http://www.asyura2.com/17/senkyo236/msg/374.html
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気が付いていませんでしたが、森友・加計問題噴出の陰で種子法廃止が行われていました。
この手法、東電OL殺人事件の直後に発生したサカキバラセイト事件と同じです。
気候寒冷化が迫っている中、日本独自の種子が無くなったら、それこそ、大変です。
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http://biz-journal.jp/2017/06/post_19331.html
安倍政権、米の安定供給を放棄…専門家の議論なし、突然の種子法廃止が波紋
文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト
これはまさに唐突で不可解な、そして先の見通しなしに断行された愚かな振る舞いで、将来に禍根を残すといえるのではないか――。
4月14日、民間の参入を阻害しているとして、稲、麦、大豆の種子生産を都道府県に義務付ける主要農作物種子法の廃止法が国会で成立。来年4月1日に同種子法が廃止されることになった。
この“廃止劇”の第一の問題は、もっとも重要である廃止理由や経緯が明確ではない点にある。つまり物事を進める上で不可欠な「5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)」が不明なのだ。ここでは、何がなんでも民間での種子開発を推進したいという意図に基づく強引さが際立ち、後味の悪さだけが残った。
そして最大の問題は、同種子法廃止によって、消費者の生存に必要な稲、麦、大豆の安定的供給を図るための、優良種子の生産・普及に支障をきたしかねないという点にある。さらに、外資系企業参入や遺伝子組み換え稲などの登場で、食料安全保障の根幹、つまり食の安心・安全の基礎が揺らぐリスクも高まる。これは国民・農家の財産であり、数少ない遺伝資源の確保という国の責務を放棄するという点からみても、極めて無責任な態度ではないか。今回はその問題を整理して報告したい。
地域品種の存続が危機に
廃止法案成立前の4月10日、東京・永田町の国会前での種子法廃止反対のデモに続き、衆議院第一議員会館で「主要農作物種子法廃止で日本はどう変わるか」と題して、講演会・意見交換会(主催:全国有機農業推進協議会、日本の種子<たね>を守る有志の会)が開かれ、200人ほどが参加した。
冒頭、その呼びかけ人の一人、山田正彦・元農林水産大臣(弁護士)は、次のように危機感を露わにした。
「(政府は、)廃止法案をいきなり出してきた。種子法が廃止されれば、モンサントなど外資系の参入や遺伝子組み換え稲などの問題で、大変なことになりかねない」
講演会で講師の西川芳昭・龍谷大学経済学部教授は「種子が消えれば、食べ物も消える。そして君も」との研究者【編注1】の言葉を紹介し、こう強調した。
「遺伝資源は人類共通の遺産であり、国民が何を食べ、農家が何をつくるかを決める食料主権は、基本的人権のひとつだ。ところが、種子法廃止に当たり、食料主権についてはまったく議論されていない」
「種子法で、地域に合う稲などの品種が育成されてきたが、地域品種の種子生産は量が限られ、民間企業の参入は収益上、考えにくい。種子法廃止で都道府県が関与しなければ、地域品種が存続の危機に直面する」
意見交換会では発言を求めて挙手が相次ぎ、若い女性看護師が涙ぐみながら「種子法廃止で民間や外資が入ると、安全面への配慮が遅れがちに。安心・安全な未来をつくれるか、今が転換期だ」と訴え、共感を呼んだ。それに対し、農水省担当者は「安全性のリスクが高まる心配は理解でき、そうならないようにしたい」といいながら、「(民間種子が主力の)野菜でも、必ずしも問題があるわけではない。(米などの)多種多様な種子が育成されるように、体制を構築したい」など説得力のない説明に終始し、参加者の懸念を払拭できなかった。
厳しくも新しい門出を迎え
そもそも、この種子法とは何か。種子法は1952(昭和27)年5月1日に公布・施行された。それは戦後、日本が独立を回復したサンフランシスコ平和条約【編注2】が発効(同4月28日)した、その3日後のことだ。当時、食糧難が続き、同2月末には農林省が「食糧増産5カ年計画で年間500億円以上を投入、合計2000万石(約300万トン)の食糧増産を行う」と発表していた。
その厳しくも新しい門出を迎えるなかで、「主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産についてほ場審査【編注3】その他の措置を行うことを目的とする(第一条)」として、種子法が制定された。これについては、「主要農作物種子制度運用基本要綱」【編注4】にわかりやすく、こう書かれている。
「(種子法に基づく)主要農作物種子制度は、我が国の基本的な食糧であり、かつ、基幹的な作物である主要農作物(稲<米>【編注5】、大麦、はだか麦、小麦及び大豆をいう)の優良な種子の生産及び普及を促進し、もって主要農作物の生産性の向上及び品質の改善を図ることを目的としている」
さらに、こう説明する。この種子制度を運用するには、主要農作物の優良種子の生産・普及が、その基礎の品種選定から最終的に種子が農業者に引き渡されるまで専門的な知識・技術と周到な管理が必要だ。そのために品種の優良性の判別方法や、優良種子の適正・円滑な生産流通の方法などについて、周知させる必要がある。そこで種子法では、都道府県に対して以下について義務付けた。
(1)主要農作物の種子生産者のほ場(田畑)の「指定種子生産ほ場指定」
(2)「生産物審査」(種子の発芽良否、不良種子・異物混入状況などの審査)
(3)主要農作物の原種・原原種【編注6】の生産
(4)種子計画の策定
(5)優良種子生産・普及のための勧告・助言・指導
そのなかで特に重要なのが、(6)別名・奨励品種と呼ばれる優良品種の決定【編注7】で、先の「基本要綱」【編注8】では、こうなっている。
「都道府県は、当該都道府県に普及すべき主要農作物の優良な品種(以下「奨励品種」という)を決定するに当たっては、当該都道府県における気象、土壌、農業者の経営内容及び技術水準、主要農作物の需要動向等を十分考慮する」
日本の食料安保が危うい
それにしても、今回なぜ種子法を廃止したのか。確かに、少子高齢化で胃袋の数が減り、そのサイズも小さくなっている点では、特に食糧(米、麦など主食物。食料は主食物を含む食べ物全て)としての米では増産が必要ではない。しかし、米国トランプ政権などによる貿易や安全保障情勢の緊迫化、あるいは各種災害・冷害などの懸念は増すばかりだ。
つまり食料安全保障のためにも、先の「我が国の基本的な食糧であり、かつ、基幹的な作物である主要農作物」生産の基礎となる優良種子生産・普及制度の必要性は、むしろ高まっているのではないか。ところが、それをいとも簡単に、一気になくした。なぜか。
先の意見交換会で、下山久信・全国有機農業推進協議会事務局長(農家)は、「(昨年11月)安倍さんが米国でトランプさんに会った後の2月の閣議で、突然、種子法廃止が決まった。その間、自民党の農林部会でも一切、議論はなされていない。どんないきさつがあったのか」と、疑問を投げかけた。
改正ではなく廃止した3つの理由
第193回国会・衆議院農林水産委員会(17年3月23日)で、佐々木隆博委員(民進党議員)の質問に対して、柄澤彰・政府参考人(農水省政策統括官)は、種子法には法律上の3つの構造的(仕組み)問題があり、「改正してもこれは直らないために、廃止の判断に至った」旨、答えた(以下、国会の議事録などを利用する場合、煩雑になるために、旨=要旨と書くのを省く)。
その1つは、種子法の仕組みとして、都道府県の開発品種を優先的に奨励品種に指定することになっているため、民間企業の開発品種の奨励にはつながりにくい。
2つ目は輸出用米や業務用米など都道府県の枠を超えた広域的な種子生産が求められても、奨励品種に指定されにくい。
3つ目は、必ずしも米麦などの主産地でない都道府県を含めたすべての都道府県に対し、原種、原原種の生産や奨励品種の指定試験などを義務付けている。
その上で、これらの課題が明らかになり、しかもこれは「法律の構造的な問題」のために、「改正しても直らないので、廃止する判断に至った」(柄澤政府参考人)。
結論を先にいうと、実はこれは16年10月6日の「規制改革推進会議/農業ワーキング・グループ」で配布された資料【編注9】に書かれている、「(10)(略)地方公共団体中心のシステムで、民間の品種開発意欲を阻害している主要農作物種子法は廃止する」と一致する。
つまり、規制改革推進会議が出した結論が先にあり、農水省は後からそのための3つの理由を考えたのではないか。いずれにせよ、基本的な疑問が2つある。
まず、多くの消費者の主食である米の種子開発で、なぜ国や都道府県などが中心ではダメなのかという疑問である。なぜ、自由競争下にあるはずの、多国籍企業など外資系を含む民間企業の開発意欲を考慮し、その参入を促進しなければならないのか。
2つ目は、仮に民間企業の力が必要ならば、「地方公共団体中心のシステム」という法律の構造を変えずに、その旨、種子法の一部を改正すれば、それで済む話ではないか。何がなんでも民間企業をという筋立ては、余りにも強引で乱暴な話だ。福島伸享委員(民進党議員)は国会で、次のように質問した。
「この話は規制改革推進会議などで議論されたが、専門家の議論をしているか。審議会(例えば食料・農業・農村政策審議会食糧部会など)などの手続きを経て農水省として意思決定をしたか」
これに対し、前出・柄澤氏は次のように答弁した。
「その審議会の権限に属せられている審議(米穀の需給及び価格安定に係わる基本指針など)には該当しないので、議論されていない」
あくまでも民間参入(種子)ファースト
先の柄澤氏は廃止後のメリットについて、(1)義務が廃止されて、都道府県はフリーハンドになり、民間を含めて奨励品を指定しやすくなる、(2)別に農業競争力強化支援法案などで民間事業者の新規参入支援措置をするために民間企業の参入が進み、農業者の選択が拡大する、とした。それを含めて国会では、どんなやり取りがあったのか、確認しておきたい。
前出・佐々木氏「今、身軽(フリーハンド)になると。そういう声はあったのか、要望はあったのか」
柄澤氏「日ごろ私どもいろいろな業務をしている過程で、そういう判断に至った」
佐々木氏「誰かのニーズなどがあったわけではなく、自分たちがそう思ったから廃止した話だから、説得力が非常にない」
佐々木氏「主要穀物がなぜ稲と麦と大豆なのか、それは日本人の主食として代替がきかないからだ。この3つはちゃんと行政が責任を持って育種をし、種を保存しなければならない。その考えを捨てるのか」
齋藤健・農林水産副大臣「稲、麦、大豆が我が国の土地利用型農業の重要作物で、その生産の基本的資材の種子は重要な戦略物資という基本的認識は今後も一貫して変えるつもりはない」「輸出向けとか、市場ニーズに適した品種改良を民間参入含めて進むようにするには、国が法律で強制する必要はなくなった」
農水省は変節か
先の衆議院農林水産委員会(3月23日)の2週間前、3月8 日の同委員会で日本共産党の畠山和也委員が、こんな指摘をして驚かせた。07年4 月20 日の規制改革会議関連の会議【編注10】で、種子法に関連して今回とは逆に、「当時の議事録を読むと、農水省自身が反論文書を提出していた」というのだ。
当時の竹森三治・農水省生産局農産振興課長が、「民間の新品種が奨励品種になることが極めて困難、阻害要因となるとの指摘があるが」との問いに対してこう答えている。
「公的機関による育成品種が奨励品種の大半を占めるという現状だが、奨励品種については公的機関が育成した品種に限定はしていない」「民間で育成した品種について、優良なものは積極的に奨励品種に採用するよう都道府県に対して指導している」「民間育成品種も一部奨励品種になっている」
そして、稲では2品種、小麦では1品種、二条大麦(ビール麦)ではビール会社が育成した7品種が奨励品種だと明らかにした。最後に、「本制度が新品種の種子開発の阻害要因となっているとは考えていない」と断言した。
この証言を基に、畠山議員は「これまで明確にこのように否定してきた。なぜ認識が変わったのか」と迫った。しかし、柄澤氏も、さらに答弁を求められた山本有二農水大臣も、「民間企業との連携云々」と、先の“民間参入(種子)ファースト論”を繰り返すだけだった。
亡国の道を“公共種子保全法”で断つ
先のもう一人の呼びかけ人、金子美登・全国有機農業推進協議会理事長(農家)は、「種子法廃止は亡国の道」と断じた。最後に山田元農水大臣が、種子法に代わって、議員立法による「公共種子保全法(仮称。公共機関による公共品種育成)」の制定を提案した。これを含め、じっくりと、落ち着いて考えてみたい。
(文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト)
【編注1】「種子が消えれば、食べ物も消える。そして君も」:ベント・スコウマン=元国際コムギ・トウモロコシ改良センターのジーン・バンク担当者の言葉
【編注2】サンフランシスコ平和条約:対日平和条約。1951年9月8日に米サンフランシスコで日本と48ヵ国が調印。条約発効で連合国による占領が終わり、日本は主権を回復
【編注3】ほ場審査:ほ場(田畑)審査は、都道府県が種子生産ほ場で栽培中の主要農作物の穂の出方や成熟状況などについての審査
【編注4】「主要農作物種子制度運用基本要綱」:「農林水産事務次官依命通達」昭和61年12月18日「第1 制度の趣旨及び運用の基本方針」
【編注5】稲はイネ科の一年草の植物。米は稲の果実
【編注6】原種・原原種:原種は品種本来の遺伝的特性を維持している種子。原原種はその元になる親
【編注7】優良品種の決定:種子法第八条=優良品種を決定するための試験
【編注8】先の「基本要綱」:第2奨励品種の決定 1奨励品種の決定基準
【編注9】2016年10月6日「未来投資会議 構造改革徹底推進会合「ローカルアベノミクスの深化」会合 規制改革推進会議農業ワーキング・グループ『総合的なTPP関連政策大綱に基づく「生産者の所得向上につながる生産資材価格形成の仕組みの見直し」及び「生産者が有利な条件で安定取引を行うことができる流通・加工の業界構造の確立」に向けた施策の具体化の方向』
【編注10】規制改革会議関連の会議:規制改革会議地域活性化ワーキンググループの第2回農林水産業・地域産業振興タスクフォース
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http://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2017/170330-32373.php
農政 クローズアップ詳細
2017.03.30 【種子法廃止】種子の自給は農民の自立一覧へ
国民財産の払下げ狙い?
農林水産省は主要農作物種子法を「廃止する」法案を今国会に提出し3月23日に衆議院農林水産委員会が可決した。今後、参議院で審議が行われるが、同法の廃止は国民の基礎的食料である米、麦、大豆の種子を国が守るという政策を放棄するもので、種子の供給不安、外資系企業の参入による種子の支配などの懸念が国民の間で広がっている。法律が果たしてきた役割を議論せず、廃止ありきの政府の姿勢は問題だとして3月27日に有志が呼びかけて開いた「日本の種子(たね)を守る会」には全国から250人を超える人々が集まり、「種子の自給は農民の自立、国民の自立の問題」などの声があがったほか、議員立法で種子法に代わる法律を制定することも食と農の未来のために必要だとの意見も出た。集会の概要をもとに問題を整理する。
◆農と食のあり方左右
水稲のイメージ図 集会では京都大学大学院経済学研究科の久野秀二教授(国際農業分析)が「大義なき主要農産物種子法の廃止―公的種子事業の役割を改めて考える」と題して講演をした。
久野教授は種子(たね)の位置づけについて「もっとも基礎的な農業資材。種子のあり方が農と食のあり方を左右し、農と食のあり方が種子のあり方(品種改良)を規定する」と強調した。
その種子のあり方については、農民による育種から政策としての公的種子事業へと発展してきた。
主要農産物種子法(以下、種子法)は昭和27年、「戦後の食糧増産という国家的要請を背景に、国・都道府県が主導して、優良な種子の生産・普及を進める必要があるとの観点から制定」された。これは今国会に提出された種子法廃止法案について農水省が作成した概要説明資料の記述である。まさに「国家的要請」として、公的種子事業が制度化されたことが示されている。
この種子法によって稲・麦・大豆の種子を対象として、都道府県が自ら普及すべき優良品種(奨励品種)を指定し、原種と原原種の生産、種子生産ほ場の指定、種子の審査制度などが規定され、都道府県の役割が位置づけられた。
では、なぜ廃止されることになったのか。すでに指摘されているように昨年(2016)の規制改革推進会議農業WG(ワーキング・グループ)の議論からである。久野教授はこの間の経緯を議事録から整理して報告した。当初、生産資材価格の引き下げの議論なかで種子法に関連する項目は一切なかった。それが10月6日の農業WGで「地方公共団体中心のシステムで、民間の品種開発意欲を阻害している主要農産物種子法は廃止する」と問題提起される。
理由は、戦略物資である種子・種苗について「国は国家戦略・知財戦略として、民間活力を最大限に活用した開発・供給体制を構築する」というもの。そもそも「国家戦略」としてなぜ「民間活力を最大限に活用」することになるのか、など議論となってしかるべき点は多いが、ほとんど議論された形跡はないという。
専門委員である本間正義東大教授が「この法律のどこが具合が悪いということについて、もう少し詳しい説明をされたほうがいい」との意見を述べているが、それ以上の議論はない。
そして今年1月の農業WGでの法律廃止の趣旨説明で農水省の山口総括審議官は、▽世界的にも戦略物資として位置づけられているので民間事業者によって生産供給が拡大していくようにする、▽都道府県と民間企業の競争条件が対等になっていない。奨励品種制度などはもう少し民間企業に配慮が必要、などの理由を挙げ、「ということで、今回この法律自体は廃止させていただきたい」と説明した。
◆種子ビジネスの攻勢
農水省のこうした説明について久野教授はいくつもの疑問点を指摘し批判した。
そもそも種子の生産の拡大を強調するが公共育種によって不足しているわけではないこと、国家戦略として位置づけるのなら民間に任せるのではなく、より公的な管理が重要になるはずではないか。そしてそもそも生産資材価格の引き下げがテーマだったはずなのに、低廉な種子を供給してきた制度の廃止は、種子価格の上昇を招くのではないのかというものだ。
いくつもの疑問があるが、もっとも意味不明なのが、種子法廃止法案を国会に提出した際の理由である。それは「最近における農業をめぐる状況の変化に鑑み、主要農作物種子法を廃止する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である」という一文だ。"最近における農業をめぐる状況の変化"といいながら、どこにも説明されていない「意味不明」(久野教授)の文書、これで国会審議などできるのだろうか。
その国会審議では農水省の姿勢ががらり変わったことも示された。
平成19年(2007)4月20日の規制改革会議では、民間委員から民間の品種が奨励品種になることは極めて困難になっている、との意見が出されたが、それに対して当時、農水省(竹森農産振興課長)は「奨励品種に採用する品種については公的機関が育成した品種に限定していない。民間育成品種についても一部奨励品種に採用されている。奨励品種制度が新品種の生産・販売・普及の妨げになっていないと考える」と回答していた。これは衆院農林水産委員会で野党議員が指摘した(日本共産党・畠山和也議員)。
今回の説明とはまったく逆である。この間になぜ認識が変わったのか。久野教授はこの背景にあるものは、農業の成長産業化の名のもとの政府・財界による新たな農業・農協攻撃であり、また、植物遺伝子資源を囲い込んで種子事業を民営化し、公共種子・農民種子を多国籍企業開発の特許種子に置き換えようとする種子ビジネスの攻勢だと強調した。それは世界の動きでもある。
◆企業は利益二重取り
「食料改悪は許せない」とJA水戸の八木岡組合長 種子法の廃止の影響はそうした世界の動きに沿ったものとして出てくるだろうという。
廃止にともなって、国や都道府県が持つ育種素材や施設を民間に提供し、連携して品種開発を進めるという。しかし、それは公的機関が税金を使って育成した品種という国民の財産を民間企業へ払い下げることになるのではないか。外資の参入は現行の種子法のもとでも自由となっており、廃止によって新規参入を促すものでないと農水省は説明するが、官民連携という名の国民財産の払い下げが行われるのであれば話は違ってくるだろう。
さらに都道府県が開発・保全してきた育種素材をもとにして民間企業が新品種などを開発、それで特許を取得するといった事態が許されるのであれば、材料は「払い下げ」で入手し、開発した商品は「特許で保護」という二重取りを認めることにならないか。
法的な根拠がなくなってしまえば都道府県の主要農作物種子事業の予算も根拠もなくなる。安定的に種子を確保できるのか。あるいは都道府県間での競争の激化も考えられる。そうなると、種子の需給調整を全国で図ることも困難になるだろう。同時に、久野教授は米国やカナダなどでも公的種子事業の意義と危機感が議論されていることを紹介した。
米国では州立大学が公共品種の開発、提供を行っており、小麦の最大生産州カンザスでは州立大学と州農業試験場の種子の供給量が1、2位を占め公共品種の役割を一定程度維持しているという。
カナダの小麦は95%が公共品種で、長期的・安定的な予算配分による公的育成プログラムの有効性が立証されているという。
ただ、豪州では2000年代から政府が育種事業から徐々に撤退し民間企業の投資が増加、英国でも公的小麦育種事業が民営化(1987年)されたという。米国でも地域差があり、アーカンソー州の米は州立大学で育成された品種が大半だが、栽培面積では民間育成品種が7割を超えるなど徐々に増大しているという。米国では1980年代に民間への技術協力を法制度で決めるなど、民間移転が進んでいるが、一方で公共品種が食料安全保障、持続可能性、教育などの役割を果たすと評価する動きも決してなくなっているわけではないようだ。また、種子事業を民営化した英国では統合的な研究システムが分断した「失われた15年」という反省も出ているという。
◆JAはもっと関心を
食と農の危機を訴える京都大学久野教授 参加者からは種子生産の実態も報告された。
もっとも懸念されたのは種子法廃止でこれまで培ってきた現場の技術や体制が混乱しないかということ。根拠法がなくなり財政的な裏づけがなくなれば米の原種価格は5倍以上になると指摘もあった。生産資材価格の引き下げと逆行する。
JA水戸の八木岡努代表理事組合長も集会に参加。「JA水戸も県内の種場農協の一つ」だとして28人の部会で米5品種、麦・大豆3品種ずつ生産していることを紹介した。
部会では種子を維持するため何度も選抜を繰り返し病害虫防除にも細心の注意を払う。それによって「次第に地域特性が出て、品質や味にまで影響する」と地域に根ざした種子生産の実態を強調した。
それが作りやすさだけで海外からの品種で生産することになれば、たとえば「学校給食でもおいしくないコメになる」と懸念する。
八木岡組合長は地域で育んだ種子から生産した農産物という点を改めて評価すべきだとし「JAであれば単なる食材ではなく教材として提供できる」と強調し「農業改革が農協改革になり、今度は食料改悪にしてはいけない。農協関係者の出席が少なかったが、もっと関心を持つべきだ」と訴えた。
久野教授は食料主権の一つとして種子主権も主張するとともに、世界で取り組まれている種子保護の運動とも連帯すべきなどと主張した。
なお、日本の種子を守る会は第2回目の講演会を4月10日午後2時から参議院議員会館101会議室で開く。
(写真上から)水稲のイメージ図、「食料改悪は許せない」とJA水戸の八木岡組合長、食と農の危機を訴える京都大学久野教授
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