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イオン、「無人店舗」構想始動…アマゾンに先駆け、小売業の発想を覆す可能性
http://biz-journal.jp/2018/03/post_22819.html
2018.03.29 文=真壁昭夫/法政大学大学院教授 Business Journal
イオン店舗(「wikipedia」より/あばさー)
最近、さまざまな分野でITを活用することが増えている。注目されるのは、人手をかけずに店舗の運営や物流をマネージしていこうとする動きが加速していることだ。
この分野で先行している一例が中国のアリババだ。無人スーパーだけでなく、同社は顔認証による決済システムなどを用いた無人レストランの運営を開始した。中国メディアの報道によると、同社は数年間で無人レストランを10万店舗に増やそうとしているようだ。無人レストランの経営にかかるコストは従来の4分の1程度で済むという。
ネットワーク技術を用いた省人化などは、多くの企業にとって無視できないチャンスであると同時に、脅威にもなっていくだろう。いかにして、ライバル企業よりも先に、新しいテクノロジーを導入し、他社が着手できていないビジネスを進めるかが、競争を左右する。そうした取り組みが進むにつれて、モバイル決済の導入などは不可避になるのではないか。国内ではセキュリティー面への不安などから慎重な意見があるが、果たしてその見解で今日のテクノロジーの開発競争に対応できるかは不透明だ。そうした不安を解消し、新しいテクノロジーの導入を進めたほうがよいように思える。
そうしたなか、テクノロジーの取り込みを進めて、コスト削減や、今後の成長戦略の推進につなげようとしているのがイオンだ。同社は中国で無人店舗運営のプロジェクトを始めるなど、新しい取り組みを加速させようとしている。それは、小売業界での競争環境を大きく変化させる可能性がある。
■無人店舗の運営に取り組むイオン
4月に、イオンはアリババが出資している中国のテクノロジー企業であるディープブルーテクノロジー(深蘭科技)と合弁会社を設立すると報じられた。ディープブルーテクノロジーは無人店舗を運営する基幹システム(プラットフォーム)である「quiXmart」を手掛ける企業だ。
quiXmartはコンビニなどの店舗運営システムであり、店舗の管理者はスマートフォンから常時店舗の運営状況を確認できる。具体的には、掌の静脈、顔認証などの生体認証によって消費者を識別する。店内では、人工知能(AI)によって商品の管理が行われ、客が商品を持って移動すると、購入したと認識される。購入金額は、アリペイで自動的に決済される。生体認証技術を用いた決済も可能だ。スマートフォンがなくてもよい。
ディープブルーが無人店舗運営を手掛けるセグメントは、コンビニなどの小規模の店舗を対象にしている。同社の資料を見ると、コンビニよりも規模の小さい、駅中のキオスク程度のものもある。さらには、自動販売機や飲料の冷蔵庫程度の規模の店舗もある。自動販売機がコンビニ化したという表現のほうがしっくりくるかもしれない。
この技術にイオンが注目したことは、興味深い。今後の経営戦略を考えた際、いくつかのインプリケーションが得られる。まず思い浮かぶのは、小型店舗の効率化を通した出店の強化だ。従来、イオンはショッピングモール、総合スーパー(GMS)など、比較的、売り場面積の大きい店舗の運営を軸にビジネスを展開してきた。これに加え、近年ではドラッグストアや「まいばすけっと」など小型の店舗も増えている。特に、ドラッグストアにはコンビニの機能が備わるなど、業態の垣根はなくなりつつあると考えられる。そこに省人化技術を導入することができれば、店舗運営の効率化だけでなく、地方での店舗運営など経営の選択肢が広がるだろう。
■無人化された移動店舗への期待
次に考えられるのが、テクノロジーを用いた新しいビジネス形態の創出だ。この点をイオンがどう考えているかは定かではないが、さまざまな発展性が考えられる。ひとつの可能性として挙げられるのが、“移動店舗”の開発だ。
わたしたちが買い物をする場合、店舗に行くことが当たり前だ。それに比べて、マンションの前に店舗が来る、駅の前の広場がスーパーになるという状況が実現すればどうだろう。従来よりも便利であることは間違いない。
イオンが合弁を組むディープブルーテクノロジーの技術と、コネクテッドカーのコンセプトを組み合わせて考えると、オフライン、オンラインにかかわらず移動式の無人店舗が実現する可能性がある。そのコンセプトが実現すれば、日用品などの買い物はより便利になるだろう。その消費体験は、イオンで買い物をしたいという消費者の心理を高めることにつながる。新しい発想を実現し、これまでにはない体験を消費者に提供することができれば、小売業界全体でイオンの競争力が高まることが想定される。
こうした可能性を考えると、小型店舗の分野から省人化、あるいは無人化に向けた取り組みを進め、生体認証を用いた決済システムを活用する意義は大きい。すでに中国で実用化されているテクノロジーを用いて将来的な応用の可能性を検討したほうが、経営上のリスクも抑えられるはずだ。
ネットワークテクノロジーの進化と普及によって、モノを仕入れ、店舗で売るという小売業界の基本的なビジネスモデルは、物流、店舗運営、テクノロジー開発をも含んだまったく新しいものに変わっていく可能性がある。言い換えれば、従来は小売業界に関係がないと思われていた分野が、今後の成長に無視できない影響を与えていく可能性がある。
■イオンのディスラプティブ・イノベーション
すでに上海では、スウェーデンの企業であるWheelysと中国の大学関係者が協力して、移動無人店舗である「Moby Mart(モビーマート)」が試験営業を行った。店舗の運営、決済方法だけでなく、スマートかつオートノマス(自律的)な移動システムの開発が、小売業界の将来を左右しつつある。
当面、イオンはディープブルーテクノロジーの技術を活用して、店舗運営にかかるコストの削減を目指すだろう。少子高齢化が進むなか、もし、イオンがアマゾンなどに先駆けて国内での無人コンビニの運営、あるいはモバイル決済を必要としない支払方法を導入するのであれば、他のライバル企業も類似のコンセプトの導入を目指す可能性がある。
省人化などを進めてコスト面での優位性を確保しようとする取り組みが経済全体で進むと、従来の発想に基づいた行動様式やマネジメントの発想は支持されづらくなるだろう。つまり、イオンが目指している取り組みには、テクノロジーを用いて従来の小売店舗運営などの発想を根本から覆す“ディスラプティブ・イノベーション=破壊的な革新”と呼ぶべき要素がある。
さらには、物流、交通などの社会インフラ、家電など、さまざまな分野で人工知能を搭載し、ネットワークにコネクトする機能を持つスマートなデバイスが社会に普及していく可能性がある。それとイオンの取り組みが結合した結果、移動式の無人店舗が実用化されるという展開は、空想の話ではなくなるだろう。
小売ビジネスは、わたしたちの生活にとって欠かせない。それだけに、同社が仕掛けるイノベーションが国内の小売りをはじめとする企業の経営、人々の発想や行動様式、価値観にどういった変化を与えるかは興味深い。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)
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