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シリアへの攻撃がトランプの言葉とは裏腹に「限定的」だった事情
http://diamond.jp/articles/-/167666
2018.4.18 尾形聡彦:朝日新聞オピニオン編集部次長 兼 機動特派員 ダイヤモンド・オンライン
米英仏によるシリア攻撃 Photo:AP/AFLO
米トランプ政権が4月13日、英国、フランスとともにシリア攻撃に踏み切った。シリアのアサド大統領を「怪物(モンスター)」になぞられたトランプ大統領の言葉とは裏腹に、米英仏のシリア攻撃は、ロシアとイランの反撃を受けないように計算された小規模な中身だった。与党・共和党からも「弱い軍事的対応」(上院議員)と言われるほど、トランプ大統領と政権が慎重になった背景には何があったのか。筋金入りの強硬派で、政権入りしたばかりの国家安全保障アドバイザー、ジョン・ボルトン氏はどう動いたのか。(朝日新聞オピニオン編集部次長兼機動特派員 尾形聡彦)
プロンプターに見入りながら
原稿を忠実に読んだトランプ大統領
「少し前、私は米軍に、シリアの独裁者アサドの化学兵器に関連する目標に、精密攻撃を行うよう命じた」
米東部時間で金曜日の4月13日午後9時すぎ。ホワイトハウスの外交レセプションルームからのテレビ演説に臨んだトランプ大統領は、抑制が効いた調子で米国民に語りはじめた。
トランプ氏は、原稿が映し出される正面のテレプロンプターを観ながら、シリア軍が市民に対し化学兵器を使ったとして、「これらは、人の行う行為ではない。モンスターによる犯罪だ」と述べ、アサド大統領本人を強く非難した。
数千人が集まる選挙集会では、原稿そっちのけの即興で話すのを好むトランプ大統領だが、この日はプロンプターに見入りながら、原稿を忠実に読み上げていた。強い非難の言葉の一方で、トランプ大統領自身が、いつも以上に慎重にメッセージを発しようとしている様子がはっきり見てとれた。
トランプ大統領がシリアに対するミサイル攻撃を命じるのは、昨年4月に続いて2回目だ。前回は米軍が60発弱の巡航ミサイルを発射したのに対し、今回は米軍が85発、英仏軍が20発の計105発で攻撃し、約2倍の規模になった。
予告した48時間が
経過しても決断できず
シリアのアサド政権に対しては、オバマ前大統領が2012年、化学兵器を使用すれば、(米国が軍事行動を起こす)「レッドライン」を越えると警告。しかし、アサド政権が2013年に実際に化学兵器を使っても、オバマ政権は軍事行動を起こさなかった。
トランプ大統領は、オバマ前大統領のこうした姿勢を「弱腰だ」と厳しく批判してきており、昨年4月のシリア攻撃は、オバマ政権時代との違いを印象づける狙いがあった。
それだけに今回、4月7日にシリア軍が再び化学兵器を使ったと見られる被害が広がった際に、トランプ大統領が再び攻撃を命じることは不可避と見られていた。
ただ、トランプ大統領は、攻撃に前向きな姿勢をにじませる中で、実際の決断には時間がかかった。トランプ大統領は9日、「48時間以内に重大な決定をする」と言ったものの、結局、11日に最終決断できずにいた。代わりにトランプ大統領は11日朝、「ロシアよ準備しろ。ミサイルがくるぞ」とツイート。ミサイル攻撃を事実上予告する、異例の展開になったまま、実際の攻撃があるのかないのかはっきりしない状態が続いた。
米ロの緊張が高まる事がないよう
攻撃の規模を極力小さくした
時間がかかっていたのは、国防総省や米軍が、再度のミサイル攻撃がロシアの反撃を招き、米ロが戦争する事態へと発展する事態を招かないよう慎重な検討を求めていたからだった。
実際、13日夜のトランプ大統領のテレビ演説の後、記者会見したマティス国防長官と、米制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長の会見からは、ロシアとの偶発的な交戦にならないよう細心の注意を払った様子がはっきりとうかがえた。
マティス国防長官は「現時点では、これは1回限りの攻撃だ」と、限定的な軍事行動であることを強調。ダンフォード・統合参謀本部議長は「ロシア軍を巻き込むリスクを軽減できるよう、攻撃目標を決めた」と語ったのだ。
シリアには、米兵約2000人が駐留する一方で、ロシアも軍を展開している。ロシア軍がいる地域にミサイルを誤って撃ち込むことで米ロの交戦に発展したり、大規模な攻撃によってロシア側からの報復を招き米ロ間の緊張がさらに高まる危険な状況に陥ったりすることがないよう、米軍が攻撃目標を慎重に選び、攻撃の規模をできるだけ小さくしたことは明らかだった。
シリア内戦では、アサド政権軍と、それを支援するロシアが優勢を続けている。今回の米国のシリア攻撃は限定的なものだっただけに、米メディアでは、シリア内戦においてアサド政権やその後ろ盾のロシア側が優位の状況が変わることがない、という分析が大勢を占めている。
今回の攻撃が、全体状況を変える見通しがなく、特にシリア軍の今後の化学兵器使用を防ぐことにつながるかどうかもはっきりしない中で、共和党の重鎮、リンゼイ・グラム上院議員は声明で「今回の攻撃が、弱い軍事的な対処と見られることを恐れる」と表明。トランプ政権が抑制的な対応をとったことへの不満を示した。
穏健派のマティス氏らが
強硬派のボルトン氏に勝利した結果
ただ、トランプ政権内で、マティス国防長官らの意見が通り、米軍が限定的な攻撃にとどめた意味は大きい。米メディアによると、強硬派として知られ、国家安全保障アドバイザーに就いたばかりのジョン・ボルトン氏は、より大規模な攻撃を主張していたと言われるからだ。
自分とウマが合い、強硬派のアドバイザーを周囲に集める動きを強めているトランプ大統領や、その急先鋒のボルトン氏を説得し、マティス国防長官らが、政権としての冷静な決断へと導いた意義は大きいと思う。第一ラウンドでは、穏健派のマティス氏らが、強硬派のボルトン氏に勝利したことを意味するからだ。
ただ、米国だけでなく、世界にも大きな影響を及ぼす米国の安全保障政策で、気性の激しいトランプ大統領のもとに強硬派のボルトン氏が仕える一方、マティス国防長官らが理性的で現実的な判断を求めるという構図は今後も続きそうだ。
その時々で、どちらに振れるか予測しづらいという危うさが、トランプ政権の周辺には常につきまとっている。
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