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ならず者の北朝鮮vs武器商人国家 “脅し合い”の行方
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/203302/1
2017年4月11日 日刊ゲンダイ 文字お越し
睨み合いが続くのか(C)ロイター
誰も予測していなかった米国による突然のシリア攻撃。これは同時に、北朝鮮への警告だともいわれている。ティラーソン米国務長官は9日、ABCの番組でシリア攻撃は北朝鮮に対するメッセージか問われ、「国際的な規範や合意に違反したり、約束を守らなかったり、他者を脅かしたりすれば、いずれ対抗措置がとられる可能性が高い」と答えていた。CBSのインタビューでは、対北朝鮮政策について「状況が深刻化し、行動が必要な段階に達したことを中国の習近平国家主席も明確に理解している」と話した。
トランプ政権は、シンガポールに寄港していた世界最大の原子力空母「カール・ビンソン」を朝鮮半島近海に向けて移動させるなど、にわかに北朝鮮への圧力を強めている。カール・ビンソンは全長333メートルの巨大空母だ。戦闘攻撃機や給油機、対潜哨戒機、哨戒ヘリコプターなど最大で90機を搭載可能で、7500人の乗組員を収容できるという。複数の護衛艦を従え、「第1空母打撃群」を組織。ちょっとした空軍基地である。妙な動きがあれば、いつでも北朝鮮内へのピンポイント攻撃が可能だ。11年のビンラディン殺害時も、パキスタン近海で待機していた。
「核実験を強行するようなら先制攻撃も辞さないという脅しであり、米国の圧倒的な軍事力を北朝鮮に見せつける狙いでしょう。北朝鮮にとっては相当なプレッシャーになっているはずで、牽制の効果は十分にある。ただ、北朝鮮は、それでおとなしく引き下がって核を放棄するような国でもありません。核兵器を持っていれば攻撃されないという哲学を持っている。お互いに牽制し合って、睨み合いが続き、しばらくは軍事的な緊張が高まるでしょう」(軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏)
■目的は北の核凍結ではない
北朝鮮は、月末に向けて重要日程が目白押しだ。金正恩がトップに就任して丸5年の11日、およそ10カ月ぶりに最高人民会議が開かれる。15日は金日成国家主席の生誕105周年、25日には北朝鮮軍創建85周年を迎える。こうした節目に合わせ、長距離弾道ミサイルの発射や核実験が繰り返されてきた。今年も核実験を強行するのか。目が離せない。
「さすがに巨大空母がそばにいる時に暴発はできないでしょう。シリア攻撃を目の当たりにすれば、国連決議も経ないで他国を攻撃し、それを正当化できるのは米国だけだということが嫌でも分かる。ただし、米国も簡単に北朝鮮に手を出すことはできません。ひとたび交戦状態になれば、隣接する韓国や日本の米軍基地が標的になるし、中国の了解も不可欠だからです。そこがシリアとは決定的に事情が違う。シリアのアサド政権が軍事的に米国に盾突いてくることはないと分かっているから、軍事施設に限ったピンポイント攻撃もできたのですが、北朝鮮に先制攻撃を仕掛ければ、破れかぶれでどんな報復をしてくるか分からない。北朝鮮の核開発を凍結させることが目的なら、米朝の対話が最も有効なのです。北朝鮮もそれを望んでいる。それなのに、対話を模索することもなく、米国がいきなり北朝鮮への軍事的な圧力を強めたことには、何か別の思惑があるように感じます」(元外交官の天木直人氏)
朝鮮半島へ航行する米空母カール・ビンソン(C)ロイター
ホワイトハウス内の力学変化で軍産複合体が復権 |
そもそも、トランプ大統領は選挙戦中から「世界の警察官をやめる」と宣言していた。シリアに関しては、IS壊滅を最優先するとして、アサド政権を支援するロシアとの協調姿勢まで示したものだ。つい1週間前には、ティラーソン国務長官が訪問先のトルコで「アサド氏の長期的な地位はシリア国民が決めることだ」なんて言っていた。それが突然、方針転換して軍事介入にかじを切り、シリア空爆に踏み切ったのは、国内事情の影響が大きい。
国際ジャーナリストで元名古屋大大学院特任教授の春名幹男氏が言う。
「トランプ大統領は就任以来、支持率が歴代最低レベルに低迷し、公約に掲げていた政策もことごとく頓挫して、早くも手詰まりになりつつあった。そこに、降って湧いたのがアサド政権の化学兵器使用問題です。『人道に対する罪』への制裁であれば、国民の支持を得られる。あいつを本気で怒らせたら何をするか分からないという恐怖感を国際社会に与える“マッドマン・セオリー(狂気の戦略)”をアピールすることもできます。シリアの化学兵器問題は渡りに船で、北朝鮮政策もその一環ということです」
背景には、ホワイトハウス内の力学の変化もある。ネトウヨ的なイデオロギストのスティーブ・バノン大統領顧問がNSC(国家安全保障会議)の常任メンバーから外れ、H・R・マクマスター補佐官が中心に座ることになった。マティス国防長官やダンフォード統合参謀本部議長らが意思決定の中核メンバーをなし、オルタナ右翼から、軍人出身者に主導権が移ったのだ。
■米国盲従で日本の防衛費は青天井
伝統的に共和党を支えてきた軍産複合体にとっては、常に世界のどこかで戦争が勃発していることが望ましいといわれる。武器が売れる。戦時金融で稼げる。愛国心が高まる。それで内政の失点も覆い隠すことができる。だから、米国は数年ごとに必ず戦争を起こしてきた。本質は戦争国家であり、軍産複合体が牛耳る武器商人国家なのである。
「結果論として、国際情勢の危機感を高めると、米国の景況感が良くなってきたのは確かです。米国にとっては戦争が最大の公共事業であり、失業対策だと揶揄する声もあります」(春名幹男氏=前出)
戦争で米国の景気が良くなるのは、武器を買ってくれる国があるからだ。米国が国内事情で攻撃を仕掛ける。あるいは東アジアでの緊張を高める。それで今、最も脅威にさらされ、武器を買わされるのは日本なのである。前出の天木直人氏が言う。
「自民党を中心に議論されている高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備は間違いなく実現するでしょう。米国に貢ぎ続け、防衛費は青天井になっていく。米国盲従の安倍政権は、トランプの米国が何をしでかそうと『支持する』『高く評価する』と追認するしかない。もはや自己決定権がないのです。しかも、集団的自衛権行使を容認してしまった以上、米国の戦争に自衛隊を出すことを断る口実もなくなってしまった。北朝鮮の脅威をあおって憲法9条を撤廃する動きも出てくるでしょう。米朝の緊張は他人事ではない。日本国民にとって深刻な事態が進行しています」
チキンレースなのかデキレースなのか知らないが、ならず者国家と戦争国家の睨み合いが続けば、ワリを食うのは日本なのだ。安倍政権は、森友学園問題から目をそらすこともできて大歓迎かもしれないが、ツケを払わされる国民はたまったもんじゃない。
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