安倍自民がひどいのは事実だが立憲民主は、それを上回る無責任さだから どうにもならん http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/101900042 安倍首相は憲法改正で名を残したいだけだ 田原総一朗の政財界「ここだけの話」 選挙後の憲法改正議論で避けてはならない問題がある 2017年10月20日(金) 田原 総一朗 安倍首相は”悲願”である憲法改正に邁進している(写真:UPI/amanaimages) 10月22日の衆議院総選挙に向けて、与野党ともに全くと言っていいほど触れていない肝心なことがある。それは、「対米従属論」についてだ。 総選挙後は、改憲勢力が拡大するだろう。となると、これから憲法改正に向けて議論が進む可能性が高い。そこで絶対に避けてはいけないのが、対米従属論である。 今、ベストセラーになっている、ノンフィクション作家・矢部宏治氏の新刊『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)で、この問題が詳しく指摘されている。 例えば、日米地位協定というものがある。1983年12月に外務省が作成した高級官僚向けの極秘マニュアル「日米地位協定の考え方 増補版」には、次のような箇所があるという。 ・アメリカは日本国内のどんな場所でも基地にしたいと要求することができる。 ・日本は合理的な理由なしにその要求を拒否することはできず、現実に提供が困難な場合以外、アメリカの要求に同意しないケースは想定されていない。 繰り返すが、これは83年の話だ。敗戦後の占領下時代(ポツダム宣言を受託した1945年からサンフランシスコ講和条約が発効した52年まで)の話ではない。もちろん、今もその内容は全く変わっていない。 これは横田空域問題でも、しばしばクローズアップされている。首都圏の空は米軍に支配されていて、日本の航空機は米軍の許可がなければ、そのエリアを自由に飛ぶことができない。だから、日本の航空会社は該当区域を避けて、不自然なルートで飛行しているという。 石原慎太郎氏が都知事を務めていた時、米国に「横田基地を米国と日本で共同使用したい」「東京の上空を返還して欲しい」と要求したことがある。しかし、両方とも「NO」という答えが返ってきた。 本書では、日米合同委員会についても触れている。この狙いは、戦後日本において、米軍が占領特権を維持するというものだ。占領下時代に始まったもので、今も続いている。 日本側の代表は、外務省北米局長だ。以下、各省庁の局長や審議官が参加している。一方、米国側の代表は、なんと在日米軍司令部副司令官だという。日本側の代表が外務省の局長であれば、米国は国務省の局長でないと釣り合いが取れない。つまり、米国側の代表は、日本よりもはるかに格下の人物を置いているというわけだ。 同委員会では、日本の法律や憲法に関係なく、日米関係のルールがどんどん決められている。日本は、米国に従属していると言える内容だ。 先日、僕はBS朝日の「激論!クロスファイア」で、ゲストとして本書の著者である矢部氏と石破茂元防衛大臣を招き、日米地位協定について議論をした。石破氏は、「この協定に少しでも触れたことを言おうとすると、『そんな話はしてはいけない』という空気がある」と述べた。いわば、この話はタブー視されているというわけだ。 あるテレビ番組の取材で、外務省の元北米局長に日米合同委員会について尋ねると、「日米合同委員会については、何も知りません。そんなものがあるのかすら知りません」と答えた。 北米局長は、同委員会の日本側の代表だ。何も知らないわけがない。しかし、何か知っていることを認めれば、日本国内で信用をなくし、誰からも相手にされなくなってしまうから言えなかったのだろう。 日本は憲法を盾に、米国の戦争に巻き込まれないようにしてきた なぜ、このような構図になってしまったのか。 日米安保条約が結ばれたのは、冷戦時代のことだ。日米はソ連と敵対していたが、日本だけでは軍事的にソ連に対抗することはできない。そこで、日本が他国から攻められたら、米国は日本を守るという約束をした。ただし、米国が他国から攻められたら、日本は何もしない。 なぜ、このような内容が成立したかといえば、米国は日本ではなく、「極東」を守るという思惑があったからだ。 冷戦が終わると、米国は日本に「集団的自衛権の行使ができるようにしろ」と要求してきた。米国が他国から攻められたら、日本も守れるようにしろ、ということだ。 まさに、日本は米国の植民地のような立場である。これについて、宮沢喜一元首相が、僕にこんなことを言ったことがある。 「日本人は、自分の体に合った洋服を作るのは下手だ。しかし、押し付けられた洋服に体を合わせるのはうまい」。 押し付けられた洋服というのは、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)のダグラス・マッカーサーが日本国憲法の草案を作ったことを意味している。日本国憲法が公布されたのは、1946年11月3日だ。当時の日本は非武装だから、米国は日本に憲法をつくり、全面的に守るという形をとったのだった。 一方で日本は、その憲法を盾にして、米国の戦争に巻き込まれないようにしてきた。 例えば、佐藤栄作内閣の時にベトナム戦争があった。米国は日本に「自衛隊を派遣し、ベトナムで一緒に戦おう」と要求してきた。日本は米国の従属だから、「NO」とは言えない。 そこで佐藤内閣は、「もちろん一緒にベトナムで戦いたい。しかし、米国が難しい憲法を押しつけたから、行くことができない」と答えた。憲法9条を盾に、米国の戦争に巻き込まれるのをうまく回避したというわけだ。 小泉純一郎内閣の時には、イラク戦争が始まった。フランスやドイツは、「イラク戦争反対」を唱えたが、小泉氏は米国を支持した。ブッシュ米大統領(当時)は喜び、「一緒にイラクで戦おうじゃないか」と日本に要求してきた。 すると小泉氏は、「もちろん行く。しかし、米国が押しつけた難しい憲法によって、日本は水汲み作業しかできない」と言った。こうして自衛隊は、イラク南部のサマーワに派遣されて、給水活動や医療支援活動を行った。 日本は押し付けられた憲法を盾に使って、米国の戦争に巻き込まれないようにしてきたのだ。 竹下登氏が首相になった時、僕は「日本には自衛隊というものがあるけれど、戦えない軍隊じゃないか。それでいいのか」と尋ねたことがある。すると、竹下氏は、「だからいいんだ。だから日本は平和なんだ」と答えた。 軍隊というものは、戦えるならば戦ってしまうものだ。太平洋戦争が始まったきっかけも同様だった。 開戦前、米国と戦って勝てると思う日本人は誰もいなかった。昭和天皇も米国との戦いに反対していて、参謀総長の杉山元と海軍司令部総長の永野修身に、「こんな戦争を始めてもいいのか」と尋ねた。 すると永野は、「今なら戦えます。しかし、1年半経てば石油がなくなるから、戦えなくなります。今のうちに戦いましょう」と答えた。こうして、日米の戦争が始まったのである。 戦争を知る世代の総理大臣は、「戦える軍隊は戦ってしまう」ことをよく分かっている。日本は対米従属だが、その代わりに憲法9条を盾にして、70年以上戦争に巻き込まれるのを避けてきた。自衛隊の戦死者は一人もいない。 だからこそ、戦後のほとんどが自民党政権だったが、歴代首相は誰も改憲を掲げなかったのだ。 改憲論、自立論が出始めた 安倍首相は、戦争を知らない世代で自民党初の総理大臣だ。彼は、憲法改正をして、自衛隊を戦える軍隊にしたいと考えている。 さらに今、「対米従属はけしからん。日本は自立すべきだ」という声が上がりつつある。 沖縄県の米軍基地移転問題でも、こういった意見が出始めている。一部の新聞は、「日本は中央集権国家で、地方自治を全く無視している」と社説で訴えた。 沖縄県は、県知事をはじめ県民の多くが辺野古への移設に反対している。ところが政府は、その声に耳を傾けず、移設工事をどんどん進めている。これについて痛烈に批判しているわけだ。 その気持ちは分かるが、ならば日本は米国に対して、どのような立場をとればいいのか。 沖縄基地問題を突き詰めれば、「米軍は沖縄から撤退しろ。日本から撤退しろ」ということになる。本当に米軍が沖縄から撤退すれば、日本はどうなるのか。 日本は米国から自立すべきだと言うが、具体的にどのようにするのか。この議論が全くない。 今回の衆議院選挙でも、自立論も対米従属論もほとんど議論されていない。与野党ともにない。テレビや新聞も触れていない。憲法改正を焦点とするならば、なおさらここを議論すべきではないか。 おそらくは、与野党も、マスメディアも、政府も、どうしたらいいのか分からないのだろう。だから、この問題は「なかった」ことにしている。 「難しいことは、なかったことにする」。日本は長い間、難しい問題はこのように対処してきた。 一部では、「日本は自立するために、核兵器を持ち、自衛隊を国防軍に変えるべきだ」という意見もある。「日本はNATO(北大西洋条約機構)に参加すべきだ」という声さえもある。 今、日本の防衛費は、国内総生産(GDP)比1%の水準を維持している。約5兆円だ。米国はGDP比3.3%、北大西洋条約機構(NATO)の主要国は、1.2%〜2.3%だ。 もし、日本が自立して自衛隊で自国を守ろうとするならば、少なくとも15兆円は必要だと言われている。年々借金が膨らむ日本で、これだけの費用を毎年捻出することはできるのだろうか。 世界中で、自国で自国を守れるのは、米国、中国、ロシアの3カ国だけだと言われている。欧州各国は、それができないからNATOを結成した。 日本も、アジアでNATOのような軍事同盟ができればいいのだが、アジア諸国の経済レベル、文化レベルに大きな差があることを考えると、実現は難しいだろう。 対米従属論と自立論は、非常に難しい問題だ。答えは簡単に出ない。だからこそ、「何のための改憲なのか」「日本を一体どういう国にしたいのか」を考え、議論を深めることが非常に大事なのだ。 安倍首相は「憲法改正をした総理大臣」という名を残したい 選挙の後、憲法改正の議論が進むことは間違いないが、そう簡単にはいかないだろう。国民投票で反対票が上回る可能性が高いからだ。 そもそも安倍首相は、なぜ憲法改正をしたいのか。 僕は昨年9月、安倍首相と会った時に、こんなことを言われた。「大きな声では言えないが、実は、憲法改正をする必要がなくなった」。何故かと聞くと、「(安全保障関連法が施行されて)集団的自衛権を行使できるようになったので、米国は何も言ってこなくなったからだ」と言った。 対米的には、改憲の必要性はなくなった。つまり、今、安倍首相が憲法改正をする理由としては、「憲法改正をした総理大臣」という名を残したいだけなのだろう。 僕は、憲法改正には反対だ。理由はこれまで述べてきた通りだ。改憲をする必要はないと思う。 選挙が終われば、憲法改正の議論が進む。そこで、絶対に避けてはいけないのが、対米従属や自立の問題だ。国民も一人ひとりが関心を持ち、日本をどういう国にしたいかを考え、政府を監視する目を養わなければならない。 このコラムについて
田原総一朗の政財界「ここだけの話」 ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。
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