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北朝鮮の核・ミサイル攻撃、万一の事態に逃げ遅れない心得
http://diamond.jp/articles/-/141603
2017.9.13 山村武彦:防災システム研究所所長 ダイヤモンド・オンライン
弾道ミサイルが日本上空を通過し、6度目の核実験が行われるに至って、北朝鮮リスクに対する日本人の危機感はいよいよ高まっている。日本にとって、北朝鮮の核・ミサイルの脅威はどれほどのものか。また、「万一のとき」にはどのように我が身を守ればいいのか。防災・危機管理アドバイザーとして活躍する山村武彦氏が詳しく解説する。
北朝鮮の核・ミサイルリスクが高まるなか、私は先日韓国に渡って、現地の様子を見て来た。韓国では年に一度、北朝鮮の攻撃に備えて避難訓練を行っている。ソウルでは今年も、8月23日15時から約15分間、街中の自動車を全て停車させ、地上にいる人々を地下やシェルターに避難させる大規模な訓練が行われた。
ソウルは北緯38度線に近く、ミサイルはおろか砲撃の対象にさえなりかねない危険な立地にある。だが、国民の間では「実際には北が攻撃してくることなどないだろう」という意見が大勢を占めている。「北とはあくまで休戦状態であり、戦争は終わっていない」という緊張感は10年くらい前まであったが、その反動のせいか、最近は意識がかなり低下している。
「今はロシアや中国がバックアップしていないから、北が単独で仕掛けてくることはないだろう」「いくらなんでも、同じ民族にミサイルなんて撃ち込むはずがない」という漠然とした期待感もある。
とはいえ、韓国の国民感情は複雑だ。「北が核を開発した以上、戦争になったらどうせもう終わりだ」と諦めている人も多いように感じる。1950年代の朝鮮戦争で家族を失った人が多く、また兵役もあるため、彼らの意識は「現実を知っているからこその達観」と捉えることもできる。これまで北の脅威に対して危機感が薄かった日本人と比べて、似ているようで根本的に違うのだ。
日本で高まる危機意識
北朝鮮は核実験をやめない
ここにきて、いよいよ日本人も危機意識が薄いままではいられなくなった。8月29日早朝に北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本上空を通過し、続く9月3日に北朝鮮国内で6回目となる核実験が確認されて以来、一気に緊張感が高まっている。「もしも北の核やミサイルに攻撃されたら?」「生き残るにはどうしたらいいのか?」といったことがメディアで取り沙汰されている。
実際、日本人にとって北朝鮮の核・ミサイルのリスクはどれほどのものか。また「万一のとき」にはどういう行動をとればいいのか。私の経験や研究を基にお伝えしよう。
まず、北の核・ミサイル開発は今後もエスカレートし続けるのだろうか。結論から言えば、それを止めることは困難と言わざるを得ない。純然たる核保有国になることが、金一族の三代に渡るテーゼ(命題)となっているからだ。
朝鮮戦争において、北は破竹の勢いで韓国に攻め込み、米韓連合軍を苦しめた。中国の後ろ盾もあり、韓国全土を制圧するまで引くつもりは全くなかった。しかし、米軍司令官のマッカーサーに「これ以上やるなら原爆を落とす」と脅され、民族の壊滅を回避するため、しぶしぶ休戦に応じたと言われる。
だから金一族は代々、「あのとき自国も核を保有していれば、米国の脅しに屈せずに済んだのに」という気持ちを強く抱いているはずだ。金正恩も「北朝鮮が大国と伍していくためには核を保有するしか道はない」と思い込んでいる。彼らは全てを犠牲にしてでも核開発に走るだろう。そう考えると、北が核開発の凍結・放棄を前提とした交渉のテーブルに着くことは考えられず、各国との駆け引きは膠着状態が続くだろう。現実を直視すべきだ。
北の核・ミサイル「3つのシナリオ」
人的被害が少ない核攻撃とは?
気になるのは、そうしたなか、今後北の核・ミサイルが日本にどんな影響をもたらすのかということだ。私は可能性があるものとして、3つのシナリオを想定している。それは(1)核爆発で電磁パルス(EMP)を発生させることによる社会インフラの被害、(2)ミサイルの落下による人的・物的な被害、(3)直接的なミサイル攻撃による人的・物的な被害である。
第一に、核爆発で電磁パルスを発生させるシナリオだ(編集部注:これは北朝鮮も示唆している)。万一、北が核による直接攻撃で放射能をバラまけば、「人類の存在に対する罪」として国際社会から猛烈な批難を浴びる。そこまでやる可能性はさすがに低いだろう。やるとしたら高高度の核爆発。これは核を大気の希薄な高々度上空で爆発させるものだが、衝撃波や放射能の地上への影響が抑制され、人的被害は少ないと考えられている。
その一方で、電磁パルス(EMP=Electro Magnetic Pulse)を発生させ、社会インフラの無力化を図ることになる。電磁パルスによって強力な磁場が電子部品や電子機器を襲うと、それらの機能が破壊され、データが消去され、GPSさえ機能しなくなる。人的な被害は少ないが、日本社会を混乱させ、一時的に武力や社会機能を無力化する上では最も効果が高い。
第二に、北が発射実験を行ったミサイルが日本国内に落下するシナリオだ。先日のように海上に落ちるのであれば害はないが、運が悪い場合もあり得る。ミサイルはある程度の角度をつけて落ちて来るので、都市部の高い建物がとりわけ危険だ。着弾した半径500メートル〜1キロメートル以内の地域は、強烈な衝撃波、爆風、破壊されたものの破片の飛散が起き、甚大な被害を受けるだろう。もし、その弾頭に生物・化学兵器が搭載されていたとしたら、さらに深刻な事態を招く。
そして第三に、直接的なミサイル攻撃が行われるシナリオである。残念ながら、私はこの可能性が最も高いと思う。カギとなるのは、北の暴挙を米トランプ政権がこのまま座視しているかどうかだ。本来米軍は、北がミサイルを発射した瞬間にそれらを迎撃し、打ち落としてしまえばよい。しかし、彼らはそうはしないだろう。少しでも失敗したら、自分たちのミサイル防衛システムに欠陥があると証明されてしまうからだ。
そうだとしたら、彼らは事前に情報を集め、今後北がミサイルを発射しそうな場所をピンポイントで空爆する可能性が高い。ピンポイント攻撃だけなら「全面戦争にならないだろう」という思惑もあるはずだ。だがそのとき、日本も巻き込まれる。北を攻撃する際に米軍が沖縄、佐世保、岩国など日本国内の基地から出撃したとしたら、北は日本へ報復のためのミサイルを直接撃ち込んでくるかもしれない。軍事基地は迎撃対策ができているので、狙われるのは人口が多い都市部だろう。そこで起きる深刻な被害は前述の通りだ。
今から考えておくべき
個人や企業の「有事対策」
こうした事態を見据えて、我々は今からどんな対策を考えておくべきか。また、万一のときに身を守るには? 個人も企業も、真剣に考えておく必要がある。
まず、高高度の核爆発で電磁パルス(EMP)を発生させる攻撃だが、その場では対処のしようがない。国や企業は社会インフラを守るため、事前に有事を想定して防衛策を練るしかない。
真っ先にやるべきは、重要な電子機器、それらが設置されている建物や部屋全体をシールドで完全に保護すること。すでに軍事用としてそうしたシールドが実用化されていると言われるが、大手民間企業の中にも以前から導入しているところはある。それはもともと核攻撃に備えるためでなく、落雷対策の意味があった。1980年代にカナダのケベック州で太陽のコロナに磁場嵐が発生した影響で、電子機器が誤作動を起こし、広範囲に大停電が起きたことも教訓となっている。
局所的に小規模な電磁パルスを発生させて電子機器を破壊する機材も、今では世界中で売られており、テロリストが悪用する恐れがある。企業は今からテロ対策も見据えて対策を進めるとよい。
次に、ミサイルが国内に落ちてきた場合、あるいは直接ないし誤爆で打ち込まれた場合だ。言うまでもなく、ミサイルに直撃されたら諦めるしかない。考えるべきは、近くに着弾したときにどう逃げ切るかだ。
そのとき、個人にできる対処は限られている。Jアラート(全国瞬時警報システム)、防災行政無線で「ミサイル発射」のメッセージが流れたら、着弾までの猶予は4〜5分しかない。内閣官房の「国民保護ポータルサイト」では、「屋外にいる場合はできる限り頑丈な建物や地下に避難する」「建物がない場合は物陰に身を隠すか地面に伏せて頭部を守る」「屋内にいる場合は窓から離れるか窓のない部屋に移動する」といった避難法が紹介されている。とりあえず、それで必要最低限の避難はできるだろう。
屋外よりも屋内のほうが安全?
既成概念に囚われず避難せよ
ただし、それだけでは不十分だ。前述の避難法は、ミサイルに生物・化学兵器などが搭載されていないことを前提としているからだ。たとえば、化学兵器が搭載されているミサイルに襲われたら、濃度によっては空気よりも重いサリンやVXガスなどは低いところに溜まる性質があるため、地下に逃げ込んでいたとしてもむしろ危険だ。
その場合、爆風を避けるために一旦逃れた地下から、今度は地上に出て風上に避難しないと助からない。もちろん、二次、三次の攻撃に備えて注意しながら避難する、備蓄されている防護服・防毒マスクを着用するなど、万全を期す必要がある。
このことからも、政府の保護ポータルサイトは、国民が自分で考え、身を守るにあたって応用が効かない内容と言える。避難場所や方法は書かれていても、「なぜそこへ避難するのか」「何のためにそうした避難行動をとるのか」という理由が何も書かれていない。だから先日、弾道ミサイルが北海道上空を通過したとき、「地下もなければ頑丈な建物もない襟裳岬あたりで、いったいどうすればいいのか」と国民はパニックに陥ったのだ。実際は、地下や頑丈な建物でなく木造建物であっても、屋内の窓のない部屋ならば屋外より安全である。
企業もBCP(事業継続計画)にミサイルリスクを加え、マニュアルを整備しておく必要がある。Jアラートが鳴った途端に、公共交通機関は全てストップする。ミサイルの着弾地点から離れている場合でも、「通勤途上の人はどうするのか」「会社を臨時休業にするのか」といった行動ルールがないと、ビジネスは混乱をきたす。
また、近くにミサイルが着弾したときのことを考えて、食料の備蓄、インフラの断絶を前提とした避難訓練の実施に加え、予めバックアップオフィスを用意しておく必要もあるだろう。
核シェルターは「ないより
あったほうがいい」程度
北の脅威が高まっている象徴的な事例として、最近、核シェルターを販売する企業に問い合わせが殺到しているとも聞く。前述の通り、私は日本が直接核攻撃を受けることまではないと思うが、これにも言及しておきたい。
米国では、地下何十階分にも及ぶ広大な部屋数を持つ本格的なシェルターが増えており、入居希望者は1億円程度の権利金を払えば、いざというときにそこで暮らせるようになっている。内部には、電気、トイレ、空気清浄器など生活に必要な設備が完備され、外部の助けがなくても1〜2年は暮らせる施設もある。
それに対して、日本で売られているシェルターは、トルネードシェルター(竜巻シェルター)に近いもので、一時的な避難場所というイメージ。富裕層が家を建てるとき、庭に穴を掘って埋めるようなものがほとんどだ。多少は空気をろ過できるが、内部で暮らせるのはせいぜい3日〜1週間程度だ。そもそも、在宅時に核攻撃を受けたならシェルターに逃げ込めるが、外出中であれば意味がないだろう。
北朝鮮リスクばかりでなく、日本は大地震も含めていつ何が起きるのか予測がつかないのが実情だ。危機感を抱き過ぎてもいけないが、日頃から万一のことを考え、冷静に準備をしておくのに越したことはない。
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