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空母を見れば明らか、米国の北朝鮮攻撃はまだ先だ
「米国はすでに準備完了」が間違っている3つの理由
2017.4.19(水) 部谷 直亮
ペンス副大統領、対北朝鮮「あらゆる選択肢ある」 板門店を視察
北朝鮮との軍事境界線沿いの非武装地帯(DMZ)の警戒所を訪れ、在韓米軍のビンセント・ブルックス司令官(右)と会話を交わすマイク・ペンス米副大統領(中央、2017年4月17日撮影)。(c)AFP/JUNG Yeon-Je〔AFPBB News〕
普段、安全保障とは縁遠いテレビのワイドショーまでもが北朝鮮情勢を取り上げ、米国政府による北朝鮮攻撃まで秒読みだと論じている。米国はすでに準備が完了していると述べるコメンテーターも少なくない。しかし、本当にそうだろうか。
筆者は“現時点”では、その見解には反対である。米国の先制攻撃の蓋然性はなく、可能性も低いとみている(ツイッター等でも一貫して主張してきた)。以下ではその根拠と、今後どのような場合に蓋然性が高まるのかを述べてみたい。
空母1隻では戦力不足
第1の根拠は、空母打撃群の展開状況である。
現状で西太平洋に展開する空母は、カール・ビンソンただ1隻だ。空母ロナルド・レーガンも横須賀にいるが、これは5月まで整備予定であり、その上、さらに訓練を行わなければ実戦投入は不可能だ。リビア空爆(1986)は空母3隻、湾岸戦争は空母6隻、ユーゴ空爆は空母1隻+同盟国軽空母2隻、アフガン攻撃は空母4隻程度、イラク戦争は空母6隻で攻撃を実行している。ブッシュ政権末期にイラン攻撃がささやかれた際は空母3隻がペルシャ湾に集結した。だが、現状はたかだか空母1隻でしかない。これではいかにも戦力不足である。
というのは、北朝鮮の対空ミサイルを中心とする防衛網は相当強力だからである。航空戦力は無きに等しいが、イラン製の新型フェイズドアレイレーダーを装備しているほか、ロシア製S-300のコピーとされるKN-06対空ミサイルを複数装備している。また、低空攻撃であれば、携帯式対空ミサイルや対空砲が数千門を超える数を展開している。
それに対して空母打撃群1個では、明らかに戦力が不足しているし、撃墜された時のパイロット救助もままならない。しかも、北朝鮮の軍事力は山岳地帯をくり抜いた防空壕やトンネルに守られており、トマホークミサイルでは打撃を与えられない。
古い事例だが、1969年にニクソン大統領が北朝鮮への懲罰的攻撃を検討した際は、空母4隻が投入される予定だった。やはり最低でも3個の空母打撃群を展開しなければ、話にならないだろう。
ゆっくり移動している米空母部隊
第2の根拠は、カール・ビンソン空母打撃群の動きである。その動き―特に速度―を見ると、先制攻撃の意図があるとは思えない。
カール・ビンソン空母打撃群は4月8日にシンガポール沖で豪州行きを中止し、朝鮮半島近海(公式声明では北上)への移動を開始した。シンガポール沖から朝鮮半島近海までの距離は、ざっと計算して4800キロメートルである。この距離は巡航速度20ノットであれば5.4日、最大速度30ノットであれば3.5日、駆け足25ノットであれば4.3日で到着する。しかし16日に至るも、カール・ビンソン空母打撃群は到着した気配はない。しかも、17日の声明ではまだインドネシア沖に展開していたという。
これこそが、米政府の意図を明瞭に語っている。つまり、意図的に空母打撃群の展開を遅らせているのである。
歴史を振り返ってみると、1994年の中台危機の際も同様のことがあった。当時、台湾海峡を目指したニミッツ空母打撃群は、「第7艦隊司令部より、ゆっくり移動するように」という事実上の命令を受け、あえて巡航速度よりもかなりの低速で台湾海峡へと向かった。しかも、移動命令は命令の5日後に移動を開始せよというものだった(この経緯の詳細は秋元千明著『アジア震撼―中台危機・黄書記亡命の真実』を参照していただきたい)。
なぜなら、空母打撃群の性能をフルに発揮してアッという間に到着してしまうと、中国政府を焦らせ、冷静な判断力を失わせることになってしまうからだ。米国としてはじわじわと中国を威圧して台湾への威嚇をやめさせることを狙っていたのだという。
今回のカール・ビンソン空母打撃群も、やはり非常にゆっくりとした動きを見せている。また、ちょうど4月11日に錬成訓練が終了し、実戦投入が可能となったニミッツ空母打撃群もカリフォルニア沖から動く気配がない。
これは現在の状況が、あくまでも軍事力による威嚇によって、相手の妥協を迫る「強制外交」(coercive diplomacy)のフェーズでしかないことを意味している。要するに、先制攻撃はまだ先であるということだ。
いまだ整わない報復攻撃への防衛態勢
第3の根拠は、在韓米軍の防衛体制が整っていないことだ。
北朝鮮への先制攻撃の形としては、B-2ステルス爆撃機で高高度から核施設等の一部を叩くという選択肢もあり得る。しかし、それでは北朝鮮の弾道ミサイル等による報復を招き、韓国に居住する多くの米兵とその家族が犠牲になるおそれがある。だが、在韓米軍は自国民保護の対策を取れていない。
実は、迎撃に使用する在韓米軍のパトリオットミサイル2個大隊(96台)は、先月末から更新に入ったばかりである。在韓米軍の説明によれば、3月25日より、韓国に展開する米軍のパトリオットミサイルは、レーダーや指揮システムを含む全てのハードウエアとソフトウエアを最新式に交換する作業を実施しており、製造元のレイセオン等の技術者が長期間滞在して実施するという。報道によれば、在韓米軍の関係者は「海外の米軍の防空部隊を対象にこれだけ大々的な性能改良作業が行われるのは初」としている。今までにない規模のこの改良作業がすぐに完了することはないだろう。
しかも、韓国への高高度ミサイル防衛システム(THAAD)配備もいまだ途上段階であり、使用可能な状況に至っていない。加えてトランプ政権はTHAAD配備の先送りすら示唆するありさまである。
これでは北朝鮮からの反撃に対して、万全の体制とは言い難い。また、現在、北朝鮮からの報復として懸念されているのは、砲兵部隊によるソウル攻撃だけでなく、小型ドローンにサリンなどの化学兵器を積載してソウルに飛ばしてくることである。その対策として在韓米軍の増強がなされているかも疑わしい。
ちなみに、米軍が北朝鮮に攻め入る際はどれくらいの兵力が必要だろうか。2013年に米陸軍は北朝鮮崩壊時の核兵器等の差し押さえを想定したウォーゲームを実施した。その際の結論は、最終的に2個師団の投入に56日間かかり、9万人の米軍の兵力が必要、というものであった。現在、米韓軍事合同演習が実施されている最中だが、とても数が足りない。
また、この演習での結論としては、(1)オスプレイによる敵中深くへの戦力投射は、すぐに膨大な北朝鮮軍に包囲されてしまい失敗の連続となる、(2)人的情報がとても足りず、偵察衛星や盗聴による技術情報ではとても埋め合わせができず攻撃等に難儀した、というものであった。これも一部のメディアが「近いうちに行われる」とする特殊部隊やトマホーク等による斬首作戦の困難性を示唆している。
北朝鮮攻撃の蓋然性が高まるのはいつか
では、どのような状況になると北朝鮮攻撃の蓋然性が高まったと見なせるのか。
それは、ニミッツ空母打撃群が西太平洋に展開し、ロナルド・レーガン空母打撃群も合わせて3個体制に移行し、パトリオットミサイル部隊の更新とTHAADの配備が終了し、在韓・在日米軍の増強が開始されたときだろう。
無論、現時点でも限定的な攻撃は、米本土からB-2爆撃機を飛ばせば可能である。意外性を好むトランプ大統領の「ギャンブラー」としての性格を考えれば、あり得ない選択肢ではない。
しかし、トランプ氏自身が繰り返し述べてきたように、現政権は首尾一貫して中東重視である。実際にシリアに地上兵力を投入しており、これを15万人に増やすべきという議論も政権内で行われている。
そして、トランプ政権の安保政策の主導権を握っているとされるマティス国防長官やマクマスター国家安全保障担当補佐官は、イラク戦争で苦労した経験を持つ軍人である。後先を考えない楽観主義に基づく戦争の尻拭いを10年以上やってきた彼らが、そのような攻撃の計画をトランプに提案する可能性は低い。
そう考えれば、やはり、米軍による先制攻撃は、少なくとも上記のような態勢への移行がほぼ完了した時点と考えるのが妥当だろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49758
米国で出てきた「もう韓国を助けるな」の声
「北朝鮮の脅威は韓国に任せればよい」と保守派の論客
2017.4.19(水) 古森 義久
韓国、射程800キロのミサイル発射実験に成功 北全域が射程
韓国ソウルの戦争記念館に展示されているミサイル(2009年6月4日撮影、資料写真)。(c)AFP/KIM JAE-HWAN〔AFPBB News〕
「米国が朝鮮半島の危険な情勢に関与する必要はもうない。韓国との同盟を解消して、在韓米軍も撤退すべきだ」――こんな過激な主張の論文が米国の大手外交雑誌に掲載された。ソ連の巨大な脅威が存在した東西冷戦時代ならば米国の朝鮮半島関与は意味があったが、今は北朝鮮の脅威は韓国に任せればよい、とする孤立主義に近い主張である。
?論文の筆者は長年ワシントンの外交政策論壇で活動する研究者だ。その主張はきわめて少数派と言えるが、米国の一部にこうした意見が存在することは認識しておく必要があるだろう。
中国の存在のほうが大きな問題
?米国の大手外交雑誌「フォーリン・ポリシー」4月号は「アメリカはもう韓国を解き放つ時だ」と題する論文を掲載した。筆者は異色の保守派論客であるダグ・バンドウ氏である。同氏は国際問題を専門とする研究者であり、レーガン政権で大統領補佐官を務めた経歴を持つ。現在はワシントンの老舗研究機関「ケイトー研究所」の上級研究員として活動している。
?バンドウ氏は論文で、まず北朝鮮が核兵器やICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発を進めて緊迫する現在の情勢について「米国はなぜアジアの小さな貧しい北朝鮮という国だけに大きな関心を向け、米国人の血を流すことになる戦争を選択肢にしようとするのか」という疑問を提起する。「アジアには、もっと真剣に対処すべき中国のような大国が存在するではないか」とも述べる。
?バンドウ氏もケイトー研究所も基本的なスタンスは、個人の自由を最大限に求め、政府の役割を極端に小さくすることを主張する「リバタリアニズム」(自由至上主義)系の思想である。「小さな政府」を主唱するという点では、保守主流派と主張が重なっている。リバタリアニズムは、外国との同盟などを減らす孤立主義を説くことも多い。
韓国に米国の助けはいらない
?バンドウ氏は同論文で以下の諸点を主張していた。
・米国が朝鮮半島に介入し、韓国と同盟を結んで、北朝鮮と対峙した最大の理由は、東西冷戦中にソ連側陣営の共産主義の拡大を防ぐためだった。朝鮮戦争で共産側と戦って3万7000人もの米国人の命を失ったのも、北朝鮮の背後にいるソ連の勢力圏の膨張を阻止するためだった。
・だが、今や世界はまったく変わってしまった。米国にとって朝鮮半島は東西冷戦中の地政学的な意味を失い、朝鮮半島での「代理戦争」はもはや過去の遺物となった。韓国を防衛することも北朝鮮の核武装を阻止することも、米国の基本的な国益とは関わりがなくなった。
・いまの朝鮮半島で起きうる最悪の事態は、北朝鮮と韓国との戦争だろう。しかしこの戦争も国際情勢全体、あるいは米国の基本的な国益という観点からみれば、それほど重大な出来事ではない。米国が介入しなければこの戦争は朝鮮半島だけに限定されるので、かえって国際的な被害が少ない。
・在韓米軍は長らく不可欠な聖域のようにみなされてきた。だが、かつてカーター政権はその撤退を提唱している。
・現在、韓国には約2万8000人から成る米軍が配備されているが、もしも朝鮮戦争が起きた場合、米軍の被害は甚大となる。だが、いまの韓国の国力は北朝鮮を圧倒的に上回っている。韓国軍は米軍の力を借りなくても勝利を得られるはずだ。
・韓国にはときどき金大中政権のような北朝鮮との融和を求める政権が登場し、「太陽政策」の名の下に北に100億ドルもの援助を与えるような異常な出来事が起きる。援助を受けた北朝鮮は、その間に核兵器や弾道ミサイルの開発に励んでいた。韓国は「米国の保護がある」という安心感から、そんな行動をとるのだ。だから、米国は保護をやめたほうがよい。
・在韓米軍の存在は中国の膨張を防ぐためだとする議論もある。だが、中国が朝鮮半島に進出して北朝鮮を自国の支配下におく意図がないことは、すでに明白だ。台湾や南シナ海、東シナ海など、北朝鮮以外の地域での中国の攻勢を抑えるための在韓米軍の効用はほとんどない。
・韓国が核武装して北朝鮮の核兵器に対抗しても、米国にとって大きな不利益はない。また、在韓米軍を撤退させた後も、米国が核の拡大抑止、つまり北朝鮮に対する「核のカサ」を韓国に提供し続けることは可能である。
?バンドウ氏は、国が朝鮮半島への関与を減らすことで、韓国も北朝鮮も自立や自主性の意識を高め、責任のある外交や戦略を展開するようになるのではないかと総括していた。
?現実的には、米国が韓国から、さらには朝鮮半島から離脱する可能性はきわめて低いとはいえ、いまの米国内にはこんな主張があることも知っておくべきだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49768
米国はいま大惨事に向かって突進する暴走列車
"変革者トランプ"に裏切られた米国民とチョムスキー博士
2017.4.19(水) 高濱 賛
【写真特集】トランプさん、納税額教えて! 全米各地で「タックス・マーチ」
米首都ワシントンで行われたドナルド・トランプ大統領の納税記録開示を求めるデモ「タックス・マーチ」の参加者ら(2017年4月15日撮影)〔AFPBB News〕
「米黄金時代は50年代だった」
米リベラル言論界の重鎮、ノーム・チョムスキーMIT(マサチューセッツ工科大学)名誉教授(88)の新著が出た。
「Requiem for the American Dream」(アメリカン・ドリームへの鎮魂)。
同教授のインタビューを柱に制作されたドキュメンタリー映画の脚本を下敷きに書かれた172ページのムック本である。映画は4年がかりで作られ、2016年1月末に完成している。つまりドナルド・トランプ第45代大統領就任1年前だ。
チョムスキー教授は「1950年代こそ米社会の黄金時代だ」と見た。
1950年代とは、民主党のハリー・トルーマン第33代大統領の政権の後半、共和党のドワイト・アイゼンハワー第34代大統領の政権の前半だ。
Requiem for the American Dream Noam Chyomsky Seven Stories Press, 2017
平均的労働者には正当な賃金が支払われていた。労働者たちは、ローンで家を買い、新車を買った。皆が家族と一緒に「アメリカン・ドリーム」を満喫できる時代だった。
米製造業が生産した製品を米国民が買う、そこには米企業・工場の海外へのアウトソーシングなどあり得なかった。労働者を守る労働組合は強固だった。労使関係はすこぶる良かった。
ところが、その後、米国経済は退化の一途を辿り、縮小均衡の時代に入る。
高い失業率、企業倒産や銀行破綻、大学授業料の高騰が平均的労働者の生活を圧迫した。その一方で貧富の差は年々広がって行った。人口比1%に満たない超富裕層が富の99%を独占している。
保守もリベラルも歴代政権が貧富の格差を増幅
米国はどこでどう間違えてしまったのか。チョムスキー教授は指摘する。
「歴代政権は民主党も共和党とも平均的労働者の生活を守る政策を推進すると口先では言いながらも実践しなかった。保守もリベラルも政権を取ると、既得権益のための政策に終始した。それはジョン・F・ケネディからバラク・オバマに至るまで歴代政権は皆同じだった」
「米国の政治は米民主主義の理想をぶち壊し、超富裕層とその他の層との溝を急激に広げてしまった。その点では、民主党も共和党、保守派もネオ・リベラル派も同じだった」
そして2016年大統領選。米国民は今度こそ貧富の格差が是正されるのではないのかと淡い期待を抱いた。既得権保護のしがらみとは無関係な、全くの政治の門外漢トランプ氏が既成勢力に挑戦したからだ。そして勝った。
教授は一時期、トランプ大統領に淡い期待を寄せた。そのことが本書では示唆されている。
「トランプ支持者の多くは、2008年にオバマに投票した有権者だった。労働者たちはオバマの主張する『希望と変革』を信じて投票した」
「オバマが口では希望や変化を実現すると言ったが、実現できず、支持者を幻滅させた。詐欺師に騙されたようなものだった。そしてトランプが登場した。一般大衆は今度はトランプに変革を期待し、票を投じた」
チョムスキー教授は、そのトランプ氏についてこう記している。
「実のところ、私は米国にもいつか、率直で、カリスマ性を持ったイデオローグが台頭するのではないかと思っていた。そのイデオローグが持つ危険性も十分懸念してのことだった」
「米社会に長きにわたり充満していた一般大衆の不満や憤りを受けて立つイデオローグが出現し、貧富の格差が縮小するような事態が到来するのではないか、と幻想を抱いた時期がある」
「それが果たしてトランプなのかどうか。だが、考えてみると、トランプという人物は率直で、正直なイデオローグのイメージとは程遠いかった」
「それがトランプなのか。彼が米社会に対し不満や憤りを感じている人々から支持を得ていることは間違いなかった。その多くはオバマというネオ・リベラル政権下で路傍に放り出された白人の労働者、中産階級の下層の人たちだった」
「米国第一主義」を掲げた孤立主義はどこへ
そのトランプ氏が第45代大統領に就任してまもなく100日になる。就任当初、米主要メディアはこう予測していた。
「『米国第一主義』を掲げるトランプ政権は対外的な関与を弱める孤立主義、経済・通商では保護主義路線を取る」
ところがどうだろう。就任後100日にならない前からトランプ大統領のおかげで米国も世界も大混乱に陥っている。
当初掲げていた「就任当初から取り組む100日計画」を実現しようと、トランプ大統領は大統領令を連発した。だが、与党議員の一部を含む議会からの反発を買ってすべて挫折している。
これまで公約通り決まったのは空席の最高裁判事に保守派のネイル・ゴーサッチ連邦巡回裁判所判事を指名、議会の承認を得て就任させたことだけだ。オバマケア(健康保険改革)廃止もメキシコとの国境に壁を建設するという大風呂敷も広げたまま、今後どうなるのかも不透明だ。
他方、外交面では、孤立主義どころか、大統領選挙中、おくびにも出さなかった「人道主義」を持ち出して中東に介入した。
化学兵器を使用して「ビューティフルな赤ん坊を含む善良な市民を殺りくした」として、シリアのアサド政権の基地に巡航ミサイルを撃ち込んだ。核開発とミサイル開発を続ける北朝鮮の金正恩政権と本気で一戦構える姿勢すら見せている。
就任当初、ロシアとの親密な関係をテコに米ロ関係の改善に意欲を見せていた。だがシリア攻撃で米ロ関係は冷戦後最悪の状況に陥っている。
ご本人は「予想不可能な政策をやるのがオレの強み」とうそぶいているが、その朝令暮改ぶりに世界は緊張の度合いを深めている。
トップニュース作りだけしか頭にない「ツィッター政治」
チョムスキー教授は、こうしたトランプ大統領の「無手勝流政治」をどう見ているのか。4月4日のインタビューでこう述べている。
「トランプの政治列車はまさに軌道を外れ、今にも大惨事を起こしかねない状況にある。しかもその朝令暮改ぶりは今や日常茶飯事になっている」
「スティーブ・バノン(首席戦略官)にそそのかされたトランプは連日、メディア向けにトップニュースを作ることしか考えていない。毎日、新しいことをツイートすれば、前日のツイートの中身は皆忘れてしまうと思っているのだろう」
「政策面を見ても、草の根大衆の熱烈な支持を得て大統領になったにもかかわらず、トランプがやっていることは共和党や民主党の既成政治家たちがやっていたと同じように富と権力を持つ既得権層を喜ばせることばかりやっている。一般大衆が望んだ貧富の格差是正はどこへいってしまったのか。幻滅と失望だけが噴出している」(参考)
失望だけならまだいい。チョムスキー教授が今最も恐れていることはトランプ氏によるメディア攻撃だ。
「もしカリスマ性を持った人物が現れて、一般大衆の恐怖心を煽り、怒りと人種主義を結集し、未来への希望を失わせるような言動に出るようなことがあれば、米国は本当の危険にさらされる」
「一般大衆が常にメディアを支持するとは限らないからだ。幸いなことに、今までのところ、率直でカリスマ性のある人間は出てきていない。だが、大統領たるトランプのメディア攻撃は注意せねばならない」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49752
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