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化学兵器で傷ついた「東グータ」でまたアサドの虐殺が始まった
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/02/post-9585.php
2018年2月22日(木)16時08分 ジャック・ムーア ニューズウィーク
2月7日、シリア政府軍に包囲された東グータ地区で Bassam Khabieh-REUTERS
<シリアで反体制派が拠点とする東グータ地区を政府軍が集中的に空爆した。化学兵器が使用された疑惑がある2013年の攻撃以来最悪規模の死者数だ>
シリアの首都ダマスカス近郊の東グータ地区は2013年以来、シリア政府軍に完全に包囲され、深刻な人道危機に陥っている。現地の支援団体や監視団体によれば、7年に及ぶシリア内戦の中でも、2月19日と20日にあった政府軍の空爆による死者は過去最悪規模だという。
シリア政府軍は2月19日、約40万人の市民が暮らす東グータを集中的に空爆し、市民100人以上が死亡、数百人が負傷した。
シリアの広範囲に情報網を持つ在英NGOシリア人権監視団(SOHR)によれば、翌2月20日の空爆でさらに数十人が死亡。2日間の集中的な空爆で、194人の市民が死亡し、負傷者は850人に上ったという。
同地区は内戦勃発以来、シリアのバシャル・アサド大統領の退陣を求める反体制派の要衝として、戦闘員らの主要拠点となってきた。
シリア政府軍の戦闘機による今回の爆撃は病院を意図的に狙ったものだ、と国際医療団体「シリア医療救援組織連合(UOSSM)」は言った。
シリアの反体制派組織「シリア交渉委員会」(SNC)の代表ナスル・アル・ハリーリーは、シリア政府軍による東グータへの空爆が激化したことから、アサドには反体制派との交渉に向き合う意思が「一切ない」ことがはっきりした、と滞在先のブリュッセルでAFP通信に語った。
「ロシアとイランから露骨な支援を受けるアサド政権は、罪のない女性や子どもたちの虐殺現場へと東グータを変貌させた」と、アル・ハリーリーは言う。
アサド政権を支援するロシアとイランは、人口が集中するシリアの主要都市をアサドが失わないよう軍事的にも政府軍を支援してきた。反体制派やイスラム武装組織が掌握し激戦地となった北部アレッポを、2016年12月にアサドが制圧できたのもイランとロシアの支援があったからだ。
「東グータで今起きているのは戦争犯罪だ。戦争犯罪に関して国際法は非常に明確な線引きをしているが、シリアでは国際法そのものが適用されない」
■2013年には化学兵器を使用
シリア政府軍による2月19日の空爆の翌日、反体制派は報復としてダマスカスを砲撃し、少なくとも市民8人が死亡した。
反体制派と有力武装組織「ジャイシュ・アル・イスラム」などのスンニ派武装組織は、東グータを拠点にしている。そのせいで政府軍に完全に包囲された市民は、最低限の食料も医療品も底をつき、極度の困難を余儀なくされている。砲撃や爆撃で負傷しても、道路が封鎖されて外部に搬送できないため必要な治療も受けられずにいる。
シリア政府軍側は東グータへの地上部隊の投入に備えて部隊を増強させている、とする反体制派の見方もAFP通信は伝えている。シリア軍とロシア軍は2016年7月にも反体制派が支配していたアレッポを包囲した後、集中的な空爆や地上戦に乗り出し、12月までに奪還した。
今回の空爆は、東グータで2013年8月にシリア政府軍が使用した疑いのある化学兵器で多数の死者が出て以来最悪規模の被害、とみられている。国連によれば、当時撃ち込まれたロケット弾には神経ガスのサリンが搭載され、少なくとも数百人の市民が死亡した。犠牲者は1000人以上だった、とする監視団の統計もある。
国連は2月上旬、援助物資を運ぶための1カ月間の停戦を呼びかけた。だが、ロシアとイランの後ろ盾を得て勢いづくアサド政権軍が、容赦ない空爆を止めるかどうかは怪しい。
(翻訳:河原里香)
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