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フランス政府が描く、日産・支配シナリオ…「日産・三菱自の経営統合+ルノー傘下入り」案も
http://biz-journal.jp/2018/03/post_22620.html
2018.03.13 文=編集部 Business Journal
カルロス・ゴーン氏(写真:AP/アフロ)
フランス自動車大手ルノーは2月15日に開催した取締役会で、カルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)の再任を決めた。6月の株主総会を経て正式決定する。任期は4年。
取締役会は続投のゴーン氏に「日産自動車と三菱自動車を含めたグループ戦略の指揮監督を優先する」よう求めた。空席となっていた最高執行責任者(COO)には2月19日付でティエリー・ボロレ最高競争責任者(CCO)を充てた。これにより、ボロレ氏は“ポスト・ゴーン”の最有力候補に浮上した。
今回の決定の背景には、ルノー株式の15%を保有する大株主であるフランス政府、とりわけエマニュエル・マクロン大統領との確執が複雑に絡み合っている。
ゴーン氏とマクロン大統領は因縁の間柄だ。マクロン大統領が経済産業デジタル相時代に、フランス政府はルノーの株式を買い増し、ゴーン流経営に異議を唱えた。ゴーン氏の高額役員報酬批判の急先鋒だったことでも知られている。
15年には、2年以上保有する株式の議決権を2倍に増やすことが可能となるフロランジュ法を使って議決権を増やし、ルノーと日産の経営統合を強引に進めようとした。しかし、この時は、日産がルノーへの出資比率を引き上げて対抗することを検討するなど、激しい抵抗に遭って断念した。ゴーン氏が西川氏を日産の後継社長に指名したのは「この時の交渉力を買ったから」(日産役員OB)といわれている。
フランスでは企業経営者の高額報酬に対する批判が高まっており、2016年に約700万ユーロ(約8億6800万円)だったゴーン氏の役員報酬をフランス政府は問題視していた。ルメール経済・財務相は「ゴーン氏は続投に当たり、自身の報酬の3割減に応じた」ことを明らかにした。
また、フランスの失業率は10%と高いままだ。そのため、マクロン大統領は経済再生を最優先に掲げており、ルノーの利益を守ることはフランス経済にとって不可欠だ。ルノーは日産に43.4%出資。日産は三菱自株式を34%保有している。
「フランス政府は、ゴーン氏がやがて退任の時を迎えてもルノー・日産連合が存続できるよう、日産との連携強化をルノーに迫ってきた。マクロン大統領は13日、『ルノーの利益や企業連合、フランス国内の工場を守る明確なロードマップ』を求めると表明した」(2月15日付ロイター)
マクロン大統領は、ルノーの生殺与奪権を握る権力者になり、「ゴーン氏のCEO再任というもっとも効果的な人質をとった」(現地の全国紙記者)と評される。ゴーン氏のCEO再任を認める代わりに、4年間の任期中に「企業連合を不可逆的なものにするために確実な歩みを進める」(発表文)ことを求めた。簡単に言えば、「日産・三菱自を経営統合して、ルノーの傘下に置け」という使命を与えたのだ。
■ルノーと日産の経営統合の可能性
「ルノーと日産の完全な統合の可能性もある」と現地の自動車アナリストは分析しているが、事はそう簡単ではない。
ルノーが日産を完全子会社にするには困難がつきまとう。なぜなら、ルノーにとって日産の企業規模は大きすぎるからだ。“小が大を飲み込む”といったレベルをはるかに超える差がある。
合併の原則から考えると、中長期的に見れば従業員数が多く、さらに稼いでいる側が主導権を握ることになる。つまり、日産が主導権を持つことになる可能性が高い。フランス政府は受け入れられないだろう。
ゴーン氏は2月16日、パリで開いた記者会見で、「ルノーの日産・三菱三社連合(アライアンス)は持続可能かという疑問に答えていきたい。ルノー、日産、三菱に加え日仏政府の支持が必要だ」と語った。さらに「フランス政府が株主である限り、日本政府は現在の連合より緊密な構造を認めないだろう」と付け加えたと現地では報じられた。
ゴーン氏は「フランス政府がルノーの株主である限り、ルノーの傘下に日産を置く可能性も、ルノーが日産を合併する可能性も限りなくゼロに近い」と言いたかったのだろう。それにもかかわらず、ゴーン氏の“天敵”といえるマクロン大統領はCEOの続投を認めた。
「ゴーン氏以外では日産を抑えられないという判断だろう。彼は18年間、日産を支配してきて、すべて思い通りに操れる。フランス政府はゴーン氏を信用していない。ルノーのことだけを考えれば、今回で交代させたかった。しかし、日産をコントロールするためには“重石”が必要と判断した」(日本の自動車メーカーの首脳)
ルノーの17年12月期通期の営業利益は38.5億ユーロ。日産のルノーへの利益貢献は27.9億ユーロで、前期より60.3%増えた。日産がルノーの儲けの7割以上を叩き出しているという、“おんぶにだっこ”の構図はより深化している。ゴーン氏が退任することで、日産に好ましくない動きが出ることを避けたというのが実情だ。
このような事情から、次のような予測をする向きもある。
「日産の社長は、比較的早く交代する可能性があるのではないか。ゴーン氏の日産会長退任とセットで新しい社長を送り込めば、日産に対してフランス政府のコントロールが利く。フランス人でなくてもいい。フランス政府の意向を尊重して、“ルノー・ファースト”を実践してくれる経済人の“天下り”ならOKということだろう。日本人以外が日産の社長になる時がゴーン氏退任の時となる」(国内の自動車アナリスト)
ルノー・日産・三菱自連合が“ルノー・ファースト”に変質することになれば、アライアンスと呼ばれてきた、ゆるやかな連合体は崩壊する。3月で64歳になるゴーン氏に過度の依存を続ける3社連合は厳しい経営のカジ取りを迫られることになる。「ゴーン氏はルノーのCEOの任期4年はまっとうしない」(現地の全国紙記者)との見方も広がっている。一両年のうちに、ゴーン氏のCEO続投の際の“密約”の結果を出さなければならないということだ。
もっとも、ゴーン氏自身が“マクロン・シナリオ”に納得しなければ、日産の日本人社長が続き、ゴーン氏も居座ることになる可能性が高い。
(文=編集部)
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