。母にそう相談したら、右半身不随の病人(夫)をおいていく行為はあまりにひどいと言われて思いとどまった」(66歳)
「実際問題、放り出したら夫はどうなるか。何もできない人だし。これから何とか折り合いを見つけていかないといけない」(73歳)
まるで本心を無理やり覆い隠したようなコメントです。配偶者を思いやっているようにみえますが、実際には伴侶としての「義務」を果たさなければならないことへの負の感情が伝わってきます。それはインタビュー調査だけでなく、webアンケートの結果からも裏付けられるものです。
不仲夫婦となれば、家庭の財産状況はわからなくなり、豊かな老後をすごすことも危うくなります。お互いに「いつ別れてもいい」という準備を進めているようなものだからです。そうならないためにも、若いうちからお互いのささいな不満に気づき、解決していくコミュニケーションが重要なのではないでしょうか。「自分たち夫婦は大丈夫」と思っている人も、実は自分が伴侶の「気持ち」に気付いていないだけかもしれません。
梅津 順江(うめづ・ゆきえ)
ハルメクホールディングス 生きかた上手研究所 所長
大阪府生まれ。杏林大学社会心理学部卒業。7年間ジュジュ化粧品(現・小林製薬)で商品開発やマーケティング業務、14年間ジャパン・マーケティング・エージェンシーで定性調査のモデレーターやレポーティングを行う。2016年3月から現職。主に年間700人近くの50歳以上のシニアを対象にインタビューや取材、ワークショップを行い、誌面づくり・商品開発・広告制作に役立てている。著書に、「この1冊ですべてわかる 心理マーケティングの基本」(日本実業出版社)などがある。2017年11月から、毎日新聞のサイト「経済プレミア」で「シニア市場の正体」を連載中。
(写真=iStock.com)
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