http://www.asyura2.com/17/warb21/msg/892.html
Tweet |
米国は中東で軍事的な緊張を高める一方、イランに経済戦争を仕掛けている
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201805060000/
2018.05.06 櫻井ジャーナル
アメリカ海軍の空母ハリー・S・トルーマンを中心とする艦隊が4月下旬に地中海へ入った。シリア、イラン、ロシアなどへ軍事的な圧力を加えることが目的だが、それに対してロシアは武器/兵器を含む物資をシリアへ運び込んでいるとも伝えられている。シリアの北部ではフランスやイギリスも動きを活発化させ、南部ではイスラエルが影響力の拡大を狙う。
アメリカをはじめとする侵略勢力が送り込んだジハード傭兵は壊滅状態で、アメリカ軍とロシア軍が直接対峙する情勢になってきた。ダマスカス攻略の拠点だった南グータを制圧した後にシリア政府軍はダマスカスの南にいるイスラエルと関係の深いジハード傭兵に対する攻撃を開始、イスラエルは自国の戦闘機のトランスポンダーにアメリカ軍機を示す信号を出させているという噂も聞く。
アメリカ、イギリス、フランスの3カ国軍は4月14日にシリアをミサイル攻撃したが、これはドナルド・トランプ米大統領がアメリカ軍をシリアからすぐに撤退させると発言してから16日後のことだ。ジャイシュ・アル・イスラムの幹部は攻撃の後に不満を表明している。
アメリカ軍は攻撃を成功だとしているが、ロシア国防省の発表によると攻撃に使われたミサイルの約7割は撃墜されたという。ロシア側がターゲットだとしているのは、ダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍事空港(12機。全て撃墜)、バリー軍事空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍事空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍事空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍事空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)。
これもロシア側の情報だが、シリア政府軍が迎撃に使ったのはパーンツィリ-S1が25機(23機命中)、ブク・システムが29機(24機命中)、オサ・システムが11機(5機命中)、S-125が13機(5機命中)、クバドラートが21機(11機命中)、S−200が8機(0機命中)だとされているが、このほかECM(電子対抗手段)が使われた可能性がある。
ジャイシュ・アル・イスラムの反応を見てもアメリカよりロシアの説明に説得力がのだが、ロシア国防省の発表は米英仏の攻撃が失敗だったことを示している。ジハード傭兵たちはこの攻撃でシリア軍に大きなダメージを与え、それを利用してダマスカスを攻略するつもりだったのだろう。
その攻撃を正当化するため、侵略勢力は4月7日にドゥーマで政府軍が化学兵器で住民70名以上を殺したという話を流していた。発信源はアル・カイダ系武装勢力と連携しているジャイシュ・アル・イスラムと、アル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にある「シリア市民防衛(白いヘルメット)」。そこから出た情報を西側の政府や有力メディアは調査をすることなくシリア政府を批判するキャンペーンに利用した。
政府やメディアも愚かではない。この化学兵器話も嘘だと言うことを知っていただろう。だからこそ、「自分を騙す存在」が必要。それが白いヘルメットだ。米英仏軍がシリアをミサイル攻撃したのはOPCW(化学兵器禁止機関)の調査チームが現地を訪れる直前のことだった。
その後、インディペンデント紙のロバート・フィスク特派員やアメリカのケーブル・テレビ局OANの記者が攻撃があったとされる地域へ入って取材、毒ガス攻撃があったことを示す痕跡はないと伝えた。さらにOPCW(化学兵器禁止機関)のチームもドゥーマで化学兵器が使われた痕跡はなく、犠牲者もいないと報告している。
ジャイシュ・アル・イスラムと白いヘルメットが流した化学兵器使用の話は嘘だった可能性がきわめて高い。白いヘルメットは本ブログでも繰り返し書いてきたように、これまでも戦争を煽るために嘘をつき続けてきた団体。2012年の終わりから13年のはじめにかけての時期に創設されたという。
シリアで2011年3月に戦争が始まるが、西側の政府や有力メディアは『独裁者」が「民主化の望む市民」を武力で弾圧、血の海になっているというストーリーを広め、外国軍による軍事介入を求めるという雰囲気を作り上げていった。同年2月に同じような事態になったリビアではNATO軍が介入して10月にムアンマル・アル・カダフィ体制は倒され、今では暴力が支配する破綻国家になっている。その際、地上軍の主力はアル・カイダ系のLIFGだった。
シリアで外国軍の介入を求める「声」を発信していたのがシリア系イギリス人のダニー・デイエムやイギリスの政府機関とつながっていると見られているSOHR(シリア人権監視所)。
ところが、2012年3月1日にダニーや彼の仲間が「シリア軍の攻撃」を演出する様子がインターネット上に流出、彼の情報がインチキだということが判明する。SOHRはその後も存続しているが、ダニー・デイエムは消えた。そこで登場してくるのが白いヘルメットである。
白いヘルメットは2012年3月にトルコでジェームズ・ル・ムズリーなるイギリス人から訓練を受け始めたという。この人物はイギリス軍の元将校でコソボでの作戦に参加、傭兵の世界へ足を踏み入れてブラックウォーターとも関係する。
白いヘルメットは自力で組織されたということになっているが、シリアへ西側の軍隊が介入することを求めるシリア・キャンペーンが企画した。活動家ネットワークのアバーズや広告会社のパーパスの共同創設者であるジェレミー・ヘイマンズが関わったボイス・プロジェクトという広告会社があり、そのボイス・プロジェクトがシリア・キャンペーンを作りだしたのだという。
2014年から資金を白いヘルメットへ提供しているとされているのがメイデイ・レスキューとチェモニクス。両組織はCIAの別働隊と見なされているUSAIDから資金を受け取っている。メンバーを見ると、白いヘルメットはアル・カイダ系武装勢力と一心同体の関係にある。そうした事情は本ブログでも説明してきた。
アメリカの国務省はここにきて白いヘルメットへの支援を見直すという情報が流れている。ジハード傭兵を使って「レジームチェンジ」するという目論みが破綻、新たな戦術を考えている可能性がある。
アメリカ/NATOがロシアとの軍事衝突を覚悟で直接軍事侵略するのか、経済戦争を強化するのではないかと見る人がいる。ミハイル・ゴルバチョフ時代のソ連でクーデターを成功させたKGBの幹部たちは健在であり、そうした黒幕に目をかけられてボリス・エリツィン政権で巨万の富を築いたオリガルヒのネットワークも残っている。ウラジミル・プーチン政権のアキレス腱は経済部門にあると言われるのはそうした事情があるからだ。
同じようにイランも経済部門がアキレス腱になっている。イラク・イラン戦争の後、イランでは新自由主義化が進む。私有化や貿易の自由化が推進され、少数の大金持ちと多くの貧困層を生み出すことになったのだ。そして1989年に大統領となったハシェミ・ラフサンジャニは「経済改革」を実施、新たな経済エリートを生み出し、庶民は貧困化していった。
こうしてできあがった利権集団は欧米の巨大資本と結びつき、現在に至るまで大きな力を持ち続けている。2005年の大統領選で勝利したマフムード・アフマディネジャドはこうした強者総取り経済を変えようと試み、まずパールシヤーン銀行にメスを入れようとしたのだが、成功しなかった。西側でアフマディネジャドが憎悪された理由はそうした政策にある。現政権はアフマディネジャドよりは西側よりだと見られていたが、西側の支配層はその政策に満足していない。
そこで西側はイランに通貨戦争を仕掛けているようだが、これが切っ掛けになってイランはロシアや中国へ接近している。アメリカが金融を使って攻撃できるのはドルが基軸通貨になっているから。ロシアや中国がドル離れを図っているのはそのためだ。イランもドル離れを加速させるだろう。それはアメリカの支配システムを弱めることになる。ドルに執着したならイランが崩壊する可能性がある。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。