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米中貿易戦争は一時的現象ではなく「中国の台頭」を象徴する出来事だ
http://diamond.jp/articles/-/165352
2018.4.3 真壁昭夫:法政大学大学院教授 ダイヤモンド・オンライン
高まる“米中貿易戦争”の懸念
中国台頭で世界のパワーバランスも変化?
足元で“米中貿易戦争”の懸念が高まっている。その背景には、経済、軍事力などほとんどすべての面で中国が目覚ましい成長を遂げた結果、中国自身が米国と対等にふるまうことが可能になってきたことがある。その意味では、現在の貿易戦争は単なる一時的現象ではなく、世界のパワーバランスを変えるような事態と考えるべきだ。
事態を複雑化するもう一つの要因は、トランプ大統領が経済運営のための適切な理解力を持っていないことだろう。また、中国の習政権の強い基盤が整備されてきたため、中国政府も強硬な姿勢を取ることが可能になっている。
ただ、米中両国は本気で貿易戦争を起こす気はないはずだ。大きなサプライチェーンができ上がったグローバル経済体制を崩すことは、両国にとってあまりにもマイナス面が大きいことは分かっているからだ。
むしろ、米中経済の競争の主戦場は、5G(次世代通信技術)などIT先端分野になるだろう。“中国製造2025”の計画にある通り、中国はIoTの技術を駆使して製造業の革新を目指している。そのために国家を挙げてハイテク技術の開発を進め、米国のIT業界にとっても脅威となりつつある。今後の社会のインフラ、消費、金融などを支えていく先端テクノロジー分野での陣取り合戦といえる。
その状況に対応するためには、米国が新産業の育成などを強化し、中国以上の改革を進めなければならない。それは、対中強硬姿勢をとることとは必ずしも同じではない。トランプ大統領は、この基本的かつ重要なポイントを理解する必要がある。
貿易戦争は
米国中間選挙年の一種の恒例行事
トランプ大統領は知的財産権の侵害などを理由に、中国製の製品に制裁関税を課すと表明した。それに伴い、米中貿易戦争への警戒感が高まっている。大統領はトランプ流のディールを仕掛けて中国の譲歩を引き出すことを狙っている。大統領の発言に、世界の株式・外国の為替市場は一喜一憂している。
11月、米国では中間選挙が開催される。こうした選挙イベントを控える中で政治家が通商問題を取り上げ、「米国が不利な状況にあり、是正が必要」との主張を展開して支持を取り込もうとする。
それは、ある意味、一種の“恒例行事”といえるかもしれない。支持率が高まらないトランプ大統領は、対中強硬姿勢を示して自らの成果を誇示したいだろう。
冷静に考えると、世界経済の発展はグローバル化の進行によって支えられてきた。中国は、その恩恵を最も受けてきた国の一つだ。米国政府も、本気で“貿易戦争”を起こす考えはないだろう。
ただ、トランプ政権が中国に圧力をかけ続け、予想外に意見の対立が深刻化し、本当に中国が報復する可能性がまったくないわけではない。仮にそうした事態になると、グローバル化を支えてきた自由貿易体制にブレーキをかけることとなり、世界経済の“下押し要因”となる。
米国が強硬路線をとり続けると国際社会からの孤立が深まり、長い目で見た場合には米国の優位性が弱まる恐れがある。今後も米国がトップ国の役割を果たすためには、先端テクノロジーの開発やアジア各国との関係強化などを通して、国際社会の協力を取り付けることが必要だ。言い換えれば、米国を中心により安定した国際社会の“青写真”を示し、各国と協議していくことが求められる。
米国の最高意思決定者であるトランプ大統領は、この点をあまり理解できていないように見える。
彼は、長期的な米国の地位向上よりも、中間選挙を控える中で対外強硬姿勢を示して支持を集め、目先の体裁を取り繕うことを重視している。それは、中長期的な米国の競争力、経済のダイナミズムを削ぐ恐れがある。
米中両国にとって
本当の競争はIT先端分野
3月22日にUSTR(米通商代表部)が公表した資料では、中国のハイテク産業による知的財産権の侵害などがやり玉に挙げられた。米国は中国製のハイテク機器などに制裁関税を課して、次世代の先端技術で中国が存在感を示す展開を防ぎたい。鉄鋼やアルミニウムの輸入制限からEUなどが除外されたことを見ても、中国に対する米国の対決姿勢は強いといえる。
その背景には、すでに、ITの先端分野では、中国企業の追い上げが強くなっていることがある。リーマンショック後の世界経済にとって、米国の先端企業がアップルのスマートフォン、アマゾンのサービス展開、SNS、AI(人工知能)などを開発、実用化してきたことは、成長への期待を支えるために不可欠だった。それはアマゾンなど米国のIT関連企業の株価上昇を見れば一目瞭然だ。
中国は米国を上回る競争力をつけることを重視して、ハイテク分野での競争力向上に取り組んでいる。次世代通信技術(5G)、モバイル決済やクラウドファンディングなどのフィンテックビジネスの分野では、米国以上に中国の取り組みが先行していると考えられる部分が増えている。
足元の経済の成長性、政治的影響力の拡大ペースを考えると、米国よりも中国の競争力が相対的に優位となる展開も考えられる。それを巻き返す意味でも、米国は強いスタンスを示すことが必要だ。
一方、習近平国家主席は、国内きっての経済運営のプロを登用して強力な政策運営基盤を整備している。同主席が国内からの支持を獲得して支配体制を強化するためにも、相応の応戦が必要になる。当面、中国は低い姿勢で米国の出方をうかがうだろう。その時、米国が大人の姿勢で現実的な対応をとるか、それともさらなる圧力によってより大きな譲歩を求めるかが今後の展開を左右するだろう。
人材豊富な中国vs人材のいない米国の勝負
米国はどうすべきか
党大会と全人代が終了し、習近平国家主席は3期目以降も視野に入れた支配体制を整えた。その中で、経済運営を担当する副首相に構造改革の推進を重視する劉鶴氏が選出されたことは見逃せない。劉鶴氏はわが国のバブル崩壊後の経済をよく研究しているといわれる。
同氏は、構造改革を推進しつつ、慎重かつ緩やかな金融引き締めによる景気のソフトランディングを目指すだろう。そうした取り組みが進むことを考えると、中国が世界各国からの期待を集め、米国が取り込んできた世界のヒト(人材)・モノ・カネを吸い上げていく可能性はそれなりにある。
特に、先端技術の研究・開発を強化し、中国の競争力を引き上げることが重要だ。すでにアリババなどの本土上場が計画されるなど、グローバルな投資資金を中国に引き付け、金融市場の拡大と起業を支援することが目指されている。それは、2025年に製造業とインターネット技術などを融合し、経済強国を目指す共産党の計画推進に欠かせない。
一方、米国政府の中には、長期的な視点で国力を引き上げ、国際社会の信頼を獲得するための取り組みを進められる人材が見当たらない。コーンNEC委員長らが職を辞し、トランプ大統領の側近には強硬派が増えている。彼らは、1980年代の日米貿易摩擦の成功体験に基づき中国に圧力をかけて、意に従わせようとしている。
しかし、1980年代と現在の環境は異なる。中国に制裁をかければ、米国は消費者や企業が必要とするモノやサービスを手に入れづらくなる。米国が国際貿易体制の強化に背を向けるほど、中国になびく国が増え、米国の政治・経済・安全保障面での存在感が低下しかねない。
中国に対応するためには、米国が新しい産業の育成などを進め、これまで以上にイノベーションを推進することが必要だ。トランプ大統領は、それを十分に理解しなければならない。秋の中間選挙にばかり気を取られ、“短期的な視点”による経済運営を続けると、いかに強力な米国経済でも先行きの成長性を減殺することになりかねない。
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