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戦闘よりも訓練で死亡者が多数…米軍が今“過労状態”に
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180109-00000017-sasahi-soci
AERA 2018年1月15日号
宜野湾市立普天間第二小学校の校庭に落下した米軍ヘリコプターの窓(写真:宜野湾市提供)
米軍普天間飛行場に駐機する窓の部分をシートで覆ったCH-53大型輸送ヘリ (c)朝日新聞社
沖縄の米普天間飛行場に隣接する小学校に米軍ヘリの窓が落下したが、世界的に見ても米軍の事故が急増している。いまや戦闘よりも、訓練で死亡する兵士が多い。
昨年12月13日、米海兵隊の輸送用ヘリコプターCH−53が普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を離陸した直後、基地に隣接する小学校の校庭に重さ7.7キロの窓を落とした。すぐ近くに、体育の授業を受けていた小4男児がいたという。
事故を起こした米海兵隊の第1海兵航空団は、落下原因は人為的ミスだったと認め、本誌の取材にこう回答した。
「緊急脱出用の窓が機体に適切に固定されていなかったために落下した。原因は搭乗員が飛行前にきちんとした手順で点検をしなかったこと。全ての搭乗員と整備部門に、正しい点検手順が必要なことを再度指示した」
在日米海兵隊が所有するCH−53の整備は2015年から大韓航空が請け負い、韓国で整備しているが、同社によると「窓は契約に含まれていない」。今回の事故は米軍による不十分な点検、整備が原因だ。
米軍の訓練中の事故が止まらない。16年12月には名護市沖で空中給油の訓練に失敗したオスプレイが集落から300メートル離れた沿岸に墜落。17年10月には東村高江の民有地にCH−53が不時着、炎上。11月には飛行中のステルス戦闘機が機体のパネルを海上に落下させた。
事故が多いのは日本だけではない。海外でも同じだ。この半年だけでも、米ミシシッピ州の農村地帯に空中給油機のKC−130が墜落(16人死亡)。米ノースカロライナ州でオスプレイに落雷(1人死亡)。オーストラリア沖で普天間飛行場所属のオスプレイが墜落(3人死亡)。岩国基地を飛び立ったC2A輸送機がフィリピン海に墜落(3人死亡)。さらに、海軍の軍艦でも事故は多く、17年は4度起きている。
米海軍安全センターによると、17年に発生した米軍機の重大事故(クラスA)は24件。損害額は600億円近い。17年度(16年10月−17年9月)では、米国やそれ以外の国に展開する米海軍と海兵隊で起きた航空機重大事故の合計件数が前年比3割増となる20件に達し、特に海兵隊の飛行10万時間あたりの重大事故率は05年以降で最悪となった。
こうした状況に軍関係者も危機感を募らせる。米共和党の重鎮で元海軍将校のジョン・マケイン上院議員は9月に開かれた米連邦議会の軍事委員会で、過去3年間の戦闘で死亡した米軍人44人に対し、訓練中に185人が亡くなったことを明らかにし、「訓練中の事故で亡くなる米軍人のほうが、戦闘で命を落とす数よりも多い」と述べた。
事故が増えている大きな要因は、米国が財政再建を進めるためにオバマ政権が13年に発動した歳出の強制削減措置にある。年度ごとに10兆円規模で予算を削り、10年間の削減額は100兆円に上る。その半分は国防費だ。結果として、戦費込みの国防予算はピークの10年度から最大で2割ほど落ち込んだ。
元海兵隊パイロットのカール・フォースリング氏は、国防予算が圧迫され続けたために訓練飛行の時間が減り、機材にしてもCH−53のような古いものを使い続けるか、新しい機体でも十分なメンテナンスが受けられていないと指摘する。
一方、こうしたことは十分に予見できたと話すのは、米国在住で軍事社会学者の北村淳氏だ。
「強制財政削減を始めた当初から軍の事故は増えると言われていました。訓練や人が減った半面、北朝鮮情勢の緊張に伴って出動回数は増え、米軍全体が過労状態に陥っています。トランプ大統領が軍事費を増やそうとしていますが、強制的な財政削減を止めない限り大幅な回復は望めず、事故はますます増えるのではないでしょうか」
そのうえで、事故を減らすために日本政府が米軍機などの整備を請け負うことも考えるべきだという。
「米軍も事故が増えて困っている。それなら技術力で信頼を得ている日本が代わりに整備すると提案すればいいのです。ところが米軍関係者に聞くと、日本政府からそうした提案はさっぱりないという。日米同盟の強化は、何も武器を買うだけではないのです」
(ジャーナリスト・桐島瞬)
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