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遠のく「核兵器なき世界」被爆国の重い責任 北朝鮮「地球規模の乱世」を予想し核開発 トランプは中露韓から袋小路に 日本は 
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投稿者 酢 日時 2017 年 8 月 08 日 10:30:35: JVuupfBNpkXsE kHw
 

遠のく「核兵器なき世界」被爆国の重い責任

トランプが壊すオバマの理想

岡部直明「主役なき世界」を読む


2017年8月8日(火)
岡部 直明

トランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領は、20カ国・地域(G20)首脳会議が開催されたドイツのハンブルクで7月7日に初会談した。米露の核軍縮問題や、シリアやウクライナなど幅広い分野で意見交換したとみられ、会談は2時間15分と異例の長さになった。(写真:AP/アフロ)
 オバマ前米大統領がめざした「核兵器なき世界」は、その理想からますます遠ざかろうとしている。トランプ米大統領は「核兵器なき世界」の目標を見直し、核戦力の増強を打ち出した。これに対して、プーチン・ロシア大統領も核戦力の近代化と増強を表明、核軍縮どころか核軍拡競争に逆戻りする恐れさえある。最も危険なのは、北朝鮮が核・ミサイル開発に傾斜し、北東アジアの緊張が高まっていることだ。こうしたなかで、唯一の核被爆国である日本の役割は決定的に重要である。その日本が核兵器禁止条約に参加しなかったのは問題だ。核廃絶を外交の基本に据え直し、米ロに核軍縮を呼び掛けるなど、積極的外交を展開することが歴史的使命である。

トランプの核戦略の波紋

 トランプ大統領はオバマ大統領が敷いた平和路線をすべてくつがえそうとしている。「核兵器なき世界」をめぐっては、「どの国も核をもたないのが理想だが、核保有国があるなら我々はその先頭にいたい」と核戦力の増強に転換した。核軍縮の結果、核弾頭は米国が6800発、ロシアが7000発になっているのが不満らしく、ロシアの前に出る方針を示したものだ。これに、プーチン大統領が黙っているはずはない。このままでは米核軍拡競争の悪夢がよぎる。

 トランプ政権をめぐるロシア疑惑は事態をさらに複雑化している。プーチン大統領との良好な関係を維持したいトランプ大統領だが、ロシア疑惑のなかでは、対ロ経済制裁の強化を受け入れざるをえなかった。それは米ロ間の緊張をさらに高めることが考えられる。

 イランの核合意でも、トランプ大統領はオバマ路線を覆そうとしている。オバマ政権下で国連安保理常任理事国(米ロ中英仏)とドイツのG6がイランとの協議でようやくまとめた核合意を破棄しようとしている。対イラン政策を誤ると、混迷する中東情勢は危機的状況に陥り、イラン核合意に参加する主要国との緊張も高まりかねない。

北朝鮮の危険な野望と中国の核増強

 核をめぐる差し迫った危険は、北朝鮮の無謀な挑戦であることはいうまでもない。米国にまで到達するという大陸間弾道ミサイルの度重なる実験は、トランプ政権を苛立たせ、国際社会の非難の的になっている。これに核開発が重なれば、北東アジアの緊張を一気に高める。日本は深刻な影響をこうむる恐れがある。日米韓の連携を強めるとともに、国連安保理での制裁強化に取り組むしかないだろう。5日、安保理で石炭などの輸出の抜け穴をふさぐ制裁決議が中ロを含む全会一致で採択されたのは、一歩前進である。

 懸念されるのは、北朝鮮に最大の影響力をもつはずの中国が北朝鮮の核・ミサイル開発に警告しながらも、圧力をかけ渋っているようにみえることだ。北朝鮮の崩壊は避けたいという中国の思惑がうかがえるが、事態を放置すれば、北朝鮮の核・ミサイル開発はエスカレートするばかりだろう。

 問題は、中国の習近平政権自体が海洋進出など軍拡路線に傾斜しているところにある。核増強もその一環とみられる。オバマ前大統領が「核兵器なき世界」を表明して以来、世界中で核軍縮の動きが広がったが、そのなかでも、中国だけは核増強の路線を変えなかった。この核増強を含む中国の軍拡路線は東アジアの緊張を高めることになる。

インド・パキスタン・北朝鮮 ── G8が許した核拡散

 北朝鮮をめぐる危機的状況は、1998年5月が分水嶺になっている。英国バーミンガムで開いたロシアを含むG8の首脳会議(サミット、15~17日)を目前して、インドはG8の姿勢を試すかのように、2度にわたる核実験を実施する。これに対して、G8の声明は「インドおよびその他地域に対し、これ以上の核実験はしないよう求める」と事実上、黙認に近い内容になった。

 このバーミンガム・サミットを取材した経験からみても、G8の態度は生ぬるかった。主催したブレア英首相が会議を早々に切り上げて、ほかの首脳とともにサッカーのテレビ観戦に興じたくらいだから、危機感のなさは明らかだった。

 G8サミットでインドの核実験が黙認されたとみて、隣国で敵対するパキスタンは黙っていなかった。5月末、G8の警告を無視して核実験に踏み切ったのである。

 問題は核拡散の連鎖がここで止まらなかったところにある。パキスタンの国民的英雄であるカーン博士を通じて、核技術が北朝鮮に流出したのである。バーミンガム・サミットの失敗は、核拡散の歴史に汚点として残るものだろう。

欧州の核危機救ったオランダ

 バーミンガム・サミットは大国が核の拡散を防げなかった例だが、小国が核の危機を救った例もある。冷戦末期、1980年代、欧州は核の危機に見舞われていた。ソ連はワルシャワ条約機構の東欧諸国に中距離核ミサイル、SS20を配備する。これに対抗して北大西洋条約機構(NATO)加盟の西欧諸国には米核ミサイルが配備されることになった。ジュネーブでの米ソ間の中距離核戦力(INF)交渉も決裂し、欧州を舞台に米ソ緊張が一気に高まった。

 当時、西欧では各国で反核運動が盛り上がっていた。この反核運動はソ連の差し金だったという説もあるが、日本経済新聞のブリュッセル特派員として、この反核運動を取材していて、欧州市民の強い反核意識を肌で感じたものだ。

 西独など主要国に相次いで米核ミサイルを配備するなかで、小国オランダは対応に悩んだ。NATOの決定に従うか、それともオランダの反核機運を受け入れるか。若きルベルス首相にインタビューしたが、首相執務室で頭をかきむしる姿をみた。反核運動の高まりのなかで、ルベルス首相は米ミサイル配備を延期することを決断する。この小国の決断が結局、米ソ核軍縮交渉の再開を導き、冷戦終結への導火線になっていく。

唯一の被爆国・日本が担う地球責任

 唯一の被爆国である日本が担う責任は、欧州の小国の比ではないだろう。被爆国だけが核爆弾が何をもたらすか、その悲惨さを本当に知っているからだ。被爆者の体験を伝え続けるなど、被爆国からの国際発信ほど重要なものはない。広島、長崎を最後に核兵器が一度も使用されなかったのは、被爆国からの発信力がいかに大きかったかを物語っている。それがオバマ大統領の広島訪問に結びついたのである。

 その唯一の被爆国・日本が核兵器禁止条約に参加しないのは、これまでの核廃絶への発信力を自ら減殺するようなものだ。もちろんこの条約には米国など核保有国やNATO諸国など米国の同盟国は不参加だ。米国の「核の傘」に依存する国際政治の現実を浮き彫りにしている。しかし、唯一の被爆国はそれを超える重い地球責任を担っている。

G20首脳の広島訪問を

 唯一の被爆国として、日本外交の基本に、「核兵器なき世界」を据えることが先決だ。「非核3原則(持たず・作らず・持ち込ませず)」の維持は当然である。

 そのうえで、第1に、核超大国である米ロに核軍縮を強く求めることである。安倍晋三首相はトランプ米大統領とも、プーチン・ロシア大統領とも友好関係を築いてきている。近すぎる関係を不安視する見方もあるが、こうした関係こそ生かして米ロ双方に直言すべきである。国際社会を見渡しても米ロ首脳双方に直言できるのは、安倍首相くらいだろう。

 第2に、中国、英国、フランスという他の核保有国にも核軍縮を要求することだ。とくに核増強に動く中国には強く警告するしかない。事実上の核保有国であるインド、パキスタン、イスラエルへの要求も忘れるべきではない。そのうえで、北朝鮮に国際社会と連携して核放棄を突きつけるしかない。

 第3に、2019年に日本で開く20カ国・地域(G20)の首脳会議で、G20首脳の広島訪問を呼び掛けることである。オバマ大統領の広島訪問を実らせた外交成果をもってすれば、実現可能だろう。米ロ中英仏という核保有国すべての首脳が、広島を訪れて初めて、「核兵器なき世界」への道は開かれる。地球を俯瞰する外交の真価が問われる。


このコラムについて

岡部直明「主役なき世界」を読む
 世界は、米国一極集中から主役なき多極化の時代へと動き出している。複雑化する世界を読み解き、さらには日本の針路について考察する。
 筆者は日本経済新聞社で、ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、取締役論説主幹、専務執行役員主幹などを歴任した。
 現在はジャーナリスト/明治大学 研究・知財戦略機構 国際総合研究所 フェロー。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/080600034

 
2017年8月8日 李策 :フリーライター
北朝鮮、武器売却情報網を通じ「地球規模の乱世」を予想し核開発か


4月15日に行われた北朝鮮の軍事パレード Photo:AP/AFRO
ロシアの大使が北朝鮮を訪問
謎多き外務次官と会談

 7月下旬、北朝鮮とロシアの間で気になる動きがあった。

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信によれば、ロシア外務省のオレク・ブルミストロフ巡回大使が7月22〜25日に平壌を訪問。申紅哲(シン・ホンチョル)外務次官と会ったという。

 ブルミストロフ大使は北朝鮮の核問題を担当しており、6ヵ国協議が再開することになればロシア次席代表となる要人である。一方、申氏は2013年2月まで駐バングラデシュ大使を務めたという以外、ほとんど経歴が知られていない謎多き人物だ。

 ただ、彼がバングラデシュに駐在していた前後、同国と北朝鮮の貿易取引は大きく増加。彼の離任後には、同国の首都ダッカが、北朝鮮の不法な外貨稼ぎの主要拠点となっていることが分かっている。

 そして2015年2月に外務次官就任が確認されて以降、申氏はシリア、赤道ギニア、アンゴラ、コンゴなど、北朝鮮との武器取引が疑われる国々を相次いで訪問。特にシリアでは、アサド大統領とも面会している。アサド氏は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働委員長がメッセージをやり取りする、数少ない国家元首の1人だ。

 こうした申氏の“動線”を見れば、北朝鮮外務省における彼の役割が、第三世界との「秘められた関係」であることが分かる。では、そのような人物がなぜロシアの核問題担当者と会ったのか。朝鮮中央通信は会談内容をまったく伝えていないが、2人をつなぐキーワードは、おそらくイランだ。

 ブルミストロフ氏が北朝鮮を訪問していた頃、米国議会では北朝鮮とロシア、イランに対する制裁強化をひとまとめにした法案が議論されていた(8月2日に成立)。周知のとおり、シリア内戦でアサド政権を支えるロシアとイランは実質的な軍事同盟であり、北朝鮮とイランも兵器開発などで協力関係にある。

 北朝鮮とロシア、そしてイランは、米国の動きを受けて、何らかの意見調整を行う必要が生じたものと筆者は見ている。

中東やアフリカ諸国に
武器を売りまくり情報収集

 北朝鮮はとかく世界から孤立し、情報の流れから遮断された国と見られがちだ。しかし、その見方は正しくない。

 例えば、北朝鮮の武器商社として悪名高い朝鮮鉱業開発貿易(KOMID)は、ロシアやイラン、シリア、ナミビア、南アフリカなどに要員を置き、中東やアフリカの紛争地に兵器を売りまくってきた。

 彼らが売るのは、最新のレーダーでもなければステルス戦闘機でもない。先進国では「骨董品」と呼ばれるような旧ソ連製戦車のカスタムパーツや、荒れ地でホコリまみれになっても動作不良を起こさないシンプルな構造の機関銃の類である。今日、明日にでも戦う必要に迫られた顧客が望むのは、そのようなタフな兵器の数々なのだ。

 つまり、北朝鮮には、いつ、どこで、誰と誰が、何を理由に戦おうとしているのかといった、日本人や韓国人にはとうてい知り得ないような情報が、リアルタイムで寄せられているワケだ。

 北朝鮮が、中東やアフリカの国々とこうした関係を結ぶようになったのは、金正恩氏の祖父・金日成主席のころからだ。1973年の第4次中東戦争では、エジプトとシリアに空軍パイロットを派兵してイスラエル空軍と戦わせている。

 最近も朝鮮中央通信は、シリアにおけるアサド政権とロシア、イランによる「反テロ作戦」の戦果を頻繁に伝えている。また金正恩氏とアサド氏の関係を見ても、北朝鮮が今なお、この地域に対する高い関心を維持していることが分かる。

 ただ、昔と今とでは世界の環境がまるで異なる。

金正恩は地球規模の乱世を
予想しているのかもしれない

 金日成が中東戦争に派兵したのは東西冷戦の中、東側陣営や非同盟運動の内部で自らの地位を確保するための「損得勘定」をした上でのことだった。イスラム諸国を自らの応援団にすることで、陣営の盟主たる旧ソ連や中国にも自己主張できる“立ち位置”を狙ったわけだ。

 一方、金正恩はどうだろうか。世界のスーパーパワーが米国のみとなり、中国やロシアといえども、米国と完全に対立してしまっては繁栄を望むことはできない。そうした中で北朝鮮は、どこまで本気かは別として、米国との「対決」をうたう唯一の国になってしまった。中東やアフリカといくら友好関係を維持してみても、米国と敵対することで生じるマイナスを埋められるとは思えない。

 ただし、それは世界が今の形のまま、安定し続けることを前提とするならばだ。

 北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は昨年の国連総会で行った演説で、次のように述べた。

「世界ではテロの狂風が吹きまくり、戦乱による難民事態に席巻され、世界的なホットスポットは減るのではなく、反対に増えている。(中略)真の国際的正義を実現して世界の平和と安全を守り、国連が設定した持続開発目標を達成するためには、『正義』の看板の下で不正義が横行する古びた国際秩序を壊し、公正かつ正義の新しい国際秩序を樹立しなければならない」

 同様の表現は、ほかの演説文や国営メディアの論評にも数多く見られる。思うに金正恩は、世界の戦地に送った要員から報告される内容に触れながら、地球規模の「乱世」の到来を予想しているのではないか。

 例えば、イランとサウジアラビアが衝突したり、先進国が「核テロ」に見舞われたり…。今の状況を考えれば、そうした事態もあながちあり得ない話ではない。世界がそんな混乱の中にたたき込まれれば、「弱肉強食」の度合いが強まり、「強者」すなわち核を握る者が勝つ──。

 本当にそうした世の中が訪れるかどうかは別として、まだ30代前半で生い先長い金正恩が、このような世界観を持っていたとしても不思議ではないだろう。(フリーライター 李策)
http://diamond.jp/articles/-/137837?


 


2017年8月8日 真壁昭夫 :法政大学大学院教授
北朝鮮問題でトランプは中露韓から袋小路に追い込まれつつある


Photo:新華社/アフロ
 7月28日の日本時間深夜、北朝鮮はミサイルの発射実験を行った。今回発射されたのは大陸間弾道ミサイル(ICBM)で、米国を射程に入れる能力を備えていると見られる。この発射を機に、朝鮮半島情勢が一段と混迷の色を深めている。最大のポイントは、北朝鮮への対応を巡る米国と中国、ロシアの利害の食い違いが一段と鮮明になっていることだ。

 トランプ大統領は、米国の専門家から地政学的な朝鮮半島の重要性、北朝鮮と中国およびロシアとの関係などに関するレクチャーを受けているはずだ。それにもかかわらず、同氏は朝鮮半島情勢について、これまで経験してきたビジネス交渉の延長線上で捉えているのかもしれない。

 圧力をかけたり好条件を示せば、相手が同氏の言うことを聞くと思っているのだろうか。それは誤りだ。安全保障問題は国の存亡にかかわる問題であり、ビジネスとは明らかに違う。それに伴う交渉は、時にビジネスに関する交渉やディール(取引)よりもはるかに複雑だ。

 当面、トランプ政権は中国に北朝鮮への圧力行使を求め続けるだろう。ただ、それで朝鮮半島の問題が解決できるわけではない。現在のように米国が北朝鮮に圧力をかけ続けると、朝鮮情勢を巡る米中露の関係は一段とこじれてしまう恐れがある。その中で、わが国はいかにして自国を守るか、現実的な対応を進めなければならない。

北朝鮮は
中国の生命線の一部

 トランプ政権は中国に対して、北朝鮮に圧力をかけ核兵器やミサイルの開発を断念させるよう求め続けている。中国は米国の要請に配慮して水面下での交渉を進めてきた。それでも、米中の溝は縮まっていない。むしろ、両国の関係は冷え込みつつあるように見える。

 最大の問題は、トランプ大統領の「中国にとって北朝鮮がいかに重要な存在であるか」という認識が低いことかもしれない。米国が中国に圧力をかけて、北朝鮮の軍事的挑発をやめさせようとしても中国は動かないだろう。

 なぜなら、もし北朝鮮がなくなると、中国は米国からの圧力の緩衝国を失うことになるからだ。朝鮮半島で北朝鮮がないと、中国が直に米国のパワーと対峙することにつながる。それを防いでいるのが北朝鮮だ。

 朝鮮半島の38度線を挟んで自国の意向を反映した北朝鮮と、米国の陣営に属する韓国が対峙する状況は中国にとって不可欠だ。中国にとって、北朝鮮という緩衝帯は一種の生命線とも言える。

 金独裁政権が中国の意向を無視しているにもかかわらず、中国は北朝鮮に対して強い態度を取っていない。その背景には、こうした事情がある。むしろ中国はいたずらに北朝鮮を刺激したくはない。中国は、北朝鮮がミサイル発射実験などを繰り返しているのは「米国が北朝鮮への圧力を強化したからだ」と批判している。この考え方はロシアにも共通する。

 トランプ大統領の頭の中では、国家間の交渉はビジネスと同じであり、先手を切って相手に圧力をかければ、有利な条件を引き出すことができると思っているのかもしれない。中国に圧力をかけて、どうにかして中国を動かしたいのだろう。

 しかし、中国に圧力をかければかけるほど、米中間の関係は冷え込む可能性がある。中国としても、今秋には大事な共産党大会を控えており、米国に対して安易な譲歩はできない。米中韓の軋轢が増し、トランプ大統領がさらなる袋小路に追い込まれる可能性は高い。

甘えに徹する韓国と
影響力拡大を狙うロシア

 米中の関係がこじれ始めていることに加え、相変わらず「駄々っ子」のようにふるまう韓国と、影響力の拡大を狙うロシアの動向も、北朝鮮問題の先行き不透明感を高めている。

 韓国の文政権は今でも、元々聞く耳を持たない北朝鮮との対話を重視している。ミサイル発射を受けて日米韓で制裁を検討するとの姿勢を示しつつも、韓国は融和姿勢を崩してはいない。

 この背景には、経済的な恩恵を重視して中国との関係を強化したいという文政権の狙いがあるのかもしれない。日米の視点から考えると、韓国の対北朝鮮政策はかなり甘いと映る。

 韓国の本音は、自国経済を支えるためにも「中国との関係は強化したい」という思惑があるように見える。そのため、北朝鮮に表立って圧力をかけるのは好ましくない。もし、韓国が北朝鮮に攻撃されれば、日米も困る。それゆえ「日米は韓国を見捨てないはずであり、最終的には日米とも韓国の味方をする」との見方があるのだろう。

 おそらく、今後も文政権はそうしたスタンスを大きく変えることはないだろう。中国の顔を立てるために北朝鮮との対話を重視しつつ、その一方で日米の圧力重視姿勢にも表向きの理解を示すだろう。

 次にロシアだ。ロシアが重視しているのは自国の影響力を高めることだろう。ロシアは、シリア内線に介入することで、米国が混乱させた中東情勢を安定させようとしている。その拠点を築くためロシアは、クリミア半島に侵攻したとも考えられる。

 ロシアの狙いはずばり、欧州への影響力拡大だろう。EUは中東からの難民という問題に直面している。それがテロやポピュリズム政治の台頭につながった。もし、ロシアがシリアの安定を実現することができれば、欧州への難民流入は減少するだろう。その場合、EU域内で、米国よりもロシアとの関係が重要との論調が増える可能性がある。ロシアは極東地域での影響力拡大も狙い、北朝鮮に配慮を示している。

わが国は
自国を守るすべを備えよ

 このように考えると、トランプ政権は朝鮮半島情勢を巡る国際情勢を理解できていない。北朝鮮は、米国本土を射程に収めるICBMを手に入れたと見られる。この状況で米国がとりうる方策は、(1)北朝鮮への攻撃、(2)体制転換の模索、(3)中国の働きかけ強化、の3点にまとめられる。中露が北朝鮮を見捨てるとは考えづらい。韓国は、米国が北朝鮮を攻撃しないと考え、ミサイル防衛システムの配備を進めていない。

 外交交渉をビジネス交渉と取り違えているトランプ政権は、今後も北朝鮮への強硬姿勢をとり、中国に圧力行使を迫るだろう。その結果、北朝鮮問題を巡る国際的な議論の中で米国は孤立する恐れがある。米国の外交政策のかじ取りもかなり難しくなるだろう。米国が方針を修正し中露との連携などを模索しない限り、朝鮮半島情勢がどのように収束するかはかなり見通しづらい。

 この状況でわが国は、米国との同盟関係を基礎にして安全保障を確保せざるを得ない。外交面で米国が行き詰まりつつある中、アジア、欧州各国との関係を強化し、発言力を高めておくことも必要だ。

 中国は一帯一路構想を推進することでアジア新興国に経済の開放を求めている。欧州ではドイツが中国との関係を強化している。米国の求心力が低下する中、わが国は迅速に経済外交を軸としてアジア新興国との関係を強化し、国際社会における発言力の向上に取り組むべきだ。

 アジアの新興国は世界経済の原動力である。わが国がアジア地域での存在感を高めることができれば、日EU経済連携の早期実現など、ドイツをはじめとする欧州各国との連携も進みやすくなるだろう。その結果として、わが国に賛同する国の数を増やすことができれば、国際社会における発言力は高まるはずである。

 言い換えれば、わが国は北朝鮮問題を巡る各国の足並みをそろえ、どのような解決策が可能かを模索する環境を整えていくべきだ。そのために各国との関係を強化することが、自国を守ることにつながるはずだ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
http://diamond.jp/articles/-/137835
 

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コメント
 
1. 2017年8月08日 20:23:42 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[716]

冷泉彰彦
プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
核兵器廃絶のために、日本は理想と現実の両方を主張すればいい
2017年08月08日(火)16時30分

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核兵器廃絶のために、日本は理想と現実の両方を主張すればいい
日本政府は「安全保障上の現実論に立つ」と説明しているが Issei Kato-REUTERS
<現実にはアメリカの「核の傘」に守られているという理由から、日本は国連の核兵器禁止条約に反対しているが、そのような論理的総合性に意味はあるのか?>

7月7日に国連の本会議で核兵器禁止条約が採択されました。これを受けて、核保有国である米英仏の各国は、条約に加盟しない方針を明らかにしています。日本政府の立場も同様で、時事通信の報道によれば別所浩郎国連大使は記者団の取材を受けて、現状で条約に「署名することはない」と強調したそうです。

一方で日本は、過去長い間ずっと国連の本会議に対して「核兵器廃絶決議案」を提出し続けていました。また、「非核三原則」を国是として堅持していることも含めて、日本という国が国是として核戦争に反対していることは明らかです。

そうなのですが、この核禁止条約に関しては、これまで日本は一貫して「反対」して来ました。そのために、日本国内ではまるで現在の政府が核廃絶に消極的であるかのような印象が広がり、そうした政府の姿勢を批判する動きも続いています。どうして日本政府が核禁止条約に反対しているのか、分かりにくいことは確かです。

【参考記事】北朝鮮の核開発を支える中朝貿易の闇

これまでの政府の言い方を総合すると、3つの理由があるようです。まず1つ目には、核禁止条約は「国際的な安全保障環境の現実を無視している」という主張が背景にあると考えられます。具体的には、日本政府としては「核兵器の非人間性を訴える」という点と、「安全保障の上は現実論に立つ」という点の「両方を踏まえてきた」という発言が繰り返されています。

つまり、唯一の被爆国だから、核兵器の恐ろしさを発信する役割を感じているが、同時に核の傘に入って防衛をするという現実も踏まえて考えているというのです。ですが、核禁止条約は後者、つまり安全保障の現実を踏まえていないから反対ということのようです。

2点目として、以前から日本政府が指摘しているのは、日本は「核保有国と、非保有国の双方が協力して取り組めるものしか参加しない」というのを基本方針にしているということです。確かにこれはNPT体制、つまり1970年にスタートした「核拡散防止条約」の原点であり、そのNPT体制の創設に努力した日本とすれば、譲れない点なのだと思います。

この点からすれば、あらゆる核の使用を非合法化して、現在の保有国に廃棄を迫る核禁止条約には参加できないということのようです。

次のページ 日本のホンネは「核の傘」を有効にしておくこと


3点目としては、北朝鮮危機のように現在進行形である核拡散問題については、日本は、理念だけでなく実際に経済制裁や関係諸国の協議を通じて問題の解決に取り組んでいるのに対して、核禁止条約はこうした具体的な拡散防止策には役に立たないという理由です。

以上の3つがいわば外交のタテマエであるならば、その奥のホンネの部分には、現在の日本は、核の傘に入っているのだから、報復核攻撃を合法化しておかないと、核の傘は有効にならないという考え方があると考えられます。

そんなわけで、核禁止条約には入らないというのですが、どうも、この姿勢はバカ正直というもので、そんな論理的整合性に意味があるのかどうか疑わしいように思われます。核の潜在的攻撃目標にされているのは残念ながら事実なのですから、それに対して物理的には傘で備え、法律的には核禁止条約で反対しということを通じて、二重の備えをするという発想法は取れないものでしょうか?

つまり、理想論と現実論の両方が入っている条約しか入らないというのではなく、日本が理想論の条約と現実論の条約や措置などに二重に参加してしまえば、同じように「ダブルの備え」になるのではないかということです。

【参考記事】北の最高指導者が暗殺されない理由

また、核不拡散への取り組みについて、確かに日本は大国つまり核保有国主導の北朝鮮対策などに参加してきています。ですが、この際ですから、これに加えて、同時に「非保有国としての核不拡散の取り組み」のリーダーシップを取ってみてはどうでしょう?

「核保有国と非保有国が一緒に参加できる枠組み」でないと参加しないなどという「潔癖な」考え方ではなく、発想を少し変えて、保有国主導の不拡散の行動にも参加するが、非保有国主導の不拡散の行動もリードするという動きを日本がやってしまうというのは、できないものでしょうか?

これまで日本国内では、政府が核禁止条約に反対し、被爆者をはじめとする被爆地の人々がそれに対して怒るという対立をずっと続けてきたわけですが、このような対立は不毛でしかありません。

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冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。
冷泉彰彦のプリンストン通信
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http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2017/08/post-933_2.php


 


 


 

北朝鮮の核開発を支える中朝貿易の闇
Risky Business
2017年8月8日(火)11時30分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

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北朝鮮は核ミサイルの開発を急ピッチで進めている KCNA-REUTERS
<本気になればできるはずなのに中朝貿易を取り締まらない、習近平の胸の内と試されるトランプの本気度>

中国・遼東半島の東の付け根に位置する町、丹東。最近では高速鉄道の駅ができて、高層マンションも立ったが、少し行けば寂れた国営工場と、陰気くさいビルがぽつりぽつりと立つだけの活気のない町だ。

だが丹東は、中国で最も重要な町の1つ。そして鴨緑江の向こう側に位置する北朝鮮にとっても、丹東は生命線と言っていいくらい重要な町だ。北朝鮮の対外貿易の約85%は中国が相手だが、その大部分は丹東経由なのだから。

丹東を経由して北朝鮮に入ってくる物資には、核爆弾とその運搬手段(ミサイル)の開発に必要な原材料や機材が含まれる。さらに重要なことに、こうした核・ミサイル開発に必要な資金の調達や支払いでも、丹東の銀行が窓口の役割を果たしている。いずれもアメリカと国連が制裁の対象としている違法な活動だ。

そんな制裁などあざ笑うかのように、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は、核・ミサイルの開発を進めてきた。アメリカの独立記念日である7月4日には、アラスカに到達可能な射程距離とされるICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を実施。強気な発言を繰り返してきたドナルド・トランプ米大統領を挑発した。7月29日には、2度目のICBM発射に成功するなど緊張を高め続けている。

【参考記事】北朝鮮2度目のICBM発射実験は、アメリカと日韓を分断するワナ
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/08/2icbm.php

トランプはこれに先立つ6月20日、中国の影響力によって北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止する戦略がうまくいっていないことを暗に認め、「少なくとも中国が努力したことは分かっている」とツイートした。

だが、中国は本当に北朝鮮に核開発を思いとどまらせるため、十分な努力をしてきたのか。「ノー」というのが、アメリカと一部のアジア諸国の専門家の見解だ。最近ホワイトハウスがまとめた対北朝鮮政策の見直しを受け、トランプ政権の内部では、アメリカと同盟国は北朝鮮に対する圧力をもっと強化できるという声が高まっている。

問題は、その方法が1つしかないことだ。つまり、北朝鮮に核開発に必要な資金とデュアルユース技術(民生用と軍事用の両方に使える技術)をもたらす中国企業を取り締まることだ。

中国政府を怒らせてもいいなら、それを実行するのはさほど難しくないだろう。北朝鮮絡みのビジネスをしている中国企業は5000社以上あるが、貿易自体は一握りの大手企業が独占している。だが、アメリカがこれらの企業を直接取り締まれば、米中関係にヒビが入りかねない。だから米政府は6月、北朝鮮との取引関係が著しく大きいとみられる10社(個人を含む)を取り締まるよう中国政府に要請した。

次のページ 北朝鮮の核保有は中国に都合がいい?

それにしてもなぜ、中国政府はこれらの企業の取り締まりに及び腰なのか。この点について、情報当局者たちの見解は一致しない。一部の企業集団が、中国政府と太いパイプを持つのではないかとみる向きもある。共産党全国大会をこの秋に控え、習近平(シー・チンピン)国家主席ら政府指導部は、有力企業を敵に回したくないのかもしれない。

中国政府の反応が鈍いのは、北朝鮮が核保有国であることが、実のところ中国にとって都合がいいからではないかとの見方もある。なまじ北朝鮮の力が弱くて、韓国によって朝鮮半島が統一されれば、中国にとってはすぐ隣にアメリカの手厚い軍事支援を受ける国が誕生することになる。北朝鮮に核があれば、そのような事態になる可能性は低いから、中国にとってもそのほうが安心だというわけだ。

【参考記事】北朝鮮初のICBMは日本の領海を狙っていた?
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/08/icbm-10.php

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金正恩体制のもと、北朝鮮の核開発は着々と進む KCNA-REUTERS
トランプは手玉に取られた?
中国が問題の10社を秋までに取り締まらなければ、アメリカは一方的に制裁を科すと、米政府は中国側に伝えている。そしてそれは口先だけの脅しではないことを、トランプ政権は行動で示した。米政府は6月30日、北朝鮮の核ミサイル開発のためのマネーロンダリング(資金洗浄)に関わったとして、丹東銀行への制裁を発表した。

7月5日にはニッキー・ヘイリー米国連大使が、「アメリカは(北朝鮮と)貿易を続けるいかなる国も見逃さない」と、明らかに中国を念頭に置いた警告を発した。さらにビンセント・ブルックス在韓米軍司令官は同日、アメリカと同盟国は、北朝鮮における核拡散を阻止するため、必要なら戦争をする用意があると明言した。

トランプ政権の「軌道修正」は、かなり劇的だ。トランプは選挙戦のときから中国の貿易政策や外交政策を厳しく批判していたが、4月の米中首脳会談は友好ムードに終始。習との会談後、中国と北朝鮮の間には長い複雑な歴史があることが分かったと述べ、「北朝鮮を脅して態度を改めさせるのは容易ではない」という中国の主張を暗に受け入れたようだった。

だが、トランプは習の手玉に取られたというのが、中朝貿易を観察してきた情報機関やシンクタンクの見方だ。中国がその気になれば、北朝鮮の核開発をくじくことは可能だというのだ。

中国は長年、北朝鮮と貿易をする中国企業は小規模な「ならず者企業」だという立場を取ってきた。コソコソと闇取引に精を出す民間貿易会社で、当局がしっぽをつかむのは難しいというのだ。ところが6月に、アメリカのシンクタンクC4ADS(先進国防研究センター)がまとめた報告書によると、北朝鮮が大量破壊兵器を獲得するために国外に確立してきた資金と物資の調達システムは「集中的で、限定的で、攻撃に弱い――つまり破壊する機は熟している」という。

次のページ 中国に数社の「窓口企業」

これはCIAと米財務省の分析担当官が長年言ってきたことと一致する。彼らが成功例として挙げるのが、05年のマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)に対する制裁だ。BDAは北朝鮮の資金洗浄に利用されていると見なされ、BDAと取引関係にある諸外国の銀行も含め、アメリカの金融システムにアクセスできなくなった。

北朝鮮はこの制裁で窮地に陥った。BDAには北朝鮮政府高官の個人資金も預けられていたとみられるが、制裁により2500万ドル以上の資産が凍結されてしまったのだ。「あれはアメリカがやってきたなかで最もうまく標的を絞った措置だった」と、スチュアート・レビー元財務次官は振り返る。

その2年後、北朝鮮は核交渉の再開に応じるから、BDAに対する制裁を解除してほしいと求めてきた。ブッシュ政権はこの取引に応じた。だが、核交渉は何の成果ももたらさなかった。

それから10年、北朝鮮がアメリカを核攻撃する能力を手にする日は近づいている。楽観論者に言わせれば、「その日」は早くて3年後。一方、悲観論者は1年半後とみている。

いずれにしても、その時が来たらアメリカと同盟国は重大な決断を迫られる。金を理性のある核の持ち主として扱い北への攻撃を思いとどまるか。それとも金を「予測不能」と見なし、対北朝鮮先制攻撃とそれに伴うはずの悲惨な戦争を選択するか――。

こうした状況を考えれば、トランプ政権が中国政府の怒りを買うリスクを冒そうとも、北朝鮮を支える中国企業の取り締まりに乗り出そうとしている訳が分かる。北朝鮮をめぐる論議に参加しているホワイトハウス関係者が言うとおり、「それ以外にまともな選択肢はない」からだ。

【参考記事】北朝鮮労働者がロシアW杯会場で「強制労働」? 事実なら大会開催権はく奪も
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中朝の国旗を売る丹東の行商人 Kevin Frayer/GETTY IMAGES
北朝鮮は「孤立とは程遠い」
制裁を発表した丹東銀行を除けば、トランプ政権は問題の10社について詳細を公表していない。とはいえ複数の米高官によると、今後予定する行動に関しては既に前例がある。

米政府に言わせれば、中国には北朝鮮の対外貿易・金融取引を手助けする数社の「窓口企業」が存在する。オバマ政権時代の昨年9月、米財務省はその1社である丹東鴻祥実業発展、および傘下の遼寧鴻祥集団を制裁対象に追加したと発表。併せて、米司法省が両社を刑事訴追した。

「理解すべき重要な点は、対北朝鮮貿易のより幅広い枠組みにおいて両社が独自の役割を果たしていることだ」と、C4ADSの報告書は指摘する。

米司法省の資料によると、丹東鴻祥は「中朝間の輸出入業務を手掛ける」貿易会社を標榜。グループ企業と共に、北朝鮮の政府組織に物資を調達する一方で、数億ドル相当の北朝鮮製品を買い付けて中国市場に流していた。その売り上げは、北朝鮮の核・ミサイル開発計画に不可欠なデュアルユース部品の購入資金として利用されたと、アメリカ側はみている。

丹東鴻祥は、北朝鮮にとっておそらくはるかに価値が大きい役割も果たしていた。米政府と国連の制裁対象である朝鮮光鮮銀行(KKBC)のフロント企業として、国際金融システムにアクセスすることだ。

KKBCは北朝鮮の核を含む兵器拡散の資金源とされ、09年以降グローバル金融システムから遮断されている。国内の主要銀行であるKKBCが国際市場で取引できなければ、北朝鮮は兵器開発用の部品や製品を提供する外国の業者に代金を支払うことができない。彼らは北朝鮮の通貨ウォンではなく、米ドルでの支払いを求めるからだ。

次のページ 中国企業の取り締まりが唯一の選択肢

窮地の北朝鮮を救ったのが丹東鴻祥だ。米司法省によれば「米ドルの取引制限を逃れる目的の下、丹東鴻祥は北朝鮮を拠点としてKKBCから資金提供を受ける企業と、外国の供給業者の間のドル取引の仲介役を務めた」。同社は2つの時期にわたって、KKBCの代理として総額1100万ドル超の取引を行ったと、米司法省は主張する。

取引の足跡を隠すため、丹東鴻祥は世界4大陸の6カ国に計43社のフロント企業やダミー会社を設立した。アメリカでも、少なくとも22社を通じて7500万ドル近くの金融取引を行ったと、米司法省はみている。

北朝鮮をめぐる定説とは裏腹に、実態は「孤立とは程遠い」と、C4ADSの報告書は指摘する。「幅広いネットワークのおかげで、制裁対象である北朝鮮の団体・個人は英領バージン諸島やセーシェル諸島、イングランドやウェールズや香港の会社の取引と見せ掛けて金融取引を行うことができた」

米政権関係者の考えによれば、丹東鴻祥のような企業を標的とする行動は北朝鮮の金融システムの最も脆弱な箇所、つまり合法的活動と違法な活動が交わる「要衝」への攻撃になる。ならば、なぜオバマ前政権は丹東鴻祥だけでなく、北朝鮮の窓口を務めるほかの中国企業を追い詰めなかったのか。

【参考記事】北朝鮮の「滅びのホテル」がいよいよオープン間近?
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中国を怒らせる覚悟はあるか
その問いの答えは、別の問いによって見えてきそうだ。すなわち、アメリカはどこまで中国を怒らせる覚悟をしているか――。

単発的な行動として、丹東にある企業に制裁を科すのは大きな問題ではない。実際、米財務省が丹東鴻祥を制裁対象に追加すると発表した際、中国政府が強く反発することはなかったようだ。自国企業の1つを犠牲にしても、北朝鮮に圧力をかける姿勢を示しておく必要があると考えたのだろう。

だがトランプ政権の複数の安全保障担当者は今、北朝鮮の核開発を阻止しなかったとしてオバマ前政権や中国政府を非難する姿勢を強めている。

「北朝鮮が(核搭載可能なICBMの)開発を進めていたなか、米政府や国連が制裁を強化したのは確かだ」と、トランプ政権のある高官は話す。「しかし大きな抜け穴があり、中国(企業)が見逃されていた」。オバマ政権は米中関係において北朝鮮問題ではなく気候変動問題を重視していたと、別の米高官は言う。

「北朝鮮に対して(核合意前の)イランへの制裁と同程度に効果的な措置が発動されたことはない」と、米政権の上級高官は語る。「それは中国が理由だったと言っていい」

その構図は変わると、トランプは宣言している。米政府が期限とする夏の終わりまでに中国が問題の10社に真剣に対処しない場合、アメリカは単独でそれらの企業を追及し、必要に応じて米金融システムから遮断すべきだ――米政府はそう判断している。

そんな事態になれば、もちろん中国は喜ばない。問題は怒りの度合いだ。世界2位の経済大国として力を増す中国には、その気になればアメリカを害する手段がいくつもある。中国市場から米企業を締め出し、アジアでのアメリカの重要な同盟国である日本や韓国に経済的圧力をかけるかもしれない。

それでも米政府がみるところ、北朝鮮とつながる中国企業の取り締まりは唯一の選択肢だ。さもなければ、戦争への道を突き進むしかない。朝鮮半島での戦争を望む者は中国を含めて誰もいない。そしてトランプは中国に最後のチャンスを与えようとしている。

東アジアは朝鮮戦争休戦以来、最悪の緊張状態にある。さらなる悪化も覚悟すべきだ。

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ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由
Why Isn’t Russia Worried About Kim Jong Un’s Nukes?
2017年7月18日(火)18時00分
クリス・ミラー(米イエール大学グランド・ストラテジーコース副所長)

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ロシアのプーチン大統領は北朝鮮問題で中国と歩調を合わせる Alexander Zemlianichenko- REUTERS
<体制保障さえすれば金一族は合理的な考え方ができる人々だとロシアは考えている。安全が保障されれば、あとは北朝鮮とアメリカの間に冷戦時のような核抑止が働く>

アメリカの北朝鮮政策にとって、7月4日の米独立記念日はひどい1日だった。北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功しただけではない。同じ日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席がモスクワで会談。共同声明で、朝鮮半島の緊張の沈静化に支持を表明し、北朝鮮の核・ミサイル開発凍結を求めると同時にアメリカと韓国にも合同軍事演習を中止するよう求めたのだ。

アメリカは別のアプローチにこだわり続けている。ここ数カ月は中国が北朝鮮を説得して核・ミサイル開発をやめさせるよう、対中圧力を強めてきた。先週ドナルド・トランプ米政権が、中国には単独で北朝鮮の核問題を解決する能力もしくはやる気がないと見限ると、北朝鮮企業と取引をする中国の企業や個人に対して金融制裁を科した。

【参考記事】北朝鮮のICBM、アメリカの対北抑止施策揺るがす=川上・拓大教授

一方トランプ政権は北朝鮮問題の解決に向けて、ロシアの協力も引き出そうとした。5月に北朝鮮がロシア極東のウラジオストク港沖の海域にミサイルを着弾させた時は、こんな声明を発表した。「ミサイルはロシア領土の至近距離まで到達した。実際、日本よりロシアに近かった。ロシアが喜んでいるはずがない」

ミサイル着弾しても定期航路開設
ロシアは朝鮮半島が非核化すれば望ましいと思っているが、実際は北朝鮮のミサイルをそれほど懸念していない。ロシアは北朝鮮問題への唯一の解決策は北朝鮮と交渉し、金正恩政権の存続を保障することだとみている。北朝鮮の核開発に歯止めをかけることは支持するが、経済制裁には慎重で、体制転換には断固として反対する。その点がアメリカの思惑と異なり、国際的な取り組みを根本的に妨げる要因になっている。

【参考記事】半島危機:プーチン静観は、北朝鮮よりトランプのほうが危ないから

ロシアが対北朝鮮で融和政策を好む理由の1つは自国の利益のためだ。5月に北朝鮮がロシア極東のウラジオストク方面へミサイルを発射したのと同じ週、北朝鮮はウラジオストク港との間に定期航路を新設した。

北朝鮮は国家として自給自足を目指す一方、ロシアとの間に驚くほど多くの経済的な結びつきを持っている。2国は石炭や石油製品を調達し合い、とりわけ燃料不足に悩む北朝鮮側に恩恵を与えている。正確な統計はないが、北朝鮮出身の多くの留学生や数千人の単純労働者がロシアに滞在し、特に極東地域に集中している。現状では2国間の経済協力の規模は小さいが、もしアメリカが北朝鮮への経済制裁を解除し北朝鮮が経済開放に舵を切れば、ロシアとの貿易が拡大すると期待する専門家もいる。

【参考記事】英「ロシアに核の先制使用も辞さず」── 欧州にもくすぶる核攻撃の火種

次のページ ロシア「金一族は合理的」

ロシアが対北朝鮮で融和政策を取る最大の理由は、北朝鮮の振る舞いに対し、アメリカやその同盟国と非常に異なった解釈をしているからだ。長年ロシアは、北朝鮮とわずかに国境を接しているにも関わらず、金一族に対してアメリカよりはるかに楽観的な見方をしてきた。冷戦初期、北朝鮮とソ連は共産主義の価値観を共有していたが、そうしたイデオロギー上の連帯感はとうの昔に消え去った。

ロシアは金一族は奇妙だが、合理的だとも考えている。金正恩が核兵器を手にしたのは本当だ。だがロシアのアナリストは、北朝鮮が核兵器で先制攻撃すれば、アメリカによる核の報復を受けて金も北朝鮮も破滅することを、金は承知しているとみる。冷戦時代に米ソに核兵器の使用を思いとどまらせた核抑止の論理が、北朝鮮の攻撃を回避するうえでも役に立つというのだ。そのため多くのロシアのアナリストは、北朝鮮が国家の安全保障に自信をもてて、アメリカによる軍事攻撃を抑止できるという点で、北朝鮮の核開発は朝鮮半島情勢の安定化に役立つと主張する。

脅しがもたらした核開発
ロシア政府が北朝鮮問題でアメリカと一線を画すのには、他にも理由がある。ロシアは中国と同じく、朝鮮半島が統一されて北朝鮮の政権がアメリカの同盟国に取って代わられる事態をまったく望んでいない。ロシア政府は中国に同調し、米軍による韓国への最新鋭迎撃ミサイル「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)」配備に強く反発している。アメリカが東アジア地域に重点を置く限り、ロシアが今も最優先に掲げるソ連崩壊後の地域をめぐる争いにアメリカの目は行き届きにくい。そのうえ、金が譲歩しないことでアメリカが怒りの矛先を向けるのは中国だから、ロシアがアメリカに同調しないでいることは簡単だ。

実際ロシアの見方では、朝鮮半島を緊張させた責任は、北朝鮮だけでなく同じくらいアメリカにある。そうした見方からすると、そもそも金一族がミサイルや核を開発するのは自己防衛のためだという。「北朝鮮は通常、自分から仕掛けるよりやられたらやり返すタイプだ」と、ロシアの外交政策分析の第一人者で政治学者のフョードル・ルキヤノフは述べた。

「北朝鮮は、強がるのは賢明でないことをイラクのサダム・フセイン元大統領やリビアのムアマル・カダフィ元大佐の末路から学んだ上で、ミサイルや核を開発してる。ミサイルや核の存在が、他国による介入の代償を許容できないほど押し上げている」。ロシアのアナリストの多くは、アメリカが北朝鮮を体制転換させると言って脅しさえしなければ、そもそも北は核兵器開発の必要性を感じなかっただろうと主張する。

次のページ 経済制裁は効かない

北朝鮮は韓国の首都ソウルを射程に収める大量の通常兵器はもちろん、核兵器も保有するため、トランプが米軍による軍事攻撃をちらつかせる行為は北朝鮮による脅威と同じくらい危険だと、ロシアは考えている。ロシアの見方では、制裁は核実験やさらなる開発の凍結に一定の役割を果たすかもしれないが、北朝鮮が核開発を続ける背景にある論理は変えそうにない。すでに北朝鮮は深刻な食糧不足や経済が壊滅した状況でも存続可能だと証明した。ロシアの。アナリストはアメリカ側に問いかける。なぜ経済制裁を強化すれば、北朝鮮にとってアメリカに対する唯一鉄壁の防衛力である核兵器の開発を手放すよう北を説得できると思うのかと。

その問いかけは、アメリカが行動するうえで重荷になる。アメリカは朝鮮戦争で平和条約を締結しておらず、軍事的に北朝鮮を脅し続けているとロシアは指摘する。先日の北朝鮮によるミサイル発射実験後、プーチンは北朝鮮への批判を避け、北朝鮮とアメリカがともに方針を転換するよう呼び掛けた中国の立場を支持した。

ロシアはアメリカを責め続ける
アメリカは北朝鮮に対して核開発をやめるよう圧力をかける意思も能力もない中国に苛立ち、新たな選択肢を模索している。アメリカとしては、このまま北朝鮮に米本土を射程に収めるミサイルの開発や実験を続けさせる事態は避けたい。トランプが今年1月、北朝鮮が核弾頭を搭載したICBMで米本土を攻撃する能力を持つ可能性はないと約束した手前もある。米軍が北朝鮮の核関連施設を攻撃すれば、韓国や日本を巻き込む大規模な戦争に発展する危険性がある。

もしアメリカが北朝鮮の核開発を容認し体制存続に保障を与えるなど、北朝鮮政策を穏健なものにしていたら、ロシアも他国と足並みを揃え、北朝鮮に核・ミサイルの開発や実験をやめさせるよう圧力をかけたかもしれない。だがアメリカが北朝鮮への軍事攻撃や体制転覆を選択肢として残している限り、ロシアは金正恩だけでなくトランプにも責任を負わせ続けるだろう。

(翻訳:河原里香)

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国連安保理、北朝鮮に追加制裁決議 石炭などの輸出禁止
2017年8月7日(月)08時58分

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8月5日、国連の安全保障理事会は北朝鮮が7月に実施した2回の大陸間弾道ミサイル発射を受けて、新たな制裁決議を全会一致で採択した。国連で7月撮影(2017年 ロイター/Mike Segar)
国連の安全保障理事会は5日、北朝鮮が7月に実施した2回の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受けて、新たな制裁決議を全会一致で採択した。これにより年間30億ドルに相当する同国の輸出の3分の1を削減できるという。

米国が提出した決議は、石炭や鉄鉱石、海産物などの輸出を禁止するほか、海外で働く北朝鮮労働者を現在の水準から増やすことや北朝鮮との新たな合弁事業などを禁じている。

ヘイリー米国連大使は「さらなる行動が必要だ。米国は自国や同盟国を守るために慎重な防衛手段を今後も取り続ける」と述べた。

中国とロシアは米国のミサイル防衛システムTHAAD(サード)の韓国配備を非難しているが、中国の劉結一国連大使は同システムの配備停止をあらためて要求。北朝鮮に対しては、緊張を高める行動を自重するよう促した。

トランプ米大統領は5日、ツイッターに「国連安保理が北朝鮮への制裁を全会一致で採択した。中国とロシアもわれわれに賛同した。非常に大きな経済的打撃だ」と投稿した。


[国連 5日 ロイター]
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/08/post-8145.php


中国外相「北朝鮮追加制裁は適切な対応、問題解決には対話不可欠」
2017年8月7日(月)09時37分

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8月6日、中国の王毅外相は、国連安全保障理事会が採択した北朝鮮への追加制裁について、一連のミサイル実験に対する適切な対応だとする一方、朝鮮半島問題は「重大な岐路」にあり、解決には対話が不可欠との認識を示した。マニラで行われているASEAN会議で撮影(2017年 ロイター/Aaron Favila)
中国の王毅外相は6日、国連安全保障理事会が採択した北朝鮮への追加制裁について、一連のミサイル実験に対する適切な対応だとする一方、朝鮮半島問題は「重大な岐路」にあり、解決には対話が不可欠との認識を示した。

外相は記者団に対し、危機の悪化を回避するためには外交的で平和的な手段が必要だと強調、「物事を決定し、行動するときには責任ある立場をとるよう全ての関係者に求める」と述べ、「制裁は必要だが、それが最終目標ではない」との見方を示した。

6カ国協議の再開が容易でないことは認識しているが、それが正しい方向だとの考えも表明した。

王外相はこの日、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議の合間に北朝鮮の李容浩外相と会談。王氏は会談について、「非常に綿密な」協議を行ったとし、北朝鮮に対し、国連決議を冷静に精査し、核実験のような緊張を高めることにしかならない行動は控えるよう助言したことを明らかにした。北朝鮮側の反応については言及を控えた。

王外相はティラーソン米国務長官とも会談した。王氏は、北朝鮮について「具体的で有意義な」協議を行ったとし、新たな制裁決議は対話再開のための手段であるべきとの認識で一致したと述べた。

また、王氏はティラーソン長官に対し、制裁を「盲目的に」利用しても朝鮮半島問題の解決にはならないとの考えを示し、中国が提案している、韓国の軍事演習と北朝鮮のミサイル実験の「双方の停止」を米国が真剣に検討することを望むとの立場を伝えた。

王外相はこの日、韓国の康京和外相とも会談。王氏は会談で、米軍の新型迎撃ミサイルTHAAD(サード)では北朝鮮の大陸間弾道ミサイルを阻止できないと指摘し、「中国の安全が確保されていないという前提では、韓国の安全は構築できない」と言明した。


[マニラ 6日 ロイター]

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北朝鮮「国連の制裁決議は主権侵害、正当な行動とる」
2017年8月7日(月)17時42分

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8月7日、北朝鮮は、国連安全保障理事会が採択した追加制裁決議について同国の主権を侵害するとして非難、「正当な行動」をとると表明した。国営の朝鮮中央通信社(KCNA)が伝えた。提供写真。5月撮影(2017年 ロイター/KCNA)
北朝鮮は、国連安全保障理事会が採択した追加制裁決議について同国の主権を侵害するとして非難、「正当な行動」をとると表明した。国営の朝鮮中央通信社(KCNA)が伝えた。

同国は、米国が北朝鮮への敵対的な政策を維持する限り、核開発プログラムを交渉のテーブルに乗せることはないとのこれまでの姿勢を改めて示した。どのような行動をとるのか具体的には言及しなかった。

KCNAは「米国が自国の領土は海を隔て安全だと信じることほど大きな間違いはない」としている。


[ソウル 7日 ロイター]
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/08/post-8152.php
 


 
米国務長官、北朝鮮との対話示唆 ミサイル発射中止が条件
2017年8月8日(火)08時50分

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8月7日、ティラーソン米国務長官(写真)は、緊張状態が続く朝鮮半島問題を巡って、環境が整えば関係各国は対話を行うことが可能との認識を示した。写真はフィリピンの首都マニラで6日撮影(2017年 ロイター/Erik De Castro)
ティラーソン米国務長官は7日、北朝鮮が一連のミサイル発射実験を中止すれば米国は北朝鮮と話し合いをする用意があると述べ、対話のドアは開かれているとの姿勢を示した。

国連安全保障理事会は5日、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を受けて、新たな制裁決議を全会一致で採択。北朝鮮の石炭や鉄鉱石、海産物などの輸出を禁止するほか、海外で働く北朝鮮労働者を現在の水準から増やすことや北朝鮮との新たな合弁事業などを禁じており、これにより年間30億ドルに相当する同国の輸出の3分の1を削減できるという。

長官はマニラで開いた域内の安全保障会議の合間、記者団に対して、新決議の履行状況を注意深く見守ると表明。新決議について、世界が北朝鮮に何を望んでいるのかを示す力強いメッセージだと主張した。

同時に「環境が整えば、われわれは席に着き、北朝鮮の未来について対話することができる」とした上で「ミサイル発射を中止することが、北朝鮮にとって協議への準備が整ったという最善のシグナルになる」ほか、他の意思表示の手段も残されていると語った。

さらに、いかなる対話も、北朝鮮がどのように「安心感を得て経済的に繁栄できるか」が議題になると述べた。

長官は前週、対話再開には、北朝鮮がミサイル発射と核実験の両方を中止する必要があるとの見解を示していた。

米中の協議に詳しい米政府高官は、「ティラーソン長官は無意識にあるいは誤って核実験への言及を怠ったわけではないだろう」と指摘。

核実験への抗議は中国に任せ、それよりも「かなりハードルが低い」ミサイル発射中止を対話再開の条件として米国が要求するのが米国の立場だと説明した。

同長官はまた、ミサイル発射中止を判断する基準を何日間あるいは何週間と設定することはないと述べた。

次のページ 北朝鮮の反応は?

これについて北朝鮮からの直接的な反応はないものの、米国が攻撃を仕掛ければ、北朝鮮は米国を「ひどい目に遭わせる」と表明。北朝鮮は、米国が北朝鮮への敵対的な政策を維持する限り、核開発プログラムを交渉のテーブルに乗せることはないとのこれまでの姿勢を改めて示した。ただどのような行動をとるのか具体的には言及しなかった。

中国の王毅外相は6日、北朝鮮に対し、新たな制裁決議に「冷静に対応」するよう求めるとともに、「核実験など、国際社会に不利益をもたらすいかなる行動も起こすべきではない」と警告している。


[マニラ/ワシントン 7日 ロイター]
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/08/post-8156_2.php

 

北の最高指導者が暗殺されない理由
How (Not) to Kill Kim Jong Un
2017年7月21日(金)18時00分
アダム・ロンズリー(ジャーナリスト)


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北朝鮮が核開発を加速させるなか韓国は金正恩暗殺をにおわせている KCNA-REUTERS
<国内外で標的にされてきた歴史とトラウマが生んだ、「金王朝」と平壌を守る鉄壁の護衛を破れるのか>
1968年、韓国の仁川沖の実尾島(シルミド)で31人の特殊部隊が極秘に訓練を受けていた。使命は北朝鮮に侵入して金日成(キム・イルソン)主席を暗殺すること。しかし、彼らが平壌にたどり着くことはなかった。
暗殺部隊として創設された空軍2325戦隊209派遣隊の訓練は苛酷を極め、貧困者や犯罪者も含む兵士は虐待に等しい扱いを受けた。ゲリラ戦の演習では見張り役に足を撃たれ、上官の意に沿う成果を出さなければ棍棒で殴られた。6人が不服従で処刑され、1人が溺死した。
韓国の軍事政権が北朝鮮の最高指導者の暗殺を計画したのは、68年1月に朝鮮人民軍の部隊が韓国の首都ソウルに侵入し、朴正熙(パク・チョンヒ)大統領の暗殺を試みたことへの報復だ。同年4月には部隊が結成され訓練が始まったが、71年に暗殺計画は撤回された。
しかし、島に取り残された部隊の戦意は失われていなかった。その年の8月に兵士24人が蜂起。鍛え上げられたスキルで18人の見張り役を殺害し、船を盗んで仁川に渡り、バス2台を乗っ取ってソウルに向かった――自分たちを殺人兵器にしろと命じた人物を殺害するために。
だが、彼らは大統領官邸にたどり着くことはできなかった。ソウル市内の路上で銃撃戦となり、手榴弾で自爆する者も。生き残った兵士も死刑に処された。
【参考記事】ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由
もっとも、彼らが平壌を目指したとしても、結果は同じだっただろう。暗殺作戦を実行しても生きて帰れる可能性がほとんどないことは、上官たちも分かり切っていた。
北朝鮮が侵入者を寄せ付けないことは周知の事実だった。機密解除されたCIAの文書によると、60年代後半に韓国の情報機関は、北朝鮮領内で諜報活動を行っても「人員を失うだけの可能性が高く、成果はゼロかゼロに等しい」ため「真剣には努力しなかった」。
あれから半世紀近く。今なお北朝鮮に君臨する金一族に対し、再び暗殺計画がうごめいている。北朝鮮の弾道ミサイルと核兵器の開発は加速しており、ジェームズ・マティス米国防長官も、地域の最大の脅威で、アメリカの直接的な脅威だとしている。
北朝鮮の核開発を食い止めるための政治的な選択肢は、あまり希望が持てない。米国防総省は軍事的な選択肢も検討しており、16年の米韓合同軍事演習には、北朝鮮首脳部を襲撃する任務を帯びた部隊が参加したという見方もある。
韓国は、軍事独裁政権の過去も、個人的な報復から敵将の暗殺を試みた過去も忘れようとしている。しかし、核の脅威が高まり、度重なる示威行動にいら立つ韓国政府は、戦争が始まれば直ちに金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長を殺害するとの計画を隠そうとしなくなった。
次のページ さまざまな暗殺計画
命を賭して将軍を守る
もっとも、金一族にとって暗殺の恐怖は、現実でも想像上でも長い歴史がある。弾道ミサイルに点火するはるか前の、日本の植民地下にあった30年代から共産主義圏が崩壊する90年代まで、さまざまな暗殺計画が企てられてきた。
しかし、国内外の勢力から追い詰められても、彼らは生き延びてきた。それは持ち前の生存本能や、不十分な暗殺計画のおかげであり、護衛団と秘密警察と情報機関の緻密なネットワークの成果でもある。
金一族が初めて命を脅かされたのは30年代後半のこと。中国共産党が率いる抗日パルチザン運動に参加した金日成は、満州と朝鮮でのゲリラ活動で名を知られるようになった。日本の憲兵は彼を標的に「特殊活動部隊」を結成し、恩赦を餌にゲリラ兵を寝返らせた。
彼らは日本側と内通していた情報提供者と共に、自分たちの指揮官だった人物を狙った。この裏切りの教訓を、金日成は生涯、忘れることがなかった。
ゲリラ時代に金日成を守った護衛団の中には、後に最初の妻となり、金正日(キム・ジョンイル)総書記を生んだ金正淑(キム・ジョンスク)もいたとされる。彼女は金日成の盾となり、葦の茂みに潜む敵兵をライフルで撃ち殺したという。ほとんど伝説の域だが、命を賭して最高指導者を守るというプロパガンダとして語り継がれている。
第二次大戦後の最初の暗殺計画として確認されているのは、46年3月1日に平壌駅前の広場で起きた未遂事件だ。
朝鮮の独立運動記念日の集会で演壇に立った金日成を目がけて、南朝鮮が送り込んだとされる暗殺犯が手製の手榴弾を投げた。列席する要人の護衛に当たっていたソ連兵のヤコフ・ノビチェンコが身を投げ出して弾を遮り、右手を失った。
事件は、金日成とノビチェンコの間に生涯にわたる友情を生んだ。80年代半ばには、ソ連と北朝鮮の「友情」を描く陳腐な伝記映画の題材にもなった。
ちなみに事件の真相について、ソ連軍特別プロパガンダ部門の副責任者で、北朝鮮指導部と協力関係にあったレオニード・バシンは後に、より懐疑的な見方を記している。その主張によれば、手榴弾は金日成から約30メートル離れた地点に着弾したため、大した脅威ではなかったという。
次のページ 抑圧国家へ変貌
40年代に金日成の身を守った護衛団を基に、北朝鮮は世界で最も抑圧的な警察国家の1つ、金一族の利益のために存在する国家へと変貌していく。抑圧のために構築されたシステムの内部には、幾重もの層から成る警備体制が出来上がった。
その中核は通称「第6局」から選抜される5〜6人のエリートだ。第6局は最高指導者の護衛を担う部署。アメリカのシークレットサービスに相当するが、人員の規模は約20倍に及ぶ。
金一族をはじめとする上層部の身辺警護を担当するのは、兵力約10万の護衛司令部。そのうち、長年にわたって忠誠心を示し続けた高官のみが金一族の身辺を警護する。
この中心層を囲むのが、護衛司令部のほかのメンバーから成る層だ。彼らは金正恩の行事出席や公的訪問の際に周辺を警護するほか、各地にある最高指導者の邸宅の警備を行う。
首都防衛を担うのは、平壌防衛司令部と平壌防空司令部だ。戦争勃発、あるいはクーデター発生時に市内で戦闘などの任に当たる。そして最後にして最も重装備の層を構成するのが、北朝鮮人民軍第3軍団。西部の港湾都市・南浦から平壌に至る地域を警備している。
【参考記事】軍事でも外交でもない、北朝鮮問題「第3の解決策」
体制離反やクーデターの動きを早期に察知すべく、監視機関も設置されている。国家安全保衛部が密告者ネットワークを通じて市民の日常生活を監視する一方、朝鮮労働党幹部の監視は組織指導部が実施。軍内部では、保衛司令部が軍人担当の秘密警察として機能している。
これら対内諜報・治安機関の任務遂行を助けているのが、最高指導者への個人崇拝の徹底だ。この国では、金一族は神に等しい「信仰」の対象。その殺害をもくろむのは、多くの国民にとって単なる裏切りどころか冒瀆行為だ。皇帝支配時代の中国と同様、「逆賊」は一門そろって処罰されるという恐怖が浸透し、暗殺計画の防止に役立っている。
存在を消された第6軍団
最高指導者の護衛体制が最大の試練にさらされたのは90年代、金日成から金正日への世代交代期だ。当時、89年のベルリンの壁崩壊と91年のソ連崩壊で東側諸国がドミノ倒しになり、北朝鮮も後に続くのではないかという声は多かった。
地政学的な変動だけではない。金正日が後継者となることへの不満が国内に漂い、北朝鮮から漏れ聞こえるクーデター計画や暗殺未遂事件の噂が日本や韓国のメディアを騒がせた。
次のページ 過酷な処分
90年代前半にはアン・チャンホ上級大将ら、ソ連のフルンゼ陸軍士官学校への留学経験がある軍人30〜40人による暗殺計画の存在が報じられ始めた。彼らは、92年4月の朝鮮人民軍創建60周年記念軍事パレードの最中に、戦車砲で金父子を殺害する計画だったという。
「アンが解任・逮捕されたこと、ソ連や東欧の軍事大学卒業者が捜査対象になったことは、メディアの報道や脱北者の発言など多くの材料によって裏付けられている」。ジョンズ・ホプキンズ大学米韓研究所の客員研究員で、北朝鮮を専門とするマイケル・マッデンはそう指摘する。「だが、アンが実際に計画に加担したかどうかは別の話だ」
さらに金日成が死去した翌年の95年には、北東部の咸鏡北道を拠点とする北朝鮮人民軍第6軍団がクーデターに向けて動いたとされる。
「クーデター計画は治安機関が察知したのでなく第6軍団内部から漏れた」と、米海軍分析センター国際情勢グループ責任者で、北朝鮮治安機関に詳しいケネス・ゴーズは言う。「第6軍団長(だった大物軍人の金永春〔キム・ヨンチュン〕)が国家安全保衛部長に密告した」
本当にクーデターが企図されたのか、それとも(ゴースが指摘するように)実は資産の獲得争いが起きていたのか、疑問の余地は残る。いずれにしてもこの一件は、「完全な支配」を建前とする体制にとって憂慮すべき出来事だった。
第6軍団は過酷な処分を受けた。「最も信頼できる話によれば、上級指揮官を縛り上げて兵舎に残し、建物に火を放った」と、マッデンは話す。現在、第6軍団の存在は北朝鮮の公的記録から抹消されている。
金正日は激動の90年代を乗り越えて権力基盤を固め、息子の正恩への世襲を確実にした。しかし核開発の進展で北朝鮮による核攻撃の可能性が高まり、先制攻撃における北朝鮮の指揮系統の攪乱が新たな急務となっている。
「これは珍しいことではない。皆が話題にし、大騒ぎしているが、北朝鮮には標的になる指導部の施設がいくらでもある」と元米特殊部隊将校で在韓特殊作戦軍にいたデービッド・マクスウェル陸軍大佐は言う。
「指揮統制施設、平壌からの移転施設、戦争中に金正恩が使用するかもしれない別荘――以上は全て少なくとも監視対象に、極端な場合はその場に居合わせた人々も標的になる可能性がある」
戦争において敵将を倒すというのは目新しい考え方ではないが、韓国軍は近年、北朝鮮トップを暗殺する能力を従来以上に声高にアピールしている。韓国陸軍の特殊戦司令部は昨年、先制攻撃が必要となった場合に金正恩らを暗殺する特殊部隊を創設すると発表。一方、北朝鮮は米韓の新奇な企てを「北朝鮮に対する生物化学兵器を使った国家ぐるみのテロ」と非難した。
【参考記事】ICBMはミサイル防衛システムで迎撃できない
イラク侵攻の二の舞いに?
だが韓国の特殊部隊が標的の金正恩に近づく道のりは険しい。まず北朝鮮に侵入するのに、米空軍特殊作戦司令部か米陸軍の特殊司令部の精鋭ヘリ部隊である第160航空連隊の力が必要になる。黄海にある韓国と北朝鮮の軍事境界線、北方限界線(NLL)を越えたら、北朝鮮人民軍の第3軍団が海からの侵入者を平壌に入れまいと待ち受けている。
「第3軍団と第4軍団の守りが突破されたら、敵は首都を区画ごとに防衛して時間を稼ぎ、その間に金正恩と護衛司令部が指導部を北朝鮮中北部に移す構えだ」と、北朝鮮軍に詳しいジョセフ・バーミューデスは言う。
次のページ 勝算は低い
米軍特殊部隊は9.11同時多発テロ以降、その手の奇襲攻撃をパキスタンやソマリアやリビアで何度も実施し、逃走中のテロ組織幹部を拘束・殺害してきた。だが、重武装の国家を相手に同じことをやろうとしても勝算はかなり低い。「映画の題材にはいいだろうが、現実には一筋縄ではいかない」と、マクスウェルは言う。
最も現実的なのは、アメリカか韓国が集中砲火を浴びせることかもしれない。昨年9月、北朝鮮による核実験を受けて、韓国は「大量反撃報復」計画を発表。核攻撃の兆候があれば金正恩ら指導部に関係のある区域を弾道ミサイルや巡航ミサイルで壊滅させる構えだ。その4年前には巡航ミサイル「玄武3」などの公開試験を実施。平壌の錦繍山記念宮殿を模した標的にミサイルをぶち込んだ。
しかし指導者のいる場所にたどり着くための情報がなければ、ミサイルも特殊部隊も無意味だ。北朝鮮のような手ごわい標的について、その手の機密情報を入手しようとするのは無謀とも思えるが、韓国側は強気だと、ミドルベリー国際大学院東アジア不拡散プログラムのディレクターであるジェフリー・ルイスは言う。
「本当の意味で成功したためしはないのに、軍や政治の指導者は指導者暗殺作戦に引き寄せられる」
似たような例としてルイスは03年のアメリカによるイラク侵攻を挙げる。米軍は当時スパイからの情報を基に、バンカーバスター(地中貫通爆弾)と巡航ミサイルを搭載したステルス機をサダム・フセインが潜伏していると思われる場所に派遣した。しかし実際には独裁者の姿も幹部用の塹壕も見当たらず、フセインが拘束されたのはそれから8カ月後だった。
仮にアメリカか韓国が金正恩に対する先制攻撃に成功したとしても、北朝鮮は通常兵器を使って韓国と在韓米軍(2万5000人)に壊滅的な打撃を与えることができる。金の死後、北朝鮮人民軍が武装解除に応じるかどうかも定かではない。マティス国防長官はアメリカが北朝鮮との戦争に勝ったとしても「人命被害は朝鮮戦争以降最も深刻になる」はずだと語った。
金正恩が死んでも北朝鮮の問題は終わりはしない。金一族が代々受け継いできたのは政権だけではないからだ。北朝鮮の「王家」は数十年に及ぶ暴政と国民の窮乏という形で北朝鮮社会に深く根を下ろしてきた。
国が今後の紛争の痛手からすぐに立ち直り、よりよい社会を築ける見込みは薄い。結局、北朝鮮の人々は金一族の最後の1人が権力の座を追われた後も、長い間、最高指導者たちの亡霊に苦しめられることになるだろう。
金一族最後の1人の抹殺作戦が血なまぐさいものになるのは必至。だが本当に大変なのはそれからかもしれない。
From Foreign Policy Magazine
[2017年7月18日号掲載]

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http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/07/post-8026_5.php

 


北朝鮮の「滅びのホテル」がいよいよオープン間近?
2017年8月2日(水)17時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ピョンヤン市内にそびえ立つ「滅びのホテル」 Bobby Yip-REUTERS
<着工から30年の時を経て、一時は中断されていた北朝鮮の幻の高層ホテルが遂にお披露目へ>
北朝鮮の首都ピョンヤンで建設が中断し、一時は忘れ去られかけていた「柳京ホテル(リュギョンホテル)」のオープンが近づいているようだ。105階建、高さ330メートルの超巨大ホテルに接続する2本の道路が開通し、建物の全貌が明らかになった。AP通信によると、7月27日、ホテルの正面に看板が取り付けられた。
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✔@nknewsorg
Entrance wall to Pyongyang’s Ryugyong Hotel demolished http://buff.ly/2uECLjQ
17:12 - 2017年7月27日
Twitter広告の情報とプライバシー

工事が始まったのは、およそ30年前。1988年開催のソウルオリンピックに対抗して、社会主義国家の祭典「第13回世界青年学生祭典」の開催に華を添える、国家の威信をかけた一大プロジェクトだった。
初期の建設費だけで国内総生産(GDP)の2%に相当する、この巨大な建設プロジェクトは無謀だった。工事の進捗は予想通りに遅れ、青年学生祭典にも間に合わなかった。このときは急きょ、別のホテルを2つ建てて、やり過ごした。一方この巨大ホテルは、備品はおろか窓も外装すらないまま放置され、メディアからは「滅びのホテル (Hotel of Doom)」と呼ばれていた。
【参考記事】【写真特集】時空を超越した北朝鮮の建築アート
北朝鮮は2008年に工事を再開。それまでに7億5000万ドル以上を費やしていた。さらにロイターの報じた試算では、追加で20億ドルが必要だった。
政府としては、2012年の金日成国家主席の生誕100周年の祝賀行事の一環としてホテルを完工したかったが、またしても叶わずに終わった。アメリカの北朝鮮専門ニュース サイト「NKニュース」によれば、2011年にホテルに窓ガラスが設置されたのを最後に、工事は中断していた。
【参考記事】北朝鮮エリートはSNS大好き 毎日チェックを欠かさない
次のページ 電気供給も確認
滅びのホテルに灯り
事態が動いたのは2016年12月。アメリカが入手した映像から、滅びのホテルの中で動く光が確認された。安定して電気が供給されていることを示している。
もともとの計画では、客室3000、展望エリアに回転レストラン、居住スペース、会議場など盛りだくさんの複合施設になる予定だったが、北朝鮮は計画を縮小し、実際には、客室150、ショッピング施設、オフィス、レストラン、宴会場を備えた施設として開業するとみられる。
【参考記事】世界最恐と化す北朝鮮のハッカー
過去に旅行ツアーも
一時期は、建設現場を観光コースに取り入れた外国人向けのビジネスも展開していたが、建設の中断を機に、それも取り止めになった。
2012年9月、北朝鮮の認可を受けた、中国・北京を拠点にする旅行会社「高麗ツアーズ」は、柳京ホテル訪問を敢行した。高麗ツアーズの担当者によると、内部はまだ建設途中だったが、ロビーや会議室は完成間近だったようだ。ただ、「信じられないほど素晴らしい」ものだったと語っている。
オープンの日程は不明だが、英テレグラフは2016年、ホテルの建設を請け負うエジプト企業の幹部がピョンヤンを訪れたと報じている。今度こそ、「滅びのホテル」は日の目を見るのだろうか。
【参考記事】北の最高指導者が暗殺されない理由
ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由
韓国人が「嫌いな国」、中国が日本を抜いて第2位に浮上
「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝鮮庶民の本音
世界最恐と化す北朝鮮のハッカー
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http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/08/post-8118.php


2. 2017年8月08日 21:11:46 : dDUTeUJfWQ : ODE5AIxmNFM[5]
まだアメリカをアメリカの軍事力を過大評価している。

頭の中は20年前と全く同じ。日本の外交評論家、国際政治学者とか呼ばれる人はこの程度。アメぽち右翼はさらに頭の程度が落ちる。


3. 2017年8月10日 12:03:58 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[734]

トランプ氏、米核兵器の威力は増した−専門家は否定
Nafeesa Syeed
2017年8月10日 06:15 JST

「大統領としての私の最初の命令は米核兵器の改修と近代化だった」
「米国の核爆弾には威力が増すような変化ない」と専門家

トランプ米大統領は9日、自身が大統領に就任した1月以降、米国の核兵器は増強されていると述べた。しかし専門家はこれを否定した。
  トランプ大統領はツイッター投稿で、「大統領としての私の最初の命令は米国の核兵器の改修と近代化だった。現在は従来よりも力強くなり、威力も増している」とコメントした。
  核政策・軍事アナリストらは、大統領が言うようなことは全く行われておらず、唯一進行中なのはオバマ前大統領が着手した30年間で推計コスト1兆ドル(約110兆円)の計画だと指摘する。同計画が実施された場合でも、支出の大半は2022年以降になる。
  戦略国際問題研究所(CSIS)の国防予算アナリスト、トッド・ハリソン氏は、「米国の核弾頭ないし核爆弾には、威力が増すような変化はない」と指摘。「予算には全く反映されていない。停止したり遅らせたりすることもない代わりに、ペースを速めることもなく、既定方針の継続でしかない」と説明した。
原題:Trump’s Nuclear Weapons Arsenal Isn’t Any Different Than Obama’s(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-08-09/OUFRIO6JTSEC01

 

米ミサイル防衛に疑念も、専門家「より現実に即した実験が必要」

[ワシントン 9日 ロイター] - 米軍は、北朝鮮やイランからのミサイル攻撃を想定したシミュレーションに際し、独自の防衛システムやレーダー網により、弾頭を追跡して成功裏に破壊することができると説明する。

しかし、テスト環境は戦時の状況を正確に想定しているわけではなく、専門家は米国が本当に自国を防衛できるのか疑念を抱いている。18年以上にわたる研究開発で400億ドルを投じたにもかかわらずだ。

米軍は5月30日、大陸間弾道弾(ICBM)による模擬攻撃をミサイル防衛システムで迎撃する実験が成功したと発表。数日後には国防総省が5年ぶりに米軍の対ICBM防衛能力の評価を更新し、「米国防衛に限定的な能力」から「立証された能力」に引き上げた。

とはいえ、実験は日中に実施され、ミサイル1発を迎撃したにすぎず、北朝鮮が攻撃してきた場合、どちらかの想定が起こり得るとみる専門家はほとんどいない。

米ロビー団体「ミサイル防衛擁護同盟(MDAA)」のリキ・エリソン会長は「現実主義にならねばならない」と指摘。5月30日のシミュレーションは「最も困難で挑戦的な実験」だったとしつつ、ミサイル防衛システムを混乱させるデバイスを搭載した複数の弾頭といった脅威を想定するなど、より現実に即した形での実験を実施する必要があると述べた。

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ICBM迎撃実験、北の脅威拡大追い抜くため=米ミサイル防衛局

米軍、ICBM迎撃実験に初成功 北朝鮮からの防衛態勢強化
訂正-北朝鮮のICBM、大気圏再突入の技術は未獲得=稲田防衛相
アングル:米ミサイル防衛、北朝鮮のICBMを防げるか
http://jp.reuters.com/article/northkorea-missiles-usa-defense-idJPKBN1AQ04Z

 

トランプ米大統領、自らの直感に頼り北朝鮮を「口撃」
Bill Faries、Nafeesa Syeed
2017年8月10日 11:05 JST 
「炎と怒り」の発言、ティラーソン国務長官にも事前相談なし
過去の政権の取り組みの失敗で戦略見直し必要に−上級顧問
 
トランプ米大統領はエスカレートする北朝鮮の挑発行為に対抗するため、数少ない非軍事的手段の一つに訴えている。それは自らの直感に頼った北朝鮮「口撃」だ。
  北朝鮮の核兵器プログラムを抑制する米国の取り組みが何十年も成功していないことに不満を募らせるトランプ大統領は8日、単刀直入な物言いで北朝鮮を非難し、市場と各国政府関係者の両方を驚かせた。トランプ政権閣僚や側近も意表を突かれた様子だ。北朝鮮問題を協議するため東南アジアを歴訪中のティラーソン米国務長官でさえも事前に相談を受けていなかったと長官の報道官は明らかにした。
  北朝鮮が米国を威嚇し続ければ「炎と怒り」に見舞われると警告したトランプ氏の口調は、まるで度を超えた愚弄(ぐろう)の言葉を繰り返す金正恩朝鮮労働党委員長のお株を奪ったもののようにも響く。ホワイトハウス関係者は、前政権までの政策の失敗を踏まえてトランプ大統領は米国の戦略を見直さざるを得なくなっていると指摘した。
  大統領の上級顧問、スティーブン・ミラー氏は9日に英ラジオとのインタビューで、「われわれは総じて、多くの外交政策や対外戦争で誤ったアプローチを引き継いだ。世界との関与へのわれわれのアプローチを完全に考え直す必要がある」と指摘。「それは現大統領が選挙戦で訴え、今取り組んでいることだ」と付け加えた。
原題:Trump Goes With His Gut to Shake Up Strategy Toward North Korea(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-08-10/OUFZZ06TTDSH01


 

北朝鮮、8月中旬までにグアム攻撃案策定へ 米大統領の警告を一蹴

[ワシントン/ソウル 9日 ロイター] - 北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は、北朝鮮が中距離弾道ミサイル4発を米領グアムに向けて発射する計画を8月中旬までに策定すると伝えた。

KCNAは、トランプ米大統領が8日、北朝鮮がこれ以上米国を脅かせば「世界がかつて見たことのないような炎と怒りに直面する」と発言したことは「全く無意味」として、警告を一蹴。

「このように理性を欠いた人物との健全な対話は不可能であり、同氏には絶対的な力のみが有効だ」とし、米国の言動を引き続き注視する方針を明らかにした。

北朝鮮は8月中旬までにグアム攻撃計画をまとめた上で金正恩朝鮮労働党委員長に提示し、実行に移すかどうか委員長の判断を待つ方針。

KCNAによると、朝鮮人民軍の金絡謙戦略軍司令官は「朝鮮人民軍が発射する『火星12』は日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過する」と発言。ミサイルは「グアム沖30─40キロの海域に着弾する」とした。

米国と北朝鮮の激しい応酬を受け、世界の金融市場が動揺。9日は世界的に株安となり、リスク資産を回避する動きが強まった。代わりに金や米国債など安全資産が買われた。

米国のマティス国防長官は9日、北朝鮮は「体制の終えん」につながるいかなる行動も中止し、核兵器の追求を放棄する必要があるとの考えを示した。

長官は、米国は北朝鮮が示す行動と同様の行動をとるとし、北朝鮮は自国が仕掛けた軍拡競争や紛争で敗北を喫することになると警告。米国務省は外交努力を進めているとしながらも、米国、およびその同盟国は「世界で最も正確で堅固な防衛・攻撃能力を有している」とした。

一方、トランプ大統領は9日、前日の「炎と怒り」発言に補足する格好で、「私が米大統領として一番に下した命令は、米国の核兵器備蓄の刷新および近代化だった。(米国の核能力は)かつてないほどに増強された」とツイッターに投稿。「この威力を使う必要がないことを願うが、米国が世界最強の国でなくなる時は決して来ない」と強調した。

米政権の北朝鮮問題担当者は9日、ロイターの取材に匿名を条件に応じ、トランプ大統領の「炎と怒り」発言について「計画された発言ではなく、自発的なもの」との見解を示した。

同当局者は「北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の発言などに対応してレトリックをエスカレートさせることは検討されていなかった」と述べ、トランプ大統領が発言の文言について事前に側近と打ち合わせていなかったことを明らかにした。

一方、ホワイトハウスは、ジョン・ケリー大統領首席補佐官のほか、国家経済会議(NEC)のメンバーは、トランプ氏の発言について「発言前から全般的なトーンについて認識していた」と説明。

サンダース報道官は大統領の休暇先のニュージャージー州で、「トランプ氏は自身の言葉で語ったが、メッセージのトーンと強さについては事前に協議されていた」と述べた。

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オピニオン:アベノミクス復活の条件=フェルドマン氏
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コラム:狂うCPI上昇の筋書き、背景に高齢化も=村嶋帰一氏
http://jp.reuters.com/article/northkorea-missiles-idJPKBN1AQ067?sp=true


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