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日本国民はこの選挙で初めて増税に賛成の意思を示すことになるー(田中良紹氏)
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20th Oct 2017 市村 悦延 · @hellotomhanks
公示前に劇的な展開を予想させた総選挙は、
小池百合子希望の党代表が「政権選択選挙」と言いながら
選挙に出馬しないために期待は裏切られ、
民進党分裂だけが注目されて自公優勢の選挙情勢が作り出された。
さらに公示前とは裏腹に公示後には何のドラマも起こることなく、
このままでは「消費増税の使い道」と「北朝鮮危機から国を守る」の二つを
選挙争点に掲げた安倍政権の勝利に終わりそうである。
そもそも臨時国会の冒頭で安倍総理が衆議院を解散したのは
「森友・加計問題」の追及とトリプル補選の取りこぼしから逃げるためで、
2年先の消費増税の使い道と北朝鮮危機を解散の理由とするには無理があった。
そのためか選挙戦では野党が「森友・加計問題」を取り上げ追及するのに対し
安倍総理はほとんどその問題に触れないですれ違いに終わらせ、
アベノミクスの成果を力説することに終始する。
野党はアベノミクスが暮らしに反映されていないと反論するが
安倍総理の言う成果の一々を覆し論争する形になっていない。
憲法問題では社民、共産が相変わらず「護憲」を訴え、
立憲民主はそれと近いように見せているが
しかし枝野幸男代表はれっきとした「改憲派」である。
これまでのメディアの報道に問題があるが、
与党が「改憲」で野党が「護憲」という図式はもはやない。
社民、共産以外の政党は少なからず「改憲」を認め、
「改憲」の中身に違いがあるだけである。
従ってこの選挙は与野党の主張ががっちりと組み合うことがない。
すれ違いとあいまいさが浮き彫りになるだけの選挙である。
有権者は何を選んでよいのか分からないのではと思うが、
しかしただ一つ、2年後の「消費増税」を巡ってだけは対立がはっきりしている。
自公は2年後の消費増税を前提に教育費の無償化を訴えている。
つまり2年後に消費税を10%にすることに賛成である。
これに対し野党は「凍結」または「反対」を訴える。
景気に悪影響を与えるとして「凍結」をいうのは希望の党、立憲民主党、
日本維新の会、日本のこころであり、
消費税そのものに反対するのが共産党と社民党だ。
自公がこの選挙に勝利すれば、
消費増税賛成を訴えて反対に勝利する画期的な選挙になる。
消費税増税を国民に問うて選挙に勝利した政権はこれまでない。
そのためこれまでは選挙の争点とせずに消費税を導入し税率も上げられてきた。
今回は「増税の追認」ではあるがそれが初めて選挙で勝利することになる。
初めて消費税導入を掲げて総選挙を行ったのは大平正芳元総理である。
1973年の第一次石油ショックで日本の高度経済成長は終わりを告げ、
75年に三木内閣の大蔵大臣となった大平氏は初めて赤字国債を発行した。
それ以来日本の財政は借金に頼る国債依存体質になる。
「将来の子孫に借金のツケを回してはならない」と責任を感じていた大平氏は
総理になると直接税中心の税制を間接税中心にし、
借金のない健全財政に戻すため、
79年の総選挙で「一般消費税の導入」を公約する。
しかしその選挙で自民党は過半数を割る大惨敗に見舞われた。
それ以来、自民党は消費税を選挙の争点にしなくなる。
中曽根元総理は「大型間接税は導入しない」と選挙公約に掲げて選挙に勝利すると
「売上税」を導入しようとした。
しかし社会党から「公約違反」を批判され撤回する。
次の竹下元総理も選挙で国民の声を聴くことなく3%の消費税を強行採決で導入した。
実は竹下氏は消費税を福祉目的税にすることで社会党や公明党の同意を得ていたが
大蔵省の反対で目的税にすることが出来なかった。
細川元総理は消費税を廃止し福祉税を導入しようとして
連立内の社会党やさきがけから反対され断念する。
しかし本来社会党は消費税に反対でない。
その証拠に村山元総理は消費税を1%上げて4%にする。
さらに橋本元総理が5%に上げた。
「4年間は消費税を上げない」と公約して政権交代を果たしたのは
民主党の鳩山元総理である。
しかし翌年「10%に上げる」と言った菅元総理は参議院選挙に敗れた。
次の野田元総理は2014年に8%、15年に10%に上げる法案を
自民・公明との3党合意で成立させる。
その時、政権奪還を狙う自公から「成立したら選挙で信を問う」と約束させられた。
2012年の総選挙はそのために行われたが、増税を主導した民主党は惨敗し、
安倍政権が誕生した。自公も消費増税賛成であるが自公の勝利は国民が消費増税に
賛成したからではないと思う。
むしろ消費増税しないと公約した民主党の裏切りに怒ったからである。
安倍政権が14年に8%に増税するとそれは日本経済にマイナスの影響を与えた。
そのため安倍政権は14年12月の総選挙で10%の増税延期を争点に勝利し、
16年の参議院選挙ではさらに19年10月まで延期すると公約して勝利してきた。
それが今回は延期せずに増税し、しかし使い道を教育費の無償化に充てると
おいしいエサをちらつかせたのである。
一方で財政健全化は遠のき将来の子孫へのツケは減らせないことになる。
少子化社会に対応するためと言うのが安倍総理の選挙戦での訴えである。
教育費の無償化が子供を持つ家庭の負担を減らすことはその通りだが、
非正規社員が増えて結婚もままならない事情が一方にはあり、
この政策がどれほど少子化を食い止めることになるのか。
また大平元総理が案じたように財政のツケを将来の世代に回すことにならないか。
国民は考えなければならない。
民主党政権が誕生した時に打ち出されたのは消費税を4年間上げないと同時に
子供手当の拡充だった。
財源は官僚機構に隠された「埋蔵金」を発掘すれば増税しなくとも
可能だと言うことだった。
しかし霞が関の官僚機構と渡り合うには相当の政治力が必要になる。
そう思っていると小沢一郎氏の秘書が突然逮捕され、
小沢氏が政治的実力を発揮できない状況に陥った。
代わりに「事業仕分け」が行われ、それは国民の耳目を引き付けたが、
しかしフーテンには官僚に対する「公開処刑」に見え、
官僚機構は民主党政権に反発を抱いただけではないかと思った。
いずれにしてもすぐに民主党は選挙公約を撤回し消費税10%に舵を切ったため
国民の信頼を失った。
今回の選挙で当初の民主党に近い主張をしているのは日本維新の会である。
教育無償化をするなら増税ではなく議員や官僚の「身を切る改革」だと主張している。
本当はこの消費税を巡る議論、教育無償化を含めた少子化問題の議論に焦点が合えば
選挙戦は与野党の主張が組み合えるのではないかとフーテンは思った。
おそらく財務省の官僚が麻生大臣を通して選挙の争点に
「消費増税の使い道」というクセ球を進言したのではないか。
子供を持つ家庭が反対できなくなるようにして
実は消費増税に国民が賛成するよう仕向けている。
この選挙が終わると日本国民が初めて選挙で増税に賛成したと記録されると思う。
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