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北朝鮮の弾道ミサイル発射を伝えるKCNAの映像(提供:KRT/AP/アフロ)
ロシア、北朝鮮を実質的支配でミサイル発射を主導か…中国とロシアに紛争の兆候も
http://biz-journal.jp/2017/05/post_19246.html
2017.05.29 文=深笛義也/ライター Business Journal
北朝鮮は5月21日、再び弾道ミサイルを発射した。新型中距離弾道ミサイル「北極星2型」(射程約2000km)の発射実験に再び成功したことで、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、実戦配備に向けて大量生産を指示したとされる。
一連のミサイル発射のなかで、同月14日に発射された「火星12型」は高度2111kmまで上昇し、787km飛行した。これにより、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発に成功したか、近く開発可能な能力を示すと見られていた。
また、14日は中国の習近平国家主席が提唱するシルクロード経済圏構想「一帯一路」に関する国際会議が北京で開幕した日であり、「中国のメンツをつぶすミサイル発射」という報道も多かった。
一見、「孤立を深めるだけ」とも取れる北朝鮮のミサイル発射は、何を意図したものなのか? ロシア情勢に詳しい政治学者で筑波大学教授の中村逸郎氏に話を聞いた。
「ミサイルを飛ばしているのは、北朝鮮ではなくてロシアですよ。北朝鮮にあるミサイルのほとんどは、ロシア製です。それに、すでに北朝鮮にロシア兵が入り込んでいる可能性が高い。
ウラジーミル・プーチン大統領は『北朝鮮が核保有国であり続けてもかまわない』と思っているんです。北朝鮮にある40kgのプルトニウムのうち、30kgはロシアが持ち込んだものです。核弾頭1発に必要なのは4〜6kgなので、北朝鮮は6発分くらいのプルトニウムを保有しています」(中村氏)
北朝鮮のミサイル発射は、ロシア主導によるものだったというわけだ。
「14日のミサイルが落下したのは、ウラジオストクから約90kmの地点。ウラジオストクといえば、ロシア海軍の太平洋艦隊も原子力空母もいるところです。そんなところにミサイルを落とすなんて、普通に考えれば、ロシアに戦争を仕掛けているようなものじゃないですか。
それに対して、プーチンは滞在中の北京で『ロシアにとって直接的な脅威とは考えていない』と言いました。また、プーチンは一帯一路フォーラムの待ち時間に、迎賓館の備え付けのピアノで『モスクワの窓々』などを弾いた後、『ピアノの音程がずれていたのが残念だった。2本指で弾く私でも、弾くのがとても大変だった』と言ったのです。これは、ピアノを中国に例えて『中国はおんぼろ国家だ。メンテナンスもしっかりできない国だ』という意味です」(同)
“おんぼろ国家”とは、どういうことか?
「『一帯一路なんか、バカじゃないか』ってロシアは大笑いしています。なぜかといえば、今回のフォーラムにはインドが参加していない。インドはカシミールの帰属をめぐってパキスタンと対立しています。そのパキスタンが参加するから、インドはボイコットしたのです。『シルクロード経済圏構想』なのにインドが参加しないというのはあり得ない話。『おんぼろピアノ』というのはそういう意味ですよ。
一帯一路の陸路のほうは、カザフスタンが拠点となります。でも、カザフスタンは旧ソビエト連邦の構成国でした。そのため、ロシアには『あの辺の中央アジアは自分たちのものだ』という意識があります。そんなところを中国が自国の権利拡大のために使うなんて、ロシアとすれば許容できない。中央アジアをめぐって、ロシアと中国は絶対にもめますよ」(同)
■北朝鮮の金正恩体制はロシアの傀儡政権?
「自分たちのものだ」という意識を、ロシアは北朝鮮にも持っているのではないだろうか。第二次世界大戦末期、日本に宣戦布告した旧ソ連が日本の植民地であった朝鮮半島に進軍したことから、北朝鮮は建国された。
しかし、朝鮮戦争でアメリカを中心とする国連軍によって壊滅寸前であった北朝鮮を中国が人民解放軍を投入して守ってから、北朝鮮は親中国になったという経緯がある。
「ロシアと北朝鮮は親子関係。中国と北朝鮮は兄弟関係です。だから、中朝の対立は兄弟ゲンカなんです。そこに、今は“親”が出てきているということです。金正恩体制が発足したときから、北朝鮮はロシアに完全に首根っこをつかまれています。傀儡政権といっても過言ではないでしょう。
2011年8月、金正日(キム・ジョンイル)は死去する4カ月前にモスクワを訪問しました。鉄道で8日間くらいかけて、病をおしてプーチンに会いに行ったのです。そして、約1兆2000億円の北朝鮮のロシアへの累積債務の90%を帳消しにしてもらっています。この債務については、ロシアが『返せ、返せ』と強く圧力をかけていました。
金正日としては、死期が近いなかで息子に国を継がせるにあたって、『これをなんとかしなければいけない』と思ったのでしょう。プーチンとしては、債務の90%を帳消しにする見返りとして、北朝鮮のウランを狙いました。ロシアにはありませんから。ほかにも、北朝鮮には希少金属があります」(同)
では、金正恩体制になって北朝鮮とロシアの関係はどうなったのか?
「13年9月、ロシアと北朝鮮の国境でハサン(ロシア)と羅津(北朝鮮)を結ぶ鉄道が開通しました。ロシアのレールの幅は広く、北朝鮮のほうは狭いんですよ。そして、鉄橋は1つしかない。そこで、狭いレールの外側にロシア規格の広いレールを敷いてつなげたのです。同時に、北朝鮮の羅津港がロシアのお金で整備されました。そして、開通から3カ月後の12月、北朝鮮ではナンバー2で中国寄りの張成沢(チャン・ソンテク)が処刑されました」(同)
金正恩の叔父に当たる張は、北朝鮮の初代最高指導者である金日成(キム・イルソン)の娘で金正日の妹に当たる金敬姫(キム・ギョンヒ)の夫である。処刑については「120匹の飢えた猟犬が使われた」とも「火炎放射器で焼かれた」とも伝えられた。
「張の関係者も処刑され、金正恩体制の中で中国寄りの勢力はどんどん後退させられていきます。同時に、次のナンバー2になった崔竜海(チェ・リョンヘ)が14年11月にモスクワに行ってプーチンと会っています。このとき、崔はプーチンに金正恩の親書を渡しています。
北朝鮮は完全にロシアにシフトしていき、ロシアの新聞には『事実上の軍事同盟を結んだ』とも報じられています。15年5月に北朝鮮の人民武力相の玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)が、金正恩が出席する行事中にうたた寝をしていたということで処刑されました。その3日前まで、彼はモスクワにいたんですよ。そこで、ミサイルの買い付けに失敗した。それが処刑の真相です」(同)
■北朝鮮を支えるロシア、金正男暗殺にも関与か
ロシアという強力なバックがいるとなると、「北朝鮮の孤立」は虚構なのか?
「テレビ局の記者に聞いたのですが、北朝鮮は経済制裁を受けているのに、平壌は想像以上に栄えていてびっくりしたそうです。これは、ロシアの援助によるものでしょう。14年から、北朝鮮ではロシアの通貨であるルーブルが使えるようになっています。
シベリアの小さな銀行に北朝鮮の口座がたくさん開かれており、そこにロシアやアジア諸国からのお金が、マカオを通じて流れ込んでいるのです。また、北朝鮮の労働者が3万人くらい極東ロシアに入っています。ロシア側は1日7000円くらいで雇っているのですが、彼らの受け取る日当は300〜400円ほど。残りのお金は、北朝鮮が国家でピンハネしているのです。金正恩政権は、そういう手段でも懐を肥やしています。
5月から、ウラジオストクと羅津港の間で北朝鮮の貨客船・万景峰(マンギョンボン)号の定期運行が始まりました。これはまさに、影の存在だったロシアが表に出てきたということですよ」(同)
北朝鮮といえば、今年2月に金正恩の異母兄である金正男(キム・ジョンナム)がマレーシアで暗殺された。ロシアの関与はあったのだろうか?
「それはありますよ。金正男って、結局はアメリカとつながっていたわけですよね。北朝鮮の情報がアメリカに流れる可能性があるので、金正恩としては切りたい。その後ろ盾であるロシアが協力したことは想像に難くありません。そして、真犯人は絶対に捕まりません。内情を知る人物は、これまでもロシアによって消されています。
たとえば、ソ連国家保安委員会(KGB)やロシア連邦保安庁(FSB) の職員だったアレクサンドル・リトビネンコは、暗殺の命令を拒否して内部告発した挙げ句、06年に亡命先のイギリスで放射性物質を飲まされて毒殺されました。
15年には、プーチンに批判的だった野党指導者のボリス・ネムツォフが、クレムリン(旧ロシア帝国の宮殿)近くの橋で銃殺されました。警戒が厳しいクレムリンの近くでそんなことが起きるなんて、欧米や日本では考えられないでしょう。ロシアにとって、金正男の暗殺なんてお手の物ですよ。そして、真犯人が捕まることは絶対にありません」(同)
後編では、ロシアとアメリカのドナルド・トランプ政権との関係や第三次世界大戦の可能性について、引き続き中村氏の話をお伝えする。
(文=深笛義也/ライター)
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