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メガバンクの「大リストラ計画」で余った人材はどこへ行くのか 銀行以外でも他人事ではない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55863http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55863
2018.05.30 加谷 珪一 現代ビジネス
メガバンクが前例のない規模でリストラ計画を進めている。メガバンクが直面している課題は、あらゆる日本企業に共通したものであり、たまたま銀行業界で早期に問題が顕在化したに過ぎない。メガバンクの現在は、すべての日本企業における5年後の姿とみてよいだろう。
以下では、銀行が直面する課題を取り上げ、他の日本企業にどう波及するのか考えてみたいと思う。
課題1:人材のミスマッチ
メガバンク各行は昨年、大規模なリストラ計画を発表した。三菱UFJフィナンシャル・グループは9500人分の業務量削減、三井住友フィナンシャルグループは4000人分の業務量削減、みずほフィナンシャルグループは1万9000人の人員削減となっている。
みずほ以外の銀行は人員削減ではなく、業務量の削減となっているが、業界ではそのようには受け止められていない。各行とも、大規模な人員削減を狙っているのは明らかである。
これだけ人手不足が叫ばれている中、なぜ人員削減に踏み切る必要があるのか不思議に思った人も多いかもしれない。だが一連の人員削減の背後には構造的な要因があり、他の日本企業にとってもまったく同じことが言える。それは、人は足りないのに、欲しい人材がいないという、いわゆる人材のミスマッチである。
社会の成熟化やIT化に伴って金融ビジネスのあり方が激変しているが、行員の大半は従来型の業務に慣れ親しんだ人ばかりで、時代の変化に対応できていない。
銀行としては、新しい試みを次々と実施したいところだが、新しいビジネスに対応できる人材は限定的だ。このため全体としては人手不足という状況でありながら、社内では人材が余るというミスマッチが生じている。
新規事業に対応するため中途採用も増やしているものの、旧態依然とした行員が多いと、せっかく外部から人材を登用しても新規事業はスムーズに進まない。この結果、新規に採用した分だけ人件費が増えるという困った事態が発生してしまう。
三菱東京UFJ銀行を例に取ると、同行の生産性(1人あたりの経常収益=一般企業の1人あたりの売上高に相当)は5年間で 2割以上落ち込んでいる。このままでは人件費が収益の足を引っ張るのは確実な状況であり、これが大規模なリストラを決断させた。
多くの日本企業が、売上高があまり伸びない中、従業員数だけが増えており、人件費の増大が経営の足かせとなりつつある。過去5年間で売上高があまり伸びておらず、その一方で従業員数が大幅に増えている企業は要注意である。人手不足であるにもかかわらず、人が余っているというのは、あらゆる業界に共通した課題なのである。
課題2:業務の自動化による余剰人員の発生
この状況に追い打ちをかけたのが業務の自動化である。世の中ではAI(人工知能)がブームとなっており、近い将来、AIによって多くの仕事が消滅すると言われている。だがこの話はあくまで将来の話であって、すぐにAIによって仕事がなくなるわけではない。
だが、AI化の前段階ともいうべき動きはすでに顕在化しており、ソフトウェアを使った定型業務の自動化が急速に普及しつつある。これはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれるもので、既存システム上での操作をソフトに覚えさせ、一連の業務を自動化していくという手法である。
操作の自動化によって、今まで数人で行ってきた事務作業を1人で実施出来るようになるので、ここでも人材が余る結果となる。RPAは定型業務の自動化にもっとも効果を発揮するが、銀行は定型業務比率が高く、真っ先に導入が進んだ。
しかし、銀行以外の一般企業でも、一部を除けば業務の大半は定型的なものといってよい。経営陣が本気で自動化を考えた場合、かなりの割合の社員が不要となる可能性がある。卸売業や販売業など、問題解決型ではなくルーチン型の仕事が多い業種においては、この動きが一気に進むかもしれない。
店舗網が縮小されていく
メガバンクは人員削減と平行して、店舗網の大幅な縮小も計画している。
メガバンク各行はこれまで多額のコストをかけて巨大な店舗網を維持してきたが、ネットバンキングの進展によって来店する顧客数は10年間で4割近くも減少した。つまり、店舗そのものがビジネスにおいて不要な存在となりつつあるのだ。
今年4月、三菱東京UFJ銀行は三菱UFJ銀行に行名変更を行っているが、それに伴って各支店における大形看板の扱いを全面的に見直している。
これまで銀行の店舗には、ビルから突き出す形で大形の看板が設置されていたが、同行では行名変更をきっかけにこうした看板の多くを撤去した。街中で支店への来店を促す必要がなくなったことが最大の要因であり、これは銀行のビジネスのあり方が根本的に変わった事を意味している。
他業種でも、各地域に支店や営業所をたくさん抱えているところは多いはずだが、業務のネット化が進めば、こうした店舗の多くが不要となる。マーケティングもネットで行われるようになるので、路上で不特定多数の人に認知してもらう必要もない。
かつては支店網を維持するため、定型業務に従事する社員を大量に配置する必要があったが、業務の自動化に伴ってこれも省力化できる。支店網、営業店網を抱える業種は、同じような状況に陥る可能性が高いだろう。
セカンドキャリアをどうするか
日本では原則として解雇ができないので、余った人材は何とか自主的に次の職場に移ってもらう必要がある。そこで重要視されるのが、社員のセカンドキャリア斡旋である。
今年1月、金融庁が公表した銀行向け監督指針の改正案に注目すべき条項が盛り込まれた。銀行が取引先企業に対して人材紹介業務を実施できるようになったのである。
よく知られているように銀行は一般企業に融資する業務であることから、独占禁止法における優越的地位の濫用について厳しい制限が課せられている。
だが、銀行が人材紹介業務を実施できるとなれば、銀行はその地位を利用して、自行の職員を取引先に斡旋することが理論上、可能となる。
もちろん銀行側は、表立って社員の引き取りを要請することは絶対にしないだろうが、銀行融資への依存度が高い取引先の場合、銀行の状況を忖度せざるを得ないところが出てくるかもしれない。実際、今回の金融庁の決定に対しては、一部から、余った人材を取引先に押しつける結果につながりかねないと懸念する声も聞かれる。
この話はそのまま一般企業に適用することができるだろう。一般企業の場合、銀行ほど厳しい制限が課せられているわけではなく、取引先に社員を斡旋することは不可能ではない。
余った人材をどこで吸収させるのかは実は大きな社会問題であり、現実には人材の押し付け合いが激化するだろう。仮に社内にとどまるにしても、グループ内の移籍などを通じて、大幅に年収をダウンさせるといった措置が講じられる可能性は高い。人員のボリュームが大きい世代に属している人は要注意である。
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