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自己破産者も急増「私はこうして奨学金を返せなくなった」 就職すれば大丈夫と思っていたのに
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54892
2018.3.25 岩崎 大輔 現代ビジネス
誰もが知る大手企業に入ったが…
「自分は奨学金をもらってまで大学に行くべきではなかったのかもしれませんね……」
襟元がほつれた白いセーターを着ながら力なく笑うのは、26歳のMさん。彼は、大学時に借りた奨学金の支払いに苦しめられている、「奨学金貧困者」の一人だ。
小学生の頃からスポーツに取り組み、スポーツ推薦で有名私大の心理学部へ進学したが、推薦とはいえ学費は一般生徒と同様に支払わねばならず、年間108万円の授業料、さらに入学金20万円も必要だった。
50代の父親は板金工として働き、年収は400万円ほど。パートで働く母親の年収は60万円程度で、とても100万円を超えるお金を用意する余裕はなかった。
経済的事情で大学進学を諦めたくなかったMさんは、日本学生支援機構(JASSO)から奨学金を借りることにした。毎月5万4000円を無利子で4年間、総額259万2000円借りることを選んだ。
大学進学への希望に満ちていたこの時には、まさかこの奨学金がその後の人生に大きな影を落とすことになるとは、18歳のMさんには知る由もなかった。
「奨学金を借りる時の面接のことはいまでも覚えています。『なんで借りるの?』『本当に必要なの?』と質問を次々に投げかけられ、圧迫面接のようでした。なぜ月5万円のコースを選んだのかと問われ、母が決めました、と返すと『自分が借りるんだよ。わかっている?』と。確かに、お金を借りることへの自覚が足りなかった、と言われればそうかもしれませんが……。
支援機構について思い出すのは、やはりその圧迫的な振る舞いです。その後、返済についての説明会が行われたのですが、大学の講堂に集められ、『あなた方が返さないと、後輩が困るんですよ』と言われて……僕たちが、お金を返さないことを前提としているようなものの言い方だったので、胸内で憤った記憶が強く残っています」
奨学金を借りながら、大学に通いつづけたMさん。就職活動では、奨学金の返済を念頭に起き、給与の高い大手銀行2社、不動産会社1社に狙いを絞った。
体育会出身で屈強な体つきのMさんは、銀行や不動産業と肌があったのだろう。3社ともトントン拍子で駒を進め、もっとも給与の高い不動産会社から内定が出た。4年生の5月のことだった。誰もが知っている業界大手だ。
入社後待っていたもの
福利厚生も手厚く、寮費は月1.5万円と格安。営業用の自動車を自分で購入する必要があるが、マイカー補助として月2万5000円支払われるなど、給与とは別に月7万円ほど支給された。
これならすぐに奨学金も返済できる――Mさんはそう感じていた。実際、奨学金を借りている人の中には「働き始めればすぐに返せるだろう」と思っている人は少なくない。しかし、「見通しが甘かった」と後悔する人が後を絶たない。
というのもMさんが入社したこの会社、給与は高くとも、彼はモデルルームの営業担当に配属されたのち、度重なる出費に頭を悩まされることになるからだ。
「たとえば飲みの席では、『支社長に男気見せろ』と一気飲みを強要されるのは当たり前。『一発芸しろ』『漫才しろ』など無理難題を告げられた。…飲み代は基本割り勘で、さらに新人は酔っ払った先輩を自宅に送らねばならないしきたりがある。
もちろん自分もお酒を口にしているために運転はできず代行を頼むんですが、それは新人が自腹で払わなければいけません。一回数千円ですが、新人にとっては大きな出費。接待ゴルフも自腹で、カツカツでした」
適応障害になって…
大手不動産会社の営業マンとして身だしなみにも気を配り、高価なスーツとクリーニング代はすべて自腹で、貯金もままならなかった。
「会社は『働き方改革』なんて言って、夜9時に営業所から退所しなければなりませんが、退所後は、隣の駐車場の車内で残業の続きをしたり、モデルハウスの中にある事務所で引き続き書類の作成をする日々でした。
休みでも電話に出なければならず、上司に休日、旅行に行く旨を伝えたのですが、温泉に入っている間の40分間に何件も着信履歴があり、慌てて掛け直すも大目玉を喰らいました。翌日、会社に行くと『電話ぐらい出ろよ!』と朝一で叱られました」
休みの前日には先輩が「俺は明日、どこどこでポスティング(不動産のチラシ配り)するけど、お前は?」と尋ねてくるので、Mさんも同調せざるを得ない。昼間には、先輩から急に「おまえ、どこどこでポスティングしてるなら昼飯一緒に食うか」と抜き打ちの電話もある。
「新入社員は仕事を覚えるのがまず先で残業代をもらうなんておこがましい」と説教され、月80時間を超えていた残業時間も、書類上では月30時間以下に調整された。
他の社員の前で怒鳴られるのは日常茶飯事で、「お前は発達障害だから診断書をもらってこい」と怒鳴られ、診断書を取りに行かされもした。結局Mさんは精神的に追い込まれ、入社後4カ月目に受けた健康診断で、甲状腺肥大化の診断を受ける。医者にかかると、精神科への通院を勧められ、適応障害の診断が下った。
「ところが治療中も上司から『いつまで休んでいるんだ』『甘えてんならさっさと辞めろ』と連絡が来ました」
病気が完治しないまま職場復帰をせざるを得ず、ミスをして怒鳴られる、を繰り返す。入社3年目の5月、自己都合退職となった。
「入社3年目で残業代込みで年408万円でしたが、上司との飲み会やスーツ代がかさんだため貯金はできず、退職した時点で、国民健康保険も払えないほど困窮しました。奨学金の返済は毎月1万4000円だったんですが、ついにこれも払えなくなってしまった。すると、奨学金返済の連帯保証人になっている父、保証人になっている叔父のところにも電話が行くようになりました」
働ける状況にないために、返済を待ってもらうように奨学金返還相談センターに連絡を入れた。自動音声案内に従い、15分も経過するとオペレーターにつながった。
「叔父には請求しないで欲しい、と伝えても『返済をすれば連絡はしない』『返済をしなければ督促状は止められない』と返され、現在の自分の経済状況や身の上を説明しても『困っているのはMさんだけじゃない』と突き放され、最後には感情的に『返済して』と怒鳴られるのです」
適応障害はさらに悪化。その後何度かセンターに連絡し、今の状態では到底返済できない旨を繰り返して伝えると、医師から診断書をとって、「傷病」という扱いにすれば猶予申請をすることを教えられた。
「何人かのオペレーターと話したのですが、『返しなさい』と言われるだけ。それも、なぜかみな一様にヒステリックで……」
自己破産をすると…
結局、猶予申請はとれたので、当面の督促は止んだ。だが、最長で10年の猶予が与えられるだけで、220万円の奨学金は残ったまま。現在、スポーツジムでアルバイトのインストラクターとして働くも、手取りで月11万円。祖母の家で暮らしているために家賃はかからないが、生活再建はまったく見えない。
「今の職場では、誰からも怒鳴られずに働ける。その点には感謝しています。けれども、ここで社員になれても年収は240万円ほど。奨学金は支払いが猶予されているだけで消えたわけではない。
もちろん自分の考えが甘かった、ということもありますが、奨学金返済のことを考えて、ただ給料が高いというだけで、体質に合わない会社に入ってしまったのが失敗でした。奨学金をもらったが故に人生を棒に振ってしまったのか、と問い続けています」
自分の選択を責めるMさんだが、しかしながらこうしたJASSOの奨学金制度が前提としているのは、「働き始めれば右肩上がりに給与が増える」「会社が定年まで面倒を見てくれる」というもので、雇用環境が急変しているいまは、この前提がそもそも崩れている。
NPO法人POSSE代表で『ブラック奨学金』著者の今野晴貴氏によると、Mさんのように奨学金が払えなくなる人は急増中で、自己破産に陥る人もいるという。
「現在の雇用の3割が非正規職で、年収300万円以下です。それに正社員といっても飲食、外食産業など3年以内の離職率が5割に達するような企業に入社する人も多い。短期で使い潰され、収入が低いと、奨学金を借りていた人などはすぐに返済に行き詰まる。
驚くことに、JASSOに情報公開請求をしたところ、奨学金が払えずに、自己破産する元学生が年600人もいたのです」
悲劇的なことに、自己破産すればそれで奨学金の返済から逃れられる、というわけでもないのだ。奨学金を借りる際、保証人と連帯保証人を用意せねばならないが、借りた本人が自己破産をすると、容赦なく保証人・連帯保証人に催促が及ぶ。奨学金問題の相談も行っている、前出の今野氏が言う。
「うちに来る奨学金の相談の6割が、借りた本人ではなく保証人や連帯保証人になっている人からです。借りた本人が突然自己破産をして、延滞金で膨れ上がった借金の返済を、連帯保証人となった両親や親族が突如求められるのです」
Mさんは自己破産をすることも考えたが、しかし父親や叔父が返済することになるのは忍びないと思い、自己破産はしていない。返す当てもなく、自己破産もできないという状況に陥っている。
奨学金の返済に悩む社会人は増える一方だ。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう』著者の本山勝寛氏はこう指摘する。
「貸与型奨学金は大学進学が困難な学生の将来を拓くという重要な役割を担っているものの、現実として卒業後に正社員になれなかったり、大病を患ったり、なにかの事情で仕事を辞めなければならなかったりした場合、一気に『返済困難』となることが多く、非常に不安定な制度です。
返せなくなった場合にいきなり一括請求の書面を送る、ということではなく、『どのような返済計画なら返せるのか』とJASSO側が借主と丁寧にやりとりをし、無理のない返済計画をともに確認したり、返済猶予制度を利用するよう促したり、新設された『所得連動変換奨学金』の制度などの説明も行うべきではないか」
卒業シーズンの真っただ中。今年もまた、新たに「返せない借金を背負った社会人」が生まれている。
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