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輸入関税でトランプ氏大暴走!? 貿易戦争勃発か?
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180312-00000058-sasahi-int
AERA 2018年3月19日号
「兵器の原材料となる鉄鋼を他国から買いすぎている現状は、安全保障問題にもつながる」と主張するトランプ氏 (c)朝日新聞社
トランプ氏は中国を非難するが、米国への輸出量は少ない(AERA 2018年3月19日号より)
「またトランプがやらかしてくれちゃってるよ……」
3月1、2日の2日間で日経平均株価は700円以上も下落。東京・兜町ではつぶやきとため息が蔓延した。
トランプ米大統領が1日、突如打ち出した鉄鋼25%、アルミニウム10%の輸入関税措置。これに即反応したのは金融市場だった。景気停滞への懸念からドル売りが加速し、株式市場の売りを誘った格好だ。
輸入品の価格が上がれば、米国メーカーに値上げ余地が生まれる。米国内の鉄鋼生産設備の4分の1が休止している現状を打開するための強硬策だろう。
さらにトランプ氏は5日、輸入関税は「新しい公平な協定が署名された場合に限って解除する」とツイッターに投稿。NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉でメキシコやカナダから譲歩を引き出すため、貿易戦争の火種をまいて世界経済を人質に取った形である。
そして8日、大統領告示への署名が完了し、正式決定──。メキシコとカナダは当面除外となった。新たな関税は今月23日から適用される。
トランプ氏の最終的な標的は中国だろう。2月21日に議会提出した経済報告(通商政策分野)では「グローバル市場の理念の機能を害している」と中国を名指しで批判。関税表明時には「中国が値段の安い鉄鋼製品を過剰供給していることこそ米国の損失」と強調している。
本当に中国は“米国の損失”になるほどの供給をしているのか。そこで世界各国の鉄鋼生産量と米国への鉄鋼輸出量を調べた。確かに生産量は強烈に多いのだが、対米への輸出量はランキング圏外……。トランプ氏の論調には無理がある。
日本への影響だが、米国向け鉄鋼輸出量(172万トン)は額に直すと2134億円で、鉄鋼輸出額全体の1割未満。鉄鋼輸出額は日本の輸出総額の4%なので、仮に対米輸出が全部止まっても、全体で見れば0.3%程度の減少にとどまる計算だ。
一方、アルミニウムの製錬設備が日本から消えて4年が経過する。アルミは「電気の缶詰」と呼ばれ、慢性的に電力料金の高い日本では産業として成り立ちにくい。対米輸出額は約200億円で、関税の影響は軽微。
だが、影響が甚大な国は当然ある。欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は「断固とした対抗措置を取る」と発言し、オートバイのハーレーダビッドソンやリーバイスのジーンズなどへの輸入関税導入に触れた。中国もEUと共同で対抗措置を取る方向だ。このまま欧米や中国が互いに高い輸入関税をかける貿易戦争となれば、どうなるか。
「最悪の場合、リーマン・ショック級の不況が予想される」と語るのは、第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストだ。
「貿易が滞って生産が落ち込み、さらに消費も減退する悪循環に陥るリスクがある」(永濱氏)
米国への対抗策として各国で高い輸入関税がかけられるようになると、モノの流通が減り、経済がうまく回らなくなる。経済が減速すれば当然ながら世界的な株価下落は避けられない。
「世論調査より株価を気にする」とされるトランプ氏のこと、NAFTA交渉でカナダなどが妥協すれば、輸入関税はあっさり引っ込めるかもしれない。だが、11月には中間選挙を控えており、トランプ氏率いる共和党陣営は苦戦が予想される。
「貿易や税、移民、外交問題についての全ての決断は、米国の労働者や家族の利益のためになされる」
昨年の大統領就任式での演説をトランプ氏は忠実に実践しているようだ。(経済ジャーナリスト・大場宏明)
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