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米経済の好調は続くのか、パウエルFRB新議長の議会証言に注目
http://diamond.jp/articles/-/160995
2018.2.24 三井住友アセットマネジメント 調査部 ダイヤモンド・オンライン
ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)新議長 Photo:AFP/AFLO
政府封鎖や株価大幅下落を
既に乗り越えた米国
皆さんこんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。
米経済が、好調を維持しています。1月下旬には予算をめぐって議会で与野党が対立し、一時的な政府閉鎖があったり、金融市場では長期金利の上昇を受けて株式市場は一時大幅に下落したりしました。しかし、株式市場は既に下落の半分を埋めるまでに反発しており、経済も1〜3月期GDPはアトランタ連銀によると、前期比年率で3.2%増が見込まれています(2月16日現在)。
来週は、パウエル新米連邦準備制度理事会(FRB)議長が行う初めての議会証言や、個人所得・支出、個人消費支出物価データなど、今後の米経済や金融政策運営を占う上で重要なイベントが予定されているので、今回はこれらの話題を取り上げます。
パウエルFRB新議長は、イエレン前議長の後を継いで2月5日に就任式を行いました。引き続き利上げやバランスシートの縮小といった金融政策の正常化を進めていくと見られますが、その運営もイエレン前議長にならい、市場との対話を重視して、慎重にゆっくりと行うものと考えられます。
ただ、ここで一つ注意しておきたいことがあります。慎重なことに変わりはないのですが、過去の経験則ではFRB議長が交代すると、その後、金融市場で動揺が起こるということです。
例えば、1979年8月から議長を務めたポール・ボルカーは、就任直後から積極的な金融引き締めを行い、その結果、米株が短期間のうちに10%も調整する事態が発生しました(ボルカー・ショック)。87年8月から議長を務めたアラン・グリーンスパンの時は、11月にブラックマンデーが起こりました。2006年2月に議長に就任したベン・バーナンキ時代には、2年後にリーマン危機が発生しました。
これらは、その時々の経済・金融環境がたまたま金融市場にとって向かい風的な状況だったということもありますが、金融市場は“分からないこと”を極端に恐れ、嫌がるという習性があり、それも大きく作用していると思われます。
FRB議長の代わり目
半年に一度の「議会証言」に注目
通常、金融市場は、先々の経済情勢がどうなるのかを織り込みながら、日々変動しています。その中で、中央銀行の金融政策は、最も重要な変動材料の一つです。FRBは議長を中心に金融政策を策定し、同時に市場と対話を行いますが、市場はFRBからの情報発信や経済指標などの動きを基に、中央銀行の先々の金融政策を考え、それを自分たちのポジションに反映させます。
例えば、「今、FRBが最も重視していることは金融市場の安定性だから、インフレが目に見えて上がってこなくても、マーケットが安定している間は緩やかな利上げを続けるだろう」などと考えて、投資の意思決定を行い、ポジションを決めるわけです。
では、FRB議長が代わるとどんな影響があるのでしょうか。
経済や金融市場に変化がなければ、FRBの金融政策に対する市場の見方は変わりません。ただし、経済指標や金融市場は、上にぶれたり下にぶれたりしながら、時には想定を超えた変動を見せます。そうしたタイミングで、新しい議長のコメントが以前の議長のコメントと異なったニュアンスを伴うと、市場は新しい議長がどういった意思決定を行うのかと迷います。
そうした状況で、もし、持っているポジションが過大になっていれば、それを中立に戻すか、ポジションを解消するかという選択を迫られ、結果として金融相場が変調をきたすことがあります。これが、FRB議長が代わってすぐの段階で市場が荒れやすくなると、多くの人が考える背景です。
FRBは、米国の中央銀行として金融政策を決定していますが、その決定は米経済や金融市場に大きな影響を及ぼします。そのため、半年に一度、米上下両院に金融政策に関する報告書を提出し、議長による説明を行っています。これがいわゆるFRB議長の「議会証言」です。ここでは、その時々の経済の見方や、金融政策に関する考え方が説明され、議会からの質問を受け付けます。
パウエル新議長にとって初めてとなる「議会証言」は2月28日に下院で行われます。ちょうど金融市場が動揺を経験した直後だけに、自分の考えを議員だけでなく市場関係者に伝えるいい機会になると見られます。
もしここで、パウエル議長が賃金やインフレの上昇について懸念していると取られるような発言を行えば、市場は今後、FRBの利上げペースが速まると捉え、市場金利が上昇し、株式が下落するきっかけとなりかねません。
現在の米経済は、まだそういった状況には陥っていないと見られるほか、パウエル議長も軽率な発言は行わないと考えられますが、注意は必要です。
2月の株価急落は
トランプ財政が原因だった
米経済は、09年6月に景気の底をつけてから、既に9年目を迎えています。いわゆる景気拡大後期に入っていると見られ、通常ならば次の景気後退に備えたいところです。金融政策であれば、政策金利を一定以上に引き上げて、できるだけ将来の利下げの余地を確保したいでしょう。今のFRBの利上げは、景気がいい時に必要以上の金融緩和を行わないようにするための金融政策の正常化の意味合いに加え、将来への備えを行っていると言えます。
財政政策の観点でも、同様のことが考えられます。つまり、経済の調子がいい時にできるだけ財政を健全化し、次の景気後退期に財政支出を増やせるようにすることが望まれます。
ところが、これを狂わせるのがトランプ政権です。トランプ政権は、昨年末に大幅減税を決定したため、これによって財政赤字の拡大が想定されています。また、米議会は、今年2月に入ってから歳出上限の引き上げを合意しました。これにより米国の財政赤字は、大きく拡大する可能性があります。また、経済がほぼ完全雇用の状況で財政刺激を行い、景気が過熱すれば、賃金が上昇しインフレが高まり、FRBが利上げを急ぐ状況になりかねません。
2月の長期金利の上昇と株式の急落は、こういったリスクを相場が敏感にかぎ取ったために起きたと考えることができます。
もちろん、減税やインフラ投資などの税制支出の拡大によって、企業が事業環境の改善を感じて取って積極的に設備投資を行い、結果として生産性が高まって、賃金を上げてもインフレにもつながらず、コスト増による利益の圧縮にもつながらない…という可能性はゼロではありません。
マクロ経済の教科書的な見方をすると、総供給曲線が右にシフトすることによって、低い物価と、より大きい経済水準を達成する可能性もあります。したがって、現時点ではトランプ財政はダメだと決めつけることはできません。企業がお金を生産性の向上に使うかどうかを注意深く見ていく必要があります。
しかし、財政政策によって景気がより強くなり、財政赤字も増える可能性が高まると、少なくとも金利は、以前の想定よりも高めに推移することになります。金利水準がどの程度まで上がるのか、どういった上がり方をするのかは、金融市場にとっての懸念となります。結果として市場の変動は、これまでよりも大きめに推移すると考えた方がよさそうです。
最終的に政策金利や長期金利の水準を決めるのはインフレです。まだエコノミストの間でも見方は固まっていませんが、昨今のAIやビッグデータなどを活用した新しい情報技術の活用によってインフレ率が上がらなければ、あるいは上がったとしても度合いが抑制されるのであれば、長期金利はあまり上がらずに、金融市場全体も落ち着いた動きを見せると思われます。
なお、3月1日には、個人所得や支出と個人消費支出デフレーターが発表されます。個人消費支出デフレーターは、GDPを構成する消費活動全般にかかる物価上昇を表すもので、CPI(消費者物価指数)とともに、米国のインフレを表す代表的な指標です。
前回発表された12月分は前年同月比で1.7%上昇しました。FRBのインフレ目標は2%ですから、今回発表される1月分でも同じような数値が出れば、市場に対する影響はほとんどないと見込まれます。
市場のコンセンサス予想は12月と同じ、前年同月比1.7%増となっています。三井住友アセットマネジメント調査部も前回に近い、比較的落ち着いた数値になると見込んでいます。
(三井住友アセットマネジメント 調査部長 渡辺英茂)
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