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安倍政権、消費増税延期の裏で「こっそり増税」ラッシュの様相
http://biz-journal.jp/2018/05/post_23515.html
2018.05.29 文=小川裕夫/フリーランスライター Business Journal
安倍首相(写真:日刊現代/アフロ)
2015年に税率10パーセントに引き上げられる予定だった消費税。その後、2回の延期を実施した。消費税増税の次のタイミングは2019年10月。
消費増税は多くの有権者の関心事になっているが、国民に負担増を強いるのは消費税ばかりではない。19年1月からは、日本を出国する際に適用される出国税(国際観光旅行税)が開始される。出国税は日本を出国する一人ひとりに課される税金で、その額は一人1回につき1000円。これらは、最近になって訪日外国人観光客が急増していることに目を着けた政府が創設を急いでいた税だが、外国人観光客のみならず日本人にも適用される。政府は、出国税による税収を年間で430億円と試算している。
ほかにも、林野庁が主導する森林環境税や地方自治体が条例で独自に制定できる法定外税など、新税構想が目白押しだ。もはや国民の負担増はとどまるところを知らないが、そうした税金のなかでも諸外国で導入が相次いでいるのが、砂糖税だ。
17年にタイで砂糖税が導入されたのを皮切りに、18年1月にはフィリピンでも砂糖税が創設された。新興国にとって、砂糖はまだ贅沢品。だから、税金をかける――という理屈ではない。イギリスでも今年4月から清涼飲料水に課税する砂糖税を導入した。アメリカ・カリフォルニア州でも、すでに砂糖税は導入されている。
砂糖税は、国によって課税の仕方が大きく異なる。多くの国では、砂糖そのものに税金を課すのではなく、炭酸飲料やジュースといった清涼飲料水に課税するかたちを採用している。諸外国では日本のように上水道インフラが整っておらず、水道水を飲用するという習慣はほとんどない。そのため、清涼飲料水が常飲されている。
しかし、清涼飲料水の消費量が増大すれば、肥満や生活習慣病のリスクは増大する。砂糖税創設の大義名分は、国民の健康を守るためとされている。他方で、政府にとって医療費の増加を抑制する目的がある。つまり、贅沢品だから砂糖に課税しているわけではないのだ。
■飲料メーカーには痛手なし?
日本でも厚生労働省が水面下で砂糖税を検討していた。しかし、ほとんど議論されることはなかった。税を所管する財務省にいたっては、まったく動いた気配がない。また、砂糖に課税するとなったら農水省の意向も無視できないが、農水省は農家を守る立場にあるため、強硬に反対することが明白だ。そうした事情から、日本で砂糖税の議論はまったくなされていないが、だからといって砂糖税が日本で導入される可能性がゼロとは言い切れない。
20年前まで、日本でも砂糖には税金が課されていた。砂糖税は、1989年に消費税の導入と同時に一本化されたため消滅した。それが復活する可能性だってある。仮に砂糖税が創設された場合、もっとも大きな打撃を受けそうなのが飲料メーカーだろう。しかし、ある飲料メーカーの社員は、こう楽観視する。
「今般、日本人は健康志向が強くなっており、それは食べ物ばかりではなく、飲み物でも同様です。日本国内全体の清涼飲料水の消費量が増えているので、砂糖税が創設されたら飲料メーカーは苦しくなるという声は業界内にあります。しかし、清涼飲料水の消費量で増えているのは、ジュースや炭酸系飲料ではなく、お茶系飲料や水です。そのため、日本国内で砂糖税が創設されても飲料メーカーには大きな痛手にはならないのではないでしょうか」
それでは、カフェ業界はどうか。この業界では、健康志向の高まりから糖分・塩分・カロリーの少ないメニューが続々と開発されてきた。最近では、グルテンフリーを謳うメニュー開発・導入が急ピッチで進んでいる。
海外からカフェの食品・飲料の原料輸入を手掛ける業界関係者も、「日本のカフェ業界は健康志向が強くなっていて、昨今はグルテンフリーがトレンドです。砂糖を多く使うメニューは検討されなくなっている」と口にする。こうした事情から、カフェ業界で砂糖税はほとんど話題にならない。
また、カフェ業界が砂糖税を気にしない背景には、お客が高齢化している点もある。客層が高齢化すれば、今後はお茶やコーヒーの需要が増える。そうした業界動向から、砂糖税を恐れているという様子はない。
カフェと同様に、コンビニ業界も影響は少ないと見られている。コンビニ業界も、近年では高齢者をターゲットにするようになり、ドリンク棚はお茶やコーヒーなどが多くを占め、ジュースや炭酸系飲料の取り扱いは減っている。
■ファミレス業界は影響大?
では、砂糖税が大きな影響を及ぼす業界はどこなのか。カフェ業界・コンビニ業界を横目に、砂糖税の恐怖に晒されているのが実はファミレス業界だ。
ファミレス業界もカフェ業界と同じく、健康志向という潮流に乗ってメニュー開発を進めている。アレルギー対応メニューの開発において、ファミレス業界はカフェ業界よりも早く対応してきた。メニューのほかにも、店舗を完全禁煙・分煙にリニューアルするなど、健康面ではカフェ業界よりも一歩先んじている。
そんなファミレス業界でも、ドリンクバーだけは必須。ファミレスのヘビーユーザーは高校生・大学生もしくは子連れのファミリー層だからだ。
「ドリンクバーのラインナップはコーヒー・紅茶のほかは、コーラ・オレンジジュースといった砂糖税の対象になりやすい清涼飲料水ばかり。しかも、ジュースや炭酸系飲料のほうが多く揃っている」(業界関係者)
ファミレス業界でも、健康志向や少子高齢化を反映してドリンクバーはお茶やコーヒーを多く揃える傾向になっているが、それでもドリンクバーからジュースや炭酸系飲料をなくすことは難しい。高校生・大学生・ファミリー層に訴求できなくなるからだ。
今のところ、日本国内で砂糖税の本格的な議論は始まっていない。しかし、政府が新しい税源を確保するために、砂糖税を創設する可能性も捨てきれない。近い将来、日本が諸外国に追随して、砂糖税を創設することは十分にあり得るのだ。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)
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