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世田谷・練馬が危ない!「2022年問題」で大暴落するのはこの地域 「生産緑地法解除」の影響をご存じか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54060
2018.03.06 週刊現代 :現代ビジネス
農地が次々と売られる
東京都世田谷区等々力。渋谷から電車で20分ほどの東急大井町線等々力駅を降りると、23区内とは思えないほどの自然が残されている。
駅から徒歩数分の等々力渓谷近くで、500坪の畑を耕す高齢女性がこう話す。
「主人も亡くなり、うちに跡継ぎはいません。私にとってこの畑も家も、かけがえのない宝物のようなものです。戦争のあった頃だって、ずっと畑を耕してきたんですよ。
ところがこれから『生産緑地』の指定が解除されると、途端に支払う税金が大きくなります。畑を維持することなど、とてもできません。いくら頑張って野菜や果物を作っても値段が安すぎます。時給に換算すれば、100円にも満たない。
宅地と同じだけの固定資産税をかけられたら、農業で生きていくことなどできません。実際、周辺にこれまであった畑はどんどん姿を変えて、マンションや分譲住宅が建っています」
「生産緑地法」による指定が解除される2022年が迫ってきた。市街化区域内の農地が、農業を続けることを条件に「生産緑地」に指定されたのが、'92年のこと。
生産緑地に指定されると、固定資産税は減額され、相続税の納税猶予を受けることも可能だった。その期限は30年。つまり、2022年以降、指定を外れた生産緑地は宅地なみの固定資産税を支払う義務がある。
たとえば、評価額1億円の土地の場合、生産緑地なら年額7000円だった固定資産税が、年額46万円に跳ね上がる。生産緑地ならこれまで支払いが猶予されてきた相続税も一般の宅地と同じようにかかるようになる。
政府は'17年6月に農業を続けることを条件に10年ごとの延長を可能にする法改正を行ったが、問題の先送りにすぎない。
世田谷区尾山台で果物を栽培する50代男性も困り果てている。
「生産緑地の指定解除について、仲間たちと勉強会を開いたり、対策を考えたりしましたが、どうにも解決策がない。
うちは10年の延長申請はできるものの、その先どうするか。固定資産税を払いながら、農業を継続することなど、絶対にできません。先祖代々の土地とはいえ、負の遺産を次代につけ回すことはできないですよ」
今後、こうした生産緑地が次々と放出される。「平成27年都市計画現況調査」によれば、生産緑地は全国で1万3400ha以上にも及ぶ。東京都だけでも3296haある。
仮に都内にある生産緑地がすべて宅地化された場合、約25万戸の一戸建て住宅が建つ広さに当たるという。
その結果生じるのが不動産価格の大暴落で、これが「2022年問題」と呼ばれる。農地の売却を決めた世田谷区烏山に住む農家の男性の話。
「父親が亡くなれば農地の半分は売ることになっています。そのために土地の3方向に道路をつけて、便利にしました。少しでも価値のあるうちに対処しないと、売れるものも売れなくなりますからね」
大手住宅メーカーも指定解除された生産緑地にアパートを建てようと、土地の売り出しを虎視眈々と狙っている。
世田谷区を担当する営業マンが言う。
「世田谷区はまだまだ利便性の高い土地がありますし、需要はあります。生産緑地の解除は意識して、地主に営業をかけています。それよりも地主が病気だとか、そろそろ亡くなりそうといった情報のほうが有益ですが」
「緑が多い」のがマイナスに
当事者にとっては切実な問題だが、我先にと農家が売却を急ぎ、ハウスメーカーがどんどん住宅を建てていけば、過剰に物件が供給され、市場はさらに飽和する。
相続に関する専門家集団「アレース・ファミリーオフィス」代表の江幡吉昭氏が言う。
「今後、税金が宅地並みになるとわかれば、生産緑地に指定されている農家が、先を争って売却に動き出すことも考えられます。
東京23区内で生産緑地が多いのは練馬区(189ha)、世田谷区(95ha)、江戸川区(64ha)ですが、こうした場所で建売住宅やアパートが大量供給されると、一気に地価が下がるリスクがあります」
高級住宅地として知られる地域も、生産緑地問題と相まって、不動産価格が下落することは避けられないという。
「たとえば成城学園は田園調布と並ぶ高級住宅街ですが、近年は高齢者と子供の街になっています。働き盛りの富裕層が住みたい街ではなくなりつつある。そうなると街に活気がなくなります。世田谷区の住宅地は駅から離れた場所も少なくありません。
現役の資産家は忙しく、職住近接へのこだわりが強い。相続などでまとまった土地が出ても買い手がつかず、価格が大きく下落するリスクがあります。そこに生産緑地問題という不安材料が重なれば、地価の下落圧力が強まるのは間違いないでしょう。
世田谷区と大田区にまたがる田園調布エリアも同様です。今の現役世代は不動産に同じ金額を出すのなら、維持が面倒な戸建てよりも都心の高級マンションの利便性を取る傾向があります。
消費者のニーズに合わなくなった高級住宅地のブランドが曲がり角に直面しているのは間違いない」(江幡氏)
地価下落に見舞われるのは、世田谷区だけではない。住宅地として人気の高いエリアの不動産価格が下がると、その周辺にも影響を及ぼす。
「世田谷区の不動産価格が大きく下がれば、新しく住人が移ってきますから、その周辺の杉並区や調布市などの地価も下がって、負のスパイラルに陥りかねません。
こうした地域に不動産を所有している人で、売却を検討しているのなら、本気で準備を始めたほうがいいでしょう」(住宅ジャーナリスト・山下和之氏)
東京以外の大都市でも問題は深刻だ。神奈川県横浜市は307ha、大阪府堺市は169ha、愛知県名古屋市は275haの生産緑地を抱え、この3市だけでも実に東京ドーム160個分に及ぶ。
緑が豊富で住みやすいと思われてきた環境ほど生産緑地が多く、それが宅地に転換されることで地価大暴落の引き金となる。
前出の烏山の男性は、「都心に近いにもかかわらず、緑が多いということで地域のイメージも資産価値も上がっていると思うのですが、このままでは農地を売却せざるを得ない。住みやすい住宅地が、今後はただの殺風景な住宅街になってしまうのではないか」と心配する。
それでも住民がいればまだいいほうだろう。行政が何もしなければ、無人のアパートが密集するだけの「悪夢」のような光景が生まれかねない。
「週刊現代」2018年1月20日号より
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