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20代が陥る「転職・負のスパイラル」…勘違いする新卒社員たち
http://biz-journal.jp/2018/05/post_23378.html
2018.05.17 解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季 Business Journal
新年度が始まって1カ月以上が経過し、今春新社会人となった若者も新しい環境に慣れた頃だろう。だが、「五月病」という言葉にも滲み出ているが、この時期に苦労して入った会社に疑問を抱き、やる気を失ってしまう人も多い。
厚生労働省は、昨年度の大卒の新入社員のうち、すでに約5万人が離職しているとの調査結果を発表している。同年度の大卒の就職者数が約45万人だから、“9人に1人”もの人が、1年以内に会社を辞めている計算だ。果たしてそれが“最善”の選択なのだろうか。立教大学経営学部教授の有馬賢治氏は、そういった見切りの早い新入社員たちに警鐘を鳴らす。
■若者が陥る“転職・負のスパイラル”
「新卒時に、それなりに納得して入社できた人たちは、学生時代と同様の就活方法で転職を通じてステップアップができると考えがちですが、現実はなかなか思い通りにいくものではありません。転職自体は決して悪いことではないですが、新卒と既卒の決定的な違いを認識しておく必要があります」(有馬氏)
その代表的なものに、学校名という「看板」の有無があると有馬氏は話す。
「新卒の就活生に対しては、社会人としての潜在能力を本人がその学校に入学するまでの努力と、既に社会で活躍している諸先輩の実績から推測して、その“看板分”の評価を上乗せしたうえで企業は選考しています。一方、既卒者は、学歴ではなく社会人になってからの本人の就業実績が判断材料となります。つまり、その時点での社会人としての“等身大”の自分の実力が評価対象となりますので、新卒であれば手が届いた大手企業が、既卒では面接のアポを取ることが難しくなることさえあります」(同)
既卒では学歴という“下駄”を履かせてもらえない。また、社会人経験が1年程度での転職となれば、一般的に仕事での実績は無いに等しい。
「転職を考えるきっかけは、さまざまな理由が考えられますが、そのなかで『自分に向いた業務を与えてくれない』『上司の人の使い方がうまくない』『自分の提案を聞いてもらえない』などのネガティブな動機が発端の場合は要注意だと思います。採用側からの視点で考えれば分かりやすいのですが、安易にほかの企業に移ればうまくいくだろうという考えで転職に動き出していると受け取られてしまうと、採用側は『また同じ理由で我が社もすぐに辞めるのでは』と懸念してしまいます。こうした理由で転職を繰り返していると、希望する企業規模や業務をどんどん妥協せざるを得なくなっていき、遂には“転職・負のスパイラル”に陥るというわけです」(同)
もちろん、30歳前後まで同じ職場で働き、十分に実績を重ねたうえでキャリアアップを目指す“ポジティブ転職”もある。だが、新卒数年で会社を辞めてしまう人は、こういった“ネガティブ転職”が圧倒的に多いだろう。それが“負のスパイラル”の入口なのだと有馬氏は話す。
「入社した会社に嫌気がさしてしまう理由に『面白い仕事をさせてもらえない』というものがあると思いますが、本人の適性や能力を上司が判断する材料を集めるためには、本人の好きな業務だけをさせているわけにはいきません。上司は、与えられた仕事に興味を持って創意工夫をしようとする姿勢が見たいのです。日常の業務のなかで、言われた仕事を言われたとおりにするだけではなく、自身の熱意でプラスアルファを提供しようと努力する社員に対して、上司はより高度な仕事を与えようと考えるものです」(同)
■早期退社は購入した商品を開けないようなもの
それができるようになるためには、会社や取引先の特徴、文化、業界の競争、市場の特徴などについての理解は必須で、それなりに会社に籍を置いて一定期間同じ場所で働く必要がある。なかには、新入社員のなかでも要領よく仕事をこなし、すぐに上司の信頼を勝ち得る人もいるかもしれないが、普通はそう簡単にはいかない。
「入口しか知らずにほかの会社に目移りして転職活動をするということは、商品の包装を開けただけで、中身を見たり使ったりしないで買い替えてしまうようなものです。どのくらい在籍すれば会社や業界の全容がわかるかは業種によってそれぞれなので一概には言えませんが、やはり最低3年程度は体験してみないと転職活動時にアピールできるだけの知識や実績は得られないのではないでしょうか」(同)
当初は会社に貢献しない新人を、企業が雇用して育てるだけでも多大なコストが必要だ。まして中途採用であれば、即戦力を求めるのは当然のことであろう。そのような採用側の心理を想像しないで向こう見ずに退職してしまっては、自分にも、新卒で入った会社にも、転職先にもネガティブな意味での転職となってしまう。
「近年は“売り手市場”なので、自分を過信してしまいがちな社会背景がありますが、誰でも最初は花形の仕事を任せてはもらえませんし、どのような職場でもストレスは発生するものです。それを乗り越えるバイタリティを持たなくては転職活動でもうまくはいきません。“ネガティブ転職”ではなく“ポジティブ転職”で夢に近づいてください」(同)
自分にはもっとふさわしい仕事が何処かにある――。その考えこそが甘えであることを、退職する前に一度思い起こすべきだろう。“第二新卒”枠に過大な期待をするのではなく、自分自身を冷静に見つめて実りあるキャリアデザインを計画した方が良さそうだ。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)
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