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ソニー、一瞬の絶頂か…最高益の死角 直近四半期「722億円減益」の意味
http://biz-journal.jp/2018/05/post_23414.html
2018.05.22 文=真壁昭夫/法政大学大学院教授 Business Journal
ソニーの吉田憲一郎社長兼最高経営責任者(東洋経済/アフロ)
2018年3月期のソニーの業績は予想通り過去最高だった。ただし、問題はこれからだ。これまでソニーは、主にスマートフォン向けの画像センサー(CMOSイメージセンサー)への需要を取り込んで経営をたて直してきた。世界の画像センサー市場で、ソニーのシェアは約45%に達する。ソニーのIT関連部材の需要がどう推移するかは、スマートフォンなどのIT機器への需要動向を考える尺度といえる。
スマートフォンに関しては、機能面での差別化が難しくなっている。アップルのiPhoneも、中国のファーウェイの製品も機能はそう変わらない。機能面で人々を「あっ!」と驚かせる仕掛けは少なくなり、今後は価格競争が進みやすい。従来の規格に基づいたセンサー等の部品価格にも下押し圧力がかかるだろう。これまではスマートフォン向けの需要がソニーの業績を支えたが、その発想で今後の成長を実現することができるか、不確実性が高まっている。
■ソニーの業績ピークアウト懸念
4月27日に行われたソニーの業績説明会では、すでに同社の業績がピークを迎えた可能性が示された。
まず、2017年度通期の営業利益は7,349億円に達し、前年度から155%程度増加した。これは、20年ぶりの過去最高益の更新だ。背景には、半導体事業の営業利益が増加したことがある。その他の事業セグメントのなかで利益率が高いのは金融である。この2つの事業分野に比べると、ウォークマンやトリニトロンテレビで一世を風靡した家電分野の貢献は小さい。携帯電話事業は営業赤字だ。事実上、ソニーはコンシューマー・エレクトロニクス企業よりも、半導体(部品)メーカーとしての存在感が強くなっている。
通期で見るとソニーは絶好調に見えるが、1〜3月期の四半期決算に焦点を当てると、状況はやや異なる。営業利益は222億円と前年同期から722億円の減益となった。17年10〜12月期の営業利益が3,508億円であったことを踏まえると、17年末までソニーの業績は拡大した。一方、年明け以降、収益力は低下している。これだけ利益が落ち込んだということは、市場環境が変化していると考えるべきだ。
18年度の業績見通しに関しては、営業利益は6,700億円と予想されている。この背景には半導体事業での減益見通しがある。同社の資料では、円高などが減益の要因と記されているが、それだけではないだろう。
減益見通しの背景には、これまでのような半導体需要が見込みづらいという経営陣の予測があるはずだ。実際、そうした懸念は高まりつつある。半導体市場で存在感の大きい韓国や台湾メーカーの株価は上値の重い展開が続いている。この2つの国の株価動向は、世界の半導体需要を反映して形成されやすいといわれている。
これらを併せて考えると、17年にソニーは業績のピークを迎え、すでに増益のモメンタム(勢い)は低下に転じた可能性が高い。
■コモディティー化するスマートフォン
ソニーをはじめとする半導体メーカーにとってのリスクは、これまでの半導体需要をけん引してきたスマートフォンの価格が低下し、半導体そのものの価格にも下押し圧力がかかる展開が現実のものとなることだろう。半導体以外に収益を確保できる事業があればよいが、ソニーにはそれが見当たらない。
世界のスマートフォン市場では、“コモディティー化”が進みつつある。コモディティー化とは、プロダクトの機能やデザイン面での差別化が難しくなり、価格競争が進みやすいということだ。端的に言えば、メーカーは違っても、機能、使った際の満足感は大して変わらなくなっている。
これまで、多くの家電製品がコモディティー化してきた。かつてシャープがシェアを誇った薄型テレビの市場では、サムスンやLGの韓国企業がシェアを奪い、現在では中国企業のシェアが高まっている。
この背景には、新興国企業の成長がある。技術力で先進国の企業が競争上の優位性を誇る時代ではない。人件費をはじめとするコスト、規模の経済効果の面で、新興国の企業の存在感は日増しに大きくなっている。
それに伴い、プロダクトのライフサイクルが短期化している。それは、ヒット商品が生み出されたとしても、長期にわたって収益を維持することが難しいということだ。ヒット商品が生み出されても、しばらくすると類似商品が増え、陳腐化してしまうことが増えている。ひとつの画期的な商品を生み出すだけでなく、その次、さらにその先も人々から必要とされる商品やサービスを生み出そうと、連続的なイノベーションを目指す取り組みが求められる。
すでに、スマートフォン市場でも、アップルの販売台数の伸び率が鈍化している。一方、ファーウェイなど低価格機種を手掛ける中国企業は販売台数を伸ばしている。スマートフォン需要は徐々に飽和し、業界の成長ペースも鈍化する可能性が高まっている。
■注目されるソニーのイノベーション能力
スマートフォン向けの半導体需要に支えられたソニーの業績は、徐々に伸び悩む可能性がある。環境の変化に適応するためには、新しい収益の柱を確立しなければならない。それが、経営者の責務だ。言い換えれば、自力で他社にはないプロダクトを生み出し成長を実現するという意味での実力が問われる。
1990年代以降、ソニーは金融やエンターテインメントなど多種類の事業を営むコングロマリットを目指してきた。その結果、技術力を基礎にしてヒット商品を生み出す同社のスピリットは後退し、財務内容の悪化からリストラによる収益捻出を余儀なくされた。
その体質を改め、モノづくりで稼ぐ基盤を整備したのが平井一夫前CEO(最高経営責任者)だ。2012年以降の同氏の取り組みは、米国を中心とする世界経済の緩やかな回復に支えられた部分も大きい。いずれ、米国の景気はどこかでピークを迎え、それとともに世界経済全体の成長率も低下するだろう。
先行きの不確実性が高まりやすいなか、ソニーは半導体というパーツの供給メーカーから、ヒット商品を生み出す企業への再生を目指すべきだ。それは自ら変化を起こし、需要の創造を目指すということである。それが、持続的な成長に欠かせない。
潜在的な需要が見込まれるのが、家庭向けのロボットだ。すでにロボット型の掃除機が普及しているが、家の中を自律的に移動しながらセキュリティ管理や、家電の操作、親がスマートフォンから子供の様子を確認する機能がロボットに備われば、日常生活はより便利になる。高齢者の暮らしも、より快適になるだろう。人間の仕事をロボットが奪うとの不安よりも、新しいデバイスの導入による、新しいライフスタイルや価値観を社会に示し、需要を生み出そうとすることが重要だ。
もともと、ソニーは従来にはなかったエレクトロニクス製品を社会に提示し、新しい行動様式を示すことで需要を取り込んできた。そのスピリットを取り戻すことができるか、ソニーの実力が問われようとしている。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)
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