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賃金を犠牲にして空前の企業利益 好況大報道のドッチラケ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/217016
2017年11月4日 日刊ゲンダイ 文字お越し
アベノミクスは失敗に終わったのに…(C)日刊ゲンダイ
いやはや最近の大新聞・テレビの報道を見ていると、日本経済はまるで「バブル景気の再来」と言わんばかりだ。
〈民間シンクタンクの予測では、7〜9月の実質経済成長率の平均は年率1.5%と7四半期連続のプラス成長〉
〈7〜9月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)は102.5で前期比0.4%上昇。リーマン・ショックが起きた08年7〜9月以来の水準〉
〈上場企業の2017年9月中間決算は過去最高益を更新する見通し〉
〈日本経済は戦後2位のいざなぎ景気を超える回復途上にある〉……。
大々的に取り上げられている経済指数、数値をざっと挙げただけでも、今の日本が空前の好況期にあるのではないか――と錯覚してしまいそうだ。だが、いざなぎ景気を超えるほどの高揚感を感じている国民はほとんど皆無と言っていいに違いない。大マスコミの論調通り、企業業績が絶好調であれば、賃金も雇用も右肩上がりで増えておかしくないのに、そんな状況に全くなっていないからだ。
■「好景気」の中身は空っぽの“ハリボテ”
〈賃金は1997年から現在に至るまで下落傾向が続いています。国民総所得における賃金・俸給の割合は、1980年度には46.5%ありましたが、2015年度には40.5%まで低下しています〉
「閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済」(集英社新書)の著者で、法大教授の水野和夫氏は「月刊日本」(11月号)でこう指摘していたが、財務省の法人企業統計によると、企業利益に占める労働者の賃金割合を示す労働分配率は依然として過去最低水準のままだ。
それもそのはずで、財務省調査に対して2016年度の内部留保が「増えた」と回答した企業は8割にも上る。つまり、企業側はひたすらため込むばかりで労働者にちっとも還元しないのだから、賃金が上がるワケがない。なるほど、過去最高益と浮かれまくっている大企業の内部留保が400兆円を突破するのも当然だ。水野和夫氏があらためてこう言う。
「労働分配率が下がっているということは、本来は労働者が受け取るべき賃金が企業利益に付け替えられているということを意味します。つまり、賃金が下がっている分、労働者はよりたくさん働かなくてはいけないわけです。(好景気と報じられているが)今の日本経済は一言で言えば、まさに新自由主義派の思い描いていた通りの展開であり、そのしわ寄せが労働者の負担増につながっているのです」
そもそも、大マスコミは「いざなぎ景気超え」と大騒ぎしているが、カラーテレビ、自動車、クーラーの「3C」が牽引役となった当時と今の経済状況を比べると力強さがまるで違う。かつて世界のモノづくりをリードし、高付加価値の商品開発を得意とした日本の製造業の姿は今や見る影もない。将来の需要拡大が期待されているAI(人工知能)やEV(電気自動車)も欧米の後塵を拝している。じゃあ、何が日本企業の業績を大きく押し上げているのかといえば、日銀の“異常”な金融緩和による超低金利と円安進行に加え、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの「官製相場」で下支えされた株高だ。つまり、好景気といっても、しょせんは中身がカラッポの“ハリボテ”。庶民のフトコロから公然と収奪しているのが実態なのだ。
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
有効求人倍率を「高水準」に引き上げている数値のカラクリ |
「政治の最も大切な責任である雇用について大きな成果をあげた」
第4次安倍内閣が発足した1日夜の会見で、安倍首相がアベノミクスの“成果”として胸を張っていたのが雇用だ。
おそらく9月の有効求人倍率(季節調整値)が1974年以来の高水準となる1.52倍になったことや、同月の完全失業率が2.8%と「完全雇用」状態になったことを踏まえたのだろうが、この数値には複数の“トリック”が隠されている。
まずは何と言っても労働力人口の減少だろう。ここ数年で団塊世代が65歳に達して退職者が急増。いわゆる「2012年問題」と呼ばれたものだ。求人倍率は職安で扱った求人数を求職者数で割った値だから、分母の求職者数が減れば倍率が上昇するのは小学生でも分かる理屈だ。分母の減少数の推移をみると、2012年までは10万人台だったが、13年以降は年間100万人以上も減っているから、求人倍率が上昇するのは当然なのだ。
さらに内訳数値を細かく見ていくと、臨時・季節雇用を除いた求人倍率の中で群を抜いて高いのは「接客・給仕」(3.87倍)、「介護サービス」(3.74倍)、「自動車運転」(2.80倍)など。いずれも長時間労働と低賃金が社会問題になっている職種ばかりである。対照的に労働者の希望が多い「一般事務の正社員」は1.0倍を下回ったまま。つまり、離職率の高い一部の職種が求人倍率を引き上げているのであって、決して安倍が得意げに言うほど雇用環境が大きく改善しているわけじゃないのだ。
前出の水野和夫氏も「月刊日本」で〈労働者たちが最も希望する仕事は企業からほとんど提供されていない。(略)全体の有効求人倍率が上昇したからといって、それほど自慢できることではない。(略)『どんな仕事でもいいから働け』と言うなら、それは横暴というもの〉と説いていたが、その通りだ。
■アベノミクス失敗の隠すための「脚色」報道
つまるところ、〈いざなぎ景気を超える回復途上〉なんて安倍政権のお先棒を担いだ大マスコミが表面上の数字だけを取り上げて大袈裟に喧伝しているだけ。日本経済の実相ではないということだ。なぜ、そんな提灯報道を続けているのかといえば、そうしないと、いよいよアベノミクスの完全破綻が国民にハッキリと分かってしまうからだ。元NHK政治部記者で評論家の川崎泰資氏がこう言う。
「今のメディアは安倍政権の言いなりなのでしょう。だいたい安倍政権が旗を振り、日銀の黒田総裁が始めた『2年で2%の物価目標』は達成時期が6回も先送りされ、失敗は明々白々です。それなのに安倍首相は今も『道半ば』と言い続けている。メディアはこうしたデタラメな点をきちんと指摘し、責任を追及するべきですよ。そうした報道を一切せず、政権にとって都合のいい数字を大きく取り上げるのはジャーナリズムでも何でもありません」
日経平均16連騰! と大ハシャギで報じていた株高だって、よくよく考えれば上場企業数は日本国内の全法人の1%にも満たないから、大半の中小企業にとっては全く関係ない。それでも「岩戸景気以来」などと“脚色”すれば、好景気ムードを演出できる。そうやって大マスコミは安倍政権が消費税を予定通り増税するための地ならしにせっせと加担しているワケだ。
だが、実質賃金がほとんど上がらない中で、このまま消費税増税なんて許されるのか。間違いなく庶民生活を直撃するだろう。国民は好景気を“装った”大マスコミの提灯報道にゴマかされず、公表される経済指標の「中身」を冷静に分析することが重要だ。
賃金を犠牲にして空前の企業利益 好況大報道のドッチラケ|日刊ゲンダイDIGITAL https://t.co/YZitQPTJgI @tim1134
— 桃丸 (@eos1v) 2017年11月4日
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— proletarian (@nohohon6098) 2017年11月4日
アベノミクスとやらをのさばらせているのはマスコミが政府の官製報道をなんの疑問も呈さずに数字だけを伝えそれを安倍政権が自慢する負のサイクルのせい
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