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会計検査院報告書を読むーやはり背任罪は成立する
http://article9.jp/wordpress/?p=9519
2017年11月26 日 澤藤統一郎の憲法日記
会計検査院のホームページに、検査報告書「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について」が掲載されている。
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/29/h291122.html
表紙と目次(5頁)を除いて本文117頁のボリュームだが、読みにくさはない。多くの人によく読んでもらいたいとする起案者の情熱が感じられる。また、「要旨」として32頁にまとめたものも発表されている。これだけでもよく分かる。普段は注目されることのない会計検査院の、「今こそ出番」という意気込み。これは、調査対象事実がそうさせたのだ。
国有財産が、なんともムチャクチャな経過で、ただ同然の払い下げとなった。そのことに、会計検査院も憤っているのだ。こんな理不尽は通常あることではなく、その異常さは、財務省と国土交通省の両省の関与者が十分に意識していたことだ。だからこそ、交渉記録を大急ぎで修復不可能なまでに廃棄し、情報公開請求にも最初は隠し通そうとしたのだ。
報告書自身が言及しているわけではないが、こんな特例的な国有財産処分の背景には、権力中枢から違法な指示があっただろうと思わせるに十分な内容となっている。仮にそのような指示がないとすれば、忖度があったに違いない。しかも、両省にまたがる多数関係者の阿吽の呼吸での忖度。明治藩閥政治以来の、有力政治家による国有財産私物化という「麗しき日本の伝統」がまだ生きていたのだと思わせる。
なにしろ、憲法(90条)上の存在である会計検査院が国会の要請に基づいて正式に作成した文書だ。さすがの安倍内閣も、これを「怪文書」と呼ぶことはあるまい。この報告書は、安倍内閣への突っ込みどころ満載だ。明日(11月27日)からの各院委員会審議が楽しみでならない。
しかし、本年11月22日付近畿財務局長告発の代理人となった私の立場からは、この報告書には大きな不満が残る。重要な論点がすっぽりと抜け落ちていると指摘せざるを得ない。それは、本件国有地の値引きの根拠とされた「瑕疵」の有無についてまったく考察がされていないことである。
報告書64頁に、「(3) 売却価格の算定」という項があり、次のように述べられている。
「(2016年)3月11日に、森友学園から杭工事の過程において新たに地下埋設物が発見されたとの連絡を受けた近畿財務局は、大阪航空局とともに、同月14日に現地の確認をして、今回確認した廃棄物混合土は、森友学園から連絡があったとおり、貸付合意書で対象としていた地下埋設物に該当しない新たな地下埋設物であると判断したとしている。そして、近畿財務局は、大阪航空局に地下埋設物の撤去・処分費用の見積りを口頭により依頼し、その額を本件土地の評価において反映させることとした。また、本件土地に関する隠れた瑕疵も含む一切の瑕疵について国の瑕疵担保責任を免除し、森友学園は売買契約締結後、損害賠償請求等を行わないとする特約条項を契約に加えることとした。」
ここに述べられた、近畿財務局の「論理」は次のようなものである。
「地下埋設物」(廃棄物・混合土)の存在の確認⇒売主としての瑕疵担保責任の負担を認識⇒地下埋設物の撤去・処分費用分を値引き⇒瑕疵担保責任の免除を得た
国有財産の処分は適正価格ですることを義務づけられているのだから、値引きを正当化するためには、その値引き金額(8億1900万円)が、瑕疵担保責任としての損害賠償(想定)額と正確に見合うものでなくてはならない。
近畿財務局は、条件反射のごとく、次のように考えたということなのだ。
(1)「地下埋設物」あるというのだから土地に瑕疵があることになる。
(2)瑕疵あれば、瑕疵担保責任として撤去費用相当額の損害賠償義務を負う。
(3) その損害賠償相当額を値引きして、損害賠償義務を免れよう。
報告書が紙幅を割き、詳細に書き込んでいるのは、値引き額の根拠とされた「地下埋設物」撤去費用の算定根拠の驚くべき杜撰さである。
しかし、論理的に、その前提となるべき、「(1)本当に土地に瑕疵があるといえるのか」、「(2)果たして、瑕疵担保責任として国は、撤去費用相当額の損害賠償義務を負うのか」という疑問については、報告書が関心を寄せた形跡がない。完全に素通りしているのだ。看過したのか、それとも、この点については会計検査院に何らかの忖度があったのだろうか。
瑕疵担保責任とは、民法570条に出てくる、売買契約における売主に課せられた特別の責任。
「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。」と素っ気ない条文。そこで、第566条を見ると、こう書いてある。
「第566条 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。」
出来の悪い不親切な条文の作り方で面倒だが、両者を合体させると、こうなる。
「売買の目的物に『隠れた瑕疵』があった場合、その『瑕疵』のために契約をした目的を達することができないときは、買主は契約の解除をすることができる。契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。」
もう少し分かり易く噛み砕くと、
「売買の目的物に普通じゃ分からない欠陥が発見された場合、
そんな欠陥があったのでは契約の目的を達することができないと言えるときは、買主は契約の解除(遡って契約をしなかったことにすること)ができる。損害が残れば、その賠償請求もできる。
欠陥があって契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求だけをすることができる。」
契約締結後に瑕疵(欠陥)が発見された場合を想定して条文ができている。本件は、借地契約が先行し途中で売買に切り替えて、その売買契約締結の際に瑕疵担保責任を想定して契約条項を定め値引きをしているから話が分かりづらくなっている。国有財産の適正管理という視点からは、不明確な想定による値引き自体が大きな問題なのだ。
本件で校舎建築のための掘削工事の最中に地下埋設物が見つかったとして、法的には、当該の地下埋設物が民法570条にいう「隠れた瑕疵」にあたるかどうかが、真っ先に問われなければならない。
その答が「NO」なら、地下埋設物撤去の必要はない。撤去費用相当という損害もない。一切の値引きが許されない。
「yes」の場合についてのみ、次のような効果がしようじる。
「地下埋設物の存在によって土地購入の目的が達せられない」⇒解除と損害賠償が可能
「地下埋設物の存在によっても土地購入の目的は達せられる」⇒損害賠償のみ可能
「瑕疵」とは、契約の趣旨からみて当該の目的物が通常備えるべき品質や性状を欠いていることをいう。また、「隠れた瑕疵」とは、取引における通常の注意をもってしては発見できないものをいう。
だから、小学校建設用地に、地下埋設物が確認されたというだけでは、瑕疵にあたるか否かは速断しがたい。どのような地下埋設物であるか、どのような量であるか、本当に撤去を要するものなのかが、吟味されなければならない。この吟味による確認なくして、いきなり不確定な想定を根拠に撤去費用見積もりを依頼した近畿財務局の態度は、上からの指示か、自らの忖度を抜きにしては理解し難い。
その地下埋設物について、報告書が述べるところは、以下のとおりである。(報告書64頁)
「本件土地の貸付けを受け、森友学園が小学校校舎の建設を始めたところ、森友学園は、杭工事において廃棄物混合土が排出されたり、廃材等が掘削機の先端に付着したりしたことを理由に、28年3月11日に、近畿財務局に対して、貸付合意書で対象としていた地下埋設物に該当しない新たな地下埋設物が発見されたと連絡していた。
近畿財務局及び大阪航空局は、全ての杭の施工が完了した後の同月14日に現地確認を行った。その際、両局は、本件土地の敷地内に廃棄物混合土が広範囲にわたり散在して積み上げられていたことを確認し、同席した小学校校舎の設計業者から、これらの廃棄物混合土は、長さ9.9mの杭工事の過程において発見されたものであると説明を受けたとしている。また、近畿財務局は、同月30日に、新たな地下埋設物の確認のため小学校校舎の建設工事の工事業者(以下「校舎建設工事業者」という。)が試掘した箇所について現地で確認し、廃棄物混合土があったことを確認したとしている。さらに、近畿財務局と大阪航空局は、同年4月5日に現地の確認を行っており、その際、大阪航空局は、校舎建設工事業者が地下1.6mから4mまで新たに試掘した8か所について確認し、廃棄物混合土があったことを確認したとしている。」
まだるっこしい書き方だが、近畿財務局が報告を受けあるいは確認したのは、「廃棄物混合土が排出されたり、廃材等が掘削機の先端に付着したり」の限りなのである。
ここにいう「廃棄物混合土」とはなにか。
報告書24頁以下に、「土地の履歴及び地下構造物の調査」という項があり、そのなかに次の記載がある。
「地下構造物調査
大阪航空局は、換地後の土地の地下埋設物の状況把握を目的として、21年10月に「大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)地下構造物状況調査業務」を調査会社へ発注して実施していた。本件業務の特記仕様書によれば、…現地踏査により、地表面の状況や構造物等を把握し、整理するとともに、地中レーダ探査、試掘等により地下埋設物の状況を調査することとされており、レーダ探査の深度は3m以内、試掘深度は、原則として地山深度(地下埋設物がなくなる深度)とされた。
そして、請負業者から大阪航空局に提出された報告書によれば、試掘した深度はおおむね3mとされており、換地後の土地のうち西側の本件土地では、地下構造物等のほかに、廃材、廃プラスチック、陶器片、生活用品等のごみ(以下「廃材等」という。)が土砂と混ざった状態の土(以下「廃棄物混合土」という。)が、平均して深度1.5mから3.0mまでの層において確認されている。また、土間コンクリートや基礎コンクリートが一部において確認されており、コンクリート殻(コンクリート破片)は 全域にわたって確認され、深度数十pから1.5m程度までの層において点在しているとされている。また、公園用地においても、本件土地と同様の地下埋設物が確認されている。」
上記のとおり、報告書では、「廃材、廃プラスチック、陶器片、生活用品等のごみ」を「廃材等」と言い、「廃材等」が土砂と混ざった状態の土を「廃棄物混合土」と言っている。
つまりは、原則として地山深度(地下埋設物がなくなる深度)までは試掘して確認したところ、「深度1.5mから3.0mまでの層において」、「廃棄物混合土」の存在が確認されているというのである。
地下埋設物は2層の深度において区別されなければならない。
「深さ 0〜3.8m」の深度の地下埋設物は、売買契約以前の定期借地契約時代に、森友学園側で撤去し、その撤去費用は有益費として国(近畿財務局)が一括して全額を支払済みなのである。この深度を超えた「深さ3.8m〜9.9m」の地下埋設物だけが問題となるところ、その存在自体が極めて疑わしい(確認されていない)。少なくも、校舎建設工事の支障になる埋設物の確認はなく、むしろ、支障がないことの国会証言があり、現実に工事は進行し、躯体工事は完了済みである。
なお、報告書25頁に次の記載がある。
「請負業者から大阪航空局に提出された報告書によれば、換地後の土地には、土壌汚染の原因となる有害物質を取り扱う可能性のある企業の立地は確認されなかったこと、周囲がフェンスで囲われ、施錠されていて不法投棄等は確認されなかったことなどから、汚染された土壌が存在するおそれはないと評価されている。このため、更に詳細な調査は実施されていなかった。」
本件国有地の「深さ 0〜3.8m」の層においては、校舎建設工事に支障をきたすことから撤去を必要とした地下埋設物が存在したことが納得できる。その撤去の費用は借地契約における有益費として、既に国から森友学園に支払われ、処理済みとなっている。
しかし、「深さ3.8m〜9.9m」の層においては、地下埋設物の存在自体疑わしい。その撤去の必要はなかった。これを法的な瑕疵ありとして、8億1900万円もの幻の撤去費用相当分を値引きした近畿財務局長には、その任務に反して国に損害を与えた責任のあることが明らかというべきである。しかも政権に忖度を示すことは、将来の出世に有利との思惑ないしは自己保身が目的であって、自分の利益をはかる目的があったと考えざるを得ないではないか。
判例は、地下埋設物が存在したとしても、それが、建築工事に支障のない程度のものであれば、軽々に「隠れたる瑕疵」にあたるとは認めない。このことは、告発状に記載したとおりである。
http://article9.jp/wordpress/?p=9499
以上の観点からの、安倍政権への厳しい追求も期待したい。
(2017年11月26 日・連日更新第1701回)
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