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「シンゾー・ドナルド」蜜月アピールに隠された日本の決定的譲歩 ゴルフしてる場合じゃない(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/17/senkyo235/msg/125.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 10 月 31 日 23:45:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


「シンゾー・ドナルド」蜜月アピールに隠された日本の決定的譲歩 ゴルフしてる場合じゃない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53351
2017.10.31 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス


■親密さや絆では通商問題は解決しない

トランプ米大統領がアジア5カ国歴訪の最初の訪問地として、11月5日から3日間の日程で日本を訪れる。大統領就任後初の来日となる。

菅義偉官房長官の発表(10月24日)によると、トランプ大統領とメラニア夫人は滞在中、天皇皇后両陛下と会見するほか、安倍総理との首脳会談、拉致被害者家族との面会がセットされている。政府は「シンゾー・ドナルド」関係の親密さを誇示して、日米同盟の強固さをあらためて世界にアピールする構えだ。

このところ、新聞やテレビは、関連ニュースとして、弾道ミサイルと核兵器の開発を一向にやめようとしない北朝鮮対策での連携や、そんな深刻な状況のなかで安倍総理が大統領をゴルフに招いていることの是非を大きく扱っている。

しかし、世界第1位と第3位の経済大国の首脳が膝を詰めて話し合うべき重要な課題は、ほかにいくつもあるではないか、と言いたい。なかでも大きいのが、世界平和の要でもある自由貿易体制をどう維持していくか、また、2国間の通商をどうするかという問題だ。

これらのテーマは、かねて「アメリカ・ファースト」を前面に掲げてTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱を決めたトランプ大統領が相手だけに、安全保障面での親密さや個人どうしの強固な絆を演出するように簡単にはいかないだろう。

特に、アメリカが早くから強い意欲をみせてきた日米間のFTA(自由貿易協定)交渉の開始問題は、日本にとって頭の痛いテーマだ。のらりくらりと先延ばしを続ける政府の対応は賢明と言えるのか。そして、そんな姿勢がいつまで通用するのか。ほかに採るべき戦略はないのか。

■総理歓待の裏で行われた「大きな譲歩」

日米FTA問題をめぐる政府の混乱ぶりは、10月16日に開かれた日米経済対話をめぐるドタバタ劇でも明らかだ。

この会合の設置が決まったのは、今年2月のこと。訪米した安倍総理が、就任間もないトランプ大統領からフロリダでのゴルフ接待を含む歓待を受けた折の話である。両首脳は、それぞれの政権のナンバー2、つまり麻生太郎副総理とマイク・ペンス副大統領の間で『経済対話の枠組み』を作ることに合意した。


満面の笑みも内心は複雑か……麻生副総理とペンス副大統領 photo by gettyimages

だが、政府にとって、この種の会合の設置は、安倍総理の訪米前に何としても避けたいとしていたシナリオだ。アメリカが離脱したTPPのようなマルチ(多国間)の交渉と違い、巨大市場を持つ相手とバイ(2国間)の交渉を強いられれば、日本はひとたまりもないからだ。日米構造協議(1989年-90年)などの例をみても、2国間の交渉を開始すれば、アメリカペースで押しまくられることは目に見えている。

トランプ大統領による安倍総理の歓待ぶりが浮かれ気味に報じられる裏で、政府は避けたかったシナリオを早々に飲まされていた。安全保障面で緊密ぶりをアピールしたことに外交的な価値があったのは事実だが、その代償として、経済面で大きな譲歩を強いられていたわけだ。

当時の本コラムでも紹介したが、安全保障と並ぶ重要分野だったはずの経済について、「会談の成果としては内容に乏しかった」「麻生副総理とペンス副大統領の間で『経済対話の枠組み』を作ることで合意した。ただ、具体策はこれからのようで、会見や共同声明では具体的な交渉分野や雇用目標などに触れなかった」などと報じた朝日新聞デジタルは、典型的な日本メディアの論調だった。

しかし実際には、共同声明に「アメリカのTPP離脱に留意し、共有された目的の達成へ最善の方法を探求する。これには日米2国間の枠組みの議論を含む。両首脳は課題を議論するための経済対話に従事すると決定した」と、日本が譲歩し始めたことが明記されていたのである。

そして、10月16日。メンバー顔合わせの場となった今年4月の初会合に続き、日米経済対話の第2回会合が半年ぶりに開かれた。麻生副総理は、選挙期間と重なることを理由に、10月12・13日のG20財務相・中央銀行総裁会議は欠席したものの、日米経済対話はキャンセルできなかった。

■政府の情報操作も効果ナシ

新聞各紙も、政府の言い分をくり返し鵜呑みにするほど、お人よしではない。

経済対話の終了直後から、「米、対日FTAに意欲 副大統領、経済対話で 日本側は慎重」(日本経済新聞、10月17日付夕刊)といった見出しで、「米側は日米2国間でのFTA交渉開始を要望した。会談後、日本政府関係者が『ペンス氏から対日FTAに強い関心を示された』と明らかにした」(同)と、アメリカ側の並々ならぬ決意をストレートに伝える報道が相次いだ。

同日付の朝日新聞デジタルは「ペンス氏はFTAについて、4月の初会合後の記者会見で意欲を示していたが、会合の中で言及したのは(10月会合が)初めて。貿易赤字を問題視するトランプ米大統領の来日を11月に控え、対日圧力が強まる可能性もある」と伝えた。

毎日新聞も同日、「(対話には)ペンス副大統領のほか、ムニューシン財務長官、ロス商務長官、ライトハイザー通商代表が同席。4月の初会合ではペンス副大統領は会議の席上、日米FTAに触れなかったが、今回は会議で強い意欲を表明しており、事実上の交渉開始要請と言えそうだ」と報じている。

ところが、菅長官の大統領訪日に関する公式発表(10月24日)のあと、風向きが微妙に変わる場面があった。

口火を切ったのは、日本経済新聞(10月28日付朝刊)だ。「FTA、米の『強い関心』本当?」という見出しの記事で、「政府関係者は日米FTAをめぐる米側の姿勢に神経をとがらせている。16日の日米経済対話でペンス米副大統領が『強い関心』を示したと報じられたが、日本政府は『少し触れた程度』と軌道修正し始めた」と伝えたのだ。

舞台裏は、その日の夕刊で明らかになる。各紙によると、駐米大使の佐々江賢一郎氏がワシントンで行った記者会見で、「(FTAの交渉開始は11月上旬の)トランプ大統領の訪日で決まっていくようなものではない」「米政府では、通商交渉を主導する通商代表部(USTR)が北米自由貿易協定(NAFTA)や米韓FTAの再交渉に取り組んでいる」「いまは日本とFTA交渉をやるような情勢にない」などと発言。政府が火消しに躍起になっていることがわかった。

しかし同日、都内の国際会議で講演したトム・ローズ米副大統領補佐官は、「アメリカはバランスの取れた経済関係を求めている」などと発言。日米両国間で貿易や投資に関する新たなルール策定を急ぐ考えや、日米FTA交渉の開始に強い意欲を持っていることをあらためて示唆。大局的に見ると、政府の情報操作はたいした効果を得られていないように思われる。

11月6日に予定されている日米首脳会談で、アメリカが煮え切らない日本にしびれを切らして早期のFTA交渉開始を迫る展開になっても、もはや何の不思議もない状況だ。

ちなみに、トランプ政権が日米FTA交渉の早期開始にこだわるのは、議会民主党を中心にトランプ大統領のTPP離脱決定を誤りだと批判する向きが多いからだ。また、農業関係者からも、TPP離脱で獲得しそこなった輸出拡大の機会を取り戻すため、日米FTA交渉の早期開始を求める声が強まっている。一皮むけば、トランプ政権も国内で圧力にさらされているのだ。

■「だらだら先延ばし」はもうムリ

日本がこのままズルズルと後退すれば、TPPの発効を前提にアメリカから獲得したはずの乗用車や商用車、自動車部品の関税撤廃の扱いが不透明になりかねない。また、2国間FTAとなると、農業市場のさらなる開放や日本の為替介入を制限する為替条項の設置など、新たな譲歩のオンパレードになりかねない。

これまでは、米側の交渉に向けた布陣が固まっていなかったことを理由に、交渉開始を先延ばしできた。最近は、北米自由貿易協定(NAFTA)と米韓FTAの見直し協議に米通商代表部(USTR)が忙殺されていることを理由に、先延ばしを続けようとしている。こんな知恵の浅い場当たり的な戦略を続けていても、遠からず限界が来るのは明らかだ。

筆者がいま着目しているのは、アメリカ抜きの11カ国によるTPPだ。早期発効へ向けた仕切り直しの交渉がいままさに行われている。11カ国は10月30日から、千葉県浦安市で首席交渉官会合を開催。11月8日からベトナムで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での大筋合意を目指している。

相変わらずベトナムが慎重姿勢を崩していないうえ、土壇場に来て、ニュージーランドで政権交代があり、政府が早期発効の推進派から再交渉派に変わるなどハードルは決して低くない。が、なんとかまとめ上げれば、明るい展望が見えてくるだろう。

日米FTA交渉のスタートラインを、アメリカが離脱したTPPとするよう迫ったり、トランプ政権の得点稼ぎにはTPPへの早期復帰が賢明な方策だと主張して、保護主義的な通商政策そのものの見直しを促したり、選択肢は格段に広がるはずだ。

日本政府には、だらだらと展望もなく交渉開始を先送りするのではなく、確固としたロードマップを描いた上で、世界の自由貿易の旗振り役になることが期待されている。

















 

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