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東芝、破綻危機→一転し「空前の過去最高益」の内実
http://biz-journal.jp/2018/05/post_23532.html
2018.05.31 文=編集部 Business Journal
東芝の工場(「Wikipedia」より)
東芝の2018年3月期決算(米国会計基準)は、純利益が8040億円の黒字(前期は9656億円の赤字)だった。4年ぶりに黒字転換し、7年ぶりに最高益を更新した。さらに19年3月期の純利益は1兆700億円と連続最高益を見込む。もし、純利益が1兆円を超えれば、トヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソフトバンクグループ、本田技研工業(ホンダ)に続いて5社目となる。
第三者割当増資により、3月末時点の自己資本は7831億円のプラスで、ようやく債務超過を解消した。債務超過が続いていれば上場廃止になるところだった。
崖っぷちに追い込まれていた東芝が、数字上では奇跡の復活を遂げたことになる。上場企業のうち、18年3月期決算最大のサプライズといっていいかもしれない。
しかし内実は、業績がV字回復したことによる最高益ではない。連結子会社だった米原発大手ウエスチングハウス(WH)の米持ち株会社の株式や債権の売却益2562億円が寄与したものだ。また、米国の減税効果で税負担も減少した。
売却手続き中の東芝メモリは連結対象から外して決算を集計した。東芝メモリの売却益9700億円を計上するという前提で、今期の純利益は1兆700億円を予想している。
東芝は東芝メモリを米投資ファンドのベインキャピタルなど日米韓連合に6月1日付で売却すると5月17日に発表した。遅れていた中国当局の独占禁止法の審査が終わり、計画が承認された。東芝メモリは当初計画通り、総額2兆円で売却される。
東芝は不正会計の発覚を受けて原発や家電事業を見直したことから、15年3月期に赤字に転落。16年3月期と17年同期も、米国の原発事業の不振が響いて赤字だった。
東芝は原発と半導体を経営の2本柱に据えてきた。だが、18年同期は原発のWHを売却、19年同期は半導体を売却し、連続最高益を更新するのだから運命の皮肉である。
今後はインフラ部門に注力するが、スマートメーターの製造子会社を手放したエネルギー事業や、水処理施設などのインフラ事業は振るわなかった。東芝は何を成長の柱とするのか。その方向性は見えてこない。
■再建の足並みに明暗
エレクトロニクス大手8社の純利益は以下のとおりだ。
※以下、社名:18年3月期実績(前期比)、19年3月期計画(前期比)
【重電系】
・東芝:8040億円(――)、1兆 700億円(33.1%増)
・日立製作所:3629億円(57.0%増)、4000億円(10.2%増)
・三菱電機:2718億円(29.2%増)、2450億円(――)
【家電系】
・ソニー:4907億円(6.7倍)、4800億円(2.2%減)
・パナソニック:2360億円(58.0%増)、2500億円(5.9%増)
・シャープ:702億円(――)、800億円(13.9%増)
【通信系】
・富士通:1693億円(91.4%増)、1100億円(35.0%減)
・日本電気(NEC):458億円(68.0%増)、250億円(45.5%減)
(東芝、三菱電機、ソニーは米国会計基準、日立、パナソニック、富士通、NECは国際会計基準、シャープは日本会計基準、三菱電機は19年3月期から米国基準から国際基準に移行するため増減率の記載なし。東芝の17年3月期は9656億円の赤字、シャープは248億円の赤字)
かつてエレクトロニクスは、自動車とともに日本の“お家芸”だった。牽引役となったのはテレビを中心とする消費者向け家電製品だ。だが、デジタル化に伴いテレビなどの価格が急落。韓国勢の攻勢やリーマン・ショックに見舞われ、2000年代後半に各社は軒並み大赤字に陥った。
一足先に業績回復の道筋をつけたのが重電系(日立、東芝、三菱電機)だ。日立は交通やエネルギーといった海外のインフラ事業を柱に据え、AV機器などの家電を縮小した。
日立の18年3月期の純利益は3629億円。日立工機などの子会社株式を売却したほか、過去に赤字計上が続いた大型プラントの受注を止めた効果が出た。
今後の焦点は、英国で建設を目指す原子力発電プロジェクト。安全基準の強化で総事業費は3兆円超に膨らむ。事業継続に向けて英国政府と協議しており、5月28日の臨時取締役会で英政府との協議を継続する方針を確認した。英国が2兆円強を融資する異例の支援体制を約束したが、英国議会に根強い反対論がある。5月3日、中西宏明会長が訪英してテリーザ・メイ首相と会談し、支援を要請したのが実った。残る1兆円のうち、政府系金融機関や電力各社がどの程度負担してくれるかにかかる。日立が1兆円を負担するとなると、相当危険だ。工事遅延などで巨額損失が発生するのは、東芝・米WHを見るまでもない。
日立は今後、原発事故など不測の事態が起きた際の損害賠償責任について、明確化するよう求める。早ければ6月中の覚書締結を目指すとしているが、一部の社外取締役は将来の事業リスクを指摘。条件交渉次第では、最終契約をせず撤退する選択肢を残した。
英原発計画は事業費の枠組みが固まれば、建設後の電力の買い取り価格に焦点が移る。現時点では、英政府が容認できるとしている水準は、日立の要求を2割下回っている。英政府は世論の反発を懸念して引き上げに難色を示しており、原発事業全体で採算を確保できるメドは立っていない。日立は“撤退カード”をちらつかせながら交渉を加速させるが、それがどこまで有効性を持つかは疑問がある。原子力プラント輸出を最重要政策と位置づける安倍晋三首相。メイ政権とうまく関係を保っていきたいとの思惑もあり、日英両政府の縛りで日立ががんじがらめになる懸念は依然として消えない。
三菱電機は、スマートフォン(スマホ)などの生産に使うFAシステムや車載機器で手堅く稼ぐ。18年3月期の純利益は2718億円。19年3月期から国際会計基準に移行し、純利益は2450億円の見込み。国際会計基準に基づく増減率では5%の減益になる。FAシステムが減速する可能性が高い。
■
家電系は、ソニーの決算がミニ・サプライズだった。
ソニーの18年3月期の純利益は、前期比6.7倍の4907億円。10年ぶりに過去最高を更新した。米ドナルド・トランプ政権の法人税減税による利益の押し上げがあり、従来予想を1300億円上回った。
エレクトロニクス業界ではBtoB(法人向け)強化が合言葉となっているが、ソニーはこの流れに乗れず、14年3月期1283億円、15年同期は1259億円と、2期連続の赤字に沈んだ。
経営資源を映像と音の技術に集中した結果、ゲームや音楽、映画などコンテンツ事業が伸びた。19年3月期は米減税という特殊要因がなくなるが、4月上場の米スポティファイ・テクノロジー株式の売却益を計上するため、純利益は4800億円と小幅な減益にとどまるとしている。
パナソニックの18年3月期の純利益は2360億円。純利益は過去最高だった08年3月期(2818億円)以来の高水準となった。
パナソニックは不振のプラズマテレビから撤退し、車載や住宅といったBtoB分野へシフトした。車載製品を手掛ける社内カンパニーが業績を牽引した。19年3月期の純利益は2500億円と増益を見込む。
ライバルのソニーの営業利益率が8.6%に対してパナソニックは4.8%と、大きな差がついている。電気自動車用のリチウムイオン電池がパナソニックの利益アップのカギを握る。
シャープの18年3月期の純利益は702億円。液晶テレビで一時代を築いたが、液晶パネルや太陽電池の不振で経営危機に陥った。台湾の鴻海精密工業が買収し、中小型液晶で巻き返しを図っている。
通信系の富士通の18年3月期の純利益は1693億円。19年3月は1100億円と大幅な減益になる。法人向けパソコンやネットワーク事業が不振だ。
NECの18年3月期の純利益は458億円。3000人リストラの最中だ。リストラ費用(400億円)の計上で19年3月期の純利益は250億円へと激減する。
株式時価総額(5月16日終値時点)で上記各社を見てみよう。1位がソニーの6兆6835億円、2位が日立の4兆1185億円、3位がパナソニックの3兆9162億円、4位が三菱電機の3兆5160億円で、以下、東芝1兆9366億円、シャープ1兆5946億円、富士通1兆3918億円、NEC7931億円と続く。上位の4社と、それ以下に大きな企業間格差があることがわかる。
(文=編集部)
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