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シリア政府が化学兵器を使った証拠はないという事実を米国防長官が認めていると西側メディアも報道
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201802210000/
2018.02.21 櫻井ジャーナル
リアのバシャール・アル・アサド政権が自国民に対して毒ガスを使ったことを示す証拠はないとジェームス・マティス国防長官は語っている。
本ブログでは繰り返し書いてきたように、シリア政府が化学兵器を使った証拠はなく、使う理由もない。それに対し、使ったのはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟を中心とする侵略勢力が送り込んだ反政府軍だとする調査報告、分析などは存在する。ただ、興味深いのは西側の有力メディアであるニューズウィーク誌がマティスの話を伝えたこと。この件に限らないが、ここにきて西側支配層の内部で方針の対立が生じているように見える。
三国同盟がシリア侵略を始めたのは2011年3月のことだが、当初、西側の政府や有力メディアはアサドという「独裁者」がシリア国民の「民主化運動」を暴力的に弾圧、内戦が始まったと説明していた。そうした主張の根拠とされたのがシリア系イギリス人のダニー・デイエムやSOHR(シリア人権監視所)の情報。
デイエムの発信する情報のいかがわしさは2012年3月1日に発覚している。この日、ダニーや彼の仲間が「シリア軍の攻撃」を演出する様子が流出したのだ。つまり彼の「現地報告」はヤラセだった。
SOHRはラミ・アブドゥラーマン(本名オッサマ・スレイマン)がイギリスで個人的に設置した団体。団体といっても事実上、スタッフはひとりで、情報源は不明。この人物は2000年にシリアからイギリスへ移住、シリア侵略が始まった2011年にはCNNが伝えたところによると、ウィリアム・ヘイグ元英外相とシリア反体制派の代表として会っている。米英の情報機関と連携していると推測する人もいる。
西側の宣伝では2011年3月にそうした市民の蜂起があり、多くの人々が殺されたことになっているのだが、2010年からシリアで活動を続けているベルギーの修道院のダニエル・マエ神父によると、そうした蜂起はなかった。
2012年5月にホムスで住民が虐殺されるると、反政府勢力や西側の政府やメディアはシリア政府軍が実行したと宣伝、これを口実にしてNATOは軍事侵攻を企んだが、宣伝内容は事実と符合せず、すぐに嘘だとばれてしまう。その嘘を明らかにしたひとりが現地を調査した東方カトリックの修道院長だった
その修道院長の報告をローマ教皇庁の通信社が掲載したが、その中で反政府軍のサラフィ主義者や外国人傭兵が住民を殺したとしている。その修道院長は「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と語っている。また、現地で宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者、マザー・アグネス・マリアムも外国からの干渉が事態を悪化させていると批判していた。
こうした状況の中、バラク・オバマ政権は「穏健派」を支援していると主張していたが、アメリカ軍の情報機関DIAはこれを否定する報告を2012年8月にホワイトハウスへ提出している。反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIであり、オバマ政権が主張するところの「穏健派」は事実上、存在しないというわけだ。
また、オバマ政権が政策を変更しなかったならば、シリアの東部(ハサカやデリゾール)にはサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告、それは2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実のものになった。この報告書が書かれた当時のDIA局長がマイケル・フリン中将だ。
DIAが穏健派の存在を否定する報告をホワイトハウスに出した2012年8月、バラク・オバマ大統領はNATO軍/アメリカ軍による直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だと宣言している。
2012年12月になると国務長官だったヒラリー・クリントンがこの宣伝に加わり、自暴自棄になったシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性があると主張する。翌年の1月になると、アメリカ政府はシリアでの化学兵器の使用を許可、その責任をシリア政府へ押しつけてアサド体制を転覆させるというプランが存在するとイギリスのデイリー・メール紙が報道した。
そして2013年3月、ダーイッシュがラッカを制圧した頃にアレッポで化学兵器が使われ、西側はシリア政府を非難したが、この化学兵器話に対する疑問はすぐに噴出、5月には国連の調査官だったカーラ・デル・ポンテが化学兵器を使用したのは反政府軍だと語っている。この年には8月にも化学兵器が使用され、アメリカは9月上旬に攻撃すると見られていたが、地中海から発射されたミサイルが海中に墜落、軍事侵攻はなかった。その件も、シリア政府が化学兵器を使用したことを否定する報道、分析が相次いだ。
コントラの麻薬取引を明るみに出したことで有名なジャーナリスト、ロバート・パリーによると、4月6日にポンペオCIA長官は分析部門の評価に基づき、致死性の毒ガスが環境中に放出された事件にバシャール・アル・アサド大統領は責任がなさそうだとトランプ大統領に説明していたと彼の情報源は語り、その情報を知った上でトランプ大統領はロシアとの核戦争を招きかねない攻撃を命令したという。6月25日には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもパリーと同じ話を記事にしている。化学兵器の使用にアサド政権は無関係だとするCIAの報告は無視されたということだ。
イラクを先制攻撃する前、アメリカやイギリスは大量破壊兵器の宣伝をしていた。その当時から根拠がないとする批判はあったが、強引に押し切って軍事侵攻している。侵略、破壊、殺戮の果てに大量破壊兵器の話は嘘だということを侵略の責任者も認めざるをえなくなるが、その嘘に同調していた人々の相当部分は反省していないように見える。
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