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既に始まっている「日中戦争」に勝つための処方箋
http://diamond.jp/articles/-/151594
2017.12.4 北野幸伯:国際関係アナリスト ダイヤモンド・オンライン
ここのところ改善されてきた日中関係。しかし、安心できる状況にはほど遠い。それどころか、すでに広義の意味での日中戦争は始まっていると考えるべきなのだ。(国際関係アナリスト 北野幸伯)
広義の「日中戦争」は
もう始まっている!
具体的な戦闘こそ起きていないが、「情報戦」は展開しており、日中戦争は実質的には始まったと考えるべき。今や米国に次ぐ軍事費大国になった中国と戦闘をせずに勝つために、日本は何をすべきなのだろうか? 写真:新華社/アフロ
日中関係が、改善されてきている。安倍総理は11月11日、ベトナムで習近平と会談した。雰囲気は、きわめて友好的で、両首脳は関係改善への意欲をはっきり示した。
日中関係が改善されるのは、もちろんいいことである。しかし、決して油断することはできない。中国は5年前、尖閣、沖縄を奪取するための戦略を策定した。「広義」での「日中戦争」は、もう始まっているのだ。
「日中戦争が始まった」――筆者がその事実を目の当たりにし、大きな衝撃を受けたのは2012年11月15日のことだった。
私はこの日、「ロシアの声」に掲載された「反日統一共同戦線を呼びかける中国」という記事を読んだ(記事はこちら)。いままで連載では何度も触れたが、この記事には衝撃的な内容が記されていた。
・中国は、ロシア、韓国に「反日統一共同戦線」の創設を提案した。
・「反日統一共同戦線」の目的は、日本の領土要求を断念させることである。
・日本に断念させるべき領土とは、北方4島、竹島、尖閣および沖縄である。
・日本に沖縄の領有権はない。
・「反日統一共同戦線」には、米国も引き入れなければならない。
これを読み、私は「日中戦争が始まった」ことを確信したのだ。
しかし、普通の人がこれを読んでも「確かに衝撃的な内容だが、『戦争が始まった』というのは、大げさだ」と思うだろう。そう、日本人は「戦争」というと、バンバン撃ち合う「戦闘行為」を思い浮かべる。いや、それしか思い浮かべることができない。
実をいうと、「戦争」は「戦闘」に限定されない。むしろ「戦闘」は、広い意味での「戦争」の「最終段階」で起こる。そして実際は、戦闘が起こった段階で、勝敗は決している場合がほとんどなのだ。
「戦闘」以前に起こる
「情報戦」や「経済戦」が重要
どういうことか?
J国とC国が、同じ物を欲している(例えば島など)。そこで、J国とC国は話し合いをするが、埒があかない。それで、C国の指導者の頭の中に、「戦争」という2文字が浮かぶ。そう、戦争は、まずどこかの国の指導者の「頭の中」「心の中」で始まるのだ。
さて、「戦争」の2文字を思い浮かべたC国の指導者は、翌日J国に軍を送るだろか?そんな愚かなことはしない。まず彼は、「戦争に勝つ方法」(=戦略)を考える。
次に、「情報戦」を開始する。情報戦の目的は、「敵国(この場合J国)は、悪魔のごとき存在で決して許すことができない」と、自国民や全世界に信じさせることである。
まず、自国で「反戦運動」が盛り上がって戦争の邪魔をされないようにしなければならない。次に、国際社会で敵国の評判を失墜させ、いざ戦争(戦闘)が始まったとき、敵が誰からも支援されない状況をつくる必要があるからだ。
「情報戦」のいい例が、1930年代初めにある。満州問題で日本と争っていた中国は、日本の「世界征服計画書=田中メモリアル」という偽書を世界中にばらまいた。それで、非常に多くの人々が「日本は世界征服を企んでいる」と信じてしまったのだ。
次に「外交戦」で、自国の味方を増やし、敵国を孤立させる。必要とあれば、「経済戦」を仕掛ける。わかりやすい例は、日本が石油を買えないようにした「ABCD包囲網」だろう。そして、最後に、必要とあらば「戦闘」し、望みのものを手に入れる。
さて、筆者が「戦争がはじまった」と確信した12年11月15日、中国はどの段階にいたのか?
日本をつぶす戦略は、すでに立てられている。そして、ロシアと韓国に「反日統一共同戦線」創設を提案しているので、すでに「情報戦」「外交戦」は開始されていたことがわかる。
筆者は、決して「誇大妄想的」に「戦争が始まった」と思ったわけではない。実際、12年11月、「日中戦争」は開始されたのだ(その後、「反日統一共同戦線戦略」は、かなり無力化されている。そこに至るまでの経緯は、連載バックナンバー「安倍総理続投が日本の国益、辞めれば習近平が大喜びする理由」を参考にしていただきたい)。
「平和ボケ」左派の
あり得ない思考回路
普通の国が「反日統一共同戦線」のような情報を得れば、即座に対応策を考え始めるだろう。つまり、対抗するための「戦略」を練るのだ。しかし、日本はそうならない。
日本では、「平和ボケ病」に冒された左派寄りの人たちと、「自主防衛主義」、さらには「核武装論」を主張する右派寄りの人たちが議論を戦わせている。しかし、いずれも日中戦争に勝つ結果にはつながらない発想だ。
平和論者の人たちは、「世界は第2次大戦後、平和になった」と主張する。しかし、新世紀に入って以降も、世界では以下のような戦闘が起きている。
2001年 アフガニスタン戦争が始まった。
2003年 イラク戦争が始まった。
2008年 ロシアージョージア(旧グルジア)戦争が起こった。
2011年 リビア戦争があり、カダフィが殺された。
2014年3月 ロシアがクリミアを併合。続いて、ウクライナ内戦が勃発した。
2014年9月 米国を中心とする「有志連合」がIS空爆を開始した。
2017年4月 米国は、シリアをミサイル攻撃した。
そして現在、世界は「朝鮮戦争は起こるのだろうか?」と恐怖している。
事実を見れば、「今の時代」は決して「平和な時代」ではなく、逆に「戦国時代」であることがわかるだろう。
「平和憲法があれば、戦争は起こらない」「平和主義を守れば、日本は安全」という神話もある。「平和主義なら日本は安全」というのなら、なぜ中国は、虫も殺さぬ平和主義のチベットを侵略し、100万人を虐殺したのか?
このように「平和ボケ病」は、「戦略的思考」を停止させる。彼らによると、「何もしなければ戦争は起こらない」。だから、「戦争に勝つ方法」(=戦略)を考える必要は、まったくないという結論になってしまう。
右派の「完全自主防衛主義」は
日本を崩壊させる
一方、右派寄りの人たちは、自国防衛の強化を主張する。しかし、もはや日本が多少がんばったくらいでは到底かなわないくらい、中国との間の格差は開いている。
16年の中国の軍事費は2150億ドルで、米国に次いで世界2位だった。日本の防衛費は461億ドルで世界8位。中国の軍事費は、なんと日本の4.6倍である。さらに中国は、米国、ロシアに次ぐ「核兵器大国」でもある。
今から中国に追いつくべく、大金を投じて軍拡するというのは、現実的ではない。「いや、そんなにたくさんの金はいらない。なぜなら核武装すればいいからだ」という意見もある。確かに、最貧国の北朝鮮が保有していることからもわかるように、核兵器は「もっとも安上りな方法」だろう。
しかし、ここでも話は簡単ではない。核兵器の拡散を防ぐ「核拡散防止条約」(NPT)がある。NPTは、米国、英国、フランス、ロシア、中国以外の国の核保有を禁ずる、極めて「不平等」な条約だ。それでも、現在190ヵ国が加盟し、世界の安定を守る秩序として、機能している。
世界には、「NPT未加盟」で「核保有国」になった国もある。すなわち、インド、パキスタン、イスラエルだ。NPTに加盟していたが、脱退して核保有国になった国も、一国だけある。そう、北朝鮮だ。
日本が核武装を決意すれば、NPTを脱退せざるを得ない。つまり、核武装論者は、「日本は、北朝鮮と同じ道を行け!」と主張しているのだ。そんな道を行けば、国連安保理で過酷な制裁を課されることは、想像に難くない。
日本の核武装論者は、「日本の立場は特殊だ」と主張するが、「アグレッシブな核保有国が近くにいる」のは日本だけではない。
たとえば、核大国ロシアと戦争したジョージアは、自衛の為に核を持つべきだろうか?ロシアにクリミアを奪われたウクライナは、核を持つべきか?核大国・中国の脅威に怯えるフィリピンやベトナムは、核を保有すべきか?
「すべての国は平等」という原則に従えば、「持つべきだ」となるだろう。あるいは、「すべての国が核を廃棄すべきだ」と。しかし、これらは、いずれも「非現実的な議論」に過ぎない。
結局、「自分の国を自分で守れる体制を今すぐ作ろう」という主張は、とても現実的とはいえない。では、中国に屈伏するしか道はないのだろうか?
一国で勝てなければ
仲間を集めろ!
実をいうと、柔軟に考えることができれば、「中国に勝つ方法」を考え出すのは難しくない。
日本には、世界一の軍事力を誇る米国という同盟国がいる。この事実について、「米軍に守ってもらうなんて日本は属国に等しい。恥ずべきだ」という意見がある。しかし、冷静に考えて、これは「恥ずかしいこと」なのか?
たとえば、欧州には、北大西洋条約機構(NATO)がある。これは、29ヵ国からなる「対ロシア軍事同盟」である。そして、内実を見れば、「NATO加盟国28ヵ国は、米国に守ってもらっている」状態だ。NATOの中には、英国、フランス、ドイツのような大国もいる。彼らですら、核超大国ロシアの脅威に対抗するため、米国に頼っている。
ただ、日本とNATO加盟国の違いもある。NATO加盟国は、どんな小国でも「NATOに貢献しよう」という意志を持ち、実際に行動している。
日本の場合、「米国が日本を守るのは当然だが、日本が米国を守ることはできない。なぜなら日本は平和主義国だからだ」というロジックを持っており、長らく、まったく貢献する意志を見せなかった(小泉総理時代から、少しずつ変わってきてはいるが)。
これは、日本人に言わせれば「平和主義」である。しかし、米国からは、そう見えない。
「米国兵が日本のために何万人死んでも、それは当然だ。しかし、日本兵が米国のために死ぬことは、1人たりとも許さない」という大変狡猾なロジックだからだ。
日米安保は今でも
きちんと機能している
それで、安倍総理は「安保法」を成立させ、「集団自衛権行使」が可能になった。日本は米国を守れるようになったので、もはや「属国だ」と卑屈になる必要はないのだ。
また、「いざという時、米国は日本を守りませんよ」と断言する「専門家」も多い。そうかもしれないが、実際、日米安保は機能している。
たとえば10年の「尖閣中国漁船衝突事件」、12年の「尖閣国有化」。これらの事件の直後、日中関係は大いに悪化し、人民解放軍は尖閣に侵攻する意志を見せていた。しかし、どちらのケースでも、米国政府高官が「尖閣は、日米安保の適用範囲」と宣言したことで、中国はおとなしくなった。
そう、日米安保には、いまだに「中国の侵略を抑止する効果」が十分あるのだ。
とはいえ、米国の衰退は著しい。引き続き、米国と良好な関係を維持するのはもちろんだが、日本は未来に備える必要がある。その「未来の同盟国」とは、将来中国に並ぶ大国になることが確実なインドだ。
安倍総理は今、「インド太平洋戦略」を提唱し、トランプ大統領も乗り気になっている。これは、日本、米国、インド、オーストラリアで、中国を牽制するのが目的だ。
とにかく日本が中国に勝つには、一貫した誠実さと努力によって、強い国々を味方につけていく必要がある。具体的には、最重要国家として、米国、インド。次に、EU、ロシア。そして、東南アジア諸国、オーストラリア。これらの国々との関係をますます強固にすることで、日本は守られる。
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