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立憲民主党枝野幸男代表への提言ー(植草一秀氏)
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28th Dec 2017 市村 悦延 · @hellotomhanks
2017年を回顧し、2018年を展望したい。
まずは、政治情勢についてである。
2017年の最大のハイライトは10月に衆院総選挙が実施されたことだ。
安倍政治を退場させることが最大の焦点であった衆院総選挙が
実施されたにもかかわらず、これを実現できなかった。
この原因を探求するとともに、
次の総選挙に向けて抜本的な対応策を構築しなければならない。
主権者の多数が「安倍政治を許さない!」と考えている。
しかし、この主権者の声、意思が現実の政治状況に反映されていない。
その原因を究明し、是正することが必要である。
2017年2月17日の衆院予算委員会で森友学園疑惑についての野党から追及が
行われた。時価10億円相当の国有地が、
安倍首相夫妻が昵懇にしていた籠池泰典氏夫妻が運営する森友学園に
実質200万円で払い下げられていたことが明らかになった。
情実による国有地不正廉売疑惑であり、重大な国政上の問題になった。
これに追い打ちをかけたのが加計学園疑惑である。
安倍首相が「腹心の友」と公言する加計孝太郎氏が経営する加計学園が
獣医学部の新設を求めていた。
これを安倍首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議が適正ではない手続きで
加計学園の獣医学部を新設したとの疑惑が浮上した。
さらに、加計学園の獣医学部校舎建設に際しては、
工事費が水増しされて補助金が詐取された疑いも指摘されている。
森友・加計学園疑惑は政治腐敗の典型的な事例であるとの批判を生んできた。
さらに、安倍首相が昵懇にしてきた元TBS社員の山口敬之氏が、
準強姦容疑で逮捕状を発付されたにもかかわらず、
菅義偉官房長官の秘書官を長く勤め、
警視庁刑事部長の職位にあった中村格氏が逮捕執行を中止させていたことも発覚した。
これも政治的な背景での捜査妨害ではないかとの指摘を生んでいる。
2017年の国内政治は「山かけもりそば疑惑」に始まり「山かけもりそば疑惑」で
終わったと言っても過言ではない。
国会は安倍政権のこうした政治腐敗疑惑を追及し、真相を解明する責務を負っている。
行政権力の不正を正すのが立法府国会の責務でもある。
森友学園問題では疑惑核心に位置する安倍首相夫人の安倍昭恵氏による説明が
必要不可欠である。
野党はすべての国会審議を止めてでも、
安倍昭恵氏による国会での説明を求めるべきであった。
主権者国民は野党が安倍昭恵氏による説明が行われるまで、
すべての国会審議に応じないとの強い姿勢を示しても、これを容認したはずである。
野党の主張に理があるからだ。
森友学園問題では加計学園理事長の加計孝太郎氏の説明が必要不可欠である。
公明正大でなければならない行政が、私的な関係、私的な利害によって
歪められたのなら、当事者である安倍首相の責任が厳しく問われなければならない。
さらに、刑事司法への行政権力の介入、捜査妨害は言語道断である。
米国ではロシアゲート疑惑に対するFBI捜査について、
大統領がこれに言及しただけで大問題として報じられている。
警察が請求して裁判所が発付した逮捕状の執行を警察幹部が中止させたことは
異例中の異例であり、その真相を究明することは必要不可欠である。
中村格氏に国会での説明を求めることも当然に必要だ。
ところが、これらの説明は、何ひとつ実現していない。
その背景のひとつは、与党がこれらの説明機会設置を拒絶したことにあるが、
真相が究明されて窮地に追い込まれると見られる与党が拒絶するのは
当然のことであると考えられる。証人喚問、参考人招致が実現しなかった、
いまひとつの背景は、野党の要求が不十分だったことだ。
野党が結束して、与党が国会での説明に応じないなら、
すべての審議を拒否するとの強い姿勢を示していれば、
これらの説明機会が設置されていただろう。
国会は審議の場であり、野党といえども審議拒否はするべきでないとの声があるが、
与党が数の力で必要な説明機会設置に応じないなどの横暴な議会運営をする場合には、
主権者国民にその横暴さを知らせるために、野党が審議拒否などの対応を示すことは
認められる。国会は国権の最高機関であり、
行政権力は国会での真摯で丁寧な説明をする責務を負っている。
安倍政権は通常国会末尾に共謀罪新設法案を強行採決によって
強引に可決・成立に持ち込むとともに通常国会を一方的に閉幕した。
野党は森友・加計学園疑惑の解明が不十分であるとして臨時国会召集を要請した。
安倍政権は日本国憲法第53条の規定により、
臨時国会の召集を義務付けられていたが、9月末まで国会を召集しなかった。
その安倍政権は9月28日にようやく臨時国会を召集したものの、
その冒頭で国民の異論を無視して、衆院解散を強行した。
所信表明演説も代表質問もなく、
野党が要求した「森友疑惑」や「加計疑惑」の審議を一切行わない
前代未聞の暴挙に突き進んだ。
そして、10月22日の衆院総選挙で与党が3分の2議席を確保したことから、
すべての問題に蓋をしてしまう対応が示されている。
これが2017年国内政治の概要である。
衆院総選挙で、安倍政治が主権者国民によって全面的に支持されたのなら、
問題不問は国民の意思であると言ってもよいだろう。
しかし、選挙結果の議席配分と主権者国民の投票状況に深刻な「ねじれ」がある点を
見落とすわけにはいかない。
安倍政権与党は衆院議席の3分の2を占有したが、
主権者国民の投票で圧倒的支持を得ていない。
比例代表選挙での自公の得票は、全主権者の24.6%に過ぎない。
野党4党の得票率25.2%を下回っている。
与党が多数議席を獲得したのは、
小選挙区で与党が候補者を一人に絞ったのに対して、
野党陣営が複数候補を擁立し、与党候補が漁夫の利を得た結果なのである。
つまり、主権者多数に支持されて安倍政権与党が勝利したわけではないのである。
重要なことは、主権者国民の声を正当に国会議席数に反映させることであり、
そのための方策を講じることが重要で、最優先されるべきである。
2018年は、この問題の是正を確実に実行しなければならない。
10月総選挙で自公が多数議席を確保したのは、
反安倍陣営が分断されたことに原因がある。
総選挙直前に「希望の党」が創設され、民進党が丸ごと合流する話が浮上した。
このとき、「安倍政治を終焉させる」一点で野党が呉越同舟し、
この選挙を戦っていれば安倍政治終焉が実現した可能性がある。
その方向に事態が進展したなら、
呉越同舟戦術は、現実的な大きな意味を持ったはずである。
ところが、民進党の前原誠司代表と希望の党の小池百合子代表が
事前に了承していたのは、この戦術ではなかった。
前原氏と小池氏は戦争法制を容認し、
憲法改定を推進する旗を掲げる「自公補完勢力創設」で実質的に合意していた
のである。これでは「安倍政治を終焉さえるための大同団結=呉越同舟選挙」には
ならない。
このことが、希望の党への民進党候補者合流の「踏み絵」浮上で明るみに出た。
この結果として反安倍陣営の分断が生まれたのである。
この騒動の副産物として立憲民主党が誕生し、
「安倍政治を許さない!」と考える主権者国民の受け皿になった。
共産党が多数の立候補予定者の立候補を取り下げたことによって、
多数の立憲民主党候補者の当選が実現した。
立憲民主党が野党第一党に急浮上できた最大の援軍は、実は共産党であったと言える。
民進党内には、安倍政治の基本政策方針を容認する勢力と容認しない勢力とが
同居していた。民進党は最大の矛盾を抱える「あいまい政党」であり、
このことにより、党勢が凋落の一途を辿っていたが、
「安倍自公補完勢力」と「安倍自公対峙勢力」とに分離・分割されたことによって、
「安倍自公対峙勢力」の側だけが、急速に勢いを取り戻したのである。
立憲民主党が創設され、この新党と、安倍政治に対峙する勢力が共闘した選挙区に
おいて、安倍自公勢力と互角の戦いが演じられた。
とりわけ、北海道、新潟、沖縄では、安倍自公勢力と、
立憲民主・共産・社民・自由による共闘勢力とが完全に互角の戦いを演じたのである。
この結果として立憲民主党が多数の議席を確保することに成功した。
この方式は、オールジャパン平和と共生が提唱してきたものであり、
とりわけ新潟では、森ゆう子参院議員が推進してきた「オール新潟平和と共生」の
活動の延長上に、今回の野党共闘体制構築が実現したのである。
この戦いの図式をオールジャパンに広げる必要がある。
基本的な考え方は、「政策を基軸に」、「党派の壁を超えて」、
「主権者が主導する」選挙態勢の構築である。
主権者にとって大事なのは「政策」であって「政党」ではない。
主権者は「政党」を選んでいるのではなく、「政策」を選んでいるのだ。
その「政策」の方針が明示され、同時に候補者が一人に絞られることによって、
主権者はこの一人の候補者に投票を集中できる。
その結果が自公候補を圧倒しての勝利、当選なのである。
このかたちの野党共闘体制を構築すること。
これが民意を正確に反映する国会議席配分実現の条件である。
立憲民主党が10月総選挙で多数の議席を確保できた最大の要因は、
共産党が候補者を取り下げて、立憲民主党候補を支援したことにある。
無所属で当選した議員も、多くが共産党の候補者取り下げによる恩恵を受けている。
山尾志桜里議員が当選できたのも、
共産党が候補者を擁立しなかったことが最大の背景である。
「安倍政治を許さない!」主権者の連帯、大同団結を構築する際には、
共産党を含む共闘体制の構築が必要不可欠である。
前原誠司氏は民進党議員を「謀略」によって欺いた点で
完全に政治生命を失ったと言えるが、
前原氏の最大の誤りは「共産党排除の野党共闘は勝利することができない」現実を
見落としていたことにある。
この点が、立憲民主党の最大の試金石になる。立憲民主党の枝野幸男代表は、
12月27日の時事通信によるインタビューで、
「2019年参院選への対応について、改選数1の1人区で野党候補のすみ分けを
目指す一方、共産党が求める相互推薦・支援には応じない考え」を示した。
10月衆院総選挙で野党候補を一本化したことについては
「一定の成果を上げた」と総括し、次期参院選でも「このやり方を踏襲する」と
明言したが、「これを超えてということは無理だ」と述べ、
共産党が共闘の条件としている相互推薦・支援までは行わない意向を示した。
この背景に何があるか。推察されるのは「連合」の影響だ。
立憲民主党は「連合」を最大の支持母体だと考え、
連合が嫌っている「共産党との共闘」を排除しているのである。
これでは、これまでの民進党の限界を超えることができない。
立憲民主党が多数の議席を確保できた最大の功労者は共産党である。
共産党が独自候補を擁立していたなら、立憲民主党の当選者は激減している。
この点を踏まえれば、立憲民主党と共産党との全面的な協力が
何よりも重要なのである。
立憲民主党が共産党との敵対姿勢を貫くなら、共産党も態度を硬化させるだろう。
そうなれば、立憲民主党と共産党は必ず共倒れになる。
これが、主権者国民の声を国政に反映できない最大の原因になるのである。
主権者国民が望んでいるのは、安倍政治の基本路線を刷新することなのである。
原発推進ではなく原発の廃止、戦争の推進ではなく戦争の排除、消費税増税ではなく
消費税増税の中止と減税。これらの政策路線確立を求めているのだ。
そのときに、連合が共産党系の労働組合と対立しているから、
立憲民主党は共産党との共闘に反対すると言うのでは、
立憲民主党が、一体誰の方を向いて活動しているのかということになる。
立憲民主党は連合のご機嫌取りをやめて、主権者の側に正対するべきだ。
そして、衆院選で多数議席を確保できた最大の要因が共産党の協力にあった事実を
謙虚に受け止めるべきである。
立憲民主党が連合のご機嫌取りを基軸に据えて、
本当に大事なものを見失うなら、
立憲民主党に対する支持は間違いなく凋落するだろう。
主権者国民が立憲民主党に対する支持を高めているのは、
立憲民主党が「安倍政治を許さない!」主権者国民の大同団結=連帯と、
「安倍政治を許さない!」政治勢力の大同団結=連帯の要の役割を
担ってくれるとの期待を有しているからなのだ。
この点を踏まえずに、連合の言いなりになって、
野党共闘から共産党を排除する姿勢を示すなら、
立憲民主党への支持は凋落し、野党勢力の分断、凋落が進行することになる。
こうなることは、自公勢力の思うつぼである。
逆に言えば、立憲民主党が自ら率先して野党共闘の強化を妨害する行為を示すなら、
結局、この新政党も自公補完勢力の延長線上の存在であるとの認識が
急速に広がることになるだろう。
次の衆院総選挙に向けて、実行するべきことは明確である。
政策を基軸に、党派を超えて連帯、大同団結することだ。
あの党は嫌いだとか、あの労働組合は嫌いだという、
低次元の発想、行動から一歩抜け出すことが必要だ。
連合が立憲民主党にこうしたアプローチを仕掛けているのは言うまでもない。
連合自身が「隠れ与党勢力」だからなのだ。
連合の最大の役割は、「反自公勢力の結集を妨害すること」である。
民進党の分離・分割が必要不可欠であることは、
同時に連合の分離・分割が必要不可欠であることを意味している。
立憲民主党が連合の画策に引きずられて本当の意味の野党共闘確立を目指さないなら、
この政党の凋落は一気に早まることになるだろう。
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