http://www.asyura2.com/18/hasan127/msg/198.html
Tweet |
米国の物価上昇が2%を達成した背景、FRBの利上げ速度への影響は
http://diamond.jp/articles/-/169731
2018.5.12 三井住友アセットマネジメント 調査部 ダイヤモンド・オンライン
皆さんこんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。
5月1日から2日にかけて開催された米国の連邦公開市場委員会(FOMC)は、市場の予想通り政策金利(FFレート)の誘導レンジを1.50%〜1.75%で据え置くことを、全会一致で決定しました。米国の景気動向から判断する限り、今後も連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを継続することは、ほぼ間違いないと見られます。問題は、利上げの速度とタイミングですが、その鍵を握っているのは物価です。そこで、今回は米国の物価動向に焦点を当て、それをもとに今後の金融政策について考察します。
FRBが注視する個人消費デフレーター
本題に入る前に、米国の物価指標について見ておきます。物価の動向を見るための代表的な指標には、生産者の出荷価格に焦点を当てた「生産者物価」と、消費者が購入する財・サービスの価格に着目した「消費者物価指数(CPI)」「個人消費支出価格指数(PCED)」がありますが、物価動向を見るうえで注目されるのは後者のCPIとPCEDです。
CPIとPCEDは、基本的に消費者が購入する財・サービスの平均的な価格の動向を示していますが、PCEは個人以外の非営利団体の消費動向も含んでいます。対象となる費目についても、CPIは消費者が直接支払う消費支出のみに限定しているのに対し、PCE(個人消費支出)は個人以外にも非営利組織が支払った金額も含みます。例えば、保険制度を使って医療サービスを受けた場合、CPIでは自分で支払った分だけしか考慮されませんが、PCEDでは会社負担分も含まれます。
指数の計算方法も、CPIは指数を構成する項目のウエイトを基準時点のウエイトに固定するラスパイレス方式、PCEDは比較時点のウエイトを用いるパーシェ指数とラスパイレス指数の幾何平均の連鎖指数を用います。
消費者は通常、価格が上昇した商品の購入を控え、替わりに安い価格の商品の購入を増やすという行動をとりますが、ラスパイレス方式で算出されるCPIでは、こうした低価格品への代替効果を反映させることができません。現在のように消費者の低価格志向が強い環境の下では、CPIは物価上昇率の鈍化を実態よりも過小評価してしまいがちです。いわゆる上方バイアスの問題であり、CPIコア指数の上昇率はPCEDコア指数の上昇率よりも高くなる傾向があります。
こうした点を踏まえると、CPIよりもPCEDの方が物価の動向を正確に捕捉することが可能といえるでしょう。米連邦準備制度理事会(FRB)も、金融政策を決定するうえでPCEDの方をより重視しています。PCEDのなかでもFRBが注視しているのは、コア指数といわれる指標です。コア指数は、全体から天候に左右されやすく、しかも価格変動の激しい食品とエネルギーを除いたもので、基調的な物価の変動を捉えるのに有効な指標です。
足元の物価は上振れしたが……
「医療サービス価格」の値上がりが背景に
景気拡大の長期化に伴い、米国の物価は上昇ペースを加速させています。FRBが注視するPCEDで見ると、直近2018年3月は前年同月比+2.0%、コア指数は同+1.9%でした。コアPCEDは、FRBの目標値である+2%に急接近しています。一方、CPIは4月分が同+2.5%、同コアは同+2.1%でした。コアCPIは2ヵ月連続の+2%超えとなりました。
もっとも、内容を見ると、上昇率の加速は、指数に占める比重の高い医療関連によるところが大きいことがわかります。CPIの医療サービス価格指数は2017年12月の前年同月比+1.6%から2018年4月の同+2.2%、PCEDの同価格指数については同+1.5%から同+2.3%に伸び率が高まっています。
この間にコアCPI上昇率は同+1.8%から同+2.1%に0.34ポイント、コアPCEDは同+1.5%から同+1.9%に+0.36ポイント上昇しました。コアPCEDについては、そのうちの0.16ポイント、4割強が医療サービス価格の上昇によるものです。仮に、医療サービス価格の高騰が無ければ、直近のコアPCEDの上昇率は+1.7%にとどまっていたことになります。
しかも医療サービス価格の値上がりは、2017年10月の医療機関の診療報酬改定を受けて、民間の保険会社も同様の価格改定を行った影響によるものとの見方が多いようです。つまり、医療サービス価格の上昇は、景気の拡大に伴う財やサービスの需給逼迫によって生じたわけでないということです。民間保険会社の価格改定は1月と2月に集中することを踏まえると、医療サービス価格の上昇の勢いがこのまま持続することはないと見てよさそうです。
そもそも物価は景気の遅行指標です。実際、米国ではコアCPIの上昇率と実質GDPの成長率の間に、先行遅行関係が認められます。すなわち、コアCPI上昇率は実質GDP成長率に対して、6四半期ほど遅れて動く傾向があります(CPI上昇率、成長率とも前年同期比)。この関係から判断すると、コアCPI上昇率は年内概ね+2%近傍で推移すると予想されます。CPIの上方バイアスを考慮すると、FRBが特に重視しているコアPCEデフレーターの上昇率が、今年内に+2%を超える可能性は低いでしょう。当面、コアPCEDは前年比+1.7%〜+1.9%のレンジで推移すると予想されます。
FRBによる利上げは緩やかなペースで継続へ
前述の通り、今年5月1日〜2日にかけて開催されたFOMCでは、政策金利が据え置かれました。FOMC声明文は、現状を「経済は堅調な速度で成長し、労働市場は引き続き力強さを増した」と評価し、先行きも「緩やかな経済活動の拡大と、力強さを維持する労働市場」を予想しています。
物価については、前回FOMCの「中期的に目標の+2%に向けて安定する見通し」から、「+2%を中心とする上下対称的な目標値の近傍で推移する見通し」に修正しました。おそらく物価上昇率が目標値を上回っても、その幅が大きくなければ容認する姿勢であることを示唆していると考えられます。
物価上昇率は、コアCPIで+2%を超え、コアPCEDも+2%に接近してきましたが、先ほど述べた通り、この水準からさらに大きく上昇する可能性は低いと考えられます。景気、雇用の順調な拡大、トランプ政権の拡張的な財政政策を背景に、FOMCは利上げを継続する見通しです。
ただし、「物価の多少の上振れは容認する」というFOMCの姿勢から判断する限り、利上げの速度は引き続き緩やかなものにとどまる見通しです。今年はあと2回(今年の3月を含めると合計3回)、年間合計で計0.75%程度の利上げを想定しています。FOMCによる政策金利の長期見通しは約3%。これが政策金利の着地点の目処となりそうです。
(三井住友アセットマネジメント 調査部長 渡辺英茂)
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民127掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民127掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。