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闇金業者に国税局が敗北!「違法な未収利息は収入に計上しなくていい」異例の判決
http://biz-journal.jp/2018/05/post_23483.html
2018.05.27 文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人 Business Journal
元国税局職員、さんきゅう倉田です。生まれ変わったらなりたいものは「連帯保証人」です。
確定申告をする人のなかには、それはそれはたくさんの職業の方がいます。犯罪を収入の基礎としている人もいますし、犯罪すれすれの、限りなく漆黒に近いグレーな業務を行っている人もいます。税法では、その収入が違法であるか適法であるかを問わず、課税の対象としています。犯罪を容認、あるいは推奨するわけではありませんが、犯罪で得た収入に課税しないとなれば、正しく働いている一般の方々との間で、公平性が担保されません。税の原則にある「課税の公平性」を守るために、詐欺であろうが、万引きであろうが、覚醒剤の取引であろうが、利益があれば税金を払う必要があります。
むかしむかし、闇金を営んでいる人のところに税務調査がありました。事業を開始して以来、確定申告をしていなかった、つまり、無申告であった闇金業者は、税務調査によって、所得を把握され、所得税を納税することになりました。確定申告はしていなかったものの、裏帳簿や、帳簿を作成するために用いた取引記録、顧客への貸付金額と受取利息、返済履歴などの記録があり、全体像の把握は容易だったようです。
ここで、何をもってして闇金と定義するかを明らかにしたいと思います。貸金業を行う場合は、行政への登録が必要です。闇金業者とは、その登録を怠る、あるいは登録はしているが出資法の制限利息を超える利息によって貸し付けている業者を指すと考えられます。
また、数年前に一世を風靡した「グレーゾーン金利」は、利息制限法の上限金利(たとえば15%)を超えるが、出資法の上限金利29.2%は超えない範囲の金利のことで、当時は多くの貸金業者が年利29.2%という高額な貸付を行っていました。現在は、法改正によって、利息制限法の上限を超える利率での貸付はできません。税金を支払わなかったときの利息である「延滞税」も最大14.6%となっています。
闇金業者は、出資法の上限であろうが、利息制限法の上限であろうが、法改正でグレーゾーン金利が撤廃されようがお構いなく、高利貸しを行っています。「トイチ」とか「ヒサン」とか「トゴ」とかそういった金利で貸し付けます。10日で1割、1日3割、10日で5割の金利を意味していますので、その方法は悪魔的です。それでも、借りる人がいるから闇金はなくならないわけですが、当然、そのような収入でも税金は納めなければいけません。
さて、調査によって問題になったのは、利息部分でした。一般に、貸金業を行っていれば、貸したお金の利息が発生したときに、その利息を受け取っていなくても、収入として計上することになります。「売掛金」みたいなものだと考えてください。未収の利息は、将来的に受け取れるものですから、発生した時点で所得になると考えられています。今回の闇金の税務調査によっても、同じようにトゴとかヒサンの利息がすべて所得として課税されました。
そうなると、まだ受け取っていなくても、莫大な金額を収入として計上しなければいけなくなるわけです。そもそも、そんな利息を取っている闇金業者が悪いのですが、闇金ですから貸した相手に、警察に駆け込まれたり、逃げられたりしたら、回収ができないかもしれません。一般的な金貸しと違って、回収不能になる可能性が高いのです。闇金業者にしても、1日3割の利息が取れて当たり前とは考えていないようで、「未収利息を収入にするのはおかしい」と主張しました。もちろん、税務調査をした側は抵抗しました。
これが裁判で争われた結果、どうなったか――。
簡単にいうと、利息制限法を超える利息は、それ自体がそもそも無効です。闇金業者が、借りた側がなぜか法律の保護を求めず自分から違法な利息を払うことを期待しているだけであって、ヒサンとかトゴの利息が受け取れる可能性は高くない。よって、未収である場合、まだ受け取っていない利息は、収入に計上しなくてよいという趣旨の判断が下されました。
納税者側(あまり納税していませんが)の主張が通ったわけです。法律を犯している事業者が、犯していない事業者より、税の負担が少なくなる珍しい事例でした。
(文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人)
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