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対中国が念頭の軍備拡張 一方で「お寒い」戦略議論
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180123-00000033-sasahi-int&p=3
AERA 2018年1月29日号
BMDやIAMD構想(AERA 2018年1月29日号より)
イージス艦からのSM6発射(米ミサイル防衛庁HPから)
戦闘機から発射される巡航ミサイルJASSMのイメージ(米ロッキード・マーチン社のHPから)
“前門の虎”北朝鮮の核・ミサイルに備えよと進化する自衛隊の兵器。それが、後門の“目覚めた獅子”中国へと向きつつある。
「ある国」と仲良くしようというハト派と、信用ならないというタカ派がいる。仲良くできそうだったその国は厄介なトラブルを起こし続ける。タカ派は勢いづき、ハト派は迷う。
その「ある国」を北朝鮮と思われただろうか。金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長は今年も元日に新年の辞を述べ、米本土に届く核ミサイルを実戦配備したと宣言。一方で2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪に代表団を送りましょうと韓国を対話に抱き込み、ハト派とタカ派を引っかき回している。
だが日本にとって、「ある国」の本丸は軍拡と海洋進出を続ける中国だ。日本は関係改善へ首脳の相互訪問を図るが、中国は沖縄県の尖閣諸島はこちらのものだと主張を続け、1月11日に海軍の潜水艦と艦艇が初めて同時に周辺の接続水域に入った。
北朝鮮のミサイルをしのぎつつ、「中国への備えを急げ」という日本政府内のタカ派の思惑は、昨年末に閣議決定された新年度予算案の防衛費に表れた。
まず、専守防衛を掲げる日本にない長射程の巡航ミサイルを22億円かけ導入。ノルウェーで開発された射程500キロのJSMを買う。米国製で射程900キロのLRASMやLRASM導入へ調査費も計上した。
敵の国土をたたくためではない、として防衛省が考えた呼び名が「スタンドオフ(撃退)ミサイル」。戦闘機に積んで敵を狙うという使い道を、小野寺五典防衛相はこう説明する。
「北朝鮮の弾道ミサイルから我が国を守るイージス艦を、敵の脅威圏外から防護する」
「我が国に侵攻する敵の水上部隊や上陸部隊に対し、脅威圏外からのより効果的かつ安全な各種作戦が可能になる」
日本を襲う敵の攻撃が届かない「脅威圏外」から撃退するため長射程のミサイルが必要というわけだが、二つ目の使い道は、明らかに中国に対する南西諸島防衛を意識している。
中国軍に島を奪われないためには周辺の海で自衛隊が優勢を保たないといけない。中国軍は爆撃機に積める射程1500キロ以上の巡航ミサイルを持つ。島の周辺で双方の艦船がつばぜり合いをするにも、遠くからその場に届くミサイルが中国軍にあるのに、自衛隊になければ話にならないというわけだ。
もう一つは、導入に向け21億円で試験用弾薬を買う米国製の次期迎撃ミサイル、SM6だ。
今の日本のミサイル防衛は、放物線を描いて飛来する北朝鮮の弾道ミサイルに対応している。だが、SM6は巡航ミサイルを迎撃でき、防衛省はイージス艦に載せるとしている。
新年度予算案では、いま北朝鮮の弾道ミサイル警戒に忙しいイージス艦の負担を減らすとして、同じ役割を陸上で果たせるイージス・アショアの整備に着手する。北朝鮮警戒から外れるイージス艦がSM6を載せ、備える相手は言うまでもない。
長射程の巡航ミサイルと、巡航ミサイル防衛という、かつてない兵器を持とうとする日本。
「相手は中国だと言わなくても中国はわかる。それが抑止力になる」と防衛省幹部は語る。
こうした兵器体系を築くため防衛省で研究が進む構想がある。米国が唱え、同盟国との共同運用も視野に入れる統合防空ミサイル防衛(IAMD)だ。
2014〜16年に防衛相を務めた中谷元・衆院議員はIAMDに早くから注目し、15年にハワイの米太平洋軍司令部を訪れ意見交換した。
「島国の日本は空からの脅威に備えて陸海空自衛隊の連携が欠かせず、もっとネットワークで情報を共有し対応しないといけない。そのために米国の取り組みを見たかった」(中谷氏)
米軍幹部とイージス・アショアやSM6によるミサイルへの対応についても協議し、防衛省での検討を指示した。
中国に対し日本版IAMDを展開するのか。それは、そもそも中国という国にどう向き合うのかという大問題だ。
中国の習近平(シーチンピン)国家主席は「中華民族の復興という中国の夢」を掲げる。列強に侵略された屈辱の歴史をバネに軍拡を進めつつ、経済大国として世界との相互依存を深めている。果たして、日本は折り合えるのか。
元防衛省高官は「わからないから最悪の事態に備える」と語る。16年の防衛費は中国が推定2150億ドルで日本の4.6倍。差は年々開く。だから防衛省には、中国の攻撃を防ぐため、世界一の米国(6110億ドル)を西太平洋に引きつけつつ、自身でも対処できる兵器の調達をという焦りがある。
今年は防衛政策の指針である防衛大綱の見直し論議も本格化する。安倍晋三首相は「従来の延長線上でなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めたい」と官邸主導で進める姿勢を示す。新年度予算案ににじんだ対中防衛色が強まる可能性がある。
だが、防衛政策の前提になる日中関係全般の議論はお寒い。国家安全保障戦略は5年前に安倍内閣が作ったきり。「戦略的互恵関係を強化」といった抽象的な言葉はあるが、共産党支配や米中関係の今後といった日本を揺るがす要素への考察や、それをふまえ中長期的http://img.asyura2.com/us/imgup/img10.cgiにどう対応するかという戦略は見えない。
日米安保協議の歴史に詳しい近畿大学の吉田真吾講師は、「冷戦には、経済大国となった日本に支えられた米国がソ連に勝ったという面があった。今の中国は国際構造上、かつてのソ連と似た立場にあるが、同様に抑え込めるのか。それぞれの国力もふまえ日米で対中戦略の議論を深める必要がある」と話す。
官邸主導の防衛大綱見直しについて、「米国から兵器を買えばトランプ政権と関係がよくなるという話にならないか」と危ぶむ声も防衛省にある。米国製の中国向け兵器やIAMDに飛びつく前に、骨太の対中戦略を示すのが官邸の仕事だろう。(朝日新聞専門記者・藤田直央)
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