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トランプ・安倍両氏の関係は実に「バットマンとロビン」的である 英語では「サイドキック」と呼ばれます
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53575
2017.11.24 海野 素央 明治大学教授 現代ビジネス
12日間のアジア歴訪を終えて帰国したドナルド・トランプ米大統領は、11月15日、ホワイトハウスで総括を行いました。約24分の演説中、2回もペットボトルを取り出して、ふたを開けて水を飲む場面がありました。
筆者の知る限り、選挙期間中でさえ、トランプ大統領がそのような行動をとったのを見たことがありません。それほど、同大統領は今回のアジア歴訪の成果を力説したのです。本稿では、このトランプ大統領の総括の演説から、何を読み取ることができるのかを解説します。
「こんなに売ってきたぞ!」ばっかり
まずトランプ大統領は、今回のアジア歴訪で「3つの核となる目標を達成できた」と強調しました。第1は、北朝鮮に対して世界を結束させること、第2は、自由で開かれたインド太平洋地域を促進すること、第3は、インド太平洋地域において貿易パートナー及び同盟国と、公平で互恵的な経済関係を進めることです。
確かにトランプ大統領は、金正恩体制で核・ミサイルの脅威が確実に増した北朝鮮問題については、各国に結束を求めて一定の効果を上げたかもしれません。
ただ、貿易に関して言えば、トランプ大統領が「公平と互恵に基づいた2国間協定」を前面に出してトップセールスを行ったことが威圧感を与え、米国に対する小国の警戒心をかえって強めてしまったと言えるでしょう。
大統領が繰り返し述べる「貿易における公平で互恵的な関係」とは、実は自国のみの利益を追求して、他国とは利益を分かち合わない、自文化中心主義的な「米国第一主義」を実現するための単なる口実に過ぎません。
実際、米公共ラジオ(NPR)のホワイトハウス担当記者マーラ・ライアソン氏が指摘している通り、今回のアジア歴訪では、どのアジア諸国も2国間の貿易協定に名乗りを上げませんでした。ライアソン氏は「トランプ大統領のセールスは、成果が得られなかった」と、結論づけています。
2国間の貿易協定を含めた米国第一主義は、アジア太平洋地域における米国からの小国離れを起こし、その結果、中国の影響力を増加させ、中国を利する方向へ事態を押し進めています。つまり、大統領の2国間の貿易協定の提案は、逆効果になったということです。
トランプ大統領は、総括の中で、日本が北朝鮮に対して独自制裁に踏み切ったことを評価しました。さらに、日本に米国製の戦闘機及び迎撃システムを購入させた理由を、「米国人労働者の雇用を創出するため」としました。北朝鮮問題を貿易不均衡是正及び米国内の雇用創出に結びつけて、ビジネス取引を行ったわけです。
続けて、トランプ大統領は「安倍首相と公平さと互恵の原則に基づいた貿易関係を深めて行くやり方について議論した」と述べました。また、「今年1月から日本企業が米国に対して80億ドル(約8970億円)を超える投資計画を発表した。これは1万7000人の雇用を生む」と強調し、日本に感謝の意を示しました。
雇用創出に関する成果のアピールはまだ終わりません。トヨタ自動車とマツダの名前を挙げて、「日本の製造業が米国に新たな工場を建設することで、4000人の雇用を増やす」とも語りました。
つまるところ、トランプ大統領による「総括」の演説は、日本との間でまとめた商談の額と、それで増やせる雇用者の数を具体的に挙げるという、「ビジネス交渉の成果をアピールする場」に過ぎなかったと言えるでしょう。そうしてトランプ大統領は、白人労働者、退役軍人及び軍需産業を含めた自身の支持基盤に強く訴えたのです。
そして結局、日本もトランプ大統領の「米国第一主義」に組み込まれたことが、今回の訪日で明らかになりました。
今後北朝鮮情勢が悪化すれば、支持率で低空飛行を続けるトランプ大統領は、北朝鮮問題を貿易不均衡是正や雇用創出と結びつけて、日本のさらなる米国製の武器購入のために、日本政府に最大限の圧力をかけてくる可能性が高いでしょう。これもまた、支持基盤をつなぎ止めるためです。
実に「ビジネスライク」
今回のアジア歴訪で、安倍晋三首相とトランプ大統領の個人的な人間関係にひそむ「落とし穴」も見えてきました。
日本国内には、安倍・トランプ両首脳の関係は蜜月で、今回も親密さを内外に発信できた、と高く評価する声があります。
ところが、日本と海外の受け止め方にはズレがあります。
米ワシントン・ポスト紙は、「安倍首相はトランプ氏の忠実なサイドキックを演じた」と報じています。サイドキックは、日本語に直訳すると「相棒」という意味ですが、これに近い英単語は「アシスタント」で、「権限をさほど持たない人物」という意味が含まれています。
安倍首相は、トランプ大統領の忠実なアシスタントであり、大統領よりも権限がない人物と見られているのです。
また、筆者の大学でのゼミに参加しているカナダ人留学生は、トランプ大統領と安倍首相の関係を「バットマンとロビン」のそれに喩え、「安倍首相は『脇役』に見える」と話していました。いずれにせよ、両首脳の関係は、国際社会では「対等」とはあまり見られていないようです。
今回のトランプ大統領のアジア歴訪では、安倍首相がトランプ大統領との親密さを前面に出していたのに対して、中国の習近平国家主席は大国同士の「対等」な関係を演出していました。
特に、北京の人民大会堂で開催された盛大な歓迎式典における習主席の行動は、注目に値します。音楽隊による米国と中国の国歌が演奏され、礼砲が鳴り響く中で、「対等」な経済大国のリーダーとして、習主席は堂々たる態度でトランプ大統領を歓迎しました。
ただし、日米首脳の立場が対等でないからといって、必ずしも両者の関係が悪いというわけではありません。ホワイトハウスでの総括からは、トランプ大統領が通商政策と安倍首相との個人的な人間関係を明確に区別しているということが、はっきり読み取れます。
トランプ大統領は「支持基盤第一主義」であるからこそ、安倍首相との関係を単なる「仲良し」や「友人」に留まらない、「成果に基づく関係」であると考えています。過去の日米首脳のような「信頼志向」の関係を「成果志向」に一段引き上げた、とも言えるでしょう。この点は看過できません。
従って、日本政府がこれまでのように日本的な人間関係のパラダイムでトランプ大統領に接すると、困惑する場面が今後出てくるかもしれません。
例えば日本国内では、一部に安倍首相とゴルフを共にしなかったバラク・オバマ前大統領を「ビジネスライク」「冷たい」と評する声があります。
それに対してトランプ大統領は、外部からは一見温かい関係を構築しているように見えるのですが、その実、遠慮なく、躊躇せず、実利を勝ち取っていくタイプです。この態度はオバマ前大統領とは異なる「ビジネスライク」であると言えます。日本側は、この点を早急に理解する必要があるでしょう。
アジア歴訪の総括の中で、トランプ大統領が語らなかったことがあります。それは北朝鮮による日本人拉致問題です。
訪日の際、周知のようにトランプ大統領は拉致被害者の家族と面会までしましたが、総括での日本への言及は、ビジネス取引の成果をリストアップするのみでした。
また、人権活動家に対する人権侵害で非難を浴びている中国では、トランプ大統領は習主席と人権問題に関して突っ込んだ議論をしませんでした。ホワイトハウスのサーラ・ハッカビー・サンダース報道官とフィリピン政府との間でも、トランプ・ドゥテルテ両首脳がフィリピンにおける麻薬撲滅戦争と人権に関して「触れた」「触れない」で議論になったほどです。
トランプ大統領は、今回のアジア歴訪で人権及び民主主義を重視する米国の大統領としての使命を捨ててしまったわけです。それが総括に顕著に現れていました。
そんなことより、ロシア疑惑が…
アジア歴訪中も、トランプ大統領は積極的に自身のツイッターに投稿しました。書き込んだ内容から、同大統領の心境が「100%、心アジアにあらず」の状態だったことが読み取れます。
トランプ大統領にとっての最大の懸案が、ロシア疑惑を巡って、捜査の対象がホワイトハウスのスタッフにまで本格的に及んだことでしょう。ステファン・ミラー大統領補佐官(政策担当)が特別検察官の捜査を受けたのです。
加えて、下院司法委員会ではジェフ・セッションズ司法長官がロシア疑惑に関して追及を受けました。セッションズ氏は、2016年3月にトランプタワーで開催された安全保障問題の会議に、すでに起訴されているトランプ大統領の元外交アドバイザージョージ・パパドポロス氏と同席していました。
おそらくトランプ大統領にとって最もショッキングな出来事は、長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏が、選挙期間中にクリントン陣営及び民主党本部のメールの内容を暴露した「ウィキリークス」と連絡をとっていたことを、米メディアが報道したことでしょう。
今回、トランプ大統領と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の公式会談は土壇場でキャンセルとなりました。
アジア太平洋経済協力会議(APEC)でプーチン大統領と言葉を交わしたトランプ大統領は、「プーチン大統領は、心の底からロシア疑惑とは関係ないと語った。彼は、ロシア疑惑で侮辱されていると思っている」と述べ、重ねて疑惑を否定しました。トランプ大統領は、ワシントンを離れてもつきまとう、ロシア疑惑の影を意識せざるを得ませんでした。
トランプ大統領はアジア歴訪中、ロシア疑惑のイメージを打ち消すためか、自身のツイッターに「コミー(元FBI長官)は嘘つきで情報の漏洩者だ」「クラッパー(前国家情報長官)とブレナー(元CIA長官)は政治屋だ」「ロシア疑惑の捜査は、米露関係を崩壊させる可能性がある」などと次々に投稿しています。
槍玉に挙げられたコミー、クラッパー及びブレナンの3氏は、「ロシアの情報機関の活動が、トランプ大統領を選挙で助けた」と証言している点で一致しています。
ホワイトハウスは、トランプ大統領が東アジアサミットへの出席を取りやめた理由を「会議の進行の遅れ」と説明しました。ただうがった見方をすれば、留守中に米国内でロシア疑惑の捜査が急速に進んでいることを鑑みて、早急に帰国し、弁護士チームと対策を練る必要があったのではないか、とも思えます。
トランプ大統領の初のアジア歴訪は、徹頭徹尾みずからの支持基盤をつなぎ止めるための歴訪となりました。日本との「ビジネス」の成果を過度に強調する裏に、ロシア疑惑から国民の関心を逸らそうとする意図があったことは、言うまでもありません。
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