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仮想通貨に代わる、実用性の高い「デジタルマネー」とは何か
http://diamond.jp/articles/-/164007
2018.3.20 真壁昭夫:法政大学大学院教授 ダイヤモンド・オンライン
不安定な仮想通貨から
デジタルマネーへ
1月下旬、国内大手の仮想通貨取引業者であるコインチェックから580億円に相当する仮想通貨のNEM(ネム)が流出した。その事件以降、仮想通貨そのものや取引手法などへの不安が高まっている。
これまで、仮想通貨の代表格であるビットコインは、政府などの管理を受けず、それぞれ個人の考えや心理に基づいて取引されてきた。そのため、取引業者の経営体制やシステム運営などによる問題が発生しやすい。
ただ、ビットコイン普及の副産物として、各国政府や民間企業などが“ブロックチェーン”の大きな可能性に気づくことができた。長い目で見ると、何も信用の裏付けがなく、価値が不安定な仮想通貨が使われることは難しいだろう。
重要なポイントは、仮想通貨の延長として、主要国の中央銀行が法定通貨としてのデジタルマネーの実現に向かって歩み始めていることだ。その背景には、分散型のネットワーク技術である“ブロックチェーン”が、信じられないような潜在力を持っていることがある。
各国の中央銀行が取り組む“デジタルマネー”が実用化されると、われわれの生活も大きく変化することが考えられる。“デジタルマネー”を実現するためには、まだ多くの問題を解決することが必要だ。
しかし、恐らく、足元の変化のスピードを上げていけば、問題を解決するのにそれほど大きな時間は必要としないかもしれない。少なくとも、法定通貨としての“デジタルマネー”への変化が着実に進んでいることは間違いない。
長期間維持することは
難しい仮想通貨の価値
現在流通している多くの仮想通貨は、インターネット空間で発行や取引が行われる通貨を指す。取引されている通貨は、政府や、中央銀行が発行したものではない。信用力に何らかの裏付けがあるものではない。
そのため、価値は人々の人気に依存し、大きく変動する。昨年末1ビットコインの対円での交換レートが200万円を上回ったのち、足許では90万円程度まで急落した。価値が大きく変動するため、どうしても投機の対象となりやすい。また、コインチェックのように、取扱業者のリスク管理の不備などで、多額の仮想通貨が不正に流出するリスクもある。
ただ、仮想通貨にはメリットがあることも確かだ。
特に、送金などにかかるコストの削減は大きい。例えば、フィリピンでは人口の1割程度が海外に出稼ぎに出ている。彼らの仕送り額はGDPの約10%に達する。出稼ぎ先で常に銀行で口座を開設し、母国の家族らに送金ができるとも限らないだろう。
それに比べ、スマートフォンを活用してビットコインなどの仮想通貨を購入し、それを本国に送金することで送金の手数料を抑えることができる。これは大きい。今後も、送金などの分野で仮想通貨が支持される可能性はある。
問題は価値が不安定であるという点だ。それは、お金としては致命的だ。仮想通貨が投機の対象として扱われた結果、各国の法定通貨に対する交換レートが大きく変化し、保有すること自体が危険だという見方が増えるかもしれない。
また、マネーロンダリングの防止などを理由に規制が強化される可能性は高まっている。ビットコインの場合、発行上限が約2100万枚と制限されているため、流通にも限界がある。長い目で考えると、価値の裏付けのない仮想通貨が永続的に利用されるとは考えづらい。仮想通貨に対する注目度が大きく落ち込む可能性もあるだろう。
“ブロックチェーン”を活用し
“デジタルマネー”に向かう中央銀行
仮想通貨の登場は、ある意味で、お金や金融のあり方を考え直す機会にもなった。仮想通貨と、それを支えるテクノロジー=“ブロックチェーン”を明確に峻別して考えるべきだ。
最近、ビットコインの発行と取引を支える“ブロックチェーン(分散型の元帳技術)”を活用し、金融取引にかかるコスト削減などを目指す企業などが増えている。ブロックチェーンの活用がフィンテック(IT技術と金融ビジネスの融合)への取り組みを促進しているといっても過言ではない。
中央銀行も、その技術を応用して法定通貨のデジタル化=“デジタル通貨”の開発に取り組んでいる。ここでは、“デジタルマネー”を中央銀行が開発する法定通貨のデジタル版として扱う。
すでに、大手商業銀行なども価値が安定した仮想通貨の開発に取り組んでいる。この状況が続くと、法定通貨と民間企業の信用力を裏付けとした仮想通貨などが混在する状況も考えられる。
仮想通貨の出現によって、新興国などでは法定通貨の利用が減るかもしれない。そうなると、当該国の経済・金融システムの安定を目指す金融政策に支障が出ることも考えられる。ある意味では、仮想通貨が人気を集めたことで中央銀行が“デジタルマネー”の発行を目指すのは自然な流れかもしれない。
すでに、現金の流通量が減少しているスウェーデンでは、中央銀行がスウェーデン・クローナのデジタル通貨(e-krona)の開発を進め、規制やシステム管理に向けた取り組みを進めてきた。今年中にも、デジタル通貨発行の可否が判断される予定だ。それが実現すると、2019年にはデジタル通貨の実証研究が進み、管理技術や組織体制の整備計画がまとめられる。
また、中国のように、自国からの資金流出を防ぎたい国にとってはデジタル通貨の実現は欠かせないだろう。中国人民銀行はデジタル通貨である“法定数字貨幣”の研究を進めている。2017年、人民銀行傘下のデジタル貨幣研究所がブロックチェーン関連で世界第3位の特許件数を誇ったことを見ても、中国は金融システムの管理強化のためにデジタル通貨の開発を目指している。
ネットワークサイエンスがもたらす
金融イノベーション
スウェーデン中央銀行は、ブロックチェーンなどに関するハイテク企業との協働にも積極的だ。今後、“ブロックチェーン”などのネットワークシステムを応用し、金融サービスや金融システムの高度化を目指す考えは強まっていくだろう。それは、社会全体でのイノベーションにつながる可能性を秘めている。
デジタル通貨が普及すると、現金を持ち歩く必要性は低下し、かなりの決済がインターネット上、あるいはモバイル決済で成立する可能性がある。その場合、銀行のATM・支店などが必要性を失う。
小口の資金提供者と資金需要者がシステムによって直接結びつけられる、クラウドファンディングが整備されると、これまでの金融仲介機能の重要性が低下することが想定される。その場合、ネットワークによって信用力の評価を行い、出資者を募ることで銀行などの機能が代替されていく可能性は無視できない。
わが国では、現金志向が強く、クレジットカードでの決済割合も諸外国に比べて低い。そのため、今のところ、“デジタルマネー”を導入する必要性は高くないとの指摘がある。ただ、海外からの旅行者の増加によって、従来にはない発想が持ち込まれている。民泊、ライドシェア、モバイル決済などはその代表例だ。この傾向は続く可能性がある。
海外ではブロックチェーン技術を応用して決済コストの削減、期間の短縮化など金融サービスの高度化に向けた取り組みが、わが国以上に重視されている。民間の金融テクノロジーの高度化は金融の在り方を変え、中央銀行にも変化への適応を求めるだろう。
世界全体でデジタル通貨や、新しい金融ビジネスの創出に向けた取り組みが進みつつある。これまでに起きた仮想通貨の取引システムの問題、規制に関する論点を、新しい金融のあり方を目指す議論につなげていくことが必要だ。
(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
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